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ミャンマーにおけるFATFによるブラック・リスト指定について

2022年11月17日(木)

ミャンマーにおけるFATFによるブラック・リスト指定についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

ミャンマーにおけるFATFによるブラック・リスト指定

 

ミャンマーにおけるFATFによるブラック・リスト指定

2022年11月
One Asia Lawyersミャンマー事務所
代表弁護士(日本法):佐野 和樹

1 はじめに

 2022年10月21日、Financial Action Task Force(金融活動作業部会、以下「FATF」という)は、ミャンマーをブラック・リスト(FATF勧告19の1「強化された顧客管理」の適用」)に指定しました。

 この指定がミャンマーに関連する送金実務にどのような影響が及ぶかが問題となっています。

2 FATFによるブラック・リスト指定

 2022年10月21日、Financial Action Task Force(金融活動作業部会、以下「FATF」という)は、ミャンマーをブラック・リスト(FATF勧告19の1「強化された顧客管理」の適用」)に指定しました。

 FATFは、マネロン対策の国際基準策定・履行を担う多国間枠組みとして設立された機関で、加盟国は37か国・地域と2地域機関となっています。FATFは、国際基準の遵守が不十分な国・地域を特定し、改善状況をモニターするため、「行動要請対象の高リスク国・地域」(いわゆるブラック・リスト)、「強化モニタリング対象国・地域」(いわゆるグレイ・リスト)を公表しています。

 ミャンマーについては、2021年2月の緊急事態宣言以降、FATFに対し、対策の進捗に関する報告書を提出してきたものの、FATFからは期限を過ぎてもアクションプランの大半の項目の履行がなく、進捗が見られないと判断され、迅速な履行が要求されている状況にありました。

 その後、顕著な進展を見せていない、或いは取組への政治的意思が欠如していると判断されたことから、関連した欠陥から起こるリスクが考慮されるべき国・地域(ブラック・リスト国:FATF勧告19の1「強化された顧客管理」の適用」)としてミャンマーを指定しました。

3 ブラック・リスト指定の内容

 FATFは、高リスクと特定された全ての国・地域に関して、強化された顧客管理を適用することを加盟国・地域に要請し、かつ全ての国・地域に強く求めています。そして、極めて深刻な場合には、各国・地域は、高リスク国・地域から生じる資金洗浄、テロ資金供与及び拡散金融のリスクから国際金融システムを保護するため、対抗措置の適用を要請されています(現状は北朝鮮・イランのみ)。

 FATF勧告19(リスクの高い国)に指定された場合は、金融機関は、FATFが求めるところにしたがって、特定の国の自然人、法人および金融機関との取引において厳格な顧客管理を行うことを求められなければならず、また、適用される厳格な顧客管理の種類は、当該リスクに対して効果的かつ整合的なものでなければならず、各国は、FATFによって求められた場合には、適切な対抗措置を講じることが可能であると規定されています。

今般のミャンマーブラックリスト入りは、「強化された顧客管理(Enhanced Due Diligence、以下、EDD)の適用」の要請(加盟国・地域にミャンマー関連取引へのEDDを求める)であり、「対抗措置の適用の要請」(EDDに加えて加盟国・地域にミャンマーにおける支店または駐在員事務所の設置の禁止又は留意を要請する等)には至っていません

FATFはミャンマーに対して「強化された顧客管理(EDD)の適用」として以下の観点でDD対策の強化を要請しています。

 

  1. 主要な分野におけるマネーロンダリングリスクに対する理解を向上すること
  2. オンサイト/オフサイト検査がリスクベースで行われており、Hundi(いわゆる地下銀行による送金)オペレーターが登録・監督されていること
  3. 捜査機関の調査において金融情報の利用を強化し、資金情報機関による業務分析と情報発信を増加させること
  4. リスクに見合ったマネーロンダリングの捜査・訴追を確保すること
  5. 国際的な協力による国境を越えたマネーロンダリング事件の捜査の実施
  6. 犯罪収益、犯罪道具及び同等の価値の財産の凍結・押収の増加
  7. 押収された資産を管理し、商品の価値を維持すること
  8. 大量破壊兵器拡散金融に関連する対象に絞った金融制裁の実施

 上記の要請に加えて、ミャンマーへの行動要請には、「強化された顧客管理措置を適用する際は、各国は人道支援や合法的なNPOの活動と送金に対する資金の流れを途絶しないことを確保すべきである」との記載も付記されています。

4 まとめ

 今回の措置により、直ちに外貨取引ができなくなるわけではありませんが、FATFやその加盟国によるミャンマーとの取引に対する監視強化や、ミャンマー国内の金融会社への監視強化、米国による経済制裁の動向などに影響が出る可能性があるため、今後の動向に注意が必要となります。

以 上