ベトナムにおけるゴルフ場投資に関する新規定について

2020年05月22日(金)

ベトナムにおけるゴルフ場投資に関する新規定について報告いたします

ゴルフ場投資に関する新規定について

 

ベトナムにおけるゴルフ場投資に関する新規定

2020 年 5 月 11 日
One Asia Lawyers ベトナム事務所

1 概要

 ベトナム政府は 2020 年 4 月 27 日、ゴルフ場の建設や経営を目的とする投資について定めた政令 52/2020/ND-CP 号(以下、「本政令」といいます)を公告しました。本政令は 2020 年 6 月 15 日に発効します。

 ゴルフ場への投資はこれまで、首相が定める「2020 年までのベトナムゴルフ場計画」においてリストアップされたゴルフ場のみが対象とされていました。

 今後は、リストアップ形式による投資対象の限定は廃止され、本政令で定める要件を満たすことで、ゴルフ場投資が可能になります。

 なお本政令で規律しているのは、18 ホールを標準とするゴルフ場であり、いわゆる打ちっぱなしなどの練習場は対象外と考えられます。 
 1986 年にドイモイ政策の一つとして市場経済を導入して 30 年以上の時が経つベトナムです が、一部の業界や商品等については計画経済が継続され、5~10 年単位での開発計画の策定・ 実施がなされ、ゴルフ場投資も上記の「計画」によって管理されていました。しかしながら、 現地紙の報道によると、この「計画」に含まれていたゴルフ場のうち、実際に開発・運営がなされていたのは半分程度にとどまり、「計画」に含まれていても、利益見通しが立たないとい った理由で投資が進められていないものも多数あったとのことです。その一方で、「計画」に含まれていないために投資をしたくてもできないゴルフ場開発案件も多数存在していました。

 ベトナムは2019年に発効した「計画法」によって、特定の商品・サービスについて策定していた開発計画を廃止して市場ニーズに任せる方針としており、そのような流れのなかで公告された本政令は、ベトナムの市場経済化を更に推し進めるための新たな一歩、と言えるかもしれません。

 以下、本政令について紹介いたします。

2 用語の定義

 本政令では、「ゴルフ場」を「ゴルフプレーヤー(以下、「プレーヤー」といいます)に資するために適した規模、技術基準で設計されたゴルフコースと付帯施設を含む施設」(第 2 条 1 項)と定義し、「付帯施設」を、ゴルフ場の管理運営用の施設のほか、「プレーヤー用の宿泊、サービス施設」が含まれる、と定義しています(第 2 条 5 項)。

3 ゴルフ場の建設用地と投資家の要件

(ア)建設用地

  ゴルフ場を建設する場所は、第 5 条 1 項に定める次の要件を満たしている必要があります。

a)「ゴルフ場投資が経済・社会、サービス、観光、スポーツ開発を促進するためのものであること」、「ゴルフ場プロジェクトの実施が国防、安全保障、秩序、社会の安全、社会道徳、公衆衛生、環境、天然資源、歴史・文化遺跡、景勝地に影響を与えないものであること」、「ゴルフ場建設に使用する土地が土地使用計画に合致していること」など、第 3 条 1 項から 3 項に定める原則に合致し、第 6 条で定める土地使用に関する要件を満たすこと。

第 6 条で定める土地使用に関する要件(抜粋)
ゴルフ場・付帯施設の建設に用いることができない土地(同条 1 項)
a)国防・安全保障用地
b)森林地、稲作地(*山岳部などで例外あり)
c)等級付けが済んでいる歴史・文化遺跡、景勝地、省級人民委員会の調査リストに属する遺跡を構成するエリアに属する土地(*遺跡等に影響を与えないことを条件に隣接する土地などを使用できる場合がある)
d)工業団地、産業クラスター、集積 IT パーク、ハイテクパーク建設用地
e)堤防法、資源環境および島嶼法で定める堤防保護範囲、海岸保護帯に属する土地

b) 省の計画、県級の土地使用計画、および関連する計画で定められた空間開発ならびに経済社会、国防、安全保障、および環境保護に対するリソース配分方針に合致していること。

c) 景観、ゴルフ場の内外を接続する技術的インフラの建設要件に対応していること。

d)水資源、堤防、自然災害防止、および海洋・島しょ環境資源に関する法規で定められている水源保護帯の設置、水源の汚染、衰退、枯渇防止の要求に合致していること。

(イ) 面積の制限・建設完了の期限

 本政令では、18 ホールのゴルフ場の面積が 90 ヘクタール(1 ホール平均で 5 ヘクタール)を超えないこと、最初に建設するゴルフ場プロジェクトは全体で 270 ヘクタール(54 ホール)を超えないこと、という形で面積の制限がなされています(第 7 条 1 項)。

