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令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の概要について

2023年02月13日(月)

令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の概要についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の概要

 

令和4年資金決済等改正に係る政令・内閣府令案等の概要

2023年2月13日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2022年8月号で取り上げた「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律[1]」(令和4年6月10日法律第61号。以下「改正法」といいます)は、2022年6月3日に成立し、同月10日に公布されました。

 かかる法改正を受けて、今般、金融庁は、2022年12月26日、令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等[2][3](以下「本政令等案」といいます)を公表しました。

1 概要

 本政令等案における主な規定の整備は、次の3つになります。

 ①電子決済手段等に係る規定の整備
 ②為替取引分析業に係る規定の整備
 ③高額電子移転可能型前払式支払手段に係る規定の整備

 本ニューズレターでは、①電子決済手段等に係る規定整備のうち、いわゆるステーブルコインに関する規制整備について取り上げます。

2 電子決済手段について

(1)電子決済手段の種類

 いわゆるステーブルコインは、改正法で「電子決済手段」と定義され、以下4つの種類があります。

 

該当条文

発行可能者

改正法における定義の概要

改正法第2条5項1号・電子決済府令第2条1項及び2項

銀行等、第二種及び第三種資金移動業者

代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成19年法律第102号)第2条第1項に規定する電子記録債権、第3条第1項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める者を除く。)を除く。②において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(③に掲げるものを除く。)

改正法第2条5項2号

銀行等、第二種及び第三種資金移動業者

不特定の者を相手方として(1)に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(③に掲げるものを除く。)

改正法第2条5項3号

特定信託会社、信託兼営銀行

特定信託受益権

改正法第2条5項4号・電子決済府令第2条3項

 

代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことがで きる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録 されているものに限る。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(①又は③に掲げるものに該当するものを除く。)のうち、当該代価の弁済のために使用することができる範囲、利用状況その他の事情を勘案して金融庁長官が定めるもの

 

(2)特定信託受益権の要件

 「特定信託受益権」とは、金銭信託の受益権(電子情報処理組織を用いて移転することができ、電子機器等に電子的方法により記録される財産的価値に限る。)であって、受託者が信託契約により受け入れた金銭の全額を預貯金により管理するものであり、以下の要件を満たすものとされています(改正法第2条9項、電子決済府令第3条)。

【要件】

 ①円建てで発行される場合 信託財産の全部が預金又は貯金により管理されるものであること。
 ②外貨建てで発行される場合 信託財産の全部がその外国通貨に係る外貨預金又は外貨貯金により管理されるものであること。

 また、一定の要件を満たす特定信託会社(特定信託受益権を発行する信託業法に規定する信託会社及び外国信託会社)は、届出により特定資金移動業(特定信託為替取引のみを営む資金移動業)を営むことが可能となります(改正法第37条の2)。

3 電子決済手段等取引業について

 (1)電子決済手段等取引業の登録

 電子決済手段等の発行者と利用者との間に立つ仲介者が行う以下の行為のいずれかを業として行うことを「電子決済手段等取引業」と定義されました(改正法第2条10項)。

 

内容

(ア)

電子決済手段の売買又は他の電子決済手段との交換

(イ)

(ア)に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

(ウ)

他人のために電子決済手段の管理をすること(信託会社等が信託業法等に基づき行うことも可能(電子決済府令第4条)。)

 また、電子決済手段等取引業を営む場合、内閣総理大臣の登録が必要となり(改正法第62条の3)、以下の登録申請書及び添付書類を提出しなければなりません(改正法第62条の4、電子決済府令第7条乃至第9条)。

【登録申請書】

(電子決済府令別紙様式第1号[4]

主な記載事項

 

(a)     商号及び住所
(b)     資本金の額
(c)      電子決済手段等取引業に係る営業所の名称及び所在地
(d)     取締役及び監査役の氏名
(e)     電子決済手段等取引業の業務の種別
(f)      電子決済手段関連業務を行う場合にあっては、取り扱う電子決済手段の名称並びに当該電子決済手段を発行する者の商号又は名称及び住所
(g)     電子決済手段等取引業の内容及び方法
(h)     電子決済手段等取引業の利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所の所在地及び連絡先
(i)      主要株主の氏名、商号又は名称

上記含め約17項目。

【添付書類】

主な添付書類

 

(A)    別紙様式第3号[5]により作成した電子決済手段等取引業者の登録拒否要件(法第62条の6第1項各号)に該当しないことを誓約する書面
(B)    取締役等の住民票の抄本又はこれに代わる書面
(C)    取締役等が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の官公署の証明書
(D)    別紙様式第5号[6]又は別紙様式第6号[7]により作成した取締役等の履歴書又は沿革
(E)    別紙様式第7号により作成した株主の名簿並びに定款及び登記事項証明書又はこれに代わる書面

上記含め約19書類。

なお、官公庁が証明する書類については、申請日の前3か月以内に発行されたものに限られています。

 

(2)海外発行ステーブルコインの取扱い

 電子決済手段等取扱業者は、一定の要件を満たす外国電子決済手段(以下「海外発行ステーブルコイン」といいます)を取り扱いが可能となります(電子決済府令第30条1項5号)。ただし、①外国電子決済手段の発行者が債務不履行等となった場合、当該債務の履行等が行われていることとされている金額と同額での買取り及び買取りのための必要な資産を保全すること、②電子決済手段等取引業者が管理する利用者の海外発行ステーブルコインを移転する場合において、その1回あたりの移転可能額を100万円以下に限定するなど、利用者の保護のために必要な措置を講じる必要があります(改正法第62条の12、電子決済府令第30条1項6号、ガイドラインⅠ-1-2-3(2))。

以上

[1] 金融庁「改正資金決済法 新旧対照条文」

[2] 金融庁「令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」

[3] 本ニューズレターにおいては、資金決済に関する法律施行令を「施行令」、電子決済手段等取引業者に関する内閣府令を「電子決済府令」、事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係17電子決済手段等取引業者関係)を「ガイドライン」といいます。

[4] 登録申請書(電子決済府令別紙様式第1号)

[5] 誓約書(電子決済府令別紙様式第3号)

[6] 履歴書(電子決済府令別紙様式第5号)

[7] 沿革(電子決済府令別紙様式第6号)