アフリカ:(第17回)イギリスでアフリカ社会と法を学ぶ アフリカで「人権」概念について考える(3)
「(第17回)イギリスでアフリカ社会と法を学ぶ アフリカで「人権」概念について考える(3)」に関するニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからもご覧いただけます。
→(第17回)イギリスでアフリカ社会と法を学ぶ アフリカで「人権」概念について考える(3)
(第17回)イギリスでアフリカ社会と法を学ぶ
アフリカで「人権」概念について考える(3)
2026年 9月
One Asia Lawyers Group
原口 侑子(日本法)
アフリカで「人権」が普遍的な「オーラ」をまといつつ、いかに地域規範として翻訳されているのかということを考えている。そこで参考になるのが、アジアでのグローバル概念の受容のあり方の研究である。
Ong and Collier (2005)は、「グローバル」という言葉が「普遍性」を指すために用いられることがあると論じている。この「普遍的」としての「グローバル」は、その正当性が特定の「文化や社会」に依存したり関連したりせず、その意味が文脈から切り離され、再文脈化される現象を指す。それとは対照的に、タイの国家人権委員会は、仏教的道徳観(Selby, 2018)や「王権」(Selby, ed. Chatterji, 2015)を人権と統合することで、人権の概念を用いて地域の自由を促進している(Selby, ed. Chatterji, 2015)。セルビーは、「グローバル・ローカルな翻訳」という用語ではなく「創発」という用語を用い、人権の解釈を「日常的な社会性、道徳、政治の形態における交渉の問題」として説明している。
Selby(2018)は、「普遍主義を用いて人権にアプローチする」ことは、「異なる状況に置かれた」地域性に対する明確な視点を失うことになると示唆している。セルビーは、人権が常にそれぞれの地域的文脈の中で創出されることを強調し、人権が社会的文脈から「独立して存在したことは決してない」と指摘している。革命期のフランスであれ、『世界人権宣言』の草案を作成した国連起草委員会であれ、あるいはタイであれ、「人権は、宗教的・政治的文脈において生じた闘争や争いの中で、そしてそれらを通じて出現してきた」(2018)。タイの場合、より広範な国民への普及を図るため、人権の概念を強化する手段として、平等主義的な仏教的世界観という宗教的モデルが追加された(Selby, 2018)。
Riles(2000)は、フィジーにおける人権テクノクラートや活動家に関する研究において、国際開発機関、特にフィジーの「女性と開発(WID)」プログラム、および国際会議やNGO活動といった「ネットワーク」の構造を分析している。そこには、文書、統計、組織図といった形式的な「成果物」という独自の哲学が存在する。彼女は、人権の概念――具体的には、人権としての女性の権利――が、CEDAW(女性差別撤廃条約)のような法的情報を伴う国際機関の活動形態を通じて形成され、推進されていることを示している(Goodale, 2017)。
これには二つの重要な点が示唆されている。第一に、地域的な文脈においてミクロな視点から人権言説を考察する必要性、第二に、国内化のプロセス、特に人権がどのように「合法性」として正当化されるかを調査する必要性である。ここで、人権の概念がその正当性を国際システムから導き出しているという根本的な事実(Merry and Levitt, 2017)は、地域社会の見解に対するその影響力を増幅させたり、あるいはその概念に対する抵抗を生み出したりする可能性がある。この問題は、特定の「合法性」に対する地域社会の態度として、「法意識」に関する議論においても検討されている。
(参考文献)
Goodale, M. Anthropology and Law : A Critical Introduction, New York University Press, 2017. Chapter 4. Human rights and the Politics of Aspiration.
Levitt, P. and Merry, S. E. 2009. Vernacularization on the ground: local uses of global women’s rights in Peru, China, India and the United States
Merry, S. E. and Levitt, P. 2017. Chapter 9. The Vernacularization of Women’s Human Rights. in Hopgood, S., Snyder, J., Vinjamuri, L. (Edited) 2017. Human Rights Futures. Cambridge University Press.
Ong, A and Collier, S, J. 2005. Global assemblages: technology, politics, and ethics as anthropological problems. Blackwell Publishing Ltd.
Riles, A. 2000. The Network Inside Out. University of Michigan Press
Selby, D. 2015. Chapter 8: Experiments with Fate: Buddhist Morality and Human Rights in Thailand. In Chatterji, R. (ed) Wording the World: Veena Das and Scenes of Inheritance. Fordham University
Press. New York. ––––––– 2018. Human rights in Thailand. Philadelphia : University of Pennsylvania Press.
≪ 前へ |

