• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

グローバルビジネスと人権: アメリカ海外腐敗行為防止法に基づく起訴猶予合意の実際: 日本での統合型リゾートに関する贈収賄について(その2)

2025年01月21日(火)

グローバルビジネスと人権に関し、アメリカ海外腐敗行為防止法に基づく起訴猶予合意の実際: 日本での統合型リゾートに関する贈収賄について(その2)と題するニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

グローバルビジネスと人権: アメリカ海外腐敗行為防止法に基づく起訴猶予合意の実際: 日本での統合型リゾートに関する贈収賄について(その2)

 

グローバルビジネスと人権:
アメリカ海外腐敗行為防止法に基づく起訴猶予合意の実際:
日本での統合型リゾートに関する贈収賄について(その2

2025年1月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター
アジアESG/SDGsプラクティスグループ

1. はじめに
2. 起訴猶予合意の概要
3. アメリカの刑事司法に関する解説
 3.1  第3章の構成
 3.2 当事者の関係
 3.3 略式起訴の役割
 (次号に続く)
 【添付資料】 本事件の起訴猶予合意(全文仮訳)

1.   はじめに

ここで取り上げるFCPA違反に関する起訴猶予合意は、日本におけるIR(統合型リゾート)をめぐり、日本の政府関係者に対して贈賄を行った米国上場企業と、米国司法省との間で締結されたものです。その背景について少し振り返ってみましょう。
米国のFCPA(海外腐敗行為防止法)は、1977年に連邦法として制定され、多国籍企業による外国公務員への贈賄を抑止するための重要な法的枠組みを提供しています。この法律の制定にはウォーターゲート事件を契機 として明らかとなった米国企業の裏金問題が深く関わっています。当時、米国の多国籍企業はグローバル市場での競争を理由に頻繁に賄賂を用いた取引を行っていたことが背景にありました。このような行為はアメリカの大統領府を腐敗させるだけでなく、発展途上国における経済や民主的統治基盤に深刻な悪影響を及ぼしていました。日本政府が巻き込まれたロッキード事件もその一例であり、FCPA制定の後押しとなりました。

FCPAは証券取引の透明性を確保する会計規定と、外国公務員への贈賄を禁じる贈賄防止規定を二本柱としています。これにより企業には正確な記録の維持や内部統制の確立が義務付けられ、違反した場合には証券取引委員会(SEC)による行政処分だけでなく、司法省による刑事制裁が課されます。また内部統制プログラムの導入や自主的な取り組みが重視されており、これらの遵守は問題が生じた後の司法取引を企業にとって有利に進めるための重要な取引材料としての役割を果たします。言い換えれば、アメリカの刑事司法制度は企業の自主的な取り組みを促進するため、インセンティブを与える仕組みを構築しています。
FCPAの制定以降、アメリカの企業は厳しい内部統制プログラムの導入を迫られました。これにより、多くの企業がコンプライアンスを強化し、透明性の高い経営を目指すようになりました。このような取り組みは、企業の信頼性を高め、投資家や消費者の支持を得るための重要な要素となっています。

しかしFCPAは制定の当初から十分に機能したわけではありません。その実効性を高めるためには国際協力が不可欠でした。しかし制定当初、外国での贈賄を規制する意識は他国に乏しく、その執行の実績は極めて不十分でした。ところが1990年代以降、世界銀行や国際機関が汚職の開発への悪影響を再評価し始めたことで状況は変化します。そしてOECD外国公務員贈賄防止条約が1999年に発効したことで、米国は他国の支援を受けて広範囲な贈賄事件を起訴できるようになり、FCPAの国際的影響力が飛躍的に拡大しました。

現在ではFCPAを基盤とした内部統制やコンプライアンスの取り組みが他国でも理解され、広まりつつあります。このようにFCPAはグローバル市場の健全な発展や民主的な統治体制の確立を支える法的枠組みとして、汚職防止の先駆けとなりました。

以下では、本事件における起訴猶予合意について説明します。まず2では、起訴猶予合意の概要について解説します。本事件の起訴猶予合意の翻訳は資料として文末に掲載していますのでご参照下さい。続いて3では、起訴猶予合意の実際を正しく理解するために必要なアメリカの刑事司法制度の背景について説明します。その際には重要な実務的ガイドラインなどを取り上げて解説します。

2.   起訴猶予合意の概要

2.1  文書の構成

本件に関する起訴猶予合意(DPA)の文書は、全部で77ページにわたる詳細な内容のものとなっています。この起訴猶予合意は裁判所の確認を受けて締結され、司法省と企業の双方に法的な拘束力を持つものです。その内容の詳細は米国司法省の公式ウェブサイトに公開されます[1]

