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大統領規則第49号2021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正について

2021年09月09日(木)

大統領規則第49号2021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

大統領規則第49号2021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正

 

大統領規則第492021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正

2021年9月
One Asia Lawyers; Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
インドネシア法弁護士 Prisilia Sitompul

 

1.はじめ

 インドネシアにおいては昨年制定された雇用創出に関する2020年法律第11号(以下「オムニバス法」)に関連して、投資事業分野に関する大統領規則2021年第10号(以下「PR10/2021」)が2021年2月2日付で公布、施行されました。

 さらに、2021年5月25日にこのPR10/2021を改訂する形で「投資事業分野に関する大統領規則2021年第10号の規則の改正に関する大統領規則2021年第49号」(以下、「PR49/2021」)が公布、施行されました。これに伴って同規則に添付されている投資リストが更新されております。

 PR49/2021は、PR10/2021によって開放されたように見えたアルコール飲料事業への民間投資について、イスラム宗教団体からの意見を踏まえて再度禁止にする一方で、PR10/2021で緩和されたその他の外資規制を再度変更する等の変更を含んでいる点で注意が必要となります。

 その他、商品に関わる電子商取引について協同組合や零細・中小企業(MSME)に割当てる旨規定する等、多数の分野について外資規制を定めております。

2. 投資が閉鎖された事業部門に関する変更

 アルコールを含む酒類の製造については、オムニバス法制定前の外資規制をきていしていた大統領規則2016年44号において投資禁止分野とされておりました。これに対して、PR10/2021は酒類製造が投資禁止である旨を明記しておらず、その結果酒類の製造が解禁されたと解釈されておりました。

 しかしながら、PR49/2021はアルコール飲料製造に関連する3つの事業分野を投資禁止事業分野に追加しております。

 これにより、改正後に設定された閉鎖された事業分野は以下となりました。

(i) 麻薬
(ii) 賭博および/またはカジノ
(iii) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)に記載されている魚類の採取
(iv) サンゴの利用または採取<
(v) 化学兵器
(vi) オゾン層を破壊する可能性のある化学物質
(vii) アルコール飲料製造(KBLI 11010)、アルコール-ワインを含む飲料の製造(KBLI 11020)、アルコール-モルトを含む飲料の製造(KBLI 11031)

3.投資が開放された事業分野に関する変更

 PR49/2021は、上記投資禁止分野について定めると同時に、下記のような条件付で投資が開放された分野についても変更が規定されております。

(1) 優先事業分野

 PR10/2021では245分野が優先事業分野とされていましたが、PR49/2021では246分野が優先とされ、以下のような優遇を受けることができるとされております。

(i)財政的インセンティブ(例:税控除、タックス・ホリデー、投資手当、輸入関税の免除)
(ii)非財政的インセンティブ(例:ビジネスライセンス、移民、雇用問題の緩和)

(2)協同組合およびMSMEへの割り当て、または義務的なパートナーシップ

    パートナーシップが必須な事業分野の合計は、PR 10/2021では89分野でしたが、PR49/2021においては106分野(181KBLIコード)となっています。協同組合や中小企業のために留保された分野を従来の51分野から60分野に、中小企業とのパートナーシップを必須とする事業分野を38分野から46分野に拡大された点に注意が必要です。 

 また、PR 10/2021においては100%外資での投資が可能とされていた下記商品の電子商取引がPR49/2021では中小企業に留保された事業となる旨が規定されております。これにより、下記の事業分野は、外国企業による投資が禁止されることになります。

i)食品・飲料、タバコ、化学薬品、薬局、化粧品、実験装置(KBLI 47911)
ii)繊維、衣類、履物、個人用機器(KBLI 47912)
iii)家庭用・台所用品(KBLI 47913)

(3) 条件付事業分野(株式所有制限)

 PR49/2021における条件付事業分野の合計は、37分野(41のKBLIコード)となっております。

 運搬・郵便事業の分野では、PR10/2021では無条件での投資が解禁されていた運搬事業(KBLI 53201)について、PR49/2021では外国人の最大所有率を49%とすることが規定されております。ただし、郵便事業(KBLI 53100)はPR 49/2021から除外されており、外国企業による100%までの投資が開放されております(以前は、所有率が最大49%に制限されていました)。

(4) 条件付事業分野(その他の制限)

 PR 49/2021においては、条件付事業分野において事業者が満たすべき要件として、PR 10/2021で定められていた上記株式所得制限や特別なライセンス等に加えて、新たに、「アルコール飲料の管理・監督の分野における制限、厳格な監督、他の法令による規制」を規定致しました(PR 49/2021第1条による改定後のPR10/2021第6条1項d、同条3a項)。具体的には、アルコール飲料卸売業(KBLI 46333)、アルコール飲料小売業(47221)、およびアルコール飲料小規模(Kaki Lima)小売業(KBLI 47826)がこれに該当します。
 これらの事業分野については、制限、厳格な監督及び個別法による規制の対象となることになります。

4.PR49/2021に基づく適用除外

 大統領規則2016年44号及びPR10/2021と同様に、PR49/2021も、本規則制定前に承認を受けている事業者への適用はない旨が規定されております(PR49/2021第Ⅱ条)。

5.結論

 上記のように、PR49/2021では、上記外資規制の対象となる4種すべての事業分野において修正がなされております。今回の改正では、特定の事業分野が新たに優先事業分野に追加されたほか、事業分野の中には、これまで別表3の条件付投資分野に記載されていたものが、別表2のMSMEに留保された分野またはMSMEとのパートナーシップが必須の事業分野に変更されたものもあります。他方、新たに別表から削除された事業分野もあるところ、今後の投資を検討するにあたり、非常に重要な変更を多数含んでおりますので注意が必要となります。