タイにおける債権回収と倒産対応の実務(第2回)について

2020年09月22日(火)

タイにおける債権回収と倒産の対応の実務(第2回)について報告いたします。

債権回収と倒産対応の実務(第2回)について

 

タイにおける債権回収と倒産対応の実務

2020年9月1日

One Asia Lawyersタイ事務所

 

第2回 債権回収に向けた初動対応のポイント

前回の寄稿から1か月が経過し、引き続き、規模の大小を問わず、債権回収の問題が多く生じている。今回は、債権回収における初動対応のポイントについて解説する。前回述べた通り、債権回収のポイントは、①契約内容、②証拠の有無、③資産の有無になる。それを踏まえて、まずは自社の法的地位(リーガルポジション、契約や証拠等を踏まえて有利な状況のか、不利な状況なのか)を確認した上で、目的と目標を明確に設定し、実際の行動に移していく必要がある。

ご相談に来られる方からは、事件について口頭で説明を受けた上で「これって回収できますか?」というような相談を受けるが、まずは状況の把握(事件の背景、契約状況、証拠状況や相手方の資産状況等)と争点整理を十分にできなければ、なかなか的確な助言提供が困難なことが多い。可能であれば、事件について時系列を整理した資料、契約書や証拠等を相談の際には、提供頂いたほうが効果的な助言提供が可能である。よく証拠をみてみると、Purchase Orderに相手方の署名がなかったり、別途メール等にて新たな合意をしていたりといったようなケースが散見される(私達も後からそのような事実がわかると、再検討が必要となるため、しっかりと社内資料確認とご準備をお願いしたい。)。

また、弁護士事務所から日本でいうところの内容証明を指定の内容で発送して欲しいという依頼をときにうける(タイにも、日本と類似する内容証明郵便制度が存在している)が、日本と同様に、タイにも弁護士協会が存在しており、契約や証拠等の事実を確認しないまま内容証明の発送はできないので、そのあたりはご理解を頂きたい。事実確認等を十分にしないまま弁護士名でレターを出したケースで、弁護士協会から懲戒を受けるようなケースもある。

自社の法的地位がある程度確定すれば、有利な場合は、裁判や仲裁を提起することを交渉ツールにしながら、まずは交渉を実行していくことになる。基本的に当事者間での交渉が望ましいが、それが困難な場合には弁護士同席又は相手方弁護士と協議を行うのも一案である。その長所と短所は次の通りである。

 

当事者による交渉

弁護士による交渉

利点

一定の関係性を基礎とした比較的柔軟な交渉や解決が可能

専門家間による論理的かつ合理的な交渉が可能

短所

法的地位が低い場合は、交渉が一方的に不利なかたちで進む可能性がある。

また、感情が先行し、論理的、合理的な交渉とならない場合もある。

相手方の警戒心が生じてしまい和解可能性が低減する場合もある。

また、専門家への依頼に際して経済的なコストが生じる。

 

当事者間や弁護士での交渉でも解決しない場合は、訴訟や仲裁の提起となるが、訴訟提起の決断に際しては、相手方の資力や資産が問題になる(加えて、弁護士費用も考慮する必要がある。あまりに訴額が低いと経済合理性がない場合があるので、留意が必要である。)。

この点、資産調査に関する相談も多いが、現状はDBD DateWarehouse+ (https://datawarehouse.dbd.go.th/login/en)にて、相手方の代表者、取締役等の基本的な情報と過去3年分の財務諸表が取得可能となっており、まずはその財務諸表から相手方の財務状況や資産状況を確認するのも一案である。不動産や登記が可能な動産については、相手方の委任状や登記番号等がなければ、情報を得ることが困難な状態であり、また、銀行口座情報については、日本のような弁護士会照会制度のようなものはタイにはなく、裁判所の判決(債務名義)を取った上で、裁判所による命令によって、不動産等の登記情報や銀行口座の開示が認められるまで待たなければならない状態である。なお、タイ国内には資産調査会社も存在しており、そのような会社を起用するにも一案である。

以上の通り、債権回収に向けては、契約、証拠、資産を踏まえた、リーガルポジションの確認や特定が重要であり、全てのアクションの根幹となる。債権回収に際しては、この手間を省かずに慎重に検討することが肝要である。

以 上

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