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シンガポールにおけるファミリーオフィスについての概観について

2021年12月20日(月)

シンガポールにおけるファミリーオフィスについての概観についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

シンガポール:ファミリーオフィスについての概観

 

シンガポール:ファミリーオフィスについての概観

2021年12月
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎

 欧米を中心に設立されている、資産の管理、運用をはじめ、一族のために数々のサービスを提供する会社である「ファミリーオフィス(“Family Office”)」ですが、近年シンガポールでの設立件数が増加しています。

 本稿では、ファミリーオフィスについての概観と、シンガポールでのファミリーオフィス設立などについて解説致します。

1.ファミリーオフィスについての概観

 ファミリーオフィスとは、一般に資産家資産の管理、運用をはじめ、一族のために数々のサービスを提供する会社であり、シンガポール金融管理局

(“Monetary Authority of Singapore”, 以下「MAS」)はファミリーオフィスの1つ、シングルファミリーオフィス(以下「SFO」)の定義を「単一の家族のために、またはその家族に代わって資産を運用する機関であり、その運営または持分の管理がその家族の一員によってなされているもの[1]」としています。SFOの他、一般的にはより小規模な複数の家族の資産を管理する会社である、マルチファミリーオフィス等の形態がありますが、以下本稿では主にSFOについて解説致します。

 ファミリーオフィスによって資産を管理することは、家族のために安全に資産の管理運用を行い、自身のみならず子孫へ安定的に財産を残す一助となります。また、一部の国では税制上の優遇措置を受けることもでき、税金対策の最適化の手段としても選ばれます。

世界的に例をみると、アメリカ合衆国ワシントン州にビル・ゲイツ氏によって設立された”Cascade Investment”社や、Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾス氏によって設立された、ベンチャー企業に多く投資していることで知られる”Bezos Expeditions”等が存在し、ファミリーオフィスとして資産の運用を行っています。

2.シンガポールにおけるファミリーオフィス

 近年、シンガポールでは、ファミリーオフィスの設立が増加[2]しており、2020年だけで400[3]ものファミリーオフィスが設立されでいます。その理由としては、シンガポール自体の政治的、経済的安全性はもちろんのこと、MASとシンガポール経済開発庁(“Singapore Economic Development Board”, 以下「EDB」)が共同で設立した、国際的な資産管理やファミリーオフィスのハブとしてのシンガポールの競争力を強化するためのファミリーオフィス開発チーム(“Family Office Development Team”, 以下「FODT」)の存在や、税制上の優遇措置があります。

  シンガポールでは、時計の卸売等を行うRubina Watch Companyの取締役会長Victor Sassoon氏が設立した”Sassoon Investment Corporation”[4]や、デジタル検索、及び不動産開発を手掛けるGlobal Yellow Pages Ltd.の執行役員兼最高経営責任者であるStanley Tan氏が設立した”Rumah Group”[5]等が存在し、その資産管理や投資活動を行っています。

(1) SFO設立にかかるライセンス取得義務

 シンガポールにおいては、Securities and Futures Act[6](以下「SFA」)と、Financial Advisers Act[7](以下「FAA」)のもとで、単一の家族のために、家族の一員が資産を運用する機関であるSFOを設立することができます。

 具体的には、SFAとの関係では”Fund Management”[8]に該当する可能性があり、Capital Markets Services Licenseの取得[9]、あるいは同ライセンス取得免除[10][11]の適用を受けることが求められる可能性があります。

 また、FAAとの関係では”Financial Adviser”[12]に該当する可能性があり、”Financial Adviser’s License”[13]の取得が求められますが、関連会社にのみアドバイスを行う場合は同ライセンスの取得が免除[14]されるため、SFOの場合免除される可能性[15]があります。

(2)SFOに関する税制

 シンガポールでSFOを設立するメリットのひとつに免税制度があり、主に以下の3つのスキームがあります。

①13CA (Offshore Fund Scheme)
②13R(Resident Fund Scheme)
③13X(Enhanced Fund Scheme)

それぞれ適用対象や免税対象外等が異なりますので、以下それぞれを簡単に整理します。

① 13CA (Offshore Fund Scheme)
根拠法     :Income Tax Act(以下「ITA」) 13CA条[16]
対象         :シンガポール国外居住者で、ファンド形態が企業、信託会社、個人
免税対象:指定投資からの特定の収益(“Specified income from the Designated investments”)[17]
所得税申告:不要
VCC[18]採用:不可
シンガポール国外に居住する家族でも利用可能なスキームですが、形態の制限やVCC利用ができないなど、制約も多いものとなっています。

