ミャンマー最低賃金の動向と公務員手当との関係性について
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ミャンマー最低賃金の動向と公務員手当との関係性について
2025年12月
One Asia Lawyers ミャンマー事務所
代表弁護士(日本法):佐野 和樹
はじめに
ミャンマー政府の最低賃金設定全国家委員会は、2025年10月14日付で、日額7,800チャット(約380円)を実質的な最低賃金として設定しました。
これは、従来の基本日額4,800チャットに段階的な追加手当を上乗せする形で引き上げられたもので、2023年・2024年に続く増額措置となります。
近年の動向から、今後も断続的な実質最低賃金の増額が見込まれます。
本ニューズレターでは、民間企業向け実質最低賃金の改定がどのように公務員等の手当増額と連動しているかについて整理します。
公務員等の手当増額と民間最低賃金改定の関係
ここ数年、最低賃金の追加手当が増額される際には、
まず公務員・軍人・政府部局の臨時職員・日雇い労働者(以下「公務員等」という。)向けの手当増額通知が軍評議会(State Administration Council: SAC)または財務・歳入省(Ministry of Finance and Revenue)から発出され、その後ほどなくして国家最低賃金決定委員会が民間企業向けの最低賃金引き上げ通知を発出するという流れが続いています。
過去3回の例は以下のとおりです。
■ 2023年の改定
・公務員等に対する追加手当の支給(2023年10月1日開始)を発表
・直後の2023年10月9日、通知「国家最低賃金決定委員会2023年第2号」を発出
・日額1,000チャットの追加手当が規定され、日額合計5,800チャットに
■ 2024年の改定
・財務・歳入省が公務員等への特別手当増額(2024年8月開始)を2024年7月26日に発表
・2024年8月9日、通知「国家最低賃金決定委員会2024年第1号」が発出
・さらに日額1,000チャットの追加が加わり、日額合計6,800チャットに
■ 2025年の改定
・財務・歳⼊省が2025年9月30日付 Notification No.110/2025により、公務員等への追加手当増額を決定
・2025年10月14日付で通知「国家最低賃金決定委員会2025年第1号」が発出
・さらに日額1,000チャットの追加が加わり、日額合計7,800チャットに
以上のとおり、公務員等に対する手当増額通知は、民間部門の最低賃金引き上げの前触れとなっていることが確認できます。
企業としての今後の対応
公務員等に関する追加手当は、財務・歳入省が通知を発行し、公務員等を対象としています。
他方、民間企業の最低賃金・手当の基準は、国家最低賃金決定委員会(National Committee for Setting the Minimum Wage)の通知によってのみ定められます。
したがって、公務員等の手当増額通知が発出された時点で、直ちに民間企業へ法的義務が生じるわけではありません。
しかし、これまでの3回の例を見る限り、公務員等の手当増額後に民間向け最低賃金改定が行われる可能性は非常に高いと考えられます。
そのため企業としては、公務員等に関する追加手当に関する通知の発出後、最低賃金引き上げを前提にした人件費シミュレーションや給与テーブルの見直し準備を早めに進めておくことが望まれます。
以 上
〈注記〉本資料に関し、以下の点ご了承ください。
・ 本資料は2025年12月14日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化、実務上の運用の変更に伴い、本資料は変更となる可能性がございます。
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