フィリピン:実質的支配者開示規則の改正
フィリピンの実質的支配者開示規則の改正についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
実質的支配者開示規則の改正
2026年2月
One Asia Lawyers Philippines Team
日本法弁護士 難波 泰明
フィリピン弁護士 Razel Ann P. Esteban
I. 概要
2025年12月22日、フィリピン証券取引委員会(SEC)は、「改訂実質的所有者情報開示規則(Revised Beneficial Ownership Disclosure Rules)」(Securities and Exchange Commission Memorandum Circular No. 15, series of 2025)を発行しました。本改訂規則は、法人を違法目的に悪用することを防止し、透明性を強化するため、正確な実質的所有者情報の報告に関する包括的な規制枠組みを確立することを目的としています。
本ニューズレターでは改正点の概要をお知らせします。
II. 所有割合基準の引下げ
支配権を有するとされる所有権の割合に関して、改正後は、従来の25%から、対象法人に対する議決権の20%以上の保有に引き下げられました。
III. 適用範囲
従前、営利法人(Stock Corporations)及び非営利法人(Non-Stock Corporations)に限られていた対象の範囲が拡大され、パートナーシップや一人会社(One Person Corporation)、フィリピンにおいて事業を行うための許可を受けた外国法人(支店、駐在員事務所等)を含む、SECが管轄するすべての自然人及び法人が対象となりました。
IV. 対象事業者の義務
(1) 新規設立法人
改正規則により、新規に設立又はSEC登録をする際に、実質的所有者情報を提出しなければならず、当該情報が提出されない限り、設立証明書又は営業許可証が発行されないこととなりました。
(2) 既存法人
既存法人は、改訂規則施行後最初に提出する一般情報シート(GIS)において、実質的所有者情報を提出しなければなりません。
(3) 変更の報告義務
実質的所有者に変更があった場合は、7暦日以内にSECへ報告しなければならず、従前の30暦日から大きく短縮されました。
(4) 記録保存義務
今回から新たに、報告法人は、実質的所有者情報を保存し、解散又は事業終了後少なくとも5年間保管しなければならないこととされました。変更履歴も各変更日から5年間保存する必要があります。
(5) 株式譲渡の記録
また、改正規則により、株式の譲渡、売却又は移転は、当該日から30日以内に株主名簿へ記録しなければ効力を生じないこととされました。
V. 主要な禁止事項及び義務的開示
(1) 名義人の開示義務
名義人である取締役、株主又は発起人は、自らが名義人である旨、及び名義人を選任した者又は本人の身元をSECに開示しなければならないこととされました。
(2) 配当の支払制限
今回の改正により、株主名簿に記録された株主以外の自然人又は法人に対して配当を支払うことは禁止されることとなりました。
(3) 実質的所有者登録簿
今後、実質的所有者情報の開示はSECが設置する実質的所有者登録簿(Beneficial Ownership Registry)を通じて行うこととされました。ただし、施行初年度の既存法人についてはGISを通じた提出が認められます。
VI. 企業が取るべき対応
フィリピンにおいて営業許可を取得している、又は取得を予定している外国企業は、SEC通達第15号(2025年)に従い、実質的所有者の一覧及び必要情報をSECへ提出しなければなりません。また、当該情報を適切に記録・保存するとともに、変更が生じた場合は7暦日以内にSECへ報告する必要があります。

