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オーストラリア会社法の恒久改正: 電子署名、電子文書の共有、オンライン会議について

2022年04月13日(水)

オーストラリア会社法の恒久改正: 電子署名、電子文書の共有、オンライン会議についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

オーストラリア会社法の恒久改正: 電子署名、電子文書の共有、オンライン会議について

 

オーストラリア会社法の恒久改正:
電子署名、電子文書の共有、オンライン会議について

2022年4月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター(日本語版)

 2022年2月22日、オーストラリアにおける2001年会社法(以下「会社法」)を恒久的に改正する2022年会社法改正(会議及び文書)法(「Corporations Amendment (Meetings and Documents) Act 2022」、以下「改正法」)が勅許を得ました。本改正により、会社及び登録された投資スキーム(「Registered Scheme」、以下「投資スキーム」)がハイブリッド方式(対面及びオンラインで)会議を開催し、技術を利用し、会社・会議関連文書を執行・署名・共有できるようにするための恒久的な仕組みが確立されました。本改正は、2022年3月31日に失効した臨時改正法(Treasury Laws Amendment (2021 Measures No. 1) Act 2021)に基づき制定された臨時措置に基づくものです。これまでの臨時措置については、9月のニュースレター(日本語版)をご覧ください[1]

文書の執行・署名

 2022年2月23日より改正法別表1が施行され、会社・会議関連の文書(「Deed」[2]を含む)の電子執行・署名を可能にする新しい規定が導入されています。

 別表1新設の110A(1)条にて、文書に物理的または電子的な形式で署名することができます。署名の方法は、次の要件を満たさなければなりません:(a) 署名者を特定し、文書に記録された情報に関してその意図を示すこと、及び (b) すべての状況に照らして、情報が記録された目的に対して適切な程度に信頼できるか、それ自体で又はさらなる証拠とともに(a)に記載された機能を果たしていたことが事実上証明されていること[3]。 これらの新しい署名方法は、126条(すなわち会社を代表する代理人)または127条(すなわち取締役及び・または会社秘書役)にて署名されるべき文書(証書を含む)、及び特定の会議または決議に関連する文書(証書を含む)に対して適用されます[4]

 別表1の新設の110A(4)条は、会社に対し個別の書面への署名の方法(「Split Execution」)を恒久的に許可しています。また、各当事者は同じ署名方法で署名する必要はありません(例:ある当事者は手書きで署名し、別の当事者は電子的に署名することができます)[5]

 改正法別表1にて、会社法126条も改正されており、代理人は証書で任命されなくても、会社を代表して契約の締結、変更、批准、解除、文書(証書を含む)の執行ができるようになっています。また、代理人は立会や交付の要件なしに、証書として文書を執行することができ、文書には物理的または電子的な形式で署名することができます。コモン・ローの規則にて、代理人は証書により任命され、証書を執行し、証書を交付する必要がありますが、改正法はこれらの規則を放棄しています。

 改正法別表1は、会社法127条に同様の改正を実施しています。また、文書の執行と証書の交付の立会に関するコモン・ロー上の要件が削除され、文書に物理的または電子的な形式で署名することが可能になりました。また、127条は、(唯一の会社秘書を兼ねる唯一の取締役を持つ非公開会社(「Proprietary Company」)に加えて)唯一の取締役を持ち会社秘書を持たない非公開会社にも文書の執行を許可するよう拡大されました[6]

会議資料の送付

 改正法別表2は2022年4月1日から施行され、会議関連文書の電子送信を認めるようになりました。本規定は、会社、投資スキームの責任事業体、証券公開企業(「Disclosing Entity」)が個人に送付することが要求または許可されている、110C条(2)の対象となる文書に適用されます[7]。 110C条(2)の対象となる文書とは、会社の株主・投資スキームの出資者(以下、両者を「メンバー」という)の会合に関する文書、メンバーにより審議される決議に関する文書、年次財務報告書、メンバーの権利に関する通知であります。

 新設の条110Dにて、これらの文書(上述)は物理的または電子的な形で送付することができ、または、受取人が電子的に文書にアクセスできるようにするために十分な情報を物理的または電子的な形で受取人に送付することができます。これらの文書は、送信された時点で、その後の参照に使用できるように文書に容易にアクセスできると期待することが合理的である場合にのみ、電子形式で送信または利用可能にすることができます[8]

 本規定にかかわらず、会社・投資スキームのメンバーは、物理的または電子的な形式で文書を受け取ることを選択できます(または、年次財務報告書や110E条(5)の目的のために規則で定められた文書を受け取らないことを選択できます)[9]。 また、メンバーは、特定の文書を物理的または電子的な形式で受け取ることを臨機応変に要求することができます。ただし、その要求は、文書を送信しなければならない期限の前に合理的な時間内に行う、あるいは文書が送信された後に行うことが条件となります[10]

