ラオスにおける土地使用権の変動登記について
ラオスにおける土地使用権の変動登記についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
ラオスにおける土地使用権の変動登記について
2024年4月30日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
ラオスにおいては、2020年7月に改正土地法が施行されています。また、2021年2月19日付で土地権原書(ໃບຕາດິນ:バイターディン)の内容について規定した「土地登記書及び土地権原証書の印字内容及び書式に関する大臣合意(詳細はニューズレターご覧ください)」を発行しています。土地権原書の表面には、土地や所有者の情報が記載されていますが、裏面は、「土地使用権の活動及び変動記録表」となっており、土地の所有権者の移転経過、担保権設定等に関する情報などが記録されています。
裏面に関して規定した法令は、2008年に発行された「土地に関する法律行為の登記規則」がありますが、2020年に土地法が改正され、またラオス民法典も施行されたため、それにとってかわるガイドライン「土地使用権の活動及び変動登記に関するガイドライン(No0564)」が2024年3月28日に天然資源環境省より発行され、5月10日から施行されます。今回は、土地権原書の裏面に記録される登記内容について簡単に解説します。
2. 土地使用権の活動登記について
(1)登記が必要な土地に関する法律行為
土地権原書の裏面に登記する必要がある土地に関する法律行為は以下の6種類です(ガイドライン2編1)。
①リース又はコンセッション
②土地の担保設定(質権又は抵当権)
③土地使用権の買戻特約付売買
④契約に基づく地没権
⑤地上権
⑥期限付き政府分譲地土地使用権の売買
(2)登記手順
例えば、担保設定の場合の登記手順は以下の通りです(ガイドライン2編2.1~2.3)。
土地使用権の所有者は、必要な書類(所定の登記申請書、質権又は抵当権設定契約書、ローン契約書、土地登記証明書、土地権原書原本、土地使用料支払い証明書又は直近の土地税納税証明書、契約当事者のIDカード又は住所証明及びファミリーブックの写し、法人や国際機関の場合は事業許可証、企業登録書又は団体設立証明書の写しなど(ガイドライン1編1.2))を揃えて、土地が存在する郡の天然資源環境事務所へ提出します。当局による精査がすべて完了後、新しい土地登記証明書が発行されます。
土地使用権の所有者は、新しい土地登記証明書や各契約書の正当性を公証役場で認証してもらいます。認証済みの書類を郡の天然資源環境事務所へ提出します。その後、契約当事者と土地管理当局が対面により覚書を交わし、2営業日以内に郡の天然資源環境事務所長が土地権原書の裏面の登記内容に署名をして、登記が完了します。
3. 土地使用権の変動登記の種類について
(1)登記が必要な変動登記の種類
登記が必要な土地使用権の移転又は変更にかかる法律行為は、以下の9種類です
①法律又は遺言による遺産相続
②土地使用権の売買
③土地使用権の株式化
④土地使用権の(無償)譲渡又は移転
⑤土地使用権の交換
⑥土地使用権の抹消
⑦土地使用権の返還
⑧自然又は契約に基づく地没権
⑨裁判所の判決執行命令
(2)登記手順
登記手順は、上記 2(2)とほぼ同じですが、変動登記の場合は、土地登記証明書が発行されるのはなく、新しい土地権原書が発行されます。例えば、(1)の③土地使用権の株式化の場合、土地使用権を合弁会社(内資外資問わない)の出資金とすることが可能です。ラオス国籍の法人又は個人が内資100%の合弁会社に出資する場合、新しい土地権原書は、その合弁会社の名前で発行されます。しかしながら、外国企業との合弁会社への出資の場合は、新しい土地権原書は、外国企業との合弁会社の名前では発行されず(外国籍は土地を所有することができないため)、別途規定する法令で定めるとあります(ガイドライン3編1.3)ので、留意する必要があります。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)