南アフリカ共和国の投資規制と法制度
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南アフリカ共和国の投資規制と法制度
2021年11月12日
One Asia Lawyers 南西アジアプラクティスチーム
インフラ輸出リーガルプラクティスチーム
アジア地域(主にインド)からアフリカ地域へのご相談や、海外インフラプロジェクトに関する相談が増えてきているため、南西アジアプラクティスチームおよびインフラ輸出リーガルプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行っています。第一弾のナイジェリア(https://oneasia.legal/7141)に続き、今回は、南アフリカの各種投資規制と法制度を紹介して参ります。
【南アフリカの概要】
国名 | 南アフリカ共和国 |
首都 | プレトリア |
ISO国名コード | ZA、ZAF |
面積 | 122万平方キロメートル(日本の約3.2倍) |
人口 | 5,931万人(2019年)[1] |
言語 | 英語の他、アフリカーンス語、バンツー諸語等、11言語が公用語 |
民族 | 黒人79%、白人9.6%、カラード(混血)8.9%、アジア系2.5% |
宗教 | キリスト教(人口の約80%),ヒンズー教,イスラム教等 |
政治体制 | 政体:共和制国家元首:シリル・ラマポーザ大統領(2019年5月就任,任期は2024年実施予定の総選挙まで)政府:(1)大統領 シリル・ラマポーザ大統領(2)副大統領 デービッド・マブーザ副大統領(3)外相 ナレディ・パンドール国際関係・協力相議会:二院制(全国州評議会、国民議会) |
通貨 | ランド(Rand) |
1. 地理
南アフリカ共和国は、約122万平方キロメートル(日本の約3.2倍)の国土面積を有する、アフリカ大陸の南端に位置する国である。ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、エスワティニ(旧スワジランド)と国境を接する他、レソトを四方から囲んでいる。
首都は、プレトリア(ツワネ)であるが、正確には行政府であり、立法府はケープ・タウン、司法府はブルーム・フォンテーンとなっている。
2020年3月から停止されていた国内線および国際線も、2021年9月に一部の路線を再開しており、徐々にビジネス出張や進出が再開されるものとみられる。
2. 人口
人口5,931万人を擁し、アフリカでは第6位である。全人口の65.7%が生産年齢人口にあり、豊富な労働力を有する。
【人口動態(1,000人)】
1990 | 1995 | 2000 | 2005 | 2010 | 2015 | 2020 |
36,801 | 41,436 | 44,968 | 47,881 | 51,217 | 55,386 | 59,309 |
3. 国家・政治体制
17世紀半ばにオランダ系が建設したケープ植民地は、19世紀初頭にイギリスに割譲され、以後イギリスの植民地化が全土に拡大していった。
1961年にイギリス連邦から脱退し、南アフリカ共和国が成立。1940年代から続いたアパルトヘイト政策は1991年に全廃され、1994年に黒人を含む全人種による普通選挙が行われた結果、ネルソン・マンデラが初の黒人大統領に就任する。以降、6回目となる2019年の選挙まで、アフリカ民族会議(ANC)が勝利をおさめている。
大統領を国家元首とする共和制をとり、議会は二院制(全国州評議会90議席、国民議会400議席)である。
以下の9つの各州に州議会がある。
州 Province | 州都 | 人口(2011年国勢調査)[2] | GDP寄与率(2017年)[3] |
西ケープ州 | ケープ・タウン市都市圏 | 5,822,634 | 13.6% |
北ケープ州 | キンバリー | 1,145,861 | 2.1% |
東ケープ州 | バッファローシティ(ビショ) | 6,562,053 | 7.7% |
クワズール・ナタール州 | ピーターマリッツバーグ | 10,267,300 | 16.0% |
フリーステイト | マンガウング(ブルーム・フォンテーン) | 2,745,590 | 5.0% |
北西州 | マフィケング | 3,509,953 | 6.5% |
ハウテン州 | ヨハネスブルグ | 12,272,263 | 34.3% |
ムプマランガ州 | ムボンベラ(ネルスプロイト) | 4,039,939 | 7.5% |
リンポポ州 | ポロクワネ | 5,404,868 | 7.3% |
4. 法制度
南アフリカの法体系は、その歴史的背景から、ローマ・オランダのシビルロー(大陸法)体系、英国のコモンロー体系、そして慣習法(customary law)の制度が混在している。
すなわち、17世紀半ばにオランダ入植者がもたらしたとされる大陸法系法は、多くの実体法の基礎になっているものの、その後英国統治下において、英国の判例法に基づく運用がいきわたり、英国で訓練を受けた裁判官や弁護人が裁判に携わるなど、手続法の分野では、英国法の影響がより強くなっている。
