• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

日本:育成就労制度の施行に伴う外国人受入れ実務の影響と対応策

2026年07月15日(水)

「育成就労制度の施行に伴う外国人受入れ実務の影響と対応策」に関するニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからもご覧いただけます。
育成就労制度の施行に伴う外国人受入れ実務の影響と対応策

育成就労制度の施行に伴う外国人受入れ実務の影響と対応策

2026年7月
One Asia Lawyers Group
アジア・グローバル人材プラクティスグループ

. はじめに

2024年6月に成立した「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)により、従来の技能実習制度は発展的に解消され、2027年4月1日より「育成就労制度」が本格施行されます。
本改正は、既に外国人材を受け入れている、若しくはこれから受入れを検討している事業会社にとって大きな影響が生じるところ、本ニュースレターでは、外国人労働者の受入れについて、現行制度との相違点、受入れ企業に与える影響、及び今から着手すべき対応策等を解説します。

2.制度の概要

 改正の背景と目的の転換

従来の「技能実習制度」は、技能移転による国際貢献を目的とする制度とされていました。一方、新設された「育成就労制度」は、国内の人手不足分野での「人材確保」と「人材育成」を明確な目的として掲げ、我が国の深刻な労働力不足に対応しつつ、外国人が日本で就労しながらキャリアアップできる分かりやすい制度を構築し、長期的に国内産業を支える人材を確保することを目指しています。

 技能実習、育成就労及び特定技能制度の比較

技能実習とそれに代わる育成就労、さらに2019年4月1日から施行・運用開始している特定技能の各制度の主要な違いは以下のとおりです。

 

技能実習 (旧制度)

育成就労 (新設・入口)

特定技能 [1号] (継続・本線)

制度の目的

国際貢献・技術移転

特定技能1号への人材育成ステージ

即戦力としての就労

在留期間

最長5年(通常は3年で区切り)

原則3年

最長5年(2号になれば無制限)

対象分野

主に主務省庁が認めた94職種171作業

特定技能の「特定産業分野」に原則一致(国内育成になじまない分野は対象外)

育成就労対象17分野+2分野

日本語要件

原則なし(入国時。介護職種を除く)

A1相当(N5)以上又は相当する日本語講習受講(就労開始時)

A2相当(N4)以上必要

本人意向の転籍(転職)

原則不可(やむを得ない事情のみ)

一定条件下で可能(同一企業での1〜2年就労+技能・日本語能力等)

自由(同一の産業分野内)

相互の関連性

3年(2号)修了で特定技能1号へ移行可能。ただし職種の不一致あり。

修了後は特定技能1号へ移行(技能・日本語試験の合格必須)。分野は一致。

育成就労から移行。さらに試験合格で特定技能2号へ。

受入れ企業の監理・支援等

監理団体:非営利法人のみ。実習計画の作成指導、入国後講習、監査、実習生の生活支援等を実施。

監理支援機関:非営利法人のみ。受入れ企業の監理・指導、外国人支援等を実施。

外部監査人の設置義務、財務基盤や人員配置基準等、許可要件が監理団体より厳格。

登録支援機関:営利法人の登録可能。受入れ企業からの委託を受け外国人の生活面や就労面の支援計画を実施。

 育成就労制度新設に伴うその他の改正等

ア 送出機関への手数料規制(新設)
育成就労制度では、送出機関が育成就労の対象となろうとする外国人から徴収できる費用の上限を月給の2か月分までとすることとしました。従来の技能実習生の場合、母国の送出機関に支払った多額の手数料や保証金等により来日した時点で借金があり、それが大きな負担となっている者も少なくありませんでしたが、育成就労制度において、当該上限を超える費用については、育成就労実施者(受入れ企業)又は監理支援機関が負担することとなります。

イ 不法就労助長罪の厳罰化
悪質なブローカーの排除や外国人労働者の保護のため、育成就労制度開始に併せて不法就労助長罪が厳罰化されました(出入国管理及び難民認定法第73条の2)。これまで「3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれを併科する」とされていたものが、2027年4月の改正施行後は「5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はこれを併科する」となりました。

3.受入れ企業への影響

 メリット・プラスの影響

・ 採用目的の適正化とミスマッチ防止
「労働力の確保」が公に認められるため、求人やキャリアパスの提示がより明確になります。
また、就労開始段階で一定の日本語能力(N5相当)が担保されるため、初期の現場指示や生活指導の負担軽減が期待されます。

