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シンガポールにおけるテックパス(Tech Pass)の導入とビザ発給の状況について

2021年02月26日(金)

シンガポールにおけるテックパス(Tech Pass)の導入とビザ発給の状況についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

シンガポール:テックパス(Tech Pass)の導入とビザ発給の状況

 

 

シンガポール:テックパス(Tech Pass)の導入とビザ発給の状況

2021年2月
One Asia Lawyers Group代表
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎 

 2021年1月19日、シンガポール政府は情報技術分野の人材の誘致へ向けて、新たにテックパス(Tech Pass)を導入した。通常のビザは、労働省(Ministry of Manpower)が監督官庁であるが、テックパスは経済産業省(Economic Development Board)が監督している[1]。初回のの発給枠は500人に限定されているが、適宜、拡大が予定されている。

1 テックパスの取得要件

 2021年1月19日から申請を受け付けているテックパス取得には以下の要件のうち2つを満たすことが求められ、非常に高度な要件が求められている。

1. 直近(1年以内)の月額固定給与支給額が少なくともS$20,000であること[2].
2. 評価額/時価総額が5億USドル以上もしくは資金の調達を3,000万USドル以上行なったテクノロジー企業にて少なくとも5年以上の主導的役割を担ったことがあること
3. アクティブユーザーが10万人以上、もしくは年間収益が少なくとも1億USドルあるテクノロジー製品の開発において少なくとも5年以上主導的役割[3] を担ったことがあること

2 テックパス取得者の自由度 

 上記のように取得要件は厳しい一方、取得者の勤務の自由度は高く設定されている。通常のEmployment Passなどのビザは就職先が固定されており、自らで起業をしたり、複数の企業に勤務したりすることは原則禁止されているが、テック・パス取得者は、シンガポールに来て起業する、複数の企業の従業員やアドバイザーになることなどが認められている。主なテック・パス取得者の特徴は以下のとおりである。

1. テクノロジー企業を起業、運営できる
2. 1つ以上のシンガポールに拠点をおく企業の従業員にいつでもなることができる
3. 従業員と起業家との間を自由に変更できる
4. コンサルタントまたはメンターになる、高等教育機関にて講義をする、もしくは1つ以上のシンガポールに拠点をおく企業の投資家または取締役になることができる
5. 配偶者、子供および両親1がシンガポールに滞在するためにMOMから扶養者パス(DP)、長期滞在パス(LTVP)の発行を受けることができる
6. 更新の要件を満たした場合、さらに2年更新することができる

3 非高度人材へのビザの発行の厳格化 

 シンガポール政府は、かようなトップ人材が有する技術力やネットワーク力、有能な人材がシンガポールで起業し、最先端のサービスを開発することによるシンガポールにおける雇用の創出などを狙っている。

 一方で、非高度人材へのビザの発給状況は厳格化しており、2月16日には製造業への就労ビザ発給を絞り込むとの発表がなされており、Sパス発給の上限比率を全従業員の20%から22年1月には18%に、23年1月からは15%に引き下げるとのことであり、シンガポールで事業を行っている日本企業も注意が必要である。

 

[1] https://www.edb.gov.sg/en/how-we-help/incentives-and-schemes/tech-pass.html 

[2] もしくは、外国通貨にて同等の金額。年収がS$240,000超えるもしくは外国通貨にて同等の金額の年収がある応募者もしくは事業主もまた認められる.

[3] 例えば、テクノロジー製品の設計、開発および/もしくは展開において、主要な貢献をしたことなど