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速報:タイの民商法改正について

2022年11月11日(金)

タイの民商法改正についてのニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

タイの民商法改正について

 

速報:タイの民商法改正について

                                     2022年11月11日
                               One Asia Lawyersタイ事務所

1.はじめに
2022年11月8日に改正民商法第23号(以下、(「改正法」)が公布され、2023年2月7日より施行される予定となっております。多少の変更点(主に表記方法の変更)が見受けられたものの、草案のほとんどがそのまま承認され、公布されています。本ニュースレターでは、改正法の概要について解説致します。

2. 非公開株式会社の最低発起人数及び最低株主数

これまで非公開会社は設立の際、3名以上の発起人を必要とし、また、会社解散命令の対象となる事由として株主数が3名に満たなくなった場合と定められていたことから、3名以上の株主が必要と解されてきましたが、改正法では株式会社設立手続きの柔軟性を高め促進する目的で、発起人数及び株主数共に2名に削減され、規制緩和が図られています。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1097条

発起人3名以上で株式会社の設立が可能。

発起人2名以上で株式会社の設立が可能。

第1237条

(4)

裁判所は以下の事由により株式会社の解散を命じることがある。

(4)株主数が減少し、3名に満たなくなった場合。

裁判所は以下の事由により株式会社の解散を命じることがある。

(4)株主数が減少し、残り1名となった場合。

3. 株主総会招集時の新聞公告

これまで非公開会社が株主総会を招集する際は、7日前(普通決議)または14日前(特別決議)までの全株主への招集通知発送に加え、新聞公告の掲載が求められていましたが、改正法では無記名式株券を発行している会社を除き、新聞公告の掲載義務が撤廃されました。

ただし、現状、付属定款において株主総会招集時の手続きとして新聞公告の掲載を行うと定めている場合は、付属定款の変更登記を行わない限り、引き続き新聞公告掲載が必要となります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1175条

1項

株主総会の招集通知は、総会開催日の少なくとも7日前までに地方紙に少なくとも1回公告し、さらに、総会開催日の少なくとも7日前までに株主登録簿に名前のある全株主に対し、配達証明付き郵便で郵送しなければならない。ただし、特別決議のための株主総会招集の際は、上記について総会開催日の少なくとも14日前までに行わなければならない。

株主総会の招集通知は、総会開催日の少なくとも7日前までに株主登録簿に掲載されている全株主に対し配達証明付き郵便で郵送しなければならない。ただし、会社が無記名株券を発行している場合は、地方紙に少なくとも1回公告するか、省令で定めた規則及び方法に基づき電子メディアに公告する必要がある。

特別決議のための株主総会招集の際は、上記について総会開催日の少なくとも14日前までに行わなければならない。

4. オンラインによる取締役会開催

2020年4月の勅令及び同年5月のデジタル経済社会省告示により、電子システムを利用した会議は既に一定の要件の下で認められていましたが、改正法では取締役会のオンライン上での開催が今後より多く利用されることを期待し、明文で認められることとなりました。

ただし、依然として取締役本人による出席が必要とされるため、委任状による代理人の出席は認められていないことにご留意下さい。改正法ではオンラインによる株主総会の開催について明文で定められていませんが、上記告示によりオンラインによる株主総会を開催することも従前どおり認められます。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1162/1条

付属定款で禁止する場合を除き、取締役会においてテクノロジーを利用してコミュニケーションを取ること(以下、「オンライン会議」)も可能であり、取締役が会議の場に出席することも不要である。

オンライン会議の開催時は、電子システムによる会議に関する法律に従うこと。

オンライン会議の場合も取締役は取締役会に出席しているとみなされ、定足数の計算に含め、議決権を有する。

5. 株主総会の最低出席者数

これまで株主総会の最低出席者数については民商法上明確に定められていませんでしたが、法制委員会事務局(Office of the Council of State)の公式見解により「討論し決議を採択すること」という株主総会の目的を果たすため、2名以上の株主または代理人の出席が必要になると解されてきました。改正法ではこれを明文化し、少なくとも株主またはその代理人2名の出席が必要となることが明確になりました。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1178条

株主総会において会社資本の4分の1以上を代表する株主が出席しなかった場合、その株主総会の議題について審議することはできない。

株主総会は株主または株主から委任を受けた代理人が2名以上出席しなければならず、かつ出席株主が有する株式の合計が会社資本の4分の1以上でなければ決議することはできない。