・ 特定技能へのスムーズな接続と長期雇用の可能性
3年間の育成期間を経て、特定技能1号へ移行できるルートが標準化されるため、最長8年(育成就労3年+特定技能5年)、さらに特定技能2号を取得すれば無期限の長期雇用が可能になります。技能実習は母国への技能移転が目的であり、帰国を前提とする制度でしたが、特定技能への変更を前提とする育成就労制度の下では、教育投資による定着率向上を図ることもでき、また、優秀な外国人材に対して長期的なキャリアビジョンを示せることで、人材確保の安定化に繋がります。

 デメリット・リスク(受入れ企業の負担)

・ 人材流出(転籍)リスク
技能実習は原則転籍不可のため、3~5年の在籍を予定できましたが、育成就労では条件を満たせば自己都合での転籍が認められることから、育成コストを負担しても労働条件次第では1~2年での転籍(退職)が生じ得ます。賃金が地域最賃水準」、「労働環境が悪い」、「人間関係に問題がある」といった事情から、都市部や競合他社へ人材が流出するリスクが高くなります。
なお、後述する技能実習と育成就労の移行期間においては、同じ社内に「転籍できない技能実習生」と、「一定の条件で転籍できる育成就労者」が混在し得るため、労務管理のルールや双方の労働条件の差異に伴う不満の解消等、実務での煩雑さも想定しておくべき留意点となります。

・ 採用・育成コストの上昇
優良な外国人材を確保するため、現地での選考・教育費用や、送出機関、監理支援機関への支払手数料などが上昇する可能性があります。また、育成就労者の日本語教育費用は原則として受入れ企業又は監理支援機関が負担すること、転籍者を受け入れる場合、転籍元企業が受入れに要した初期費用の一部を転籍元へ支払う義務があることなど、採用ないし育成いずれの面でもコスト上昇が想定されます。

・ 日本語教育・キャリアアップ支援の義務化
特定技能1号への移行(3年以内)を目指すため、企業側には計画的なOJT及び日本語学習(N4/A2相当への引き上げ)のサポートが義務付けられます。
具体的には、企業は入国後講習においてA1未取得者には認定日本語教育機関のカリキュラムで100時間以上の「A1相当講習」を受けさせる義務があるほか、A2目標講習を受講することができるよう機会を提供する義務があります。

. 移行スケジュール

2027年4月1日の施行に向けたタイムラインと経過措置の現状は以下のとおりです。
【2026年4月15日】 
・新制度に基づく「監理支援機関」の許可 施行日前申請受付開始
【2026年9月1日】 
・育成就労計画認定 施行日前申請受付開始
【2027年4月1日】 育成就労制度施行
・新制度下での「育成就労計画」認定・受入れ開始
・新規の技能実習生の受入れは原則停止
【経過措置期間(施行後3年間を想定)】
・移行期間:技能実習と育成就労が併存
・施行前に「技能実習」として入国した者は、原則としてその実習期間(最長3年/5年)が終わるまで技能実習生として在留可能

. 受入れ企業が取るべき対応

 短期的アクション
・ 現行の「監理団体」との方針確認
現在の取引先監理団体がある場合は、新制度の「監理支援機関」としての要件(外部監査人の設置など)を満たし、移行する予定があるかを確認してください。基準を満たさない団体の場合、新たな支援機関を開拓する必要があります。
・ 労働条件・賃金体系の見直し
育成就労者に転籍が容認される以上、競合他社や他地域(都市部)の給与水準や労働環境について確認することが必要です。継続的な競争力維持のため、現行の待遇が適切かどうか、再検討が必要となります。

 中長期的アクション

・ 社内受入れ環境の整備とキャリアパスの明示
「3年間でどのようにスキルを身に付けさせ、特定技能1号へ移行させるか」という育成計画(育成就労計画)を明確に構築する必要があります(育成就労計画の認定申請は2026年9月から受付開始)。また、外国人材に対して「この会社に長く残るメリット」を提示することが最大の転籍防止策となり得ます。
さらに、育成就労制度における「優良受入れ機関」の要件を充足することにより、受入れ人数枠拡大等のインセンティブを受けることができます。
・ 日本語学習支援のシステム化と外部委託先の確保
特定技能1号移行時にはN4(A2相当)以上の合格、及び技能試験への合格が必要となります。eラーニングの導入や、社内での日本語学習時間の確保など、会社としての学習バックアップ体制を構築する必要があります。

. 総括

育成就労制度の本質は、「安い労働力としての外国人利用の完全な終焉」と「労働者パートナーとしての育成・囲い込み」へのシフトにあります。労働環境を整え、誠実に人材育成を行う企業にとっては、特定技能を含めた「長期雇用ルート」が確立されるため、大きな追い風となります。今後の省令等の発表(特に分野別の要領等)を注視し、先んじて労務環境の整備に着手するなど、規定に合わせた対応が求められます。実務における各対応によってはその適否の判断に悩むケースが出てくることも想定されますので、適宜ご相談いただければと存じます。