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マレーシア汚職防止委員会法改正における留意点

2019年01月14日(月)

2018年10月1日に施行されたマレーシア汚職防止委員会法改正における留意点についてご報告いたします。→マレーシア汚職防止委員会法改正における留意点

 

マレーシア汚職防止委員会法改正における留意点

2018年11月13日

One Asia Lawyers

1.イントロダクション

 マレーシアでは、汚職対策として汚職防止委員会(Malaysian Anti-Corruption Commission:以下「MACC」)を設置し、汚職防止やそれに関わる規則を定めたマレーシア汚職防止委員会法(Malaysian Anti-Corruption Commission Act 2009:以下「MACC 法」)が施行されています。

 特に、マレーシアにおいては、シンガポールなとと同じく、公務員への汚職行為だけではなく、私人間の汚職行為も罰せられる規定となっているため、注意が必要となります。

 世界の汚職防止を目指す非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルによる「汚職認識指数(Corruption Perception Index: CPI)2017」で、マレーシアは世界180カ国中62位、東南アジア汚職による逮捕者は減少せず、汚職は大きな問題となっています。

 これまでのMACC法では、個人を違反・罰則の対象としていましたが、責任の範囲を会社に買う題するための同法改正法(Malaysian Anti-Corruption Commission (Amendment) Act 2018:以下「MACC改正法」)が、2018 年 5 月 4 日に公布されました。今回の改正では、会社が組織内における汚職防止の対策を講じることを奨励するため、会社の責任に関する規定(MACC改正法4条により追加されたMACC法17A条:以下「新17A条」)が追加されています。これは実際に汚職を行った従業員などの会社関係者だけではなく、適切な汚職防止措置をとったことについての反証がない限り、会社にも責任が追わさされる両罰規定となっており、マレーシアにおける贈賄に関する重要な改正と考えられますので、新17A条の主な内容を以下で説明させていただきます。

 なお、MACC改正法は新17A条追加以外の条項につき、2018年10月1日に施行されています。新17A条は2020年までに施行されるとの新聞報道がありますが、施行時期について、今後の動向に注意が必要となります。

2.会社の責任

 会社関係者(a person associated with the commercial organization)が、会社のために事業(あるいは事業遂行上の利点)を得るまたは維持することを意図して、利益の供与、供与への同意、約束または申出を行った場合、当該会社に対する罰則が適用されます(新17A条1項、2項)。

3.適用対象(Commercial Organization)

 以下にあてはまる会社はCommercial Organizationとみなされ、MACC法の適用対象となります(新17A条8項)。

 i. マレーシア国内外を問わず事業を行うすべてのマレーシア会社
 ii. 事業または事業の一部をマレーシア国内で行う会社
 iii. マレーシア国内外で事業を行うマレーシアの組合または有限責任事業組合
 iv. 事業または事業の一部をマレーシア国内で行う外国の組合

4.会社関係者

 会社関係者には、取締役、パートナー、従業員のほか、会社のために役務を提供する者も含まれます(新17A条6項)。「会社のために役務を提供する者」は広く解釈されることを意図したものであり、「会社のために役務を提供する者」とみなされるかどうかは、関連するすべての状お経を考慮して判断されることになります(新17A条7項)。

5.取締役・管理者の責任

 以下の人物は、会社内での汚職について原則として会社と同様の責任を負います(新17A条3項)。

 i. 取締役、管理者、役員、パートナー
 ii. 問題となる汚職の管理に関係する者

 ただし、上記の人物で責任を問われた人物は、以下の2点を証明すれば責任を負わない旨、規定されています。

 a. 汚職行為が自身の同意なく行われたこと
 b. 汚職行為を防止するための適切な注意を払っていたこと

6.適切な措置の証明

 汚職の責任を問われた会社は、汚職行為を防止するための適切な措置を講じてきたことを証明して免責を主張することができます(新17A条4項)。

7.罰則

 汚職行為について有罪判決を受けた場合、会社、取締役、役員および管理者は以下に挙げる罰則のいずれか又はその両方を科せられることが規定されています(新17A条2項)。

 i. 贈賄の対象となった利益の10倍又は100万リンギットのいずれか高い方の額を上限とする罰金
 ii. 20年以下の禁錮刑

8.おわりに

 上述の会社に対する責任は2020年までに施行されると報道されています。この施行がなされた場合、マレーシアのローカル社員が行った汚職行為の責任が、その会社・取締役まで及ぶ可能性があるため、マレーシアで事業を行う会社は、汚職防止に対する適切な対策を策定して組織運営を実施することが重要になるかと思料致します。

 この場合の具体的に適切な対策とは、①汚職防止規定の策定だけにとどまらず、②研修・セミナ0などの周知徹底のための活動、③汚職に関する監査の実行、④汚職防止のための内部通報制度の設置などが考えられ、実効性のある内部統制・コンプライアンス対応を行う必要があります。

以 上