タイにおける電子システムを利用した会議に関する勅令について

2020年04月20日(月)

タイにおける電子システムを利用した会議について報告いたします。

電子システムを利用した会議について

 

タイにおける電子システムを利用した会議に関する勅令

2020 年4⽉ 20 ⽇
One Asia Lawyers タイ事務所

 数多くの民間企業がCOVID-19の感染拡大により、民間企業の株主や取締役が来タイすることが困難である状況を踏まえ、2020年4月19日「電子システムを利用した会議に関する勅令」が官報に公示されております。同日施行となっておりますので、以下の通り、解説致します。

1 既存の規制について

 従来、2016年9月23日に発行された告示において、これらの会議は、①少なくとも定足数の3分の1の人数が同一開催場所に置いて物理的に出席していること、②すべての出席者がタイ国内にいること、③情報技術省が定める基準に従った電子システムによる会議の実施が必要である、と定められておりました。

 特に、②のタイ国外にいる株主の代表者や取締役が電話やテレビ会議により株主総会や取締役会に出席できないため、電話やテレビ会議を活用できる範囲は極めて限定的な状態でありました。COVID-19の感染拡大により、弊所としても、来タイすることが困難な民間企業の取締役の方等から数多く相談を受けておりました。

 この点、株主総会については、委任状を活用することにより来タイを回避することができる状況にありましたが、他方、取締役会につきましては、委任状による代理人の出席が認められておりません。株主総会と異なり、取締役の代理人出席が認められない趣旨は、株主とは異なり、取締役はその専門性に基づいて事業運営や経営を委ねられる経営の専門家であり、重要な経営判断を下す場である取締役会への出席を他者に任せることは株主の期待に反するためです。

 そのため、取締役会の実施について、弊所としても色々な方策を検討し、当局に対して提案の準備をしておりましたが、今回の勅令の発行により、そのような取締役会の実施を巡る問題は解決したと評価できます。次に、その内容について整理致します。

2 勅令の内容について

 まず、結論として、今回の勅令の施行により、上記で述べた、①少なくとも定足数の3分の1の人数が同一開催場所に置いて物理的に出席していること、②すべての出席者がタイ国内にいること、という要件が廃止となりました。これは、タイ実務において画期的な規制緩和であると評価できます。

 但し、上記で述べた③情報技術省が定める基準に従った電子システムによる会議の実施や取締役会における資料、ログ、映像や音声等の保管義務が明確に定められており、取締役会の実施においては留意が必要です。

 さらに、同勅令の備考欄において、次の通り、勅令発行の背景と趣旨が明示されております。整理すると、①COVID-19の感染防止とタイ経済の安定のため、②現代の働き方に対する対応とテクノロジーの進化に対する対応の2点に整理ができます。①ついては、現状のCOVID-19の状況に配慮した適切な規制緩和だと評価できます。また、②については、タイ周辺国においても、株主総会又は取締役会における電話会議やテレビ会議等の実施を規制する国は限定されており(例えば、カンボジア、ラオス、ミャンマー島においても定款等で定めれば可能となっています)、今回の改正によるデジタル化の進展については、タイ政府が促進するタイランド4.0企業の誘致にも資することになり、タイの競争力を維持するためにも非常に重要な改正であったと理解できます。

<勅令備考欄の内容>

・2014年6月27日に国会平和秩序評議会が発行した告示第74/2557号「電子システムによる会議の開催」では、定足数の1/3は同一場所での参加が義務付けられていた。これは、昨今のCovid-19感染拡大の中、ソーシャルディスタンスを保てず、感染のリスクを高める。

・同告示では、会議参加者全員がタイ国内からの参加が義務付けられていたが、公的機関と民間企業どちらにとっても現代の働き方にそぐわず、また、テクノロジーにも進化していることから、経営効率や持続性に影響すると判断した。

・定時株主総会を延期とし、開催予定日が見込めない会社が多く、民間企業では特に大きな影響を受けている。経済の鈍化に対応するべく早急な変化が求められる。

・タイ経済の安定性に大きく影響するため早急に本勅令の発行が必要であると判断した。