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日本からベトナムへの越境EC法制③

2021年11月12日(金)

日本からベトナムへの越境EC法制③についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

日本からベトナムへの越境EC法制③

 

<日本からベトナムへの越境EC法制③>

 

2021年11月12日

One Asia Lawyersベトナム事務所

 

前々号前号に引き続き、以下において日本からベトナムへの越境EC法制についてご紹介いたします。

 

目次

1 ベトナムにおける越境ECの法的位置づけ

2 ECPFサービスに関する投資条件

(以上、前々号にて記載)

 

3 商工省への登録

4 プラットフォームに関するその他の条件

(以上、前号にて記載)

 

5 日本の販売者に課せられる条件と商品損害賠償責任

6 代金の支払い方法

7 E-ロジスティック輸入税

(以上、本号)

 

5 日本の販売者に課せられる条件と商品損害賠償責任

(1)日本の販売者がベトナムで輸入活動を行う際の条件

日本の販売者が輸入商品を直接販売できるのは、ベトナムにおいて事業者登録をしているか、商品の販売権を持っているベトナムの業者に対してのみです。なお、ベトナムに拠点を持たない日本の販売者は、ベトナムで商品を販売するネットワークの組織、参加が認められません(ベトナムに拠点を持たない外国企業の輸出入権登録に関するCircular No.28/2012/TT-BCT(以下「通達28号」という)第3条)。

上記通達28号には、ECPFを通じてベトナムの購入者に対して直接販売できるのかということに関して、規定がありません。しかし、税務管理法上、EC取引を実施する日本の販売者がベトナムでの納税者登録、税申告、および納税をすることについて規定があることから、日本の販売者の輸入権は否定されておらず、そのような販売ができる可能性がないわけではないと考えられます(2019年税務管理法第42条4項および同法の細則にあたるCircular No.06/2021/TT BTC(以下「通達6号」といいます)第3条4項)。この点は、今後制定される新たな法令等で明確化されることが期待されます。

(2)日本の販売者の製造物責任

ベトナムの既存のECPF上で取引を行う国内販売者は、消費者保護法と、ベトナムで製造された製品または国内販売者が海外から輸入した製品の品質基準(もしあれば)を遵守しなければなりません。

同様の義務が日本の販売者適用されることが明示された法令は見当たらないものの、基本的な原則として、日本の販売者がベトナム市場に参入する場合、国内販売者と同様、ベトナムの法令を遵守する必要があると解されます。そのため、想定外の責任を負うことのないように、日本の販売者とベトナムの購入者との間での責任(偽物、侵害品、不適格品の管理規定など)について明確に規定することが推奨されます。なお、当該責任に関して、ベトナムの当局が、ベトナムに拠点・施設を保有していない日本の販売者に対して行政処分を適用することは実務上、困難であると考えられます。

6 代金の支払い方法

ECPFを通じて商品を購入した場合の代金支払い方法について、電子決済の普及も進んではいるものの、ベトナムでは、未だに代金引換払いが一般的な決済方法です。

現在までのところ、配送時の代金引換払いサービスの提供に関して法律上の規定はありません。実際に、すべての電子物流会社が電子商取引分野と不可分のサービスとして、代金引換払いサービスを提供しています。そのため代金引換払いの手続・責任について、電子物流会社とECPFサービス事業者との間の契約で十分に規定しておく必要があります。特に、手数料を差し引いた残りの代金について、外国為替管理法(2005年外国為替管理規則)を厳密に遵守しなければならないため、日本の販売者に海外送金されなければならないこととなります。現行の外国為替管理規則の要件では、関係者が各注文に関する所定の書類を提供する必要があるとされているところ、ECPFサービスにおいては、取引が電磁的記録によって実施されることから、このような書類を提出するのが困難である場合がほとんどであると解されます。そのため、実務上は、海外送金を実施するために、各商業銀行と上記書類の提供について協議し、個別に解決を図る必要があると考えられます。この問題についても、新たな法令によって解決されることが期待されます。

7 E-ロジスティック輸入税

(1)E-ロジスティック

日本の販売者がベトナムの購入者へ商品を配送する場合には、国際郵便を通じて実施される必要があり、輸入手続についても、この国際郵便サービスを提供する事業者が実施することとなります(郵便法第15条)。