6. 会社設立時の創立総会議題

従前より新会社設立登記申請前の創立総会において付属定款の承認が求められており、付属定款には投票の際に同数となった場合(議長が決定票を投じる等)の解決方法を任意で規定しておくことが可能でしたが、改正法では第1097条で発起人の数が2名以上に削減されたことに関連して投票時に同数となる可能性が高まることから、当該規定が義務付けられることとなりました。DBDが公開する付属定款のテンプレートを利用する場合、株主総会における解決方法は規定されていますが、取締役会については規定されていないため、別途追記する必要があります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1108条

(1)

創立総会における議題は以下の通り。

(1)会社の付属定款の制定についての同意。この場合、取締役または株主間の和解できない問題または反対意見に対する解決方法について規定しておくこともできる。

創立総会における議題は以下の通り。

(1)会社の付属定款の制定についての同意。この場合、取締役もしくは株主間の和解または決議できないような問題または反対意見に対する解決方法について規定しておかなければならない。

7. 配当金支払い

従前より配当の支払いは株主総会または取締役会決議から1か月以内に行うことと定められていましたが、改正法では少数株主保護のため1か月以内に支払を完了することと明記されています。

 

従前の内容

改正法の内容

第1201条

4項

配当支払いは株主総会決議または取締役会決議から1か月以内に行うこと。

配当支払いは株主総会決議または取締役会決議から1か月以内に完了すること。

8. 吸収合併

これまで合併を行う場合は、新設合併のみ可能で、吸収合併については認められておらず、一方会社への全部事業譲渡+他方会社の清算という形で実質的な吸収合併を行うケースが見受けられました。新設合併は許認可の新会社への承継が認められておらず、一般的なM&Aの手法としては用いられていませんでしたが、改正法により可能となった吸収合併では吸収する側の存続会社が有していた許認可 は合併後も引き継がれると考えられている(許認可毎に別途確認が必要です)ためM&Aにおけるスキーム選択の幅が広がることが期待されます。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1238条

株式会社は合併することはできない。ただし株主総会の特別決議による場合を除く。

株式会社は特別決議により合併することができる。

2社以上の会社は、次のいずれかの方法により合併する。

(1)     合併により新たに会社を設立し、合併された元の会社は法人格を失う(以下、「新設合併」)。

(2)     合併により1社の法人格のみを残し、その他の合併された会社は法人格を失う(以下、「吸収合併」)。

第1243条

新会社は合併された元の会社の全ての権利及び責任を引き継ぐ。

合併後の新会社[1]は合併された元の会社の全資産、負債、権限、義務、及び責任を引き継ぐ。

[1] 吸収合併時の存続会社を含む

9. 反対株主の株式買取制度

今回新たに合併に反対する株主のための株式買取制度が設けられ、会社は合併に反対する株主に対し、当該株主が保有する株式の買取者の手配が義務付けられています。買取価格について反対株主と買取者との間で合意に至らない場合は、今後公布される省令に従って任命される鑑定人により買取価格が提示されます。買取者からの買取の申し出から14日以内に反対株主が株式を売却しなかった場合、合併手続きの進行が認められ、反対株主は合併した会社の株主であるとみなされることになります。

 

従前の内容

改正法の内容

第1239/1条

合併の特別決議が可決された際、会社は合併に反対した出席株主(以下、「反対株主」)の保有株式を合意価格で買い取る者を手配しなければならない。買取価格について合意できない場合は、鑑定人が定めた価格を使用すること。反対株主が買取の申し出を受けた日から14日以内に売却しない場合、会社は会社合併の手続きについて進めることができ、反対株主は合併した会社の株主とみなされる。

前項における鑑定人の任命は、省令の定める規則、手順、及び条件に従うこと。

10. 合併手続きの流れ

合併を行う際は、まず各社で特別決議により合併(新設合併または吸収合併)を承認し、当該決議日から14日以内に特別決議の登記申請、新聞公告、及び全債権者に対する合併通知を行います。その後、最後に合併が可決された日から6ヵ月以内(1年まで延長可能)に合併後の新会社(以下、吸収合併時の存続会社を含む)の株主総会を開催し、第1240/1条で定められた議題全てについて決議します。これらの議題は一度に全て決議する必要はなく、何度かに渡って株主総会を開催し決議することも可能です。第1240/1条で定める全ての議題について決議が完了した日から7日以内に、合併された元の会社(消滅会社)は、事業、資産、会計、書類、及び各種帳票等を合併後の新会社に引き渡さなければならず、かつ、合併後の新会社は14日以内に合併登記申請を行う必要があります。この際、新設合併か吸収合併かが会社登記簿に記録されることになります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1240条

