日本:プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備の概要
東京証券取引所のプライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備の概要についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
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プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備の概要
2025年3月14日
One Asia Lawyers 東京オフィス
弁護士 松宮浩典
東京証券取引所は2024年2月26日、プライム市場における英文開示の拡充に向けた制度整備を行うため、「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について[1]」や「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備の概要[2]」を公表しました(以下「本改正」といいます。)。本改正とあわせて、同年5月9日に「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正について[3]」を公表し、同日にパブリック・コメントの結果[4]や主な質問及び回答[5]についても公表されました。
今月のニューズレターでは、本改正の概要について解説いたします。
なお、本改正は2025年4月1日より施行されます。ただし、必要な体制整備に時間を要する企業も想定されることから、英文開示が困難な場合は、2025年1月6日から3月14日までの間に、英文開示の実施予定時期を記載した書面を提出することで、最大で1年間猶予を受け、2026年4月1日以降に開示するものから適用を受けることも可能です。
改正の概要
本改正の主なポイントは、プライム市場の上場会社は、重要な会社情報について英文開示の努力義務が定められるとともに、決算情報・適時開示情報については英文開示が義務化される点になります。
(1)英文開示に関する努力義務の新設
プライム市場の上場会社は、重要な会社情報について、可能な限り日本語と同時に、英語で同一の内容の開示を行うように努める旨の努力義務が新設されました(改正有価証券上場規程第445条の8)。
(2)決算情報・適時開示情報の英文開示の義務化
プライム市場の上場会社における実務上の負荷も鑑み、まずは、特に投資判断に与える影響が大きく、速報性が求められる決算情報及び適時開示情報について、日本語による開示と同時に、英語による開示が義務化されました(同規程第436条の4第1項)。英文による開示内容については、全書類・全文について同時に開示することが望ましいとされていますが、日本語による開示の内容の一部又は概要を開示すれば足りるものとされています(同規程第436条の4第2項)。
具体的な義務化の内容は、下表のとおりです。
項目 | 想定される書類 | 英文開示の時期 |
決算情報 |
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適時開示情報 |
【上場会社の情報】
【子会社等の情報】
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英文開示について、日本語による開示と同時に行うことが求められていますが、英語による同時開示を行おうとすると、日本語による開示の遅延が生じるとき、例えば、発生事実に係る開示など急遽対応が必要になる場合や、関係者との調整等により開示直前まで日本語による開示内容が定まらない場合は、同時でなくても足りるとされています(同規程第436条の4第1項但し書き)。まずは日本語による開示を優先し、英文開示は、日本語による開示の一部又は概要を同日中に開示することが求められています。
なお、決算情報及び適時開示情報の日英同時開示が実施されなかった場合には、その内容や経緯・原因等に応じて、公表措置等の対象となる場合があります(同規程第508条第2項)。一方で、英語による開示内容の正確性については、日本語による開示の参考訳として位置づけられており、違反措置の対象となりません。
東京証券取引所では、決算短信・四半期決算短信(サマリー情報)及び適時開示に関する英文開示の様式例を提供しています[6]。さらに、英文資料に記載するディスクレイマーの文例も示されているため、英文開示を進める際の参考として利用できると考えられます。
以上
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本記事に関するご照会は以下までお願いいたします。
弁護士 松宮浩典
hironori.matsumiya@oneasia.legal
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[1] 東京証券取引所「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について」(2024年2月26日)
[2] 東京証券取引所「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の概要」(2024年2月26日)
[3] 東京証券取引所「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正について」(2024年5月9日)
[4] 東京証券取引所「『プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について』に寄せられたパブリック・コメントの結果について」(2024年5月9日)
[5] 東京証券取引所「プライム市場における英文開示の拡充に関して寄せられた主なご質問と回答(2024年10月更新版)」(2024年10月7日)
[6] 東京証券取引所「英文開示様式例」