ラオスにおける外貨預金について
ラオスにおける外貨預金についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
→外貨預金について
ラオスにおける外貨預金について
2025年3月24日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
ラオスにおいては、2022年10月1日より「改正外国為替管理法(以下、「外為法」)」が施行され(詳細はニュースレターをご参照ください)、2023年7月に「外貨管理の実施に関する首相命令(No10)(以下、「首相命令」)詳細はニュースレターをご参照ください)」を発行するなど、外貨の使用に関する規制が強化されています。今回、ラオス中央銀行(以下、「中銀」)は、2025年2月19日付で「ラオスにおける外貨預金管理における中央銀行総裁合意(No155)(以下、「合意」)」を発行し、企業だけではなく、個人の外貨預金口座に関しても規制を強化する内容となっています。但し、企業の輸出入専用口座及び投資関連口座については、合意は適用外となります。
なお、合意は、2019年5月30日付「ラオスにおける預金口座の開設、送金及び現金の持込み/持出し関する中銀総裁の合意(No454)(以下、「2019年合意」)」の「外貨預金口座の開設及び使用」に関する規定のみ取って代わるもので、発行日の2月19日から数えて45日後(4月5日)に施行されます。
2.外貨預金口座の開設について
(1)個人の外貨預金口座開設について
ラオス居住者、非居住者問わず、ラオスの商業銀行において、外貨の預金口座を開設することは可能であり、2019年合意から特段改正はありません。しかしながら、開設条件として、「(ラオスにおいて)外貨を保有している人又は/及び外貨での収入源がある人」と規定しています(合意第5条)。従いまして、例えば、ラオス非居住者が、現金を海外から持ってきた場合、その現金の入手元が不明な場合(ラオスではない場合)、または、多額の現金の場合、ラオスの税関が発行する現金輸入証明書を取得していない場合など、商業銀行で口座を開設することを拒否される可能性もありますので、留意する必要があります。
(2)外貨預金口座開設に必要な書類
口座開設に必要な書類は、2019年合意から変更はありませんが、居住者の場合は、パスポート及びラオスで就労している人は、雇用契約書等の提出が必要となります。但し、非居住者も同じ書類が必要であると規定しており(合意第6条2項)、非居住者で就労していない場合、パスポートのみで銀行口座が開設できるか否かは、各銀行の内部規定に従うことになるため、事前の情報収集が必要となります。
3. 外貨の引き出し及び送金
(1)外貨の引出し
ラオス国内の商業銀行に預けた外貨の引き出しは、口座のある銀行の窓口のみとなります(合意第9条)。街中にあるATMからは外貨は引き出すことができません。また、外貨引出しにおける条件、手数料等に関しては各商業銀行が決定することが可能となっています。
(2)外貨の送金・振込(合意第10条)
口座の保有者(名義人)は、以下の条件に従い、外貨を同じ通貨の口座間で送金[1]をすることが可能です。
①同じ名義人の外貨口座間の送金は、各商業銀行の定める手数料を支払い、額に制限なく送金することが可能
②口座の名義人が異なる口座への送金は、送金元の商業銀行の手数料は取引額の0.5%とする。但し、1米ドル(又は相当額)以上50米ドル(又は相当額)未満とし、下記の条件を前提とします。
ⅰ)個人の外貨口座の場合
・1日あたり1,000米ドル(又は相当額)未満の送金の場合は、送金目的を明示すること
・1日あたり1,000米ドル(又は相当額)以上の送金の場合は、送金目的を明示し、関係書類を別添すること
ⅱ)企業の外貨口座の場合
・1日あたり10,000米ドル(又は相当額)未満の送金の場合、目的を明示すること
・1日あたり10,000米ドル(又は相当額)以上の送金の場合は、送金目的を明示し、関係書類を別添すること
4.罰則規定(合意第19条)
(1)個人、法人に対する罰則規定
個人、法人等が合意に違反した場合、違反の程度が軽い場合及び初回の場合は、文書による勧告がなされます。
警告後も、継続して違反した場合、違反額を明示できない場合又は違反額が100,000,000キープ(約70万円)以下の場合、10,000,000キープ(約7万円)から20,000,000キープ(約14万円)の罰金、が科せられます。
違反額が100,000,000キープ以上の場合、違反額の10%の罰金が科せられます。但し、 罰金の額は20,000,000キープ以上とします。
各違反を繰り返す場合、直近の罰金額の2倍の罰金が科せられます。
(2)商業銀行に対する罰則規定
商業銀行が合意に違反した場合は、違反の程度が軽い場合及び初回の場合は、文書による勧告がなされ、同時に5営業日以内に改善が求められます。期日を過ぎても改善が認められない場合、改善できない場合又は違反を繰り返す場合、1日当たり20,000,000キープの罰金が科せられ、同時に新聞等のマスメディアに対して公示されます。
[1] 海外送金も含まれるかどうかは明示されていません。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)