慣習法については、南アフリカ憲法[4]にも、部族長などの伝統的指導者(traditional leadership)の制度・地位・役割が認められており(憲法211条)、現代の法制度においても重要な役割を果たしている。
また、宗教法、個人法、家族法(system of religious, personal or family law)に関しても、同様に認められるものとされている(憲法15条3項(a))。
すべての法律は、憲法に抵触してはならないとされ、憲法の優位性(Supremacy of Constitution、憲法2条)の原則を前提としているものの、実社会では複数の法制度が存在しており、複雑な法体系をなしている。
ビジネスに関連する主要な法令には以下が挙げられる。
- 2008年会社法(Companies Act No 71 of 2008)
- 雇用均等法(Employment Equity Act, 1998)
- 黒人経済力強化政策(Broad-Based Black Economic Empowerment、通称「BEE政策」)
とりわけBEE政策とその関連法は、歴史的背景をもつ南アフリカの特徴的な法律であるだけでなく、後述のとおりビジネス上も非常に重要な規定が多くある。
5. 通貨・経済状況
通貨はランド(Rand)、1USドル=14.55(2021年4月現在)[5]。世界銀行の高中所得国(Upper Middle Income Countries)に分類される。
下表のとおり、南アフリカのGDPは3,500億ドル前後で推移しており、サブサハラアフリカ全体のGDP(1.8兆ドル)[6]の20%を占め、ナイジェリアに次ぐ経済規模を有する。他方で、国内の所得格差を示すジニ係数(63.0、2014年)[7]、失業率(28.7%、2020年)[8]ともに世界最高レベルにあり、更なる経済的取り組みによる課題解決が望まれる。
主な経済指標と推移は以下のとおり。
指標 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
名目GDP(100万USドル)[9] |
296,357 |
349,554 |
368,289 |
351,432 |
301,924 |
1人当たり名目GDP(USドル)[10] |
5,273 |
6,132 |
6,374 |
6,001 |
5,091 |
GDP成長率[11] |
0.4% |
1.4% |
0.8% |
0.2% |
△7.0% |
6. 産業
金や石炭等、かつての主要産業であった鉱業は、現在ではGDP比率の8%強と縮小した一方、製造業等の第二次産業が2割強、小売や金融業の第三次産業が7割弱を占めるなど、産業構造が先進国のそれへと移行してきている。ただし、主要な輸出品目は依然として鉱物資源に偏りが見られる。
産業ごとのGDP寄与率[12]は以下のとおり。
産業 | 2015 | 2016 | 2017 |
第一次産業 | 10.1 | 10.7 | 10.9 |
農林水産業 | 2.3 | 2.5 | 2.6 |
鉱業・採石業 | 7.8 | 8.2 | 8.2 |
第二次産業 | 21.3 | 21.2 | 21.1 |
製造業 | 13.4 | 13.5 | 13.4 |
電力・ガス・水道 | 3.8 | 3.8 | 3.8 |
建設業 | 4.1 | 4.0 | 3.9 |
第三次産業 | 68.6 | 68.1 | 68.0 |
貿易・卸・小売・宿泊業 | 15.0 | 14.9 | 15.0 |
輸送・流通・通信業 | 10.2 | 9.9 | 9.8 |
金融・不動産業 | 20.2 | 20.0 | 19.8 |
行政 | 17.3 | 17.6 | 17.6 |
個人サービス業 | 5.9 | 5.7 | 5.8 |
7. 外国投資
南アフリカには、2019年時点で272社の日系企業が拠点を設けており、アフリカに進出する日系企業の約30%が集中している[13]。世界銀行の「Doing Business 2020」[14]では世界190カ国中84位、サブサハラアフリカ48カ国中では、モーリシャス・ルワンダ・ケニアに続く4位と、アフリカの中ではインフラ、金融、通信等のビジネス環境が整備されている国の一つであり、特にアフリカ域内での最初の拠点として投資家に理想的と言える。実際に、南アフリカに拠点を設置し、周辺国やアフリカ地域を管轄している日系企業が多い。
南アフリカ政府は2019年に大統領優先事業として、国内外の投資促進を目的とした「The Ease of Doing Business Programme (EoDB)」を開始しており、オンライン上での会社登録手続きといったサービスにより、特に外国企業による拠点設立実務が軽減されている。
実際の設立手続きは、BizPortal[15]というプラットフォームを通し、企業・知的所有権登録局(Companies and Intellectual Property Commission、CIPC 、「CIPC」)に必要書類を提出することで、不備がなければ1日で登録が完了することとなる。これまでは複数の省庁に対し実際に書類を提出する必要があり、平均40日であった手続き所要期間の短縮化が図られている。
