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タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について

2021年09月30日(木)

タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について報告いたします。

中小企業に対する与信期間の設定について

 

 

 

       タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について
                               2021 年 9 月 30 日
                          One Asia Lawyers タイ事務所
1 はじめに
2021 年 5 月 24 日、取引競争委員会より「中小企業が商品販売者またはサービス提供者
である場合の与信期間に関するガイドライン(以下、「本ガイドライン」)」が発布さ
れました。本ガイドラインは、取引競争法第 57 条の下位規範として、中小企業が取引
先に提示される不当な与信期間により被り得る不利益を回避し中小企業を保護すること
を目的に制定され、中小企業と取引を行う全ての事業者に対し、施行開始日である
2021 年 12 月 16 日により適用されます。
2 中小企業とは
本ガイドラインで保護される中小企業は以下の通りとなっています(本ガイドライン第
2 条)。
(1) 200 人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が 5 億バーツ以下の製造者
(2) 100 人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が 3 億バーツ以下のサービス提供者、
卸売業者、または小売業者
なお、中小企業は取引先に対し、本ガイドラインが定める中小企業に該当することを従
業員数または売上高を証明する書類の提示を以て、証明する必要があります(本ガイド
ライン第 4 条 2 項)。中小企業と取引を行う企業は定期的(契約締結時または更新時な
ど)に当該書類の提出を求め、本ガイドラインが定める中小企業に該当しているかを確
認することが好ましいと考えます。
3 本ガイドラインが定める与信期間
中小企業が一般的な商品販売者、商品製造者、サービス提供者である場合、与信期間を
45 日またはそれ以下に設定しなければなりません。ただし、中小企業が農産物または
農産物の加工品(製造工程が複雑でないもの)だけを取り扱う商品販売者、商品製造者、
サービス提供者である場合、与信期間を 30 日以下に設定する必要があります(本ガイ
ドライン第 4 条(1))。
つまり、既に上記より長い与信期間での合意がなされている場合でも、原則として本ガ
イドラインの施行開始日前までに改定する必要があります。
なお、ビジネス、マーケティング、または経済的な観点から合理的であるとみなされる
場合は、上記の与信期間より長く設定することも可能であると規定されています(本ガ
イドライン第 4 条 2 項)が、例外として認定されるかはケースバイケースで担当官の判
断に委ねられると考えます。取引競争委員会に照会したところ、取引先の親会社の規定
で与信期間を 60 日に設定しなければならない場合でも、例外としては認められないと
の回答を得ています。
4 与信期間の起算日
上述した与信期間の起算日は、中小企業が商品を納品またはサービスを提供し、かつ納
品書や請求書等の必要書類を提出した日となります。商品の納品後、請求書が後日発行
されるような場合は、請求書の発行日が起算日となります。また、委託販売の場合は中
小企業による商品販売日が起算日となります(本ガイドライン第 4 条(2))。
5 違反とみなされ得る行為及び罰則
本ガイドライン第 5 条において、違反とみなされうる行為として以下の行為が挙げられ
ています。
• 商品またはサービスの代金支払時期が、正当な理由なく、本ガイドラインで
定めた与信期間より遅れること。
• 正当な理由や 60 日以上前の事前通知なく、契約で定めた与信期間または支
払条件を変更すること。
• その他の不当行為。例えば、契約上で与信に関する特別条項を規定し、中小
企業に不要な負担を強いること。
本ガイドラインの違反者は、違反を犯した年の売上高の 10%を超えない額の罰金を科
される恐れがあります(取引競争法第 82 条)。 

                                    以上 

〈注記〉
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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)