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フィリピン:2026年戦略的投資優先計画(SIPP)の承認

2026年08月17日(月)

「2026年戦略的投資優先計画(SIPP)の承認」についてニューズレターを発行いたしました。こちらの内容については以下のPDFからご覧いただけます。
2026年戦略的投資優先計画(SIPP)の承認

2026年戦略的投資優先計画(SIPP)の承認

2026年8月
One Asia Lawyers Philippines Team
日本法弁護士 難波 泰明
フィリピン弁護士 Razel Ann P. Esteban

1. 概要

2026年5月21日、ラルフ・レクト官房長官代行は、マルコス・ジュニア大統領の代理として覚書命令(Memorandum Order)第47号に署名し、2026年戦略的投資優先計画(2026 Strategic Investment Priority Plan、以下「2026年SIPP」)を承認しました。2026年SIPPは、投資優先化のための強化策を提供し、新興産業・フロンティア産業の対象範囲を拡大するとともに、フィリピンの長期開発計画に沿った経済活動を支援するため、より的確な支援策・財政的インセンティブの付与を実現するものです。
2026年SIPPは、投資委員会(Board of Investments、BOI)、財政インセンティブ審査委員会(Fiscal Incentives Review Board、FIRB)、投資促進機関(Investment Promotion Agencies、IPA)、ならびに官民の関係者との協議・調整を経て策定されました。

改正国内税法(National Internal Revenue Code、NIRC)第292条のもと、税制上のインセンティブはSIPPに基づき承認された登録プロジェクト・事業のみに付与されます。したがって、SIPPの改正内容を把握しておくことは、フィリピンへの新規投資を検討する企業にとって不可欠となります。SIPPは登録プロジェクトをティア(Tier)別に分類しており、プロジェクトに付与される税制上のインセンティブは、ティア分類のほか、プロジェクトの所在地等の要素に基づいて決定されます。
2026年SIPPは2026年6月2日に官報に掲載され、その15日後の2026年6月17日に施行されました。BOIは現在、SIPPに関する一般方針・具体的ガイドラインを最終調整中であり、2026年第3四半期中の公表を目指しています。
2026年SIPPは、優先プロジェクト・事業に関する3段階のティア制度を設けた2022年SIPPを発展させたものです。2026年SIPPと2022年SIPPの主要な更新点・相違点は以下のとおりです。

2. Tier I

ティア Iは以下のいずれかに該当する活動として定義されています(改正NIRC第296条)。
a) 雇用創出の高いポテンシャルを有するもの。
b) 市場の失敗により基本的な財・サービスの供給不足が生じているセクターで行われるもの。
c) 革新、高度化またはバリューチェーンの高度化を通じた付加価値創出をもたらすもの。
d) 産業発展に不可欠なセクターに対する重要な支援を提供するもの。
e) 潜在的な競争優位を背景として新興化しつつあるもの。
2022年SIPPにおいては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックへの対応に特化して策定された2020年投資優先計画(Investment Priorities Plan、IPP)の対象活動が、全面的にティアIに引き継がれていました。一方、2026年SIPPでは、ティアIを「現代的な基礎的ニーズ(Modern Basic Needs)」と「サステナビリティ推進型産業(Sustainability-Driven Industries)」の2カテゴリーに再編し、最近の経済・産業政策ならびに昨今の社会課題を反映した形で対象活動を見直しています。実質的には、2026年SIPPは2020年IPP以来、約6年ぶりの大幅改訂と位置づけられます。

ティアIの2つのカテゴリーとそれぞれの対象活動の詳細は以下のとおりです。

2022SIPP

2026SIPP

Tier Iは2020年投資優先計画(IPP)に列挙された全活動を包含。

2020年IPPの対象活動:
1.  COVID-19パンデミック対応に関連する適格活動
2.  過密都市部以外における雇用機会創出プログラムを支援する活動への投資
3.  農産品加工を含む適格製造活動
4.  農業・漁業・林業
5.  医療・災害リスク低減管理サービス
6.  クリエイティブ産業、航空機整備、産業廃棄物処理、電気通信等の戦略的サービス
7.  集合住宅(Mass Housing)
8.  地方自治体PPPを含むインフラ・物流
9.  イノベーション推進活動
10. インクルーシブ・ビジネスモデル
11. 環境・気候変動関連プロジェクト

12. エネルギー

1.  現代的な基礎的ニーズ(Modern Basic Needs)
    a. 農業・漁業・林業
    b. 製造業
    c. ハラール・コーシャー・オーガニック関連活動
    d. サービス業
    e. 医療・災害リスク低減管理サービス
    f. インフラ・物流
    g. エネルギー

