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タイ:30年以上の長期リース期間の取扱いについて

2026年05月15日(金)

「30年以上の長期リース期間の取扱いについて」ニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからもご覧いただけます。
30年以上の長期リース期間の取扱いについて

30年以上の長期リース期間の取扱いについて

2026年5月14日
One Asia Lawyersタイ事務所
藤原 正樹(弁護士・日本法)
マーシュ 美穂

タイ法上、不動産の賃貸借期間は最長30年と定められています。 このような制限がある中で、事業の安定性や長期的な計画の観点から、30年を超える利用を確保したいというニーズは従来より多く見られてきました。特に、タイにおいて土地の所有が制限されている外国投資家にとって、長期リースは事業基盤を築くうえで欠かせない仕組みです。
実務上は、あらかじめ更新に関する合意条項を設けたり、複数の賃貸借契約を事前に締結したりすることで、実質的に30年を超える期間の確保を図るケースも見受けられました。もっとも、2023年にタイ最高裁判所は、こうしたスキームについて、法令の趣旨に反し無効であるとの判断を示しました(以下「本判決」といいます)。本判決は、更新時に新たな交渉や契約締結を伴うことなく、30年を超えて契約関係を継続させる仕組みは法的効力を有しないことを明確にしたものです。

1. タイにおける基本的な制度

タイでは、外国人による不動産の取得や利用について、概ね次のような基本的ルールが設けられています。

・土地法上、原則として外国人による土地の所有は認められておらず、賃貸借による利用が一般的です。
・コンドミニアム法上、外国人によるコンドミニアムの所有割合は全ユニットの総床面積の49%までに制限されています。
・民商法上、不動産賃貸借の期間は最長30年とされており、これを超える契約は自動的に30年に短縮されます。 また更新は可能ですが、各更新も30年が上限と解されています。

2. 本判決のポイント

本件では、当初30年の賃貸借契約に加え、さらに2回の30年延長(合計90年)をあらかじめ約束する内容となっており、賃料も90年分が一括で支払われていました。
裁判所は、延長期間における条件の見直しが予定されていない点などを踏まえ、本件契約は実質的に「90年の一括契約」と同視し得るものであり、民商法上の30年制限を回避する目的があると判断しました。その結果、追加の延長に関する条項は無効とされ、当該条項に基づく法的な保護を受けることはできないと判断されました。
本判決により、事前に合意された更新条項や連続する契約によって、実質的に30年を超える期間を確保するスキームは、原則として認められないことが明確になりました。

3. 既存契約の見直しについて

本判決以前には、今回問題となったような更新条項を含む契約が広く利用されていました。そのため、現在ご利用中の賃貸借契約についても、同様の条項が含まれていないかご確認いただくことが重要です。
見直しの方向性としては、例えば主に、次のような対応が考えられます。
・更新について、自動更新ではなく更新時に賃借人が改めて判断できる更新条項を定める形とし、賃料等の条件については、その時点の状況を踏まえて改めて当事者間で協議することを前提とする。
・例えば、新たな期間の賃料について、現行賃料をベースとしつつ物価指数(CPI)などに連動した調整を行い、その更新時点で支払う形とする。

4. その他の選択肢

将来の条件交渉の見通しが立ちにくい場合、商業・工業用不動産賃貸借法(仏暦2542年(1999年))に基づき、大規模投資を行う外国人投資家は、適格事業に該当する場合に最長50年間の不動産賃貸借を土地事務所に登記することが可能です。その後、新たな書面による合意を締結し、土地事務所において改めて登記することにより、さらに最長50年の期間で更新することができます(当該スキームにおいても自動更新はできません)。
適格事業は、仏暦2542年(1999年)外国人事業法の下で外国人が合法的に営むことが認められている事業分野に属し、かつ、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
①投資額が少なくとも2,000万バーツの商業事業。
②投資奨励の対象となる工業事業。
③内務大臣および閣議の承認を受けた、タイの経済および社会にとって有益な商業または工業事業。
また、現在タイ政府は「リース資産権(Rights over Leasehold Assets)」の登記期間の上限を現行の最長30年から最長99年まで延長する法改正案を提案しています。将来的に当該改正が施行された場合には、民商法典上の不動産賃貸借に関する規定に抵触することなく、30年を超える期間でのリース資産権の設定・登記が可能となる見込みです。
リース資産権とは、リース資産権法(仏暦2562年(2019年))に基づき、不動産の利用を目的として設定される権利です。所管の土地事務所において登記しなければならず、所管官庁はこれに応じてリース資産権証書を発行します。
リース資産権は譲渡が可能であり、民商法典に基づく担保として供することもできるほか、相続の対象ともなります。このような性質から、通常の賃貸借と比較して、権利の流動性および法的安定性の点で優れており、長期的な投資や資金調達の手段としても活用が期待されるため、今後の動向が注目されます。

 5. まとめ

本判決は、30年を超える長期リースの設計に大きな影響を及ぼすものとなり、30年という法定上限を超える延長については、本判決に従い、賃料その他の条件に関する新たな交渉および契約締結が必要となります。
もっとも、自動更新ではなく、更新時に賃借人が改めて判断できる更新条項を定めたリース契約や商業・工業用不動産賃貸借法に基づく最長50年の長期リースを活用することにより、引き続き長期的な事業基盤を確保することは十分に可能です。
個別の契約内容や事業スキームに応じた検討が必要となりますので、早めに内容をご確認のうえ、見直しをご検討いただくことをおすすめいたします。

本件に関してご質問やご相談がございましたら、One Asia Lawyers タイ事務所までお気軽にお問い合わせください。

以上

〈注記〉
本資料に関し、以下の点につきご了解ください。
・ 本資料は2026年5月14日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。

One Asia Lawyersタイ事務所では、常駐日本人専門家3名を含む合計20名の体制で、お客様のニーズに対応しております。 コーポレート、労務、倒産、訴訟等の幅広い分野について、タイの法制度や商慣習に精通した実務家が、現地に根ざしたリーガルサービスを提供しています。

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