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フィリピンにおける再生可能エネルギー計画について

2022年11月14日(月)

フィリピンにおける再生可能エネルギー計画についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

再生可能エネルギー計画、外資100%に開放へ

 

再生可能エネルギー計画、外資100%に開放へ

2022年11月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

 

第1.はじめに

フィリピンでは、天然資源の探査・開発・利用を伴う事業への外資の参入は、わずか40%に制限されています[1]。 フィリピン国内のエネルギー生産量は十分ではないため、輸入エネルギーへの依存率を縮小する上で、このような制限は障害の一つとなっています。

国産エネルギーには、再生可能エネルギー(地熱、水力、風力、太陽光など)と化石燃料が含まれます[2]。発電量を見ると、地熱や水力を主体とする再生可能エネルギーの割合は、2010年の26%から2019年には21%に減少しています。この減少は、フィリピンで石炭発電が大幅に増加したことが主な原因です[3]。フィリピンは天然資源が豊富であるにもかかわらず、国内生産量が不足しており、その不足分を輸入エネルギーで大きく補っているのが現状です。そのような状況を背景に、国家再生可能エネルギー計画(NREP[4]、2020-2040)では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を少なくとも35%レベルに戻し、2040年までに少なくとも50%まで増加させることを目指しています[5]

そのような中、2022年司法省意見書第21号(Opinion No. 21, series of 2022, dated September 29, 2022,以下「DOJ Opinion No. 21 s. 2022」という)【https://www.doj.gov.ph/opinion.html】が発表されました。同意見書により、司法省(Department of Justice (DOJ))としては、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギーの探査、開発、利用は、憲法第12条第2項に基づく外国資本40%制限の対象とはならないとの考えが示されました。これを受け、2008年再生可能エネルギー法(Renewable Energy Act of 28、共和国法第9513号、以下「再生可能エネルギー法」という)の施行規則(Implementing Rules and Regulations)の規定が改訂される予定ですので、今回は、再生可能エネルギーの外資開放の動きについてお知らせいたします。

第2 再生可能エネルギーに対する外国投資

現在、再生可能エネルギー法の施行規則では、再生可能エネルギー計画の探査、開発、利用への外国人の参加は40%に制限されています。DOJ Opinion No. 21 s. 2022の発表を受け、エネルギー省の担当者は、再生可能エネルギー法の施行規則の改正により、11月末までに再生可能エネルギー分野を100%外資に開放したいとの意欲を示しています。

1.再生可能エネルギー法施行規則

 再生可能エネルギー法施行規則(規則6条19項)によれば、水、海流、風による運動エネルギー、太陽光、海洋地熱、バイオマスによる熱エネルギーは、国がこれを所有することとされ、私的所有が認められていません。

また、天然資源の探査、開発、生産、利用は、国の完全な管理・監督下に服さなければならないと定められています。施行規則では、政府自らがそのような活動を行う場合のほか、フィリピン国民、またはフィリピン人が60%以上所有する企業や団体と共同事業、合弁事業として行うことが認められています。また、外国の再生可能エネルギー開発事業者も、政府との再生可能エネルギー業務委託・運営契約を締結することにより、再生可能エネルギー開発事業を行うことができるとされていますが、外国資本の参入上限を40%に制限するフィリピン憲法第12条第2項の適用対象となることも指摘しています。

かかる規定の解釈について、エネルギー省から司法省に対して法的見解の照会がされました。

2.DOJ Opinion No. 21 s. 2022

司法省は、DOJ Opinion No. 21 s. 2022において、資源が枯渇することのない再生可能エネルギーの探査、開発及び利用については、憲法第12条第2項が定める外国資本40%制限の対象とならないとの見解を示しました。外国資本40%制限の対象となる「天然資源」に、太陽、風、水力、海洋・潮力は含まれないことが示されました。

したがって、外国人及び外国企業による太陽光、風力、水力、海洋・潮力エネルギーの探査、開発、利用は、憲法上許容されているとの見解が示されました。

ただし、法務省は、DOJ Opinion No. 21 s. 2022の解釈を適用するためには再生可能エネルギー法及び施行規則の改正が必要であるとしています。また、水源から直接、発電のために水を利用することをフィリピン国民または フィリピン人が60%以上所有する法人に限定した水法、および最高裁判所の判決は、これらが廃止または撤回されない限り、引き続き効力を有するもの述べています。

第3 最後に

前述の通り、現在、再生可能エネルギーの探査・開発・利用は、政府及びフィリピン国民との共同プロジェクト、またはフィリピン人が60%以上所有する企業に限定されています。但し、再生可能エネルギー法の施行規則が近々改正され、DOJ Opinion No. 21 s. 2022に基づき、再生可能エネルギー事業における外国人の100%所有が認められる見込みです。

引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

【2023.1追記】

本号に関連して、エネルギー省は、Republic Act No. 9513(「2008 年再生可能エネルギー法」)施行規則(Department Circular No. DC 2009-05-0008)第 19 項の改正に関するDepartment Circular No. DC2022-11-0034[6]を発行し、フィリピン政府が、フィリピン国民又は外国人、並びにフィリピン企業又は外国企業と、再生可能エネルギーの探査、開発、生産、利用サービスや運用契約について直接引き受けることができるように修正すべきと勧告しました。

[1] Section 2, Article XII, 1987 Constitution; 12th Regular Foreign Investment Negative List, List A, no. 16

[2] DOE, Primer on the Energy Balance Table (EBT) of the Philippines, page 2-3

[3] NREP, 2020-2040 p. 1

[4] National Renewable Energy Program

[5] NREP, 2020-2040 p. 15

[6] https://www.doe.gov.ph/sites/default/files/pdf/issuances/dc2022-11-0034.pdf