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改正景品表示法における確約手続に関する運用基準の概要

2024年05月07日(火)

改正景品表示法における確約手続に関する運用基準についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

改正景品表示法における確約手続に関する運用基準の概要

 

改正景品表示法における確約手続に関する運用基準の概要

2024年5月7日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2023年5月に不当景品類及び不当表示防止法が改正され[1](以下「改正法」といいます)、改正法第2章第6節に規定する手続(以下「確約手続」といいます)が公布日から起算して1年6か月以内に施行される予定です。改正法の施行に伴い、同法施行規則及びガイドランの改正案並びに確約手続に関する運用基準等が2024年2月16日に公表され、パブリックコメントの募集が開始されました。
 今月のニューズレターでは、2024年4月18日に公表された上記改正案等のうち、「確約手続に関する運用基準[2]」について解説いたします(以下「本運用基準」といいます)。

1 概要

 はじめに、改正法における主な改正事項は、下表のとおりです。

改正事項
事業者の自主的な取組の促進 ① 確約手続の導入
(改正法第26条~第33条)
有料誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、当該行為について、措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないこととすることで、迅速に問題を改善する制度の創設
② 課徴金制度における返金措置の弾力化
(第10条)
特定の消費者へ一定の返金を行った場合に課徴金額から当該金額が減額される返金措置に関して、返金方法として金銭による返金に加えて第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)も許容
違反行為に対する抑止力の強化 ③ 課徴金制度の見直し
(第8条4項~同条6項)
  • 課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における売上額を推計することができる規定の整備
  • 違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対し、課徴金の額を加算(1.5倍)する規定の新設
④ 罰則規定の拡充
(第48条)
優良誤認表示・有利誤認表示に対し、直罰(100万円以下の罰金)の新設
円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等 ⑤ 国際化の進展への対応
(第41条~第44条)
措置命令等における送達制度の整備・拡充、外国執行当局に対する情報提供制度の創設
⑥ 適格消費者団体による開示要請の規定の導入
(第35条)
適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者はと当該要請に応ずる努力義務を負う旨の規定の新設

 本改正は、商品又は役務の取引に関する表示をめぐる状況に鑑み、事業者の自主的な取組みの促進、違反行為に対する抑止力の強化等を講ずることで一般消費者の利益の一層の保護を図るために行われました。

 本運用基準は、改正法第2章第6節に規定する確約手続の運用に関する考え方について定めています。確約手続は、措置命令又は課徴金納付命令と比べて、「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為」をより早期に是正し、消費者庁と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大し、改正法の効率的かつ効果的な執行に資するものである一方、改正に伴い新たに導入された手続です。そのため、確約手続の対象や確約手続移行前の手続との関係など、確約手続に関する考え方を可能な限り明確にする必要があり、確約手続に係る法適用の透明性及び事業者の予見可能性を確保する観点から、本運用基準は策定されました。
 本運用基準における概要につきましては、以下に解説いたします。

2 確約手続の創設に関する運用基準

 まず、確約手続とは、消費者庁より改正法の規定に違反する行為をした事業者が是正措置計画を申請し認定を受けたときは、当該行為について、措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないこととする制度をいいます。
 確約手続の流れは下図のとおりです。

(1)確約手続に関する消費者庁との相談

 確約手続は、違反被疑行為に関して事業者の自主的な取組により問題を解決するものであるため、消費者庁と事業者との間の意思疎通を密にすることが双方にとって有益であると考えられています。したがって、消費者庁が確約手続通知を行う前であっても、違反被疑行為に関して調査を受けている事業者は、消費者庁に対し、確約手続の対象となるかの確認や確約手続を希望する旨の申出等、手続に関していつでも相談ができることが明らかにされています。

(2)確約手続の対象

 確約手続の対象とするか否かの判断基準は、個別具体的な事案に応じ、違反被疑行為等を迅速に是正する必要性、あるいは、事業者の提案に基づいた方がより実態に即した効果的な措置となる可能性などの観点から判断するとされています。
 また、考慮要素については、違反被疑行為がなされるに至った経緯、当該違反被疑行為の規模及び態様、一般消費者に与える影響の程度、確約計画において見込まれる内容その他当該事案における一切考慮するとされています。
 なお、次のいずれにも該当するような場合は、違反被疑行為等の迅速な是正を期待することができず、違反行為を認定して法的措置をとることにより厳正に対処する必要があるため、確約手続の対象としないと明示されています。
① 事業者が、違反被疑行為に係る事案についての調査を開始した旨の通知を受けた日、改正法第25条第1項の規定による報告徴収等が行われた日又は改正法第7条第2項若しくは第8条第3項の規定による資料提出の求めが行われた日のうち最も早い日から遡り10年以内に、法的措置を受けたことがある場合(法的措置が確定している場合に限る。)
② 事業者が、違反被疑行為とされた表示について根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえて当該表示を行っているなど、悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合

(3)確約措置の考え方

 確約計画の認定の条件として、当該確約契約における確約措置が、①違反被疑行為等を是正するために十分なものであること(「措置内容の十分性」)及び②確実に実施されると見込まれるものであること(「措置実施の確実性」)の2点を満たす必要があるとされています。確約措置の典型例として、具体的に違反被疑行為を取りやめること、一般消費者への周知徹底、違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置、履行状況の報告、一般消費者への被害回復、契約変更、取引条件の変更が挙げられています。

(4)確約計画の認定に関する公表

 消費者庁が確約計画を認定した場合、認定確約計画の概要、当該認定に係る違反被疑行為の概要、確約認定を受けた事業者名その他必要な事項を公表する(ただし、改正法の規定に違反することを認定したものではないことを付記する。)とされています。

 

[1] 消費者庁「景品表示法の改正法案(概要)」
[2] 消費者庁「確約手続に関する運用基準」