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マレーシアにおける印紙税の重要性について

2022年09月12日(月)

マレーシアにおける印紙税の重要性についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

マレーシアにおける印紙税の重要性

 

マレーシアにおける印紙税の重要性

2022年9月
One Asia Lawyers Group
マレーシア担当
日本法弁護士 橋本有輝
マレーシア法弁護士 Najad Zulkipli

1.印紙税とは

日本と同様の感覚で「印紙税」と聞くと、「契約書に貼る収入印紙」という印象を抱くかもしれない。しかし、実はマレーシアにおいては、印紙税を適切に支払うことは実務上極めて重要である。

そこで、本稿では、この印紙税に焦点を当ててその正体を明らかにしてみたい。

マレーシアで印紙税(Stamp Duty)とは、Stamp Duty Act 1949(印紙税法)の別表1に規定された様々な書面に課税される税金である。基本的には、印紙税は、法律文書、ビジネス上の文書、金融関連文書等に課される。

この印紙税には、従価税と定価税の2種類がある。従価税の場合、支払うべき金額は書類の種類とその書類が取り扱う対象(物・サービス)の価値によって異なる。固定税は、一般的に1つの書類あたり10リンギを支払うことを意味する。

印紙税の対象となる文書は、マレーシア国内で調印された場合、その調印から30日以内に印紙税を支払うことが義務付けられている。マレーシア国外で調印された場合、マレーシア国内で当該文書が受領されてから30日以内に印紙税を支払う必要がある。

以下では、マレーシアにおける印紙税の支払い手続きと、法律に従って証書や書類に印紙を貼ることの重要性について説明する。

2.印紙税が課される証書・書類の例

2.1    印紙税法別表1には、印紙税の対象となる分類が規定されている。 印紙税の対象となる書類の例としては、以下のようなものがある。

 a. 株式譲渡証書

 b. 不動産譲渡(土地・家屋・建物等の売買)の証書

 c. 契約書・合意書全般

 d. テナント契約、リース契約、レンタル契約書

 e. 有価証券関連文書

2.2  印紙税の税率は、書類の性質や取引額によって異なる。印紙税の計算例は次のとおりである。

 

非上場株式、市場性のある有価証券(例:会社法105条)

支払われる対価の価格または客観的価値のいずれか大きい方につき、RM1,000 当たりRM3。

印紙税法上の非上場普通株式の評価方法としては、通常以下の2つの方法のうちどちらかが採用される。

– 純有形資産額、または

– 売却の対価額

サービス契約

サービスの価値に対して0.1%。以前は0.5%であったが、産業界の「高すぎる」という反対を受け2021年に減額された。

金銭消費貸借契約

リンギットマレーシアでの融資を行う場合、融資契約書については0.1%の利率が適用される。外貨建て融資契約に対する印紙税は、通常2,000.00リンギットが上限となる。

テナント契約書

(i)     1年未満の契約:年間家賃250リンギットにつき1リンギット

(ii)    1年以上3年未満の契約:年間賃料250リンギットにつき2リンギット

(iii)  3年以上の契約:年間家賃250リンギットにつき3リンギット

上記計算式は、年間賃料のうちRM2,400.00を超過した金額についてのみ計算される。

 

2.4  印紙税が免除される商品の例としては、以下のようなものがある。

(i) 政府との契約(政府機関・省庁が締結する業務委託契約など)

(ii) 中小企業が行うM&Aに関連する文書[1]

(iii) 関連会社間における財産または株式の譲渡に関連する文書[2]

(iv) 政府によって随時発表される一定の免除措置(例:ローコスト住宅購入時の金融商品の免除、最初の住宅購入時の免除など)。)

3.文書や証書に印紙税を支払う重要性

3.1 印紙税を支払っていない文書の有効性

印紙税法は、印紙税が支払われていない文書が法的に有効か否か、又は執行可能であるかどうかについては明確に述べていない。この印紙税の支払のない文書の有効性に関する法的見解は、Malayan Banking Bhd v Agencies Service Bureau Sdn Bhd & Ors (1982) 1 MLJ 198 ケースで確立されており、それら文書は証拠としての許容性(証拠能力)が否定され、他方で当該文書を無効とするものではないとされている。したがって、契約上の権利等の主張は可能であるものの、法廷においては当該文書を証拠として提出することは認められないという位置づけになる。

したがって、マレーシアにおいて、何らかの契約を締結した場合は、必ず印紙税を支払うよう注意する必要がある。そうしなければ、いざトラブルとなった際に、裁判所において証拠として認められないことになってしまうからである。

3.2 例外的に印紙税を支払っていない場合に無効となる場合

上記とは異なり、一部の文書については、印紙税を支払わなければ法的な効果が発生しない文書がある。

その典型的なものが、不動産及び株式の譲渡にかかる書面である。これら書面は、印紙税を支払って初めて当局が当該譲渡にかかる名義変更の申請を受け付けるという建付けとなっているため、譲渡を実行するには、当事者による印紙税の支払が不可欠である。例えば会社法105条は以下の通り定め、印紙税の支払いが必要であることを明記している(下線部参照)。

105.(1) Subject to other written laws, any shareholder or debenture holder may transfer all or any of his shares or debentures in the company by a duly executed and stamped instrument of transfer and shall lodge the transfer with the company.

3.3 罰則

印紙税法第47A条は、未納の証書は以下の通り罰金を定めている。

3ヶ月以内に支払う場合

 

RM25.00または不足税額の5%のいずれか大きい額。

3ヶ月以上6ヶ月未満 に支払う場合

RM50.00または不足税額の10%のいずれか多い額。

6ヶ月以上支払わない場合

RM100.00または不足税額の20%のいずれか多い額。

4.印紙税支払の進め方

まず、内国歳入庁(LHDN)に文書を提出し、支払うべき税額を査定してもらう必要がある。

次いで、査定が完了すると、LHDNは一定の期間内に支払うべき印紙税額(ペナルティがある場合はそれも含む)を記載した査定通知書を発行する。

最後に、印紙税の納付が完了すると、印紙申請の方法に応じて、押印または印紙証明書の発行が行われる。

上記の手続きは、LHDN の担当者が窓口で行うか、LHDN が提供する電子システム、すなわち内国歳入庁の印紙査定支払システム(STAMPS システム)を通じて行うことができます。

5.結論

弊社は、課税対象書類について、当該文書印紙税の対象となるかどうか、また適用される印紙税額を特定するためのアドバイスを提供します。また、印紙税の評価申請書をLHDNに提出し、それに基づいて発行される証明書のため印紙税の支払いを申請する登録代理人でもあります。

[1]印紙税(免除)(No.18)オーダー2021[P.U(A)502/2021]に 基づく。

[2]1949年印紙税法第15条A項による