 110K条は、公開会社、投資スキームの責任事業体、証券公開企業に対して新たな義務を課しています。これらの事業者は、少なくとも毎会計年度に一度、物理的または電子的に送付される文書を選択する権利[11]、臨機応変に要求する[12]権利、ならびに年次財務報告書及び/または(110E(5)条の目的に基づく)規則に定められた書類を送付されないことを選択する権利をメンバーに通知しなければなりません。あるいは、当該通知をウェブサイト上で容易に入手できるようにしておくことも可能です。

オンライン会議・総会における投票

 改正法の別表2(上述の通り2022年4月1日から施行)は、ハイブリッド株主総会・社員(出資者)総会、オンライン限定株主総会・社員(出資者)総会(会社の定款で明示的に要求または許可されている場合に限る)、オンライン取締役会を恒久的に許可する新しい規定も導入しています。なお、株主総会・社員(出資者)総会での投票に関して、新しい要件及びメンバーの権限が導入されました。

 ハイブリッド方式とは、対面及びオンラインで開催されることであり、オンライン限定方式とは、完全にオンラインで開催される会議のことです。別表2の新設の249R条と252P条は、それぞれ会社と投資スキームのハイブリッド株主総会・社員(出資者)総会を許可しています。オンライン限定株主総会・社員(出資者)総会も、会社や投資スキームの規約で明示的に要求または許可されていることを条件に、上記の条で許可されています。さらに、投資スキームの場合、オンライン限定社員(出資者)総会を要求または許可する定款の条項は、(a) スキームの設立時、または (b) スキームのメンバーの特別決議により、スキームの定款に盛り込まれている必要があります。メンバーは対面式またはオンラインで出席したか否かにかかわらず、メンバーはあらゆる目的で株主総会・社員(出資者)総会に直接出席しているとみなされます[13]

 別表2の249S条に基づき、株主総会・社員(出資者)総会を開催する会社または投資スキームは、総会に出席する権利を有する株主に、全体として、合理的な参加の機会(「Reasonable Opportunity」)を与えなければなりません。本条は、合理的な時間、(対面式・ハイブリッド総会の場合)合理的な場所で総会を開催する義務、(ハイブリッド・オンライン限定総会の場合)メンバーが口頭・書面の両方で質問や意見を述べる権利を行使できる合理的な技術を使用する義務を含みます。

 取締役会については、別表2の新設の248D条で規定されている通り、すべての取締役が同意した技術を使用して、取締役会を招集または開催することができるようになりました。この同意は永続的なものである場合があり、取締役は会議開催前の合理的な期間内に限り、同意を撤回することができます。

 改正法は、上場会社及び上場投資スキームに対して、会議での投票に関する新たな要件を課しています。新設の250JA条及び253J条の下、(上場会社または上場投資スキームの)株主総会・社員(出資者)総会で行われる決議は、招集通知に決議案が記載されている場合、または投票が要求された場合、(挙手ではなく)投票により決定されなければなりません。

 企業及び投資スキームのメンバーは、投票の実施と結果について観察・精査を要求できるようになりました。新設の253UB条と253UD条にて、会社または投資スキームの5%以上の議決権を持つメンバーは、会社または投資スキームの責任事業体に対して、投票の実施を監視し報告書を作成する独立した者を任命するよう要請することができます。さらに、新設の253UC条及び253UE条にて、本メンバー(議決権の5%以上を保有)は、独立した者を任命し、投票の結果を精査し、報告書を作成するよう要請することができます。

以上

[1] 次のリンクからご覧ください: https://oneasia.legal/7446

[2]「Deed」(捺印証書)は、特殊な拘束力を持つ約束のことです。

[3] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110A(2)条。

[4] 適用される会議及び決議は次のとおりです:(a)会社もしくは登録スキームのメンバー会議(株主・社員のクラスの総会を含む)、または (b) 会議なしで会社の取締役または株主が審議する決議(株主のクラスが審議する決議を含む)、または (c) 会社の取締役会(取締役委員会の会議を含む)。2022年会社法改正(会議及び文書)法110条2項。

[5] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110A(4) 条。

[6] 127条(1)(c)項及び127条(2)(c)項の改正。以前、唯一の取締役を擁する非公開会社が文書を執行するためには、取締役は同時に唯一の会社秘書の役割も担わなければなりませんでした。

[7]  2022年会社法改正(会議及び文書)法110C(1) 条。

[8] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110D(2) 条。

[9] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110E条。

[10] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110J条。

[11] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110E条に基づく、メンバーが有する、物理的または電子的の文書を選択する権利。

[12] 2022年会社法改正(会議及び文書)法110J条に基づく、メンバーが有する、臨機応変に要求する権利。

[13]年会社法改正(会議及び文書)法249RA条3項。