会社は、合併の意図について、地方紙に少なくとも1回公告し、かつ会社が把握している全債権者に配達証明付き郵便で通知しなければならない。また、合併に反対する債権者には通知から60日以内に異議申立書を提出させること。

期限内に反対がなければ、反対はないものとみなす。

反対する債権者がいる場合、その債務を弁済するか、担保を差し出さない限り、会社は合併の手続きを進めることはできない。

合併の特別決議から14日以内に、会社は決議日時点に債権者リストに掲載されている債権者に対し、当該決議について通知しなければならない。この場合、異議申立を行う場合の期限として通知受領後1か月以内と定めておくこと。さらに、会社は合併決議について、決議日から14日以内に広く普及されている日刊紙にも公告すること。

反対する債権者がいる場合、会社はその債務を弁済するか、担保を差し出さない限り、合併できない。

第1240/1条

第1239条及び1240条に基づき進めた後、合併後の新会社の取締役は株主総会を招集し、次の議題について審議すること。

(1)     合併後の新会社の商号 この場合、新しい商号または合併前のいずれかの会社の商号を利用することができる。

(2)     合併後の新会社の事業目的

(3)     合併後の新会社の登録資本金 この場合、新会社の資本金額は合併された各社の資本金額の合計を上回る額でなければならない。

(4)     合併後の新会社の株式の配分 この場合、第1222条は適用されない[1]

(5)     合併後の新会社の基本定款

(6)     合併後の新会社の付属定款

(7)     合併後の新会社の取締役選任

(8)     合併後の新会社の会計監査人選任

(9)     合併後の新会社に関係するその他の事項(もしあれば)

合併後の新会社の株主総会は、合併された元のいずれかの会社が最後に合併決議を行った日から6か月以内に開催しなければならない。ただし、合併後の新会社の株主総会が当該期日の延長について決議した場合を除く。この場合、延長は最初の6ヵ月を含め1年を超えてはならない。

第1240/2条

第1240/1条に基づき開催する株主総会は、合併された元の会社の本店がある地域またはその本店に近い都県で開催すること[2]。また、

(1)     合併された元の会社それぞれにおいて、全株式の過半数を有する株主の出席を定足数とする。

(2)     出席株主の一人を議長として選任する。

(3)     株主総会の決議事項は別途合意がある場合を除き、(1)に基づき出席した株主の過半数の賛成により可決する。

第1240/3条

合併された元の会社の取締役会は、第1240/1条に基づき開催する株主総会から7日以内に、事業、資産、会計、書類、及び各種帳票を新会社の取締役に引き渡さなければならない。

第1241条

会社が合併した時、各会社は合併から14日以内に登記申請しなければならず、合併により新たに

設立された株式会社も新規に登記しなければならない。

新会社の取締役会は、第1240/1条に基づく株主総会で承認された基本定款及び付属定款について、第1240/1条に基づく株主総会の完了から14日以内に登記官に提出し、合併登記申請を行わなければならない。

第1242条

新会社の資本金額は、合併された元の会社の資本金額の合計と同じでなければならない。

登記官により合併登記が受理された際、登記官は次の内容を登記簿の備考欄に記録すること。

(1)     新設合併の場合、合併された元の会社が法人格を喪失したこと。

(2)     吸収合併の場合、合併された元の会社が法人格を喪失したこと。

[1] 第1222条により増資の際は既存株主の株式保有割合に基づき新株を割当てることになっていますが、改正法では当該規定が適用されません。つまり、資本金200万バーツのA社と資本金300万バーツのA社が合併し資本金700万バーツとなる場合、追加で出資する200万バーツ分についてはA社とB社が協議しその出資割合を決定することが可能となっています。

[2] 当該株主総会のオンライン開催が認められるかは明文化されておらず、今後の動向を注視する必要があります。

11. 改正法施行前の合併決議

改正法施行前に株主総会において合併が可決されている場合、改正法前の民商法に基づき手続きを進めることも可能となっています。

以上