- (1) 投資規制
政府の事前承認や出資比率に関する規制がある一部業種を除き、ほぼすべてのセクターが外国投資に開放されている。
【業種ごとの主な規制】
金融業 | o 政府登録機関の事前承認が必要o 公開会社のみo (銀行の場合は)銀行法に基づく銀行登録が必要o 黒人資本の参加比率25%以上(金融業セクターコード(Broad Based Black Economic Empowerment Act: Codes of Good Practice: Financial Sector Code)) |
ICT業 | o 政府当局(通信庁)の事前承認が必要o 黒人資本の参加比率30%以上(ICTセクターコード(Regulations in respect of the Limitations of Control and Equity Ownership by Historically Disadvantaged Groups (HDG) and the application of the ICT Sector Code)) |
メディア業 | o 外資比率上限20%まで |
鉱業 | o 黒人資本の参加比率26%以上(ただし2018年以降の新規投資(new mining right))は30%以上(2018年鉱業憲章(Broad -Based Socio- Economic Empowerment Charter for the Mining and Minerals Industry, 2018 (Mining Charter, 2018))) |
- (2) 雇用関連規制
黒人経済力強化政策(Broad-Based Black Economic Empowerment, 「BEE政策」)は、南アフリカで事業を行うにあたり念頭に置くべき、同国独特の政策であり、歴史的に不利益を受けてきた人々に対する差別を是正するための多くの関連法令からなるものである。
同政策の基礎となる法律が「B-BBEE法」であり、その他の主な法令には、「雇用均等法」や「Codes of Good Practice」、「優先調達法」等がある。
このうち、「雇用均等法」は民間企業にも適用されるため、同国に進出する日系企業の多くは遵守が必要となる。「B-BBEE法」は公的機関に適用されるものであるが、後述のとおり、企業の優位性を確保するために民間企業においても同法の遵守は有益であり、特に大企業には非常に重要視されている。
なお、「B-BBEE法」が対象とする「黒人(Black people)」とは、南アフリカ出身の黒人だけでなく、カラード(Coloureds、混血の人々)やインド系南ア市民(Indians)、中国系南ア市民も含まれる。アパルトヘイト体制終了後に南アフリカへ移民した黒人は対象とならない。
ただし、「雇用均等法」においては、「黒人」だけでなく、人種を問わず女性や障がい者も差別是正措置の対象(「指定グループ」と総称)となる点に注意が必要である。
【B-BBEE法】
BEE政策の基礎となるのが「B-BBEE法(Broad-Based Black Economic Empowerment Act, 2003)」[16]である。同法は、アパルトヘイト時代に多く黒人が経済参画の機会が奪われ弱い立場に置かれてきたとして、憲法上の平等権の達成を促進し、黒人の経済的エンパワーメントを推進するための法的枠組みを確立することを目的とするもので、黒人の優遇措置を規定する関連法や、同法施行のための実務指針である規準(Codes of Good Practice、以下「コード」)、業界別の特殊ルールとなる憲章(Transformation Charter)を発行する権限の大臣への付与や諮問委員会(Black Economic Empowerment Advisory Council)の設立等を規定している。
【B-BBEE法上の「黒人(Black people)」の定義】
o 以下のいずれかを満たす黒人(Africans)、カラード(混血)、インド人を指す南アフリカで生まれた又は南アフリカ人家系出身(by descent)の南ア市民1994年4月26日以前に、帰化により南ア市民となった者1994年4月27日以後に帰化により南ア市民となった者で、それ以前に市民権を得る権利のあった者o 中国系南アフリカ人[17] |
なお、日系南アフリカ人に関しては大きな議論になっていないが、アパルトヘイト時代に日本人は名誉白人として優遇されていた経緯があるため、中国系南アフリカ人と同等の扱いを受けない可能性もある。
コードは、企業における黒人の所有権や経営支配、雇用均等といった各指標に対し、当該企業のBEEへの貢献度をスコアするもので、BEEスコアカードによりその企業のBEE貢献度が評価される。
また、業界別の指針として、憲章やセクターコードが策定されている。