わが国のマスコミにおいて、「日本企業が米国司法省と和解した」といった報道がなされることがありますが、こうした表現は本質を捉えておらず、的外れであると言わざるを得ません。起訴猶予合意の中心となる問題は、企業が自ら刑事罰に該当する違反を認めた点にあり、この点について正確に報道されることが求められます。また、企業が支払った罰金額についても正確な報道が必要です。

起訴猶予合意の構成は以下のとおりです。まず合意本文が掲載され、それに続いて複数の添付資料が掲載されています。最後には、本件の起訴猶予合意の基盤となる略式起訴状(Information)が掲載されています。この略式起訴状は、合意内容が守られない場合に起訴手続きを開始する根拠となるものです。企業はこの起訴猶予合意を締結する時点で、司法省が捜査に基づき確定した事実関係を全面的に受け入れるとともに、正式起訴における大陪審による審理を受ける権利を放棄しています。

起訴猶予合意に添付された資料の具体的な内容は以下の通りです:

  • A. 事実陳述書
  • B. 企業決議証明書
  • C. 企業コンプライアンスプログラム
  • D. コンプライアンス報告要件
  • E. 開示証明書
  • F. コンプライアンスプログラム遵守証明書


起訴猶予合意の解釈は、これらの資料を考慮に入れて適切になされる必要があります。なお、このうち「A. 事実陳述書」と「C. 企業コンプライアンスプログラム」については、 次回以降に翻訳を掲載する予定です。

2.2  起訴猶予合意の概要

BIT Mining, Ltd.(以下「会社」)は、米国司法省刑事部の詐欺対策課およびニュージャージー地区連邦検察局と起訴猶予合意を締結しました。この合意は、会社が犯した犯罪行為に関する責任を認めるものであり、その詳細と合意の条件、今後の対応について以下のように整理することができます。

まず、会社は「米国における犯罪行為の共謀罪(FCPA 贈賄防止規定関連)」および会計規定違反の罪状について責任を認めました。この責任は、会社役員および従業員の行為に基づくものであり、 添付資料Aの「事実陳述書」の内容が真実であることを確認しています。
この合意に基づき、会社に対する起訴は3年間延期されることが決定されました。ただし、合意違反が発覚した場合、この期間は最大1年間延長される可能性があります。会社はこの期間中、詐欺対策課および検察局に全面的な協力を行い、進行中の調査に必要な情報を提供する義務を負います。

調査の結果、会社が日本の政府関係者および仲介業者に対して不正に約190万ドルを支払ったことが認定されました。また、この不正支払いを隠蔽するために帳簿および記録を改ざんしたことも明らかになっています。

これを受け、会社は以下の是正措置を実施しました。不正行為に関与した仲介業者との契約を終了し、コンプライアンス体制を強化しました。この強化策には、監査体制の見直しや従業員への汚職防止研修が含まれます。また高リスク地域での事業を縮小し、低リスク分野への移行を進めています。

さらに、会社には総額1,000万ドルの刑事罰金が課されました。 連邦量刑ガイドラインに基づく罰金額の算定では5,400万ドルが相当であることに会社は合意 しましたが、1,000万ドル以上の罰金は会社の財務状況を著しく脅かすとの判断がなされ、大幅な減額が認められました。この金額には証券取引委員会(SEC)による400万ドルの民事制裁金が合算された扱いとなります。合意の履行の一環として、会社は調査期間中、司法省刑事部詐欺対策課およびニュージャージー地区連邦検察局に対してすべての関連情報を正直に開示し、継続的にコンプライアンス報告を行う義務を負っています。

今回の起訴猶予合意に至った理由として以下の点を挙げています。会社が犯した犯罪行為の深刻性を認めた上で、自主的な協力と是正措置が評価されたこと、さらに、過去に重大な違法行為がない点が考慮されました。

アメリカの刑事司法に関する解説

3.1  第3章の構成

ここではアメリカにおける起訴猶予合意を理解するための背景的な制度について説明します。まず、FCPA(海外腐敗行為防止法)に関する刑事執行を担当する捜査機関について解説し、その捜査がどのように司法取引へと結びつくのかを見ていきます(3.2/3.3)。次に 2月号となりますが、司法取引において罰金の大幅な減免を可能にする制度について取り上げます。本件では、会社が捜査に協力的だったことを理由に罰金が算定され、その金額について会社も適切であるとして合意しています。また、会社の財務状況が考慮された結果、罰金額が大幅に減額されています。これらの対応は場当たり的なものではなく、一定のガイドラインに基づいて行われています。最後に、アメリカの刑事司法が提示するコンプライアンスプログラムの内容についても確認します。

