ラオスにおける商業銀行法の改正について
ラオスにおける商業銀行法の改正についてのニュースレターを発行しました。
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ラオスにおける商業銀行法の改正について
2023年10月18日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1. 経緯
ラオスの商業銀行法は、2006年に制定され、その後2018年に改正されています。今回の改正版は、2023年7月17日付けで発行、2023年10月13日に官報に掲載されましたが、9月15日から施行されています(以下、「改正法」)。商業銀行業は、ラオス中央銀行(以下「中銀」)の管轄下にあります。会社法に従って会社を設立し、企業登録書(Enterprise Registration Certificate)を取得した後に、投資奨励法に従い投資許可証(Investment License)を取得し、その後で中銀より銀行業に関する事業許可証(Business Operation Certificate)を取得する手続きの流れとなっています。今回の改正において、重要な改正点及び新たな規定を中心に解説いたします。
2. 改正点
改正法第13条によると、商業銀行の登録資本金の額が改正前の2倍(5,000億キープから1兆キープ)に増額されています。
登録資本金又は資本金(以下「資本金」)は、現物出資でも可能となっていますが、資本金総額の10%を超えることはできません。また、現物出資の場合、評価会社に資産を査定してもらい、その評価額は中銀からの合意を得る必要があります。現物出資は、銀行業の運営に必要な動産又は不動産とし、不動産の場合はラオスに存在する必要があります。
改正法が施行される前に設立した既存の商業銀行は、政府が規定する期日内に、改正法で定められた資本金の額へ増資する必要があります。政府が規定する期日について、10月末時点ではまだ確認できていません。なお、ラオスにおいては、今回の資本金増額等により、数社の外国銀行の支店の存続に影響しています。
資本金 |
改正前 |
改正後 |
商業銀行 |
5,000憶キープ (約2450万USD) |
1兆キープ以上 (約4900万USD) |
外国銀行の支店 |
3,000憶キープ (約1460万USD) |
6,000億キープ以上 (約2900万USD) |
※1USD=約20,500キープ(2023年10月18日現在)
3. 新規規定
改正法において新たに規定された条文は以下の通りです。
(1)特定銀行(改正法第3条10項)
改正法において、商業銀行のひとつとして、一般銀行のほかに、特定銀行が新たに定義づけされています。特殊銀行とは、一定の金融商品、金融分野、地域及び対象顧客に特化してサービスを提供する銀行をいいます。
(2)事業許可証の更新 (改正法第12条)
事業許可証は、以下に該当する場合、新たに取得する必要があります。
① 株主構成の変更、事業内容の変更、事業所の移転など事業許可証に記載されている情報
に変更があった場合
② 事業許可証の汚損、破損、紛失した場合
(3)定款(改正法第15条)
改正前は、定款に記載すべき項目が規定されていましたが、改正後は、中銀が定期的に更新する書式に則る必要があるため、詳細は省かれています。また、外国銀行の支店の定款は、親会社からの承認を必要とすることが新たに規定されています。
(4)商業銀行の降格及び昇格(改正法第18条)
外国資本100%の商業銀行及び外国銀行の支店は、それぞれ、商業銀行から外国銀行の支店への降格、外国銀行の支店から外資100%の商業銀行へ昇格することは可能です。但し、変更する場合は、事業許可証を中銀の規定に従って取得する必要があります。なお、事業体の変更があったとしても、預金者、債権者に対する義務及び納税の義務等は継続されます。
(5)商業銀行の組織 (改正法第20条及び第34条)
改正前は組織体の中に補助統括部はありませんでしたが、改正後は組織体を構成する補助統括部を設置する必要があります。なお、補助統括部の業務内容は、定款に定めなくてはなりません。
(6)商業銀行協会(改正法第94条から第96条)、
非営利の商業銀行協会の設置、加入、協会の活動内容等が新規で規定されています。外国銀行の支店も加入することが可能です。
なお、ラオスにおける経営不振金融機関に対する初動措置については、弊所ニューズレターをご参照ください。
以上
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