日本:企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正の概要
企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正の概要に関するニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正の概要
2024年8月21日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典
「企業内容等の開示に関する内閣府令等」の一部改正(以下「本改正」といいます)が行われ、2024年4月1日から施行されました[1]。
今月のニューズレターでは、本改正について解説いたします。
1 背景
日本を含む各国では、投資家の投資判断との関係により、「重要な契約」の開示が求められています。日本においては、有価証券報告書の「経営上の重要な契約等」、財務諸表の追加情報や借入金等明細表などに「重要な契約」の概要に関する開示が求められています。しかしながら、実際には十分な開示が行われていない事例があるなど、諸外国と比較して「重要な契約」の開示が十分ではないとの指摘がなされていました[2]。
こうした状況を踏まえ、2022年6月に公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告」において、個別分野における「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにすることで、適切な開示を促すことが考えられるとの提言がなされ、本改正が行われました。
2 本改正について
(1)改正事項
本改正では、有価証券報告書及び有価証券届出書(以下「有価証券報告書等」といいます)及び臨時報告書の記載事項が改正され、主に以下の内容の開示が求められています[3]。
類型 | 開示書類 | 契約内容等 | 主な開示内容 |
(1) 企業・株主間のガバナンスに関する合意 | 有価証券報告書等 | 提出会社(持株会社の場合には、その子会社含む)が、提出会社の株主との間で、以下のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約(重要性の乏しいものを除く)を締結している場合 (a) 役員候補者指名権の合意 (b) 議決権行使内容を拘束する合意 (c) 事前承諾事項等に関する合意 |
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(2) 企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意 | 有価証券報告書等 | 提出会社が、提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主)との間で、以下の株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約(重要性の乏しいものを除く)を締結している場合 (a) 保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意 (b) 保有株式の買増しの禁止に関する合意 (c) 株式の保有比率の維持の合意 (d) 契約解消時の保有株式の売渡請求の合意 |
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(3) ローン契約と社債に付される財務上の特約 | 有価証券報告書等 | 提出会社及び連結子会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をしている場合であって、その債務又は社債の期末残高が連結純資産額の10%以上である場合 |
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臨時報告書 | 提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をした場合(既に締結している契約や既に発行している社債に新たに財務上の特約が付される場合も含む)であって、その元本又は発行額の総額が連結純資産額の10%以上の場合 | ||
上記の財務上の特約に変更があった場合や財務上の特約に抵触した場合 |
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提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をしている場合であって、その残高が連結純資産額の10%以上である場合(同種の契約・社債はその負債の額を合算する) |
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(2)適用開始時期
本改正の規定は、以下のとおり適用が開始されます。
契約の類型 | 適用開始時期 |
「重要な契約」の有価証券報告書等への記載 | 2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用される。 ただし、施行日(2024年4月1日)前に締結された契約については、2025年3月31日以前に開始する事業年度に係る有価証券報告書等までは省略可能 |
財務上の特約に係る臨時報告書の提出 | 2025年4月1日以後に提出される臨時報告書から適用される。 ただし、財務上の特約に変更があった場合等に係る臨時報告書について、施行日前に締結された契約については、2026年3月31日以前に提出される臨時報告書までは省略可能 |
上記の但し書きは、既に締結されている契約等の中には、守秘義務等の観点から見直しの必要があるものも含まれ得ることを踏まえて、規定されたものです[4]。
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[1] 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について:金融庁
[2] 事務局説明資料(経営上の重要な契約):第5回金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ
[3] 企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正(案):金融庁
[4] コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令)コメントNo.132