3.2  当事者の関係

この事件において贈賄を行ったとされるのは米国の上場企業であるBit Mining社であり、 その捜査には司法省刑事部詐欺対策課とニュージャージー地区の連邦検察局の検察官が協力して行っています。米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の執行においては、司法省刑事部詐欺対策課と地区検察官が密接に協力し、捜査や訴訟を進めることが一般的です。詐欺対策課はFCPAの執行を主導し、特に専門知識を持つ刑事部詐欺対策課のFCPA執行ユニットがFBIや証券取引委員会(SEC)などの機関と連携しながら重大案件の調査や起訴を担当します。一方、連邦地区検事局は地域での捜査や起訴を担当し、地元の法執行機関と連携しながら地域事情に基づいたサポートを提供します。この協力体制は、 刑事部詐欺対策課が全体の戦略を策定し主導する中で、連邦地区検察局が地域での捜査を支援し、両者が共同で訴訟を進める形で実現されています。例えば国際的な案件では、詐欺対策課が国際調整を担当し、連邦地区検察局が国内対応を行うといった役割分担が行われています。これを支えるため、定期的な会議や情報共有が行われ、詐欺対策課は連邦地区検察局への指導やトレーニングも実施しています。このような緊密な連携により、詐欺対策課と連邦地区検察局は専門知識と経験を共有し、複雑かつ国際的なFCPA案件に対処する体制を築いています。

3.3  略式起訴の役割

この事件の起訴猶予合意の書類の末尾には、略式起訴状が掲載されています。これは米国ニュージャージー地区連邦地方裁判所 に対して略式起訴手続きがとられたことを示すものであり、同裁判所の裁判官も署名しています。 正式起訴の場合には大陪審(Grand Jury)が検察官の提示した証拠を審査し、起訴に十分な根拠があると判断する必要がありますが、 略式起訴であればその必要がないため手続きが迅速に進行します。この事件のように起訴猶予合意が締結される事件では被告人が略式起訴手続きに合意するのが通常です。

それでは「略式起訴」と「起訴猶予合意」(Deferred Prosecution Agreement: DPA)や「不起訴合意」(Non-Prosecution Agreement: NPA)の関係はどのようなものでしょうか。略式起訴は検察官が提出する起訴状(information) に基づく手続きです。 しかしこの事件に関連して当時の会社のCEOであったPan氏 に対しては正式の大陪審起訴が行われています[2]。大陪審による起訴は重罪の場合には必要ですが、本件のように被告が大陪審起訴を放棄することに同意する場合や軽罪の場合は略式起訴を用いることができます。略式起訴は罪状を記録に残し、被告に罪状を認識させる役割を果たします。

FCPA 違反のようなケースにおいて、司法省はDPAやNPAを締結することが少なくありません。これらは検察が特定の条件を満たす場合に、起訴を猶予したり取下げたりする合意です。DPAの場合には検察が起訴手続を開始しますが、一定期間条件を遵守すれば起訴を取下げることを約束します。これに対してNPAの場合、検察が起訴手続を開始しない形で合意します。

略式起訴がDPAの一部として行われる場合、その流れは次の通りです。DPAは起訴を猶予する合意ですが、略式起訴は一旦開始し、裁判所での手続が継続中であることが示されます。ただし被告がDPAに定められた条件(罰金の支払い、コンプライアンスプログラムの導入など)を遵守する限り、実質的な裁判には進みません。しかし略式起訴により犯罪に関する情報が裁判所に提出されるため、法的記録が作成され、DPAの条件が満たされない場合この略式起訴が再び有効となり 裁判手続が開始される可能性があります。

その結果として検察と被告人の双方にメリットがある形で問題を解決することが可能となります。つまり被告人は有罪判決を避けることが可能となり、条件を遵守すれば記録をクリーンに保つことができます。 他方で検察側は、企業や個人に再発防止の措置を講じさせ、罰金や制裁を科すことにより法執行を実現できます。 例えば企業が被告人のケースでは、DPAを締結することで正式の裁判手続を避けるとともに、罰金支払い、内部統制の改善を行い、独立のコンプライアンスモニタの指導を受けたりすることになります。 そして条件が満たされれば略式起訴も最終的に取り下げられます。 他方でNPAの場合は略式起訴も行われず、検察が起訴を完全に放棄するため、裁判手続とは無関係な処理となります。(次号に続く)


