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ラオスにおける会社更生手続きについて

2020年06月05日(金)

ラオスにおける会社更生手続きの概要について報告いたします

会社更生手続きの概要について

 

ラオスにおける会社更生手続きの概要

2020 年 6 月 5 日
One Asia Lawyers ラオス事務所
藪本 雄登
内野 里美

ラオスにおける会社更生については、1994 年の破産法において、債権者又は債務者が破産申し立てを行った後に、裁判所に対し提案する 3 つの選択肢(①会社更生手続き、②事業売却手続き、③破産清算手続き)の中の一つとして規定されていました。今回の改正により、債務者等が会社更生申し立てを行うことが可能となったため、法令名も「会社更生及び破産法」と改題され(以下、改正破産法)、2020 年 5 月 25 日に官報に掲載、15 日後に施行される予定になっております。なお、同法は、商業銀行、預金型マイクロファイナンス金融機関及び保険会社については、適用の対象範囲外となっております。

1 会社更生手続きの申立について

会社更生を、裁判所に対して申し立てるための資格を有する主体は、次の通りです。
(1) 財政面において窮地の状態に直面しており、支払いの期限が到来した債務を返済することが
できない企業、又は破産の状況にはまだ陥っていないものの、近い将来、財政面において窮地
の状態に直面し、債務を返済することができないことが予測される企業
(2) 上記(1)の状況にある企業が、会社更生及び破産の申し立てを行っていない場合、その企業
の議決権を行使することができる株主で、全決議権の最低 20%以上を有する株主の代表
(3) 財政面において困難な状況にあり、債務返済不能に陥った組合の組合員
なお、当該組合員は、全組合員の 5 分の 1 を代表すること
なお、債権者、労働者、労働組合等から裁判所に通じて、破産申し立てを受けた企業は、答弁
書の中で、会社更生の請求を行うことが可能となっています(改正破産法第 8 条)。
また、会社更生の申し立てを受けた人民地方裁判所(各県+ヴィエンチャン都に 1 か所)の商事
部は、直ちに申し立ての審理を行う必要があると規定しています。


2 更生開始決定

裁判所は、申立書受理後、5 日以内に、債権者及び債務者に対し、債務に関する証拠書類等を提
出するよう通知を出します。裁判所からの通知を受理後、15 日以内に、債権者と債務者は、債
権整理に必要な書類を提出する必要があります。裁判官が、これらの書類を受理して、15 日以
内に検討し、会社更生を実行する合理的な理由があると判断した場合、申立を受理し、会社更
生の開始決定を行います(改正破産法第 17 条)。
その場合、債務者保護の観点から、債権者、契約締結者及びその他関係者は、裁判所の許可な
く、債務者又は債務者の財産に対して、過去に実施してきたもの、今後実施されるものも含め
訴訟手続、財産の占有、押収などの法的な行為は停止する必要があります。(改正破産法第 18 条、いわゆる Automatic Stay といわれる措置となります。)。

3 管財人の選任

会社更生開始後、裁判所は、管財人名簿に基づき、管財人を選任します。1 回目の債権者集会に
おいて管財人が承認されたのち、管財人は、債務者及び債権者の要請により、更生計画を作成
します。

4 更生計画案の作成・提出

債権者集会において決議された会社更生に関する決議書を裁判所が承認後、90 日以内に、債務
者及び/又は管財人は、更生計画案を裁判所及び、債権者集会に提出する必要があります(改正
破産法第 47 条)。更生計画の実施期間は、3 年を超えない範囲で実行されます(改正破産法第 53
条)。

5 更生計画案の承認

更生計画案は、債権者集会において承認されなければなりません(改正破産法第 49 条)。その承認の要件は、次の通りとなっています。


(1)総債権額の 2/3 以上を有する債権者又は債権者代理人の過半数以上の賛成
(2)賛成者の中には、有担保債権者と無担保債権者の両方がいること

なお、債権者集会において承認後、その結果を裁判所に報告し、裁判所は、その内容を承認し
た後、会社更生計画実施命令を通知します(改正破産法第 50 条)。

6 会社更生手続の終了

裁判所は、申し立てした会社が、更生計画実施期間終了までに、更生計画の実施がされたと判
断した場合は、会社更生手続の終了を決定し、同時に管財人の任務も終了します。他方、更生
計画実施期間中に、会社更生計画の実施が不完全と判断された場合、破産又は、債権者、管財
人に要請により、会社更生計画の修正又は継続を宣告します(改正破産法第 57 条)。
ただし、更生期間中において、裁判所が再生できないと判断した場合は、いつでも破産宣告を
行うことができます(改正破産法第 57 条)
なお、中小規模・零細企業に関する会社更生についても、同法の中で別途規定されています
(改正破産法第 58 条から 74 条)。こちらは別途ニュースレターにて、改めて解説する予定にし
ております。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)