2.  サステナビリティ推進型産業(Sustainability-Driven Industries)
    a. 産業廃棄物・有害廃棄物処理
    b. 大量水処理・供給
    c. 排水処理
    d. 環境・気候変動関連プロジェクト
2026年SIPPでは、ハラール・コーシャー・オーガニック関連活動もティアIに追加。

2026年SIPPはさらに、ティアIIまたはTier IIIの適格要件を満たす場合を除き、以下の特定の活動についてティア Iに分類されるものとしています。
(1) 輸出活動(輸出製品の生産・製造、サービス輸出、輸出業者支援活動を含む)

(2) 特別法に基づく活動(全IPAまたはBOIのいずれかのみに適用される場合がある)
(3) バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治区(BARMM)優先活動—特に、共和国法(Republic Act)第11439号(イスラム銀行法)に基づくハラール観光・投資事業 

3. Tier II

Tier IIは、国内で生産されていないが産業発展にとって重要な原材料、部品・コンポーネントおよび中間サービスを生産する活動、ならびに原油精製を含む輸入代替活動を対象とします(改正NIRC第296条第2項)。
2022年SIPPと比較して、2026年SIPPはティアIIのカテゴリーを再編し、対象活動をより詳細に規定しながらも、国内産業バリューチェーンの重要な空白の解消ならびに強靭で持続可能な産業の振興という基本方針は維持しています。2022年SIPPおよび2026年SIPPにおけるティアIIのカテゴリーと対象活動の概要は以下のとおりです。

2022SIPP

2026SIPP

ティアIIの活動は主に以下に分類:
1.  グリーン・エコシステム
2.  健康関連活動
3.  防衛関連活動
4.  産業バリューチェーンの空白
5.  食料安全保障関連活動

2022年SIPPと実質的に同種のサービスを対象とし、以下に再分類:
1.  防衛関連サービス活動
2.  産業バリューチェーンの空白
    a. IC設計
    b. 海水淡水化プラント
    c. サプライ/バリューチェーンの強靭化
    d. サステナビリティ関連活動(2022年SIPPのグリーン・エコシステムに相当)
    e. 健康関連活動
3.  食料安全保障関連活動

4. Tier III

ティア IIIは以下の活動を対象としています(改正NIRC第296条第3項)。
(i) 顕著な付加価値の向上、生産性の向上、効率性の改善、科学・医療の画期的発展、高賃金雇用をもたらす研究開発活動
(ii) フィリピンで登録・ライセンス許諾された新知識・知的財産を生み出す活動
(iii) 登録事業者(Registered Business Enterprise、RBE)が所有または共有する特許、意匠、著作物、実用新案の商業化を伴う活動
(iv) 高度技術製造を伴う活動
(v) サイバーセキュリティ、人工知能、データセンター設備を含む、経済の構造転換に不可欠であり相当程度のキャッチアップ努力を要する活動。
2022年SIPPと比較して、2026年SIPPはティアIIIの活動を再編・詳細化し、先端技術・研究開発・イノベーションに係る各分野をより明確に整理しています。また、科学・技術・イノベーションを支援する施設も独立して列挙されています。
2022年SIPPおよび2026年SIPPにおけるティアIIIの対象活動の概要は以下のとおりです。

2022SIPP

2026SIPP

Tier IIIの活動は主に以下に分類:
1.  研究開発
2. 革新的製品・サービスの高度技術製造・生産
3.  イノベーション支援施設の設立

1.  科学・技術・イノベーション関連活動
    a. 研究開発
    b. 特許・著作物・実用新案等の商業化
    c. 航空宇宙

    d. ウエハー製造
    e. 防衛関連製造活動
    f. 水素エネルギー
    g. 原子力エネルギー
    h. サイバーセキュリティ
    i. 人工知能・データサイエンス
    j. 量子技術
    k. 産業4.0・5.0技術採用活動
    l. 地理空間分析研究拠点
    m. 付加製造技術
    n. 先端バイオテクノロジー
    o. 新型ハイブリッド種子の生産・採用
    p. 革新的製品・サービス
2.  科学・技術・イノベーション支援施設

 5. 企業が取るべき対応

フィリピンへの新規進出・事業拡大を検討する外資系企業は、2026年SIPPにおける優先活動の拡充内容を確認し、自社のビジネス・投資計画が対象活動に該当するか検討することをお勧めします。対象活動に該当する場合、外資系企業は、BOIが今後公表する具体的なガイドライン・方針を含む関係政府機関の施行規則等の公表を待ち、投資促進機関(IPA)への事業登録手続きを円滑に進め、税法・CREATEアクト(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)およびCREATE MOREアクトに基づく財政的インセンティブを享受できるよう態勢を整えることが重要です。

また、今後発行が予定されている施行規則の状況をアップデートしていくことが必要となります。