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ベトナムのデータ法(2025年7月1日施行予定)

2025年03月13日(木)

ベトナムのデータ法(2025年7月1日施行予定)に関するニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

ベトナムのデータ法(2025年7月1日施行予定)

 

<ベトナムのデータ法(202571日施行予定)>

日本語版と英語版では同じトピックですが、視点を変えてご説明しています。

2025年3月13日
One Asia Lawyers ベトナム事務所

I. はじめに

 ベトナム国会は、2024年11月30日付でデータ法(60/2024/QH15、以下「データ法」といいます。)を制定し、同法は2025年7月1日より施行される予定です。
 これに先立ち、ベトナムではすでに「個人データ保護政令」(13/2023/ND-CP)が施行されており、さらに2026年1月1日には「個人データ保護法」の施行が予定されるなど、個人データ・個人情報に関する規制の整備が進められています。
 本法は、個人情報に限定されないデジタルデータ全般の取扱いを規律するものであり、個人データ保護に関する既存の規制との関係を含め、企業が負う義務について正確に理解することが、ベトナムにおいて事業を行う上で不可欠です。

II. 規制対象について

 規制対象となる行為主体は、ベトナムの法人・個人、ベトナムの外国法人・外国人、ベトナムにおけるデジタルデータ関連業務に従事する外国法人・外国人となっています。
 規制対象はデジタルデータであり、デジタルデータとは、音声・画像・数字・文字・記号又はそれらを組み合わせたデジタル形式のデータです。

III. 遵守すべき義務及びデータ法の目的について

 デジタルデータを取り扱う企業が遵守すべき主な義務としては、下記が挙げられます。

  • デジタルデータへのアクセス・利用・使用における公開性・透明性・平等性・安全性の確保(データ法5条)
  • デジタルデータ処理等により国・社会秩序、法人・個人の正当な権利等を侵害しないこと(データ法10条)
  • 適切なデジタルデータ管理(データ法15条)
  • 非常時の国へのデジタルデータ提供(データ法18条2項)
  • デジタルデータの確認・認証(データ法20条)
  • デジタルデータ処理のリスク評価・是正・通知(データ法25条)
  • デジタルデータ関連製品・サービスを提供する場合の法令遵守(データ法39条~43条)


 デジタルデータの越境移転については、既に個人データ保護政令でも規定がありますが、データ法でも規制される予定です。ただし、現状は詳細が公開されていないため、詳細を説明する政令・通達の発表を待つ必要があります(データ法23条4項)。同様に、適切なデジタルデータ管理、非常時の国へのデジタルデータ提供、デジタルデータの確認・認証、デジタルデータ処理のリスク評価・是正・通知及びデジタルデータ関連製品・サービスを提供する場合の法令遵守に関しても、現状は詳細が公開されていないため、詳細を説明する政令・通達の発表を待つ必要があります(データ法15条5項、18条4項、20条3項、25条5項、39条5項、40条3項、41条3項、42条4項、43条5項)。

 なお、ベトナム政府・国家が全国総合デジタルデータベースを構築し、デジタルデータセンターを設置・運用すること、企業等が当該データベースの利用料を支払う必要があることなども記載されています(データ法30条~38条、44条1項)。こちらも現状は詳細が公開されていないため、詳細を説明する政令・通達の発表を待つ必要がありますが、これによって行政手続や公共サービスのオンライン化を実施して、特に建設業許可取得のような省庁間の連携が必要な手続の所要時間を短縮し、行政手続や公共サービスの合理化・効率化を達成する目的があるものと考えられており、企業としてデータ法の内容を理解しておくことは極めて重要であるといえます。

IV. 罰則・効果

 現状はデータ法の義務に違反したことに対する罰則及び是正措置に関する規定はありません。

V. 「個人データ保護政令」(PDPD)への影響、他の法律への影響

 データ法4条において、データ法施行前に施行された法律がデータの保護等に関して規定していて、データ法の規定に反しない場合には、当該法律の規定が適用されることになっています。また、データ法施行後に施行された法律がデータ法の規定と異なる規定を定めている場合には、どちらが適用されるかをデータ法が決定するとされています。

 現状は詳細が不明ですが、今後の法・政令・通達においてデータ法と異なる規定がある法律に関してはどちらの規定が優先するかが公表される予定です。現状、データ法の規定と異なる規定を持つ法・政令・通達が何かをデータ法が特定していないため、個人データ保護政令(PDPD)の規定とデータ法の規定が異なるのかどうかも不明ですが、今後のデータ法に関連する法・政令・通達の公表に注目する必要があります。

 また、データ法44条2項において、電子取引法(20/2023/QH15)3条8項のデジタルデータの簡単な定義が無効とされるなど(データ法3条1項でデジタルデータに関する定義が規定されたためと思われます。)、電子取引法に変更が加えられている点にも留意する必要があります。


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