B-BBEE法は、公的機関(state and public entity)に適用される(同法10条)ものであるため、民間企業は法的には同法および同法により規定される規範や憲章を遵守する義務はない。しかしながら、同法の根底にある理念に沿う企業が優遇される場面が多くある点を踏まえて、南アフリカの拠点における人事計画を策定することが推奨される。特に、公共事業等に入札する企業や、政府の許認可を要する事業を行う企業は、審査プロセスにおいてBEE政策の推進の程度が大きく影響するため、BEE政策に準じた企業経営が有利に働くこととなる。また、政府による各種優遇措置を受ける要件として、BEEの遵守が含まれる場合もある。
【雇用均等法】
さらに、民間企業にも適用される「雇用均等法(Employment Equity Act)」[18]においては、①従業員50人以上、または、②(従業員数が50人以下であっても)一定の売上高(turnover)がある企業に対し、黒人等の地位向上のためのアファーマティブアクションの実施を規定している。
具体的には、以下に該当する「指定事業者(designated employer)」は、職場や雇用における「指定グループ(designated group)」の不利益を是正し、公平性を実現するための弱者保護措置であるアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)を実施する義務を負う(同法12~27条)。
「指定事業者」(同法1条、別添4):
同法の定義する「指定事業者」は以下のとおりであり、一定規模以上の企業は同法の規定を遵守することが求められる。
- ①従業員50人以上の使用者
- ②従業員50人未満であって、年間売上高が以下の基準以上の使用者
分野 | 年間売上高(ランド) |
農業 | 600万 |
鉱業・採石業 | 2,250万 |
製造業 | 3,000万 |
電気・ガス・水道業 | 3,000万 |
建設業 | 1,500万 |
小売業、自動車産業および修理サービス業 | 4,500万 |
卸売業、商業代理店(Commercial Agents)および関連サービス業 | 7,500万 |
飲食業、宿泊業 | 1,500万 |
運輸・倉庫・通信業 | 3,000万 |
金融・ビジネスサービス業 | 3,000万 |
コミュニティ、社会、個人向けサービス | 1,500万 |
- ③公的機関
「指定グループ」(同法1条):
同法の定義する「指定グループ」は以下のとおり。
o 以下のいずれかを満たす黒人(black people)、女性、障がい者を指す南アフリカで生まれた又は南アフリカ人家系出身(by descent)の南ア市民1994年4月26日以前に、帰化により南ア市民となった者1994年4月27日以後に帰化により南ア市民となった者で、それ以前に市民権を得る権利のあったののアパルトヘイト政策の影響で取得できなかった者o 中国系南アフリカ人 |
雇用均等法の特徴は、その優遇対象である「指定グループ」の範囲が、B-BBEE法での「黒人」より広く、白人を含むすべての人種の女性や障がい者も含まれている点であり、アパルトヘイト時代の不平等是正に加え、より広い意味での差別の撤廃を求めていると言える。
具体的な義務:
指定事業者に該当する場合は、雇用均等法に基づく「アファーマティブアクション」を実施する必要があり、主な義務には以下が含まれる。
- ①労働組合や従業員との協議、および指定グループの状況分析(16条、19条)
指定事業者は、職場におけるあらゆるカテゴリー・階層の従業員(またはその代表者等)と協議(consult)の場を設けなければならない。協議においては、指定されたグループの人々に不利な影響を与えている雇用障壁(employment barriers)を特定できるよう聞き取りを行い、雇用・昇級の方針や慣行、職場環境等の分析を行う。
- ②雇用均等計画(Employment Equity Plan)の策定(15条、20条)
指定事業者は、従業員との協議および分析も踏まえ、指定グループに属する従業員の能力や資格に基づき公平な配置ができるよう雇用均等計画を作成し、実施することが義務付けられている。
前述の協議と分析を行った結果、現状において従業員の昇級や職階に不平等が生じている場合には、その事実も計画に記載しておく必要がある。その上で、従業員の公平な雇用が促進されるよう各年度の達成目標やスケジュールを、最大5か年の計画として記載する。
ただし、雇用均等法上は、指定事業者が実施すべきアファーマティブアクションや雇用均等計画において、具体的な数値目標(numerical goals)や雇用枠(quota)を定めなくてよいものと明確に記載されている[19]。このことから、指定事業者は、企業の実情に不相応な雇用割合を設定することなく、従業員の能力に応じた適正な評価に基づく人事を行う余地があると言える。
- ③雇用均等計画およびその進捗の報告(21条)
従業員150人以下の指定事業者は2年ごと、150人以上の指定事業者は毎年、雇用均等計画に基づく報告を、労働省に提出しなければならない(初年度はそれぞれ1年以内、または半年以内に提出)。
