ラオスにおける外貨使用について
ラオスにおける外貨使用についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
→外貨使用について
ラオスにおける外貨使用について
2025年2月3日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
2022年10月より「改正外国為替管理法(以下、「外為法」)」が施行され、(詳細はニュースレターをご参照ください)、2023年7月に「外貨管理の実施に関する首相命令(No10)(以下、「首相命令」)(詳細はニュースレターをご参照ください)」を発行し、ラオス国内の外貨の使用について規制を強化してきました。今回、ラオス中央銀行(以下「中銀」)は、上記法令に基づき、ラオス国内の商品やサービスの支払いや価格表示等は、原則キープでなければならないことを強調しつつも、外貨を使用することできる対象、外貨の使用が可能な項目等を明確にするために、2025年1月3日付で「ラオスにおける外貨の使用に関する合意(No11)(以下、「合意」)」を発行しました。
2.外貨の使用について
(1)定義
合意第2条において「外貨の使用」を次のように定義しています。
商品やサービスの価格体系を外貨で設定することも含めて、商品・サービス料金等を外貨で設定、表示、広告及び外貨で商品・サービス料等の支払い/受け取りをすること
ラオスにおいて外貨を使用する場合は、①価格の設定、表示、広告、②支払い/受け取り、③価格体系の設定 の3つが構成要因となります(合意第5条)。各要因について、説明いたします。
(2) 外貨での価格の設定、表示、広告について
外貨の使用を許可された場合、価格の設定、表示、広告は、キープが主要通貨であり、外貨は副次的な通貨とします(合意第6条)。外貨の使用を許可されていない場合は、価格の設定、表示、広告はキープのみとします。
(3)外貨での支払い/受け取り
ラオス国内の個人、法人、組織が、外貨の使用を許可されたものと取引を行う場合、使用通貨はキープを原則とし、以下の条件のいずれか(又はすべて)に該当する料金の支払い/受け取りは、外貨で行うことが可能です(合意第7条)。
①国境や国際空港の出国側に所在する会社の商品・サービス料金
②外貨で収入を得ている輸出業者へ提供する商品・サービス料金(Global Supply Chain)
③ラオスへの出入国時の査証代、手数料、サービス料などの政府への支払い
④海外への商品輸送代及び旅客輸送代
⑤国境及び国際空港における商品の輸出入用の倉庫代
⑥ドライポートでのサービス料、例えば、倉庫代、積み替え代、輸送代、コンテナ洗浄代、運送車両修理代、コンテナ代、包装代、殺菌代
⑦商業銀行との外貨取引事業に関連する手数料、サービス料及び利息
⑧海外との保険料、例えば、海外旅行保険、海外プロジェクト保険代、運送保険及び再保険(Reinsurance)
⑨ホテル代、海外旅行代金
⑩カジノ事業にかかるサービス料
⑪商品又はサービスの輸出事業者の政府への支払い及びコンセッション料金の政府への支払い
⑫金融・通貨政策の実行
⑬無償資金供与
⑭国際的な公開入札におけるプロジェクトの入札価格
⑮その他ラオス中央銀行が承認する代金
(4)価格体系の設定
海外から輸入しない商品やサービスいついては、価格体系の設定はキープのみです。外貨で設定する場合は、上記2.(2)を順守する必要があります(合意第8条)。
3. 外貨を使用することができる対象
外貨を使用できる対象は、外貨の使用許可を得なくても使用可能な対象と使用許可を取得する必要がある対象とに区別されます。
(1)外貨使用の許可について
上記 2.(3)に記載の外貨での支払い/受け取りが可能な事項に関連する政府関連機関、国営企業、大使館、領事館、商業銀行は、外貨使用の許可を取得する必要はないと規定されています。他方、民間企業は、2.(3)に関連している事業であっても、原則、外貨使用の許可を取得する必要があります。例外として、2.(3)の⑨ホテル代、海外旅行代金の場合、ホテル、リゾート、ゲストハウス事業者は、外貨使用の許可を取得しないでも、外貨で宿泊代を表示したり、ウェブサイト上で外国語表記で宿泊代を外貨で宣伝することが可能となっています。また、海外から支払われる宿泊代は、電子決済等で行い、ラオス国内の商業銀行の口座に送金することが可能です(合意第10条)。
(2)外貨の使用許可の取得方法
事業を行っている地域にある、中銀及び各地域の中銀支部の外貨管理局に対して、合意第14条で規定する必要書類を揃えて、提出します。書類は、外貨を使用する必要性を記載したレターを含め、企業登録書、事業許可証、納税証明書、キープ及び外貨での収支計画表等が必要となります。中銀は、必要な書類を受理後、10営業日以内に、外貨使用許可証を発行します。申請者は、この許可証を発行後10営業日以内に、受け取りに来なければ、無効となります(合意第15条)。許可証の有効期間は1年間で、期限が満期となる30日前に更新手続きをする必要があります(合意第16条)。
4.罰則規定(合意第24条)
合意に違反した場合、違反の程度が軽い場合及び初回の場合は、文書による勧告がなされます。行政罰としては、指導後も改善が見られず、継続して違反した場合、違反額を明示できない場合又は違反額が100,000,000キープ(約70万円)以下の場合、10,000,000キープ(約7万円)から20,000,000キープ(約14万円)の罰金、が科せられます。
指導後も改善が見られず、継続して違反した場合、違反額が100,000,000キープ以上又は同等の額の場合、違反額の5%又は 20,000,000キープ以上の罰金が科せられます。
初回の違反で違反金額が100,000,000キープ以上又は同等の額の場合、違反額の3%の罰金としますが、その額は、15,000,000キープ(約10 万円)以上とします。
2回目の違反は、1回目の違反の時に課せられた罰金の額の2倍とします。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)
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