シンガポール法律コラム:第12回 シンガポールにおけるFlexible Work Arrangement (FWA)の導入について(後編)
「シンガポール法律コラム:第12回 シンガポールにおけるFlexible Work Arrangement (FWA)の導入について(後編)」と題したニュースレターを発行いたしました。シンガポール法律コラムは、今後も引き続き連載の予定となります。前回(第11回)はこちらよりご覧いただけます。
こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
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シンガポール法律コラム
第12回 シンガポールにおけるFlexible Work Arrangement (FWA)の導入について(後編)
2024年12月
One Asia Lawyers Group代表
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎
みなさん、こんにちは。One Asia Lawyers Group (Focus Law Asia LLC)です。今号ではシンガポールにおける柔軟な勤務形態(Flexible Work Arrangement (FWA))の導入についての後編をご紹介します。
FWAとは従業員が柔軟に勤務時間や勤務場所を選べるようにし、仕事とプライベートのバランスを取りやすくする取り組みとなっております。シンガポールにおけるFWAの推奨や2024年の労働法改正に伴った職場公正法(Workplace Fairness Legislation)の導入を通じて、国内の労働環境や制度に関する見直しがなされました。
その他の労働法改正の内容については第8回、第9回の弊所のニュースレターをご覧ください。
6 正式なFWAの申請〜承認までの一般的な流れ
会社が採用すべきFWAの申請から承認のプロセスを図表化すると以下の通りです。
7 企業からよくある質問とその回答
(1)FWAの書式について
従業員が雇用者に正式なFWAを申請するとき、以下の (1) 〜(4) の情報を含めて書面で申請をする必要があります。以下の情報が揃っていない場合は正式なFWA申請として認められないため、TG-FWARの対象になりません。
①申請日
②FWA申請の期間と頻度
③申請の理由
④(必要であれば)希望する開始日と終了日
従業員からFWA申請を受けた雇用者は、申請後二ヶ月以内に申請の諾否を従業員に伝えなければなりません。
(2)会社のFWAの拒否権について
雇用者は従業員のFWA申請を拒否する権利はあります。ただし、拒否をする場合、その理由を書面で述べる必要があります。また、申請を拒否した理由は必ず合理的な業務上の理由に基づくべきであり、個人的な偏見に基づいてはいけません。業務上の理由の例として、「多額の費用負担がかかってしまう」、「生産性や効率性への悪影響が生じてしまう」、「職務の性質上、FWAの導入は実現不可能又は非現実的である」等が挙げられます。一方で、「管理職がFWAやFWAを申請した従業員を信用しない」、「従業員が一貫として満足いく働きぶりであったとしても、上司が仕事場で従業員を直接確認する望みがある」、「組織の伝統としてFWAを導入しない」等の理由は非合理的であるため、FWAを拒否する理由としては認められません。
8 最後に
今回は、柔軟な勤務形態(Flexible Work Arrangement, FWA)の導入についてまとめました。これからシンガポールに進出する、またはすでにビジネスを展開している日本企業にとって、FWAの導入は優れた人材の獲得と定着、従業員の満足度と生産性の向上、インクルーシブな職場環境の構築に大きく貢献します。会社としては、単に導入の必要があるから導入を行うのではなく、その趣旨を理解し、会社の信の効率化のために利用するという意識を持つことが推奨されます。
※本稿は、シンガポールの週刊SingaLife(シンガライフ)において掲載中の「シンガポール法律コラム」のために著者が執筆した記事を、ニューズレターの形式にまとめたものとなります。