 また投資家は、18 ホールのゴルフ場は、土地の貸出決定がなされた日から 36 か月以内に、 その他のゴルフ場は、48 か月以内に建設を完了しなければならないとされています(第 7 条 3 項)。ゴルフ場の拡張は、認可されたゴルフ場プロジェクトの建設を完了して、運営を始めてからでなければ認められません(第 7 条 4 項)。

(ウ)投資家の選定と要件

 ゴルフ場プロジェクトを実施する投資家の選定は、入札や土地等に関する法規に従って進められます(第 5 条 3 項)。また、投資家は、第 8 条に定める次の要件を満たしている必要があります。

 a)土地法の規定に従って、ゴルフ場プロジェクトを実施するための財政力、借地、土地の使用目的変更に関する要件を満たしていること、投資法の規定に従って、プロジェクトを実行するための保証金を預託すること(必要な場合)。

 b)ゴルフ場プロジェクトの実施予定地を現在使用している者、地域の労働者に適した移住、訓練、および雇用の支援をするための計画やコミットメントを行うこと。

 c)交通インフラ、電力、水道、下水処理、および環境保護の面で求められる必要な条件を確保すること。

ゴルフ場において、ラウンドサービス、練習、大会活動、その他関連するサービスの営業を行うためには、体育・スポーツに関する法規で定める物理的施設、設備、財源、および人員についての要件を満たしている必要があります(第 9 条)。

4 ゴルフ場プロジェクトの首相決定がなされるまでの流れ

 ゴルフ場プロジェクト投資を実施するための投資方針の決定や投資登録証明書の発給は、次のような手順で進みます。

 ①投資家がプロジェクトを実施する地域の投資登録機関9にプロジェクト申請書類を提出する。

 ②投資登録機関がプロジェクト申請書類を受領した日から 3 営業日以内に関係省庁に対し意見照会を求める書類を送付する。

 ③関係省庁は、意見照会の申請書類を受領した日から 15 日以内に意見をまとめて投資登録機関に返答する 。。

 ④投資登録機関はプロジェクト申請書類を受領した日から 25 日以内に省級人民委員会が計画投資省に審査意見を提出できるよう意見をまとめて、省級人民委員会に報告する。

 ⑤計画投資省は省級人民委員会の意見を受領した日から 15 日以内に審査を実施し、首相が投資方針の決定を出すことができるよう首相に報告する。

 ⑥政府事務局は計画投資省から提出された書類を受領した日から 5 日以内に審査を実施し、首相が投資方針の決定を出せるように書類を首相に提出する。首相が検討の上で決定し、政府事務局が交付する。

 投資家は、投資方針の決定または投資登録証明書の交付(投資登録証明書の発給手続が法定されているプロジェクトの場合)、土地、建設に関する諸手続き、環境影響評価報告書の承認がなされた後にしか、ゴルフ場プロジェクトを進めることができません(第 11 条 1 項)。  

 また土地使用権の譲渡を伴ってゴルフ場プロジェクトを譲渡する場合には、投資、土地、不動産事業などの関連法規で定められる要件や手続に従って進めなければならないとされています(第 11 条 3 項)。

5 経過措置

 本政令の発効前に投資方針の決定、投資証明書、および投資登録証明書が交付されているゴルフ場プロジェクトについては、すでに交付済みの決定や証明書の規定に従ってゴルフ場プロジェクトを進めることが可能です(第 17 条 1 項)。

 他方、プロジェクトの申請書はすでに提出済みであるものの、本政令の発効時点で投資方針の決定や投資登録証明書の交付がなされていない場合については、本政令で定める要件や手続きに従って申請書類を調整する必要があります(第 17 条 2 項)。

以 上

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