ラオスのコンドミニアム法について
ラオスにおけるコンドミニアム法についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
ラオスにおるコンドミニアム法について
2023年12月11日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1. 経緯
ラオスにおける土地法は1997年に成立していますが、その後、2003 年に一部改正され、その後10年以上改正されず、様々な土地に関する問題が生じるようになり、ようやく2019年に改正されています(詳細は2020年8月31日付弊所ニューズレターをご参照下さい)。土地法では、コンドミニアムの建設用地の登録(第106条から108条)及びユニットの区分所有権について(第132条)規定されているのみでした。今回2023年11月14日付で発行された「コンドミニアムに関する首相令(No.352)(以下、「コンドミニアム法」)」は、コンドミニアムの権利証に関する規定やコンドミニアムの管理機能に関する規定なども置かれています。同法は、2023年12月7日に官報掲載、2024年2月1日より施行される予定です。なお、土地法やコンドミニアム法に従って、コンドミニアムの建設用地を登録[1]していない既存のコンドミニアム開発業者は、2024年2月から1年以内に登録を完了させる必要があります(コンドミニアム法第54条)。
2.コンドミニアム法の概要
コンドミニアム法は、コンドミニアム開発事業許可及び建設許可の取得について(第7条から第9条)、コンドミニアム建設用地の登録について(第10条から第12条)、ユニット区分所有権の種類と登録について(第13条から第22条)、ユニット区分所有権の取引及び変更について(第23条から第24条)、コンドミニアムの管理について(第25条から第32条)、コンドミニアムの区分所有権と土地使用権について(第33条から第36条)、コンドミニアム開発事業者の権利及び責務(第37条から第38条)、コンドミニアム建設登録取り消しによる区分所有権の消滅、債務支払い、財産分割について(第39条から第40条)、罰則規定など、全55条から構成されています。
3.ユニット区分所有権の登記について
コンドミニアムのユニットにかかる区分所有権については、外国人、外国法人ともに原則としてこれを取得することが可能です(コンドミニアム法第3条)[2]。区分所有権を取得するためには、以下の書類を揃えて、県レベルの天然資源管理局へ提出する必要があります。
<ユニット区分所有権登記に必要な書類(コンドミニアム法第17条)>
1 |
コンドミニアム名義の土地権原証(バイターディン)の写し |
2 |
ユニットの幅、長さ、高さを示した図面 |
3 |
共同部分の区分所有比率を証明した書類 |
4 |
ユニット所有者のIDカード、ファミリーブック又は住所証明書(個人)又は企業登録書(法人の場合)の写し |
5 |
外国人の場合、パスポートの写しなど、国際機関等の場合は、ラオス政府発行の設立機関設立許可証の写し |
6 |
コンドミニアム建設のための土地リース契約書、政府とのコンセッション契約書 |
県レベルの天然資源管理局は、完全に揃った書類を受理してから5営業日以内に書類を精査し、その後、問題がなければ、5営業日以内にユニット登記書及び権利証を発行します。登記書は、登記簿というかたちで県レベルの天然資源環境局が保管します(コンドミニアム法第20条)。なお、経済特区の中に建設したコンドミニアムは、経済特区委員会がユニット区分所有権の登記を行います(コンドミニアム法第19条)。
4.コンドミニアムの区分所有権の権利証について
コンドミニアムのユニットにかかる区分所有権について、権利証が存在します。権利証は、当該コンドミニアムのユニットの区分所有者を証明する唯一の書面です。内容は、ユニット所有権登記書の内容と違いはありません(コンドミニアム法第21条)。権利証には以下の内容が記載されています。
<権利証の内容>
1 |
コンドミニアムの敷地土地の所在地 |
2 |
土地権原書の番号及び面積 |
3 |
土地の住所(村、郡、県) |
4 |
ユニット区分所有権登記番号 |
5 |
コンドミニアムの名称 |
6 |
納税者番号 |
7 |
居室階数、居室番号 |
8 |
ユニット区分所有者の氏名 |
9 |
ユニット区分所有者の生年月日、国政、職業、現住所 |
10 |
ユニット区分所有者の配偶者の名前 |
11 |
コンドミニアムの図面番号 |
12 |
ユニットの種類 |
13 |
ユニットの長さ、幅、高さ、面積 |
14 |
ユニットの間取図(写真) |
15 |
共同部分の区分所有比率 |
5.コンドミニアムの管理について
コンドミニアムの管理機能を担うのは、コンドミニアム運営管理者及びユニット区分所有者から選任されたコンドミニアム責任委員会であることが、コンドミニアム法第25条、第26条及び第27条に規定されています。コンドミニアム運営管理者は、コンドミニアムの開発事業者自身又は、開発事業者が起用した管理会社(法人)でも構いませんが、外部から雇用する場合は、ユニット区分所有者から合意を得る必要があります。
(1)コンドミニアム責任委員会
委員会は、議長、副議長及びメンバーの少なくても3人から構成されます。但し、委員会の人数は奇数とし、その任期はコンドミニアムの内規に規定する必要があります(コンドミニアム法第28条)。
(2)コンドミニアムのユニット区分所有者会議
コンドミニアム開発事業者は、コンドミニアムの全ユニットの30%以上を売り上げた後、6か月以内に第1回目のユニット区分所有者会議を開催する義務があります。同会議は少なくても年に1回開催する必要があり、定足数は、全ユニット区分所有者の3分の2以上の参加(コンドミニアム法第30条)、議決定足数は、全参加者の過半数以上と規定されています(コンドミニアム法第31条)。
6.コンドミニアムの解消について
コンドミニアムは以下の要件の場合、解消されます。
(1)ユニット区分所有者会議において全会一致で解消することが合意された場合
(2)コンドミニアムが全壊し、ユニット区分所有者全員がコンドミニアムを再建しないことに合意した場合
(3)コンドミニアムが差し押さえられた場合
上記、(1)及び(2)の理由で解消する場合は、その解体費用は、ユニット区分所有者が、自身の区部所有率に応じて責任を持つことになります。他方、(3)の理由の場合は、差し押さられた物件の開発プロジェクト事業者が責任を持ちます(コンドミニアム法第39条)。
[1] 土地法第108条では、建設用地が政府の分譲地の場合、個人や法人からリースした土地である場合、登録上の名称は、賃貸人の保持する土地権原書(バイターディン)の保有者となるため、開発事業者等の名称では、登録できないと規定されていました。他方、コンドミニアム法では、建設用地を政府から賃借又はコンセッション、政府の期限付き分譲地である場合は、コンドミニアムの名称で登録可能としています(コンドミニアム法第12条)。
[2] アパートメントについては、ラオス人、外国人、法人問わず、ユニットの区分所有権を取得することはできません(コンドミニアム法第3条)。アパートメントの所有者が、ユニットを売却したい場合は、コンドミニアム事業許可証を取得する必要があります(コンドミニアム法第7条)。
以上
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