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フィリピン:外国人雇用に関する新規則

2025年03月18日(火)

フィリピンの外国人雇用に関する新規則についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

外国人雇用に関する新規則

 

外国人雇用に関する新規則

2025年3月
One Asia Lawyers Philippines Team
日本法弁護士 難波 泰明
フィリピン弁護士 Camille Himala

1.はじめに

 2025年1月21日、フィリピン労働雇用省(DOLE)は「フィリピンにおける外国人雇用に関する新規則」(省令第248-2025号)を発行しました。
 この新規則は、外国人雇用許可(AEP)の発行手続きや外国人の雇用に関する従来の規則にいくつかの変更を加えたものです。本規則は、2025年2月10日から施行されます。

2.外国人雇用許可(AEP

 外国人雇用許可(AEP)とは、フィリピン国内で雇用主による有給の雇用に従事する能力と資格を持つ外国人に対し、フィリピン労働雇用省(DOLE)が発行する許可です。

 フィリピンで外国人を雇用しようとするすべての雇用主は、本規則に基づき適用除外または免除される場合を除き、当該外国人の雇用を開始する前にAEPを取得しなければなりません。

3.労働市場テスト(LMT)及び経済的必要性テスト(ENT

(1) 労働市場テスト(LMT

 労働市場テスト(LMT)は、AEP申請時において、当該外国人が従事しようとする職務に適した能力を有し、勤務が可能であり、かつ就労の意思を持つフィリピン国民がいないことを確認するための手続きです。雇用主は、後述の公示手続きを守ることで、LMTの要件を満たす必要があり、従来から実施が必要とされていました。

(2) 経済的必要性テスト(ENT

 新規則では、LMTに加えて、新たに経済的必要性テスト(ENT)が導入されました。これは、企業の業務内容、専門性のレベル及び技術知識、及び財政的優遇措置を受け、または重点または戦略的投資分野もしくは公共事業に従事する企業の産業上の要請の観点で、外国人の雇用が国内労働市場の欠員や労働力不足、または特定の必要性を補うために必要であるかを評価するものです。
 DOLE地域事務所(DOLE-RO)は、AEP申請を評価する際、本規則に定められた要素および今後発行される指針に基づき、ENTを実施することになります。

4.公示及び掲示

 従来の規則では、雇用主が求人情報を全国紙に掲載し、DOLE-ROがAEPの新規申請を30日間にわたりウェブサイトおよびPESO(公共雇用サービス機関)の求人掲示板に掲示することを義務付けていました。
 新規則では、雇用主が、3つの指定された媒体で求人情報を公示する責任を負うことになりました。また媒体として、新たにPhilJobnetが含まれることになりました。これを受け、雇用主はAEP申請前に、以下の媒体で当該求人を公示する必要があります。

  • 全国紙
  • PhilJobnet(フィリピン政府が運営する求人サイト)
  • PESO(公共雇用サービス機関)または求人斡旋機関(JPO)(予定勤務地の管轄区域内)


 公示の有効期間は45日間です。この期間内にAEP申請が行われない場合、当該求人の公示を再度実施する必要があります。

5.申請時期及び申請先

 従来の規則では、AEP申請は雇用契約締結日から10営業日以内、または雇用開始前に行うこととされていました。
 新規則の下では、勤務地を所管するDOLE-ROに、AEP申請を、公示から 15日経過後であり(ただし、その公示の有効期間は45日間)、かつ、雇用契約締結から 15日以内に提出することとなりました。また、雇用契約の効力はAEPの発行を条件となります。
 さらに、外国人が国外にいる場合でもAEP申請は可能ですが、適切な査証(ビザ)を取得しフィリピンに入国した後でなければAEPは発行されないと規定されています。ただし、一般的に、9gビザの発給には、まず承認されたAEPが必要となります。したがって、AEPの申請は9gビザの取得前に行わなければならないという点は変わりません。いずれの場合でも、AEPは外国人がフィリピンに到着してから発行されます。

6.免除証明書及び適用除外証明書

 AEPの取得が免除される外国人は、DOLE-ROに対し「免除証明書」を申請しなければなりません。従来の規則では、この証明書の取得は任意でした。
 また、AEPの適用除外に該当する外国人は、従来の規則と同様に「適用除外証明書」を申請しなければなりません。

7.技能開発プログラム(SDP)及び実習研修プログラム(UTP

(1) 概要

 自国の人材開発を促進し、技能・知識・技術の移転を確保するという政策に基づき、新規則では以下の雇用主に対し、技能開発プログラム(SDP)または実習研修プログラム(UTP)の導入を義務付けています。

  1. 政府から財政的優遇措置を受ける企業
  2. 重点または戦略的投資分野に従事する企業
  3. 公共事業を運営する企業(公共サービス法に基づく)

(2) SDP(技能開発プログラム)

 SDPとは、外国人が持つ技術や技能を、同じ雇用主の正規従業員(一般職)2名以上に対し、学習セッションまたはその他の研修方法を通じて移転するための訓練計画です。

(3) UTP(実習研修プログラム)

 UTPとは、外国人が持つ技術や技能を、当該外国人の次席に位置する正規従業員2名以上に移転するための訓練計画です。

(4) 実施方法

 SDPおよびUTPは、AEP申請時にDOLEに提出しなければならず、本規則で指定された詳細事項を含む必要があります。
 また、進捗評価や達成・完了報告書を、各評価時またはSDP・UTPの完了後 5営業日以内 にDOLE-ROへ提出しなければなりません。

8.禁止行為

 以下の行為を行った場合、雇用主および外国人は責任を負います。

  • 虚偽の陳述、偽証、改ざん、詐欺、またはこれに類する行為であって、新規則第II章第10条a),b)に定めるAEP申請拒否事由に該当するもの
  • 新規則第IV章第3条a),b),c)に定めるAEP取消しの事由に該当する行為
  • 本規則の条項を故意または意図的に無視・不遵守する行為

9.企業が取るべき対応

 フィリピンで外国人を雇用する企業および、現在または将来的にフィリピンで働く予定の外国人は、新規則に基づく手続きや要件を把握し、AEPの適時申請および円滑な承認を確保する必要があります。また、SDPまたはUTPの提出・実施義務があるかを確認し、必要に応じた対応を取ることが求められます。
 公示要件の詳細、追加のポジションに関するガイドライン、その他の修正点については新規則をご参照ください。