これらの義務規定に違反した場合、初犯であれば最大150万ランド(約1,130万円)または売上高の2%相当額のいずれか高い方の罰金が科され得る(同法別添1)。
実際に同法の遵守違反に対し、南アフリカや外国企業に罰金(20万~30万ランド)が科された適用例[20]もあるが、指定期日までに同法16条、19条、20条、21条の完全な遵守を条件に、全額または一部の支払猶予が認められている。
- (3)進出形態
外国企業が南アフリカに進出するには、現地法人(非営利会社(Profit Company)、または営利会社(Non-Profit Company))を設立するか、支店や駐在員事務所(会社法上「外部会社(External Company)」として分類)の形態をとることができる。営利・非営利、支店・駐在員事務所の形態を問わず、会社法(2008年会社法(Companies Act No 71 of 2008))に基づき、CIPCに登録を行うこととなる。
- ①非営利会社
- ②営利会社
- 非公開会社(Private Company)
- 公開会社(Public Company)
- 個人責任会社(Personal Liability Company)
- 公的会社(State Owned Company)
- ③外部会社
- 外部営利会社(支店、External Profit Company)
- 外部非営利会社(駐在員事務所、External non-Profit Company)
南アフリカの会社法上は、現地法人を設立しない場合の進出形態として、外部会社が規定されている。外部会社は、「南アフリカ国内において、事業(business)または非営利活動を行う外国会社(foreign company)」であると定義され(同法1条)、営利活動を行う場合は支店としての登録を行う(同法23条1項(b))。駐在員事務所は営利活動を一切行えない形態であるが、支店同様に登録は行う必要がある(同法23条1項(a))。
日系企業に一般的な進出形態の主な特徴は以下のとおりである。現地法人を設立する場合は、コンプライアンス要件の少ない非公開会社の形態が選択されること一般的である。
【進出形態の比較】
営利会社(現地法人) | 外部会社 | |||
非公開会社 | 公開会社 | 支店 | 駐在員事務所 | |
国籍・責任範囲 | 親会社から独立した南アフリカ国内法人。責任は現法の役員に及ぶ | 母体・本店と法的一体の外国法人。責任は本店の役員に及ぶ。 | ||
事業範囲 | 外資規制の範囲内で事業実施が可能 | 営利活動が可能。 | 営利活動は不可。調査や情報収集等に限定。 | |
【非公開会社と公開会社の主な特徴】
非公開会社 | 公開会社 | |
株主数の上限 | 1人~50人 | 1人以上 |
資本金 | 規定なし | 規定なし |
株式の公開 | 不可 | 可 |
取締役(66条2項) | 1人以上国籍・居住要件なし | 3人以上国籍・居住要件なし |
監査役(Auditor)(90条1項) | 任意 | 必須 |
秘書役(Company Secretary)(86条1項、2項) | 任意 | 必須|居住要件あり(南アフリカ永住者のみ) |
株主総会の開催場所(61条) | 開催は任意 | 開催は必須|会社設立日から18ヶ月以内、その後は毎年1回、前回開催日から15ヶ月以内に開催|国外開催可・電子的な開催(electronic communication)可 |
取締役会(73条) | 2名以上の取締役(全取締役数12名以上の場合は、取締役の25%以上)が要求した場合、その他任意の場合に開催を招集。電子開催可 |
- (4)土地に関する規制
南アフリカでは、外国人・外国法人であっても、土地の所有が可能である。
ただし、外国企業が土地を購入する場合には、南アフリカ国内での法人登録をした上で、南アフリカ居住の代表者(resident public officer)を任命する必要がある[21]。
なお、長期滞在を目的として不動産を購入する場合は、居住許可証が必要となる。
- (5)優遇制度
貿易産業競争省(Department of Trade, Industry and Competition)の投資庁(Invest SA)が、南アフリカの投資促進機関として機能する他、各州に担当局が設置されている(ハウテン州成長開発局など)。
優遇措置には交付金や税金控除の形があり、セクター別では製造業やインフラ関連のインセンティブが多く用意されている。
例えば自動車産業では、自動車投資スキーム(Automotive Investment Scheme)の下、一定の条件を満たす場合に、投資額の20%から25%の補助金が支給される。
また、セクター横断的なものには、南アフリカの特徴的な優遇措置として、黒人ビジネスサプライヤー開発制度(Black Business Supplier Development Programme: BBSDP)が設けられている。BBSDPは、黒人経営者の競争力向上を支援するために導入された制度であり、黒人が株式の過半数を所有し、かつ経営陣の過半数が黒人であるなどの一定の条件を満たす企業を対象に、設備投資や技術開発費に対し、コストシェアの形で、最大100万ランドの資金補助が支給される。