また、ベトナムでは、ECPFを通じて購入された商品を配送するサービスは、E-ロジスティックサービスと分類されます。日本の販売者は、E-ロジスティックサービスを実施可能であり、かつ上記国際郵便サービスの提供が認められている事業者を通じて、ベトナムの購入者に対してECPFを通じて販売した商品を配送することとなります。

(2)輸入

越境ECPFを通じて売買された商品をベトナムに輸入する際に必要となる税関申告は、国際郵便サービス(速達便)事業者によって実施されます(2010年郵便法第15条ならびに税関手続、審査、管理・監督手続に関する関税法の細則にあたるDecree No.08/2015/ND-CP(以下「政令8号」といいます)第5条6項、および第6条1項)。

速達便で送られた輸入品または輸出品で、価格が1,000,000VND以下、または税金の総額(規定)が100,000VND以下のものについて、関税が免除されます(輸送物品および車両の収集、移動、管理、使用に関する関税料金を規定するCircular No.14/2021/TT-BTC(以下「通達14号」といいます)第3条2項)。このような商品の国際郵便サービス(速達便)便業者の税関申告は、通常の貿易商品と同様に原本書類が必要であり、電磁的記録でやりとりがなされる電子商取引の性質に合わず、手続も複雑であるため、税関当局と販売者双方にとって長い時間とコストがかかるものとなっています。

なお、本ニュースレター(日本からベトナムへの越境EC法制)において既に述べたとおり、ベトナム政府は既存の問題を是正し、電子商取引の発展を促進するため、越境ECに関する税関手続、税関評価、必要なライセンスとその条件(その例外)、および検査(検査の免除)を実施する際の政策について、準備を進めています。

(3)日本の販売者に課せられる税金

(i)付加価値税(VAT)・輸入税

日本の販売者がベトナムの購入者に製品を販売する場合、購入価額に対して10%の付加価値税(VAT、日本でいうところの消費税)を加える必要があり、日本の販売者は、直接またはその代理人によってベトナムでの納税者登録の申請、申告、納税を行う必要があります(2019年税務管理法第42条4項および通達6号第3条4項)。

本章(1)E-ロジスティックにおいて記載したとおり、日本の販売者は、国際郵便サービス事業者に税関申告を代行してもらい、VAT及び以下の輸入税の登録、申告、納税を行うこととなります。

なお、輸入手続が不要である、オンラインでのサービス提供については、日本の販売者が登録・申告・納税を行っていない場合、商業銀行および決済サービスプロバイダーは、日本の販売者に代わってベトナムの個人が電子商取引で支払った各商品・サービスについて、税金を控除・納税する必要があります(税務管理法の精緻化に関する2020年10月19日付政令第126/2020/ND-CP号第30条3項)。

(ii)法人税(CIT)

日本の販売者は、ベトナムに輸入される商品の法人税を負担しなければなりません(2008年企業所得税法第2条d)。税率は、各越境取引の収益に対して1%となります(ベトナムで事業を行う、またはベトナムで収入を得る外国企業の納税義務の履行に関するCircular No. 103/2014/TT-BTC(以下「通達103号」という)第13条2項a)。

ベトナムの購入者は、日本の販売者に支払う前に、当該販売者に代わって法人税を申告・提出することが義務付けられています(通達103号第4条2項)。

しかし、ベトナムの購入者は、企業や個人事業主ではなく国内の消費者であり、法人税の申告・提出を実施することは困難です。そこで、日本の販売者の法人税を管理するために、日本の販売者が登録、申告、納税をしていない場合、商業銀行および決済サービスプロバイダーは、日本の販売者に代わって、ベトナム国内の個人が電子商取引を通じて支払う各製品およびサービスに対して、税金を控除し、納税しなければなりません(政令126号30条3項)。

 

現時点におけるベトナムの越境EC法制については、不明な点や実務上対応が困難なものが多い状況にあります。今後制定される法令によって、越境EC法制について明確化されることが切に期待されます。なお、現在進められている新たな政令の情報についても、適宜ニュースレターにおいて紹介させていただく予定です。

                                          以上

本記事に関するご照会は以下までお願い致します。

ryo.matsutani@oneasia.legal