ラオス: 非銀行金融機関に向けた通知について
非銀行金融機関(ノンバンク)に向けた通知についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
ラオス: 非銀行金融機関に向けた通知
2024年1月30日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
ラオス中央銀行の非銀行金融機関管理局(NON BANK FINANCIAL INSTITUTION SUPERVISION DEPARTMENT(以下、「中銀」)より、ラオス国内の非銀行金融機関(以下、「ノンバンク」)に宛てて、以下の二つの通知が出されました。
(1)2024年1月10日付「ノンバンクの株式譲渡申請書類に関する指示書 (No.64)」
(2)2024年1月16日付「ノンバンクの国内外の金融機関からの借入れ申請書類に関する指示書(No.95)」
中銀は、ノンバンクについては、株主の情報や財政状況に関して特に厳しく管理しており、株主の変更や資金調達方法に関しては、独自の規定が存在し、中銀より事前に承認を得る必要があります。今回中銀は、ノンバンクが、株式譲渡や借入申請を中銀へ行うときに必要な書類を明示し、承認プロセスの効率化を図ることを目的として、この二つの指示書を発行しました。
なお、ノンバンクとは、マイクロファイナンス業(預金型・非預金型)、質屋、リース業、貯蓄信用組合を指します(2019年2月12日付「ノンバンクの事業通貨はキープのみとする通知」)。
2.株式譲渡申請について
ノンバンクが第三者に株式を譲渡する場合に、中銀へ提出する必要書類は以下のとおり、規定されています。外国語で作成された書面は、すべてラオス語へ翻訳し、翻訳会社からの認証が必要と規定されています。なお、写しの場合はカラーコピーとし、それ以外の書類は、すべて原本が必要です。
(1)株式の一部を譲渡する場合
①株式譲渡申請レター(記載内容:株式譲渡理由、譲渡人及び譲受人の情報、譲渡株式数、
譲渡の対価、株式譲渡前と後の株主情報と株式数など一覧表)
②定期的に法令で規定する書類提出にかかる手数料の支払い証明証
③株主総会決議書
④資金源及び株主について審査することを許可する中銀宛のレター
⑤資金源の証明書の写し
⑥Bank Statement(銀行またはその他金融機関発行)
⑦財産、債務申告書(中銀所定の書式)
⑧登録資本金、株主情報及び株式数に関する条項を修正した定款のドラフト
⑨申請を代理人が行う場合は委任状
⑩その他関連書類
(2)全株式を譲渡する場合
会社のすべての株式を譲渡する場合は、上記①から⑩の書類に加えて、「経済技術分析報告書(中銀所定の書式)」を提出する必要があります。
(3)事業所及び会社構成に変更があった場合
例えば、取締役会委員、内部又は取締役監査委員に変更が生じた場合は、関連する法令 に従い、必要書類を準備すること。
(4)個人への株式譲渡の場合
譲受人の個人がラオス人の場合と外国人の場合とでは、下記の通り必要書類が異なります。
ラオス人の場合 |
外国人の場合 |
村役場が認証した履歴書(中銀所定の書式) |
履歴書(中銀所定の書式) |
住所証明書 |
パスポートの写し |
無犯罪証明書 |
無犯罪証明書又は類似する権限を持つ当局が承認した証明書 |
身分証明書の写し |
滞在許可証(ラオスに居住している場合)の写し |
パスポート/ファミリーブックの写し |
労働許可証(ラオスで働いている場合)の写し |
(5)法人による株式譲渡の場合
譲渡先の株主が法人の場合、中銀へ必要な申請書類は以下の通りです。
①企業登録書(Enterprise Registration Certificate)又は事業許可証(Business Operation License)の写し
②法人が公開会社の場合、管理人から認証された書類の写し
③納税証明書の写し
④外部監査報告書(直近の年度のもの)の写し
⑤財政報告書(現在までのものすべて)の写し
⑥法人(株主)代表者をノンバンクの株主代表者へ選任する任命状の写し
以上の①から⑥に加え、法人の代表者に関する必要書類は以下のとおりです。
①法人代表者の履歴書(中銀所定の書式)
②住所証明書
③無犯罪証明書
④身分証明書の写し
⑤ファミリーブックの写し
⑥パスポート(外国人の場合)の写し
⑦法人の代表者が外国籍である場合、無犯罪証明書又は権限のある当局が発行した類似の書類でも可能
3.ノンバンクの国内外からの借入れについて
(1)借入申請に必要な書類について
ノンバンクが、国内外の金融機関から借入をする場合に、中銀へ提出する申請書類は以下の通りです。外国語で作成された書面は、すべてラオス語へ翻訳し、翻訳会社からの認証が必要です。
1 |
借入申請書(記載内容:借入先の情報、借入の種類、借入目的、収入源、借入期間、利息、借入手数料など) |
2 |
関連法令が定める手数料の支払い済証明書 |
3 |
株主総会決議書又は取締役会決議書(決議内容は、1と整合性があること)の写し※一人株主会社の場合は不要 |
4 |
ローン契約書のドラフト(借入れ条件を規定した書面) |
5 |
ローン返済計画 |
6 |
返済用外貨準備高(外貨を借入る場合) |
7 |
中銀への申請を代理人が行う場合の委任状 |
8 |
その他の関連書類 |
(2)関連法令について
ノンバンクが、外国から借入をする場合、「ノンバンクの国内外の金融機関からの借入れ申請書類に関する指示書(No.95)」の他に、中銀発行の以下の法令に従う必要があります。
①2019年5月30日付「Decision on the Capital Import-Export of Lao PDR and the Lending or Receipt of Loans and Foreign Trade Loans(No453)」②2023年12月21日付「Decision on Foreign Exchange Management Related to Foreign Direct Investment(No1225)」③2019年12月10日付「Notice on Lending or Receiving Loans from Foreign Business Banks, Foreign Business Bank Branches and Non-Financial Institutions (No. 684)」
なお、上記②の「外国直接投資における外貨管理に関する合意 (以下、「中銀合意」)」によると(詳細はニューズレターをご参照ください)、海外からの融資及び利子の返済などの取引に使用する口座は、投資関連口座のみと規定されており、(中銀合意第6条)さらに、中銀の監督下にある金融関連事業者は、別途定める関連法に従うとあります。現時点では、別途定める法令が確認できていませんので、借入の返済に使用する口座を新たに開設する必要があるか否かは、中銀へ事前に確認する必要がありますので、留意が必要です。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)