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タイ:DBDによるノミニー対策強化

2026年04月13日(月)

「タイ:DBDによるノミニー対策強化」についてニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のPDFからもご覧いただけます。
タイ:DBDによるノミニー対策強化

DBDによるノミニー対策強化

2026年4月30日
One Asia Lawyersタイ事務所
藤原 正樹(弁護士・日本法)
マーシュ 美穂

近時、商務省事業開発局(以下「DBD」)は、タイ人株主が外国人投資家のために名義を貸すいわゆるノミニースキームへの対処を目的として、外国人事業法(以下「FBA」)の執行を一層強化しています。主な焦点は、タイ人株主による実質的な資金拠出の有無を確認することであり、各タイ人株主が実際に自己資金で出資金を払い込んでいるか、単なる名義人ではないかを検証することが求められています。

従来は、中央パートナーシップ・会社登記局命令第205/2555号(以下「旧命令」)に基づき、タイ人株主の財務能力を示す銀行残高証明書の提出のみが義務付けられていました。しかし、その確認は口座残高が出資額以上であるかどうかにとどまり、実際に払込が行われたかまでを検証する仕組みではなく、ノミニースキームの排除には不十分と評価されていました。

これを是正するため、DBDは実際の資金移動を検証可能とすることを目的に、2025年の命令第2/2568号(以下「命令第2/2568号」)及び、非公開会社に対しノミニースキームの不実施およびタイ人株主による真実の投資を証明させる2026年の命令第1/2569号(以下「命令第1/2569号」)をそれぞれ発出しました。本稿では、これらを総称して「本命令」といいます。

1. 本命令による主な新ルール

1.1 銀行取引明細書の提出義務

旧命令および命令第2/2568号は、次のいずれかに該当するパートナーシップまたは非公開会社に適用されます。

・外国人株主の持株比率が登録資本金の50%未満である場合
・外国人株主はいないが、外国人が署名権を有する取締役として就任している場合

旧命令下では、タイ人株主は新会社設立時に出資能力を証明するため、出資額以上の残高を示す残高証明書を銀行から取得・提出する必要がありました。

命令第2/2568号では、出資額の多寡を問わず、すべてのタイ人株主に対し、出資金払込日から遡って3か月分の「銀行取引明細書」の提出を義務付けています。DBDはこの取引明細書をもとに、タイ人株主の口座から対象会社(または取締役)へ出資額の振込が行われていることやその原資が外国人株主やその関係者から資金提供を受けたものではないかを確認します。この際、振込額や振込日と他の登記書類上の情報との整合性も確認の対象となり、これらの情報が一致しない場合は登記が拒絶される可能性があります。

このように命令第2/2568号により、確認対象が「支払能力」から「実際の出資の有無」へと変化し、ノミニースキームの利用が一層困難になるよう設計されています。

1.2 実質的な出資に関する宣誓書の提出義務

非公開会社において、タイ人署名権限者のみが登記されている状態で新たに外国人署名権限者を登記する場合、命令第1/2569号は、登記手続きを行う取締役(登記書類に署名する取締役)に対し、「実質的出資に関する宣誓書(Declaration of Genuine Investment)」の提出を義務付けています。この宣誓書では、自社の全てのタイ人株主が実際に自己資金で出資を行い、ノミニー株主ではないことを宣誓しなければなりません。

虚偽の宣誓を行った場合には、後述の通り当該宣誓書に署名した取締役(署名権限者)が責任を問われる可能性があります。

2. 企業への影響及び推奨される対応

本命令自体には直接の罰則規定は設けられていませんが、本命令で定められた銀行取引明細書や宣誓書を提出しない場合、新会社設立登記や外国人署名権限者の登記申請を行うことはできません。また、自社のタイ人株主がノミニーであることを認識しながら、ノミニー株主ではない旨を宣誓して宣誓書を提出する行為は、虚偽の宣誓と評価され得ます。この場合、刑法第137条(公務員への虚偽陳述)および第267条(虚偽の内容を公文書に記載させる行為)に抵触し、当該宣誓を行った取締役は、最長3年の禁錮または6万バーツ以下の罰金、あるいはその併科の対象となり得ます。

以上を踏まえると、新会社設立時には、タイ人株主による出資金の払込を新会社設立登記申請前までに完了しておくことが重要です。なお、設立時点で外国人署名権限者を登記しておけば宣誓書の提出は不要ですが、後に外国人署名権限者が退任し、取締役変更登記の結果タイ人署名権限者のみとなった状態で、別の外国人署名権限者を再度登記する場合には、改めて宣誓書の提出が必要となります。したがって、取締役変更を行う際にも登記の時期や人員構成を計画的に検討することが推奨されます。

3. まとめ

命令第2/2568号および命令第1/2569号は、タイの登記制度における透明性・信頼性を高める重要な規制強化であり、ノミニースキーム防止のための実質的支配者調査の厳格化を示すものとして、今後の登記実務における重要な転換点となります。
企業としては、出資金払込のタイミングや資金の流れ、裏付け資料の準備を十分に計画することで、登記申請の遅延や拒絶リスクを最小化することが期待されます。
加えて、外国人署名権限者の就任・退任を伴う取締役変更のタイミングによっては、宣誓書提出の負担が生じ得るため、役員構成の変更スケジュールについても、事前に慎重な検討を行うことが重要です。

本件に関してご質問や貴社のコンプライアンス対応についてのご相談がございましたら、One Asia Lawyers タイ事務所までお気軽にお問い合わせください。

以上

〈注記〉
本資料に関し、以下の点につきご了解ください。
・ 本資料は2026年4月30日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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