【添付資料: 起訴猶予合意の全文仮訳】

Case 2:24-cr-00744-EP Document 5 Filed 11/18/24
米国ニュージャージー地区連邦地方裁判所
USA v. BIT MINING, LTD. (f/k/a 5OO.COM LTD) ) Defendant

起訴猶予合意

被告 BIT Mining, Ltd.(以下「会社」)は、添付書類 B に反映されている会社取締役会の授権に基づき、米国司法省刑事部詐欺対策課(以下「詐欺対策課」)およびニュージャージー地区米国連邦検察局(以下「検察局」)(以下、総称して「詐欺対策課および検察局」)と、この起訴猶予合意(以下「本合意」)を締結する。本合意の条件は以下の通りである。

略式起訴状および責任の受諾

1.会社は、詐欺対策課およびニュージャージー地区連邦検察局が、会社を以下の罪状で起訴する旨の添付の2件の略式起訴状をニュージャージー地区連邦地方裁判所に提出することに合意する。(a) 米国に対する犯罪行為の共謀罪(合衆国法典第 18 編第 371 条違反)の容疑、すなわち、改正後の 1977 年海外腐敗行為防止法(「FCPA」)の第 15 編第 78dd-l 条の贈収賄禁止規定に違反し、 FCPA、合衆国法典第15編第78m条(b)(2)(A)および(b)(5)の帳簿および記録に関する規定に違反すること。 (b) F CPA、合衆国法典第15編第78m条(b)(2)(A)および(b)(5)の帳簿および記録に関する規定に違反すること。これを行うにあたり、会社は、(a) 明示的に、これらの罪状に対する起訴に関する権利、および合衆国憲法修正第6条、合衆国法典第18編第3161条、および連邦刑事訴訟規則第48条(b)項に基づく迅速裁判に関するすべての権利を放棄する。(b) 添付書類Aとして添付された「事実陳述書」に記述された行為に起因する米国による起訴について、法廷地に関する異議を放棄し、本合意の条件に基づきニュージャージー地区連邦地方裁判所への起訴状提出に合意する。 (c) 起訴状に記述された起訴および「事実陳述書」に記述された行為に起因する起訴は、本合意の署名日において、適用される時効期間により時効にはならないことに合意する。詐欺対策課および検察局は、以下に記載する諸条件に従って、本会社の起訴を延期することに合意する。

2.会社は、 略式起訴状および事実陳述書に記載されているとおり、会社の役員、取締役、従業員、および代理人の行為について、米国法の下で責任を負うことを認め、受け入れ、承認し、また、略式起訴状に記載されている申し立ておよび事実陳述書に記載されている事実が真実かつ正確であることを認める。会社は、本合意に署名した日付をもって、本合意により延期された起訴において、本合意に定める事実陳述書に異議を申し立てないことに合意し、かかる起訴においては、事実陳述書は以下のとおり証拠能力を有するものとする。(a) 政府が主尋問および反証尋問で提示する実質的証拠、(b) 反対尋問で政府が提示する弾劾証拠、および (c) 判決公判またはその他の公判における証拠。さらに、これに関連して、会社は、事実陳述書が何らかの形で証拠として却下されるべきである、またはその他の方法で証拠として認められないという主張を、米国憲法、連邦証拠規則第410条、連邦刑事訴訟規則第11条(f)項、米国連邦量刑ガイドライン第11条(a)項、またはその他の連邦規則に基づいて行わないことに合意する。

合意の期間

3.本合意は、 略式起訴状が提出された日から開始し、その日から3年後(「期間」)に終了する期間有効である。ただし、詐欺対策課および検察局が独自の裁量により、会社が故意に本合意の規定に違反したか、または本合意に基づく会社のいずれかの義務の履行を完全に怠ったと判断した場合、 詐欺対策課および検察局は、その独自の裁量により、下記第18項から第22項に規定される手続きを進める詐欺対策課または検察局の権利を損なうことなく、最長で合計1年間の期間延長を課すことができる。本合意の延長は、添付書類Dの報告要件の条項を含む本合意のすべての条項を同等の期間延長する。逆に、詐欺対策課および検察局が、その独自の裁量により、添付書類 D の報告要件を不要とするのに十分な状況の変化が生じていること、および本合意のその他の規定が満たされていることを認めた場合、本合意は早期に終了することができる。

関連事項

4.詐欺対策課および検察局は、本件および会社に関して提示された個々の事実および状況に基づき、本合意を締結する。これには以下が含まれる。

  1. 事実陳述書に記載されている犯罪