② 13R(Resident Fund Scheme)
根拠法     :ITA 13R条[19]
対象         :シンガポール国内の課税対象居住者で、ファンド形態が(国内の)企業
免税対象:指定投資からの特定の収益(“Specified income from the Designated investments”)17
所得税申告:必要
事業費用:毎年S$200,000以上
VCC採用:可
シンガポール国内に居住する家族であることが条件となりますが、13CAスキームよりも自由度の高いものとなっています。

③ 13X(Enhanced Fund Scheme)
根拠法     :ITA 3X条[20]
対象         :居住地、形態を問わない
免税対象:指定投資からの特定の収益(“Specified income from the Designated investments”)17
所得税申告:必要
VCC採用:可
事業費用:毎年S$200,000以上
資金要件:申請時にS$50,000,000
居住地の要件はなく、汎用性も高いスキームですが、資金要件等、全体的にハードルが高いものとなっています。

以上

 

[1] “an entity which manages assets for or on behalf of only one family and is wholly owned or controlled by members of the same family” (Q18) (https://www.mas.gov.sg/-/media/MAS/Regulations-and-Financial-Stability/Regulations-Guidance-and-Licensing/Securities-Futures-and-Fund-Management/Regulations-Guidance-and-Licensing/FAQs/SFA–FAQs-on-the-Licensing-and-Registration-of-Fund-Management-Companies—6-Apr-2020.pdf )

[2] https://www.mas.gov.sg/development/wealth-management

[3] https://www.edb.gov.sg/en/our-industries/family-office.html

[4] https://www.sasscorp.com.sg/

[5] https://www.rumahgroup.com/

[6] https://sso.agc.gov.sg/Act/SFA2001

[7] https://sso.agc.gov.sg/Act/FAA2001

[8] SFA 2条1項、及びSFA, Second Schedule, PartⅡ(“Fund management”) (https://sso.agc.gov.sg/Act/SFA2001?Timeline=Off&ProvIds=Sc2-#Sc2-)

[9] SFA 82条 (https://sso.agc.gov.sg/Act/SFA2001?ProvIds=P1IV-#pr82-)

[10] Securities and Futures (Licensing and Conduct of Business) Regulations, SECOND SCHEDULE (EXEMPTIONS FROM SECTIONS 82(1) AND 99B(1) OF ACT) (https://sso.agc.gov.sg/SL/SFA2001-RG10?ProvIds=Sc2-#Sc2-) 5(1)(b)

[11] FAA 99条(1)(h) (https://sso.agc.gov.sg/Act/SFA2001?ProvIds=P1IV-#pr99-)

[12] FAA 2条1項 (https://sso.agc.gov.sg/Act/FAA2001#Sc2-)

[13] FAA6条1項 (https://sso.agc.gov.sg/Act/FAA2001?ProvIds=P1II-#pr6-)

[14] Financial Advisers Regulations 27(1)(b) (https://sso.agc.gov.sg/SL/FAA2001-RG2?ProvIds=P1VI-#pr27-)

[15] Q16 “An SFO that provides financial advisory services to its related corporations may rely on an existing exemption from licensing under regulation 27(1)(b) of the Financial Advisers Regulations.”(https://www.mas.gov.sg/-/media/MAS/Regulations-and-Financial-Stability/Regulations-Guidance-and-Licensing/Securities-Futures-and-Fund-Management/IID-FAQs/FAQsFMCLicensingAndRegistration_17Sep2018.pdf?la=en&hash=E50ACDA662993CC9D40EB71BD7389C4AADAAFAA1

[16] https://sso.agc.gov.sg/Act/ITA1947?ProvIds=P1IV-#pr13CA-

[17] Income Tax (Exemption of Income of Prescribed Persons Arising from Funds Managed by Fund Manager in Singapore) Regulations 2010 (https://sso.agc.gov.sg/SL/ITA1947-S6-2010?DocDate=20120720&ProvIds=Sc3-#Sc3-)

[18] Variable Capital Companies Act(https://sso.agc.gov.sg/Act/VCCA2018) に基づく変動資本会社(“Singapore Variable Capital Company”)

[19] https://sso.agc.gov.sg/Act/ITA1947?ProvIds=P1IV-#pr13R-

[20] https://sso.agc.gov.sg/Act/ITA1947?ProvIds=P1IV-#pr13X-