• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

中国「出境入境管理規定」が施行 ― 駐在員・出張者の入出国、招へい業務、査証代行サービスに与える影響 ―

2026年09月14日(月)

「中国「出境入境管理規定」が施行 ― 駐在員・出張者の入出国、招へい業務、査証代行サービスに与える影響 ―」に関するニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからご覧いただけます。
中国「出境入境管理規定」が施行 ― 駐在員・出張者の入出国、招へい業務、査証代行サービスに与える影響 ―

中国「出境入境管理規定」が施行
駐在員・出張者の入出国、招へい業務、査証代行サービスに与える影響

 2026年9月
One Asia Lawyers Group
中国大湾区プラクティスチーム
森 仁司(日本法)
馮 逸倫(中国法)

はじめに

2026年7月31日、中国国務院は「出入国管理に関する規定」[1](以下「本規定」)を公布しました。全19条からなり、2013年施行の「出境入境管理法」を補完する形で、①中国公民の出国時の安全リスク防止、②出入国申請の真実性確保、③出国・入国禁止事由の明確化、④出入国仲介(ビザ・査証代行等)サービスの規制という4本柱で構成されています。施行日は2026年9月15日です。
日本本社にとっては、中国への駐在員・出張者の入国審査の実務、現地法人が発行する招へい状(邀請函)の記載内容の真実性についての責任、現地の査証代行業者(ビザエージェント)の適法性確認に直接関わる内容であり、また技術輸出管理・国家安全に関わる事案に関与した中国人従業員の出国が制限され得るという点でも留意が必要です。

1 出入国申請における「真実性・適法性」の要求(第3条)

中国への入国者及び中国からの出国者は、出入国・在留の事由が真実かつ適法でなければならず、移民管理機構・査証機関から身分や申請事由の確認のため資料・データ(電子データを含む)の提出を求められた場合は協力する義務があります。
さらに重要な点として、出入国者のために招へい状その他の申請資料を発行する単位・個人(企業・現地法人を含む)は、その内容の真実性について責任を負い、確認への協力義務を負うと明記されました(第3条第3項)。虚偽の資料・陳述があった場合、査証・出入国証件の不発給や出入国拒否の対象となります(同条第4項)。
これらの点は、従前から求められていたことではありますが、中国現地法人が日本本社の役職員や出張者のためにビザ招へい状(工作許可・訪問招へい等)を発行する際、記載内容(訪問目的、滞在期間、業務内容等)の正確性を今まで以上に厳格に確認する必要があります。

2 招へい状等の虚偽記載に対する罰則(第11条)

個人が虚偽の招へい状・申請資料を発行した場合は5,000元以上1万元以下の過料、単位(法人)が行った場合は1万元以上5万元以下の過料(違法所得があれば没収、直接責任者にも5,000〜1万元の過料)が科されます。
現地法人の人事・総務担当者が日常業務として招へい状を作成している場合は、実態と乖離した記載(架空の出張目的、実際と異なる滞在先等)がないか確認し、必要に応じて、テンプレートの記載内容や承認フローを見直すことが求められます。

3 中国公民(現地スタッフ含む)の出国制限事由の明確化(第4条)

以下のいずれかに該当する中国公民(中国人)は、中国からの出国を認められない場合があります。

事由

制限期間・主体

出入境証件の不正取得・不法出入境で行政拘留処分を受けたとき

処分執行完了から6ヶ月〜3年、移民管理機構が決定

海外で国家安全・利益を害する違法犯罪活動に従事したとき

帰国から6ヶ月〜3年、国務院主管部門または省級人民政府が決定

輸出管理・技術輸出入管理等の規定に違反し、国家の産業安全・技術安全を害するおそれがあるとき

商務部等の国務院主管部門が出国不許可を決定可能(期間の定めなし)

特に留意を要するのは3点目です。中国現地法人に所属する中国人従業員(技術者・研究員等)が、輸出管理規則違反の疑いをかけられた場合、出国そのものが制限されるリスクが明文化されました。昨今の米中間の技術摩擦を背景とした規定と考えられ、先端技術・半導体・軍民両用技術等に関わる事業を行う現地法人では、コンプライアンス体制の再点検が望まれます。

4 外国人(駐在員・出張者)の入国拒否事由(第5条)

外国人については、以下の場合に入国が認められない可能性があります。

 

事由

制限内容

海外での中国査証申請時または口岸(イミグレーション)での入国申請時に虚偽資料・虚偽陳述を行ったとき

1年〜5年の入国禁止

出入国管理妨害により刑事処罰を受けた、または証件の不正取得・不法出入国により行政処罰を受けたとき

処罰執行完了から1年〜5年の入国禁止

反制裁リスト(反制清単)・信頼できないエンティティリスト(不可靠実体清単)・悪意あるエンティティリスト(悪意実体清単)等に掲載され、対抗・制限措置の対象となっているとき

