シンガポール法律コラム 第26回 シンガポールにおける M&Aについて
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シンガポール法律コラム
第26回 シンガポールにおける M&Aについて
2026年1月
One Asia Lawyers Group
日本法・シンガポール法(FPC)・イングランド&ウェールズ法弁護士
増田 浩之
1.シンガポールのサイバー法制の全体像
みなさん、こんにちは。今回と次回の2回にわたり、シンガポールのM&Aについて解説します。
シンガポールは、東南アジアの経済、金融の中心地として、多くの国際企業が地域統括拠点を置くなど、戦略的なハブとしての地位を確立しています。日本企業にとっても、現地企業とのM&Aを通じた進出や事業拡大のニーズは引き続き高く、アジアを中心とした事業展開にとって今後も重要なエリアの一つです。
本稿では、シンガポールにおけるM&Aの特徴について概説します。
2. シンガポールのM&Aの特徴とは?
(1) M&Aトレンド
傾向として、日本企業によるシンガポール企業のM&Aは、2020年前後のコロナ期間中の一次的な減少や年度によって多少のばらつきはあるものの、年間概ね40-50件程度の案件数で推移しており、シンガポールはASEANの中で最も多い国となっています
(注:https://www.recof.co.jp/crossborder/jp/market_information/)。
(2) M&Aの特徴
近年、シンガポールの企業においても経営者の高齢化が進んでおり、シンガポールにおけるM&Aの実務に日々携わっている感覚からすると、後継者不足に伴う事業承継型のM&Aも比較的多いように思われます。買収企業と被買収企業の事業ラインや商流が合致し、その企業が既に優良なサプライヤーや顧客を抱えているなどといった場合、事業承継先を探したいというシンガポール企業のニーズとシンガポールへの進出の足掛かりとしたい日本企業のニーズが一致し、M&Aの成約につながるというケースです。その他、シンガポールの新規分野や若手経営者と協業する形での投資的要素の強いケースも見られます。
(3) 外資規制の少なさ
シンガポールは、原則として外資に開放されており、外資規制がメディア関係などの一定の分野に限られているという点も特徴的であり、この点も、日本企業によって安心してM&Aという選択をとることの理由の一つといえるかと思います。
(4) 法的透明性・確実性
シンガポールは、法令、各省庁の指針やガイドラインなどについて、その全てが英語でWeb上からアクセス可能です。また、秘書役制度を中心として会社法上の組織関係書類等の維持管理やアップデートも確保されており、たとえば、ACRA(Accounting and Corporate Regulatory Authority)のBizfileや登録された関連書類をみれば、株主が誰か、取締役が誰か、いつ株式の移転があったかなどを公的な形で確認することができます。このような権利関係やそれにかかわる制度についての透明性と確実性が高いというところもシンガポールの特徴であり、M&Aを行う際のハードルを下げる要因の一つになっているといえるかと思います。
3. シンガポールにおけるM&Aの代表的な手法
シンガポールにおけるM&Aの手法は、株式譲渡による方法のほか、新規株式発行による方法、合併、事業譲渡なども手法としてはあり得ます。もっとも、マジョリティを取得の上で子会社化して運営していくケースを前提とすると、株式譲渡による方法が多く、一般的です。出資・投資的な要素の強い案件の場合は、これに加え、新規株式発行という手法がとられることもあります。
4. シンガポールにおけるM&Aに際して検討すべき事項(株式譲渡による方法を前提とする)
シンガポールにおいてM&Aを行うに際しては、主に以下の事項を検討します。
(1) 対象会社の選定・交渉、専門家の起用
(2) 基本合意書の作成・締結
(3) デューデリジェンスの実施
(4) 各契約書の作成・締結
(5) クロージング・取引実行
(6) PMI(買収後の統合作業)
以上の各ステップの概要と留意事項等については次回に詳細をご説明します。
※本稿は、シンガポールの週刊SingaLife(シンガライフ)において掲載中の「シンガポール法律コラム」のために著者が執筆した記事を、ニューズレターの形式にまとめたものとなります。

