• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

憲法裁判所による支払停止手続(PKPU)における法的救済に関する決定

2022年02月14日(月)

インドネシア:憲法裁判所による支払停止手続(PKPU)における法的救済に関する決定についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

憲法裁判所による支払停止手続きにおける法的救済に関する決定

 

2022年2月
One Asia Lawyers; Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
インドネシア法弁護士 Prisilia Sitompul

1.はじめ

2021年12月15日、インドネシアの憲法裁判所は、破産および債務の支払義務の停止に関する2004年法律第37号(「倒産法」)235条1項及び293条1項において定められた、支払停止手続に対する法的救済がないことについての司法審査に関する決定(No. 23/PUU-XIX/2021(「本件決定」)を致しました。本ニュースレターでは本件決定の内容についてご説明致します。

2.背景

インドネシアでは、破産手続とは別に、日本でいう民事再生手続に相当する支払停止手続(Penundaan Kewajiban Pembayaran Utang)(「PKPU」)が規定されております。PKPUにおいては、債務者が、返済額の減額や返済スケジュールなどを盛り込んだ再生計画を提出し、裁判所が各債権者の同意を得て再生計画の認可・不認可を決定するとされております。同決定は全債権者を拘束するところ、下記のように、倒産法235条1項及び293条は、当該決定については法的救済が無い旨を規定しております。

235条第1 : PKPUの決定に対しては、法的救済を受けることができない」

293条第1:「第三章の規定に基づく裁判に対しては、この法律に別段の定めがある場合を除き、何らの法的救済を受けることができない」

本件では、PKPUの申立人(債務者)である企業が、再生計画を提出したところ、債権者がこれを拒否したため、裁判所は再生計画を不認可とする旨の決定を致しました。これに対して、当該申立人は、上記倒産法上の条項により、裁判所の決定に対して異議申立てをすることができませんでした。申立人は、これらの条項はインドネシア1945年憲法に反し無効であると主張して、憲法裁判所に申立を行い、PKPUを含むあらゆる法的手続に法的審査が可能であるべきであると主張しました。

3.憲法裁判所の判決

憲法裁判所は申立人による主張を一部認め、PKPUが債権者の申立よって開始されたものであり、また、債務者が提案した再生計画の却下に関するものである限りにおいて、倒産法235条及び293条は法的効力を有しないと判断しました。

上記を言い換えると、PKPUの決定に対する法的救済が認められるのは、以下の場合に限定されることになります。

(i) PKPU が債権者によって開始された場合の決定であること

(ii) 債務者が提案した再生計画案を却下する決定であること

 憲法裁判所は、上記決定をする際に検討した事項として、PKPUにおける決定は本質的に誤りが発生する可能性があるところ、これによって損失を被る当事者に法的救済を保障する必要がある旨を述べております。

4.結論

本件決定により、上記(i) (ii)を満たす場合の決定については、最高裁判所に異議申立をすることが可能となります。

当該決定の背景には、PKPU決定に対する法的救済が認められないことを背景に、債権者が再生計画を成立させる意図なしに、早期に破産決定を得るためにPKPUを申立てる案件があったものと考えられます。上記判決によって、このような制度濫用的な申立は抑制されるものと考えられます。

                                          以上