法に基づき査証等出入境証件の不発給又は入国不許可等の関連措置を講じる必要がある場合は、移民管理機構・査証機関がそれぞれの職責に従ってこれを実施する

1点目及び2点目は、出入国管理上当然の措置ですが、3点目は、米国等による対中制裁措置への「対抗措置」として中国が設けているリストに関連するものです。日本企業・日本人役職員が直接対象となる可能性は現時点で高くはないものの、米中間の制裁の応酬に巻き込まれる形で、特定の業種・取引関係にある企業の役職員が影響を受ける可能性がありますので、駐在員・出張者の渡航前に、最新の制裁関連リストの動向を確認しておくことが望ましいといえます。

5 出国禁止決定に対する通知・救済(第6条)

出国不許可の決定機関は、原則として当事者に対し書面で事実・理由・根拠・救済手段を通知する義務を負います(ただし国家安全や刑事捜査に影響する場合は非通知も可)。移民管理機構が決定を執行する際も、決定機関の通知内容に基づき当事者へ告知する必要があります。
現地スタッフや日本からの出張者が中国の空港で出国を制限された場合、書面での理由開示を求める権利があることを、本社及び現地法人の人事・法務部門として認識し、緊急時の社内対応フロー(現地弁護士への連絡体制等)を整備しておくことが有用です。
なお、外国人の入国拒否(第5条)については、本条(第6条)のような書面告知・救済の規定は置かれていません。日本からの出張者・駐在員が海外での査証申請時又は中国入国時(口岸)に入国を拒否された場合、出国制限の場合と同様の書面での理由開示を受けられるとは限らない点にご留意ください。

6 出入国仲介サービス(ビザ代行業者等)に対する規制強化(第7条〜第13条)

出入国政策相談、証件代行、手続代行等の中介(仲介)サービスを行う機構・個人は、届出制(備案管理)の対象となります(第7条)。既存業者は施行日から90日以内(すなわち、2026年12月14日まで)に届出が必要です。適法に設立されること、法定代表者に故意犯罪の前科がないこと、専門知識を有する人員・相応の資金・場所を有すること、データ安全管理体制の整備等が仲介機構の要件とされています(第8条)。また、中国からの出国仲介業務を行う場合は海外(中国国外)のサービス機構との提携関係が必要とされる一方、中国国外企業・機構は中国国内で出入国仲介サービスを直接提供することはできません(第8条)。虚偽宣伝、虚偽資料の提供・提供への協力、査証等の違法取得への協力、業務上知り得た商業秘密・個人情報の漏洩・売却、届出範囲を超える業務等は禁止行為とされており(第10条)、違反時の罰則(是正命令、会社等の場合5,000元〜5万元の過料、個人の場合5,000元以下の過料)、業務停止・営業許可取消し、違法所得の没収等)も規定されています(第12条・第13条)。
現地法人駐在員・日本からの出張者のビザ取得を外部の人材紹介会社・中介業者へ委託している日本企業・現地法人は、実績・知名度のある中介機構を選定することが望ましく、特に小規模・新規の業者を利用する場合は、委託先が本規定に基づく届出(備案)を完了しているかを確認することが望まれます。

最後に

以上、本規定について、特に日本本社及び中国現地法人において留意すべき事項についてご説明いたしました。
本規定の内容に対しては、各種メディアやSNS等による誇張したコメントも見られますが、内容を正しく認識し周知するとともに、日中間での企業活動におけるコンプライアンスの維持に努めることが肝要かと思われます。以下、本文に記載した内容に基づき、チェックリストを示します。

【チェックリスト】

項目

チェックポイント

招へい状(邀請函)発行プロセスの点検

記載内容(訪問目的・期間・業務内容)が実態と一致しているか、承認フローに漏れがないか

ビザ代行業者(中介機構)の届出状況確認

委託先が実績・知名度のある業者か(未確認の場合は備案状況を照会)、境外企業が直接中国国内で仲介業務を行っていないか

輸出管理コンプライアンス体制の再確認

先端技術・半導体等の関連業務に従事する中国人従業員について、輸出管理違反リスクが出国制限に直結し得ることを踏まえた社内研修・審査体制の強化

制裁関連リストのモニタリング

反制清単・不可靠実体清単等の最新状況を確認し、駐在員・出張者の渡航計画への影響を事前に評価

緊急時対応フローの整備

現地スタッフ・駐在員が出入国時に予期せぬ制限を受けた場合の、現地弁護士・本社法務部との連絡体制の確認

本件に関しさらにご質問等ございましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
※本ニュースレターは中国法に関する一般的な法令情報を提供するものであり、具体的なアドバイスや法的意見を提供するものではありません。

[1] 中国語:国务院关于出境入境管理的规定


  |