[1] 国連世界人口推計2019年https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/
[2] 南ア統計局(Stats SA)http://www.statssa.gov.za/?page_id=964
[3] 南ア統計局 http://www.statssa.gov.za/?p=12056
[4] https://www.gov.za/documents/constitution-republic-south-africa-1996
[5] 南ア準備銀行 https://www.resbank.co.za/en/home/what-we-do/statistics/key-statistics/current-market-rates
[6] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZG&most_recent_value_desc=true
[7] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/SI.POV.GINI?most_recent_value_desc=true
[8] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/SL.UEM.TOTL.ZS?most_recent_value_desc=true
[9] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZA
[10] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=ZA
[11] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=ZA
[12] 南ア統計局 http://www.statssa.gov.za/
[13] 外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html
[14] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020
[15] https://www.bizportal.gov.za/
[16] https://www.gov.za/documents/broad-based-black-economic-empowerment-act
https://www.gov.za/documents/broad-based-black-economic-empowerment-amendment-act
[17] 中国人社会の代表者が南アフリカ政府を相手取り、黒人の権利拡大の恩恵を受けられるよう再区分を求めた裁判に勝訴したことから、中国系南アフリカ人もB-BBEE法および雇用均等法における「黒人」の定義に加えられた。http://www.saflii.org/za/cases/ZAGPHC/2008/174.pdf、https://www.za.emb-japan.go.jp/jp/Japan_SA/BEEpolicy2014.pdf
[18] https://www.gov.za/documents/employment-equity-act
https://www.gov.za/documents/employment-equity-amendment-act
[19] 同法15条[Affirmative Action Measures] 3項 ” The measures include preferential treatment and numerical goals, but exclude quotas.”、同法20条[Employment Equity Plan] 2項 “An employment equity plan prepared must state – (d) the timetable for each year of the plan the achievement of goals and objectives other than numerical goals”
[20] 労働省 v Jinghua Garments (Pty) Ltd(南ア企業)(5 December 2006)、労働省 v Win-Cool Industrial Enterprise (Pty) Ltd (台湾企業)(16 April 2007) 等
[21] http://www.investsa.gov.za/wp-content/uploads/2021/03/Investor-Roadmap-2020-Online-version.pdf
以上
本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。