ハラル製品保証分野の実施に関する政府規則2024年42号の施行
ハラル製品保証分野の実施に関する政府規則2024年42号の施行についてニュースレターを発行いたしました。
こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
→ハラル製品保証分野の実施に関する政府規則2024年42号の施行
ハラル製品保証分野の実施に関する政府規則2024年42号の施行
2024年12月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 Prisilia Sitompul
インドネシア法弁護士 Achmad Firmansyah
1.はじめに
インドネシア政府は2024 年10月17日に、ハラル製品保証分野の実施に関する政府規則2024年42号(「GR42/2024」)を施行致しました。GR42/2024は、ハラル製品保証に関する法律2014年33号(「ハラル製品保証法」)の施行規則であり、インドネシアにおけるハラル認証手続、海外の機関との相互承認、スケジュールの改定等、ハラルに関する極めて重要な内容を含む規則となります。本ニュースレターでは、GR42/2024の概要を説明致します。
2.これまでのハラルに関する立法の変遷
イスラム教徒が人口の87%を占めるインドネシアでは、ハラル製品に対する非常に高い消費者の需要が存在します。そのため、インドネシア政府は、消費者保護及び経済の活性化を企図してハラル製品保証法を施行し、その後も多数のハラル関係規則が制定されております。
ハラル製品保証制度については、ハラル証明書の発行権限を有するBPJPH、ハラル適合性を決定するMUI、実際のハラル適合性を検査するLPH、ハラル製品プロセスに責任をもつ社内担当者であるハラル管理者/ハラルスーパーバイザー等、様々な関係当事者が関与する複雑なプロセスとなっております[1]。そのため、実務上は、各証明書の申請手続に非常に長期間を要し、規則で定められたスケジュールの達成が極めて困難な状況となっておりました。
政府は、このような状況の改善を企図して、新たにGR42/2024を施行致しました。同規則においては、手続の迅速化のための様々な変更がなされるとともに、政府規則2021年39号(「GR39/2021」)で定められたスケジュールについても一部変更がなされております。
3.GR42/2024による変更点
GR42/2024は、従前のGR39/2021で規定されていた手続を踏襲しつつ、下記のように一部を修正、追加しております。
(1)ハラル認証の有効期限の撤廃
BPJPHが発行するハラル認証は、従来有効期限として4年間が設定されておりましたが、GR42/2024によってこれが撤廃されております。これにより、今後は、材料またはハラル製品プロセス(PPH)に変更がない限り、一度取得したハラル認証は期限なく有効となります(GR42/2024第88条)。
なお、ハラル製品保証法は、BPJPHとの相互承認を行った外国の機関によるハラル認証について、BPJPHに登録することで、インドネシア国内でも有効性を認めております。もっとも、このような相互承認に基づくハラル認証の有効期限は、外国の機関が発行したハラル認証の有効期限に準拠するとされているため、上記有効期限撤廃の効力は及ばない点に注意が必要です(BPJPH長官決定2023年20号別紙第3章A第4項)。
(2)食品、飲料などに関するハラル認証取得期限の変更
従前は、すべての食品、飲料、食肉処理サービス製品、食肉処理サービスは2024年10月17日までにハラル認証を取得しなければなりませんでした(GR 39/2021第140条)。しかし、GR 42/2024では、この期限は中規模および大規模企業の製品のみに適用され、小規模および零細企業または外国製品には異なる期限が適用されることになりました(第160条)。
事業規模 | 段階的移行期間 |
中・大規模企業 | 2019年10月17日~2024年10月17日 |
小・零細企業 | 2019年10月17日~2026年10月17日 |
外国製品 | ハラール認証の相互承認協定の締結状況を踏まえ、2026年10月17日までに宗教大臣が決定 |
上記の通り、外国製品についてはハラル認証期限の延長がなされています。延長後の期限はまだ明確ではありませんが、原産国との間のハラル認証の相互承認合意の締結状況を踏まえて、2026年10月17日までの2年間の間に期限が決定されるとされています。
上記変更を踏まえた今後のスケジュールは下記のとおりとなります。
製品 | 対応期間 |
食品および飲料、屠畜および屠畜サービスから生じる製品 | 2019年10月17日〜2024年10月17日 *ただし、小・零細企業、輸入品に関しては延期された。 |
天然医薬品、医薬部外品、健康補助食品 | 2021年10月17日〜2026年10月17日 |
市販薬と限定市販薬 | 2021年10月17日〜2029年10月17日 |
処方薬(麻薬を除く) | 2021年10月17日〜2034年10月17日 |
化粧品、化学製品、遺伝子組み換え製品 | 2021年10月17日〜2026年10月17日 |
衣類、帽子、アクセサリー | 2021年10月17日〜2026年10月17日 |
家庭用ヘルスケア製品、家電製品、イスラム教徒の祈りの道具、文房具 | 2021年10月17日〜2026年10月17日 |
医療機器(リスククラスA) | 2021年10月17日〜2026年10月17日 |
医療機器(リスククラスB) | 2021年10月17日〜2029年10月17日 |
医療機器(リスククラスC) | 2021年10月17日〜2034年10月17日 |
関連する原材料および/または製造プロセスがハラルに準拠していない医薬品、生物由来製品、および医療機器 | 法定の規制に準拠 |
(3)ハラル認証保有者の義務
GR42/2024は、ハラル認証を取得済みの事業者に対して下記義務を新たに規定しております(51条)。
- 認証された製品へのハラルラベルの貼付
- 認証されたハラル製品のハラル適合性の維持
- ハラル製品とノンハラル製品間での、屠殺、保管、加工、包装、流通、販売時の場所・利用備品等の分離
- 材料構成・PPH変更時のハラル証明書の更新
- 材料構成・PPH変更時のBPJPHへの報告
上記2に関しては、4年毎にハラル製品保証システム(SJPH)の実施状況の検査を通して、ハラル適合性の証明書によって証明される必要があるとされている点に注意が必要となります(52条)。
(4)その他GR39/2021からの変更点
GR42/2021では、GR39/2021で定められていた事項について、下記のような変更がなされております。
No | 論点 | GR39/2021 | GR42/2024 | 条文: GR42/2024 |
1 | 屠殺場所の分離要件 | 大規模な畜殺場とのみ言及 | 家禽類の屠殺が追記 | 7条 |
2 | BPJPHと食品医薬品監督庁(BPOM)の協力 | 伝統的医薬品(obat tradisional)」という用語を用いていた | BPOM25/2023に合わせて「天然医薬品(obat bahan alam)」という言葉に置き換えられた | 132条 |
3 | 外国ハラル認証の有効性の確認期限 | 規定なし | 5日以内 | 150条2項 |
4 | 外国ハラル証明書の延長申請期限 | 外国ハラル証明書の有効期限の少なくとも90日前までに申請書を提出する必要 | 少なくとも60日前までに変更 | 154条 |
5 | 法令違反時の制裁 | 法令違反によって書面による警告がなされた場合、14日以内に事業者がこれに対応しない場合にはBPJPHによって製品の流通が停止される | 30日以内に対応しない場合に変更 | 183条、184条 |
4.結論
上記のように、GR42/2024ではハラル認証の有効期限の撤廃やスケジュールの修正等、非常に多くの変更、追加がなされております。ハラル製品保証制度は多数の関係当事者が関与し、関係法令も非常に多数となっているところ、本規則も含め、常に最新の制度について留意しつつ、対応をする必要がございます。
—–
[1] 詳しい手続については2022年4月のニュースレター( https://oneasia.legal/8439 )もご参照ください。
≪ 前へ |