各国のAI法令・ガイドライン- 第1回:インドネシア –
各国のAI法令・ガイドラインに関するニュースレターを発行いたしました。第1回の今回は、インドネシアとなっております。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
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各国のAI法令・ガイドライン
– 第1回:インドネシア –
2025年11月
One Asia Lawyers Group
AI法務プラクティスグループ
ニューヨーク州法弁護士 友藤 雄介
1. はじめに
2024年8月にEUにおいて人工知能に関する法(Artificial Intelligence Act (AI法)) [1]欧州議会で発効されてから1年超が経過しました。AI法の本格的な施行は発行から2年後とされ、来年8月にはこれを迎えようとしています。AI法はAIに関する世界的に見ても初めての包括的な法律と言われておりますが、各国のAI分野に対するアプローチは多様であり、また、その情報は十分に整理・公開されているとは言い難いのが現状です。One Asia Lawyersでは、今後そのような各国、特にアジアにおけるAI関連法令及びガイドラインに焦点を当て、各国の動向を取り上げて参ります。第1回目となる本稿では、インドネシアにおけるAI規制の現状を取り上げます。
2. 人工知能(AI)の倫理に関する通信情報大臣通達2023年9号
(1) 概要
インドネシアにおいては、基本的に人工知能の開発や利用に関する規制は見当たらないものの、2023年12月に通信情報省(現在は通信・デジタル省)が公布した人工知能の倫理に関する通信情報大臣通達第2023年9号(「本通達」)がガイドラインとして機能しております。
(2) 倫理に関する原則
本通達はAI活用における9つの倫理原則として以下を定めております(第6条b)。
- インクルーシブ性
- 人権尊重
- 安全性
- アクセシビリティ
- 透明性
- 説明責任
- 個人データ保護
- 持続可能性及び環境
- 知的財産権保護
(3) 事業者に対する実施及び責任に関する原則
本通達は更に事業者に対する実施原則及び責任原則として、以下を定めています。いずれも原則を定めるのみであり、これを元にどのような対策をおこなうべきかについての詳細や違反時の罰則は規定されていないものの、インドネシアにおけるAIの開発や利用においては以下の点に留意が必要かと存じます。
- 実施に関する原則(第6条c第1項)
- 内部規程や倫理に基づく導入
- 教育・人材育成の実施
- 人間活動の支援
- 政府・事業者・利用者による監督
- 創造性・利便性向上を目的とした利用
- プライバシー尊重
- 責任に関する原則(第6条c第2項)
- 公共の利益の保護
- 政策決定への利用の制限
- 人種差別防止
- イノベーション推進
- 規制遵守
- 透明な情報提供
- リスク管理
3. 総括
インドネシアにおいては、基本的に人工知能の開発や利用に関する規制は見当たらないものの、本通達がガイドラインとして機能しております。
本通達には法的拘束力はないものの、上記のとおり本通達は(i)人権尊重、安全性、透明性、説明責任等の倫理に関する原則、(ii)内部規程や倫理規定の制定等の実施に関する原則、更に、(iii)リスク管理等の責任に関する原則を定めております。
本通達は、現状ガイドライン段階ではあるものの、今後本通達を元に法令化が進む可能性は存在するところ今後の動向に注視が必要です。
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[1] AI法に関する過去のニュースレター: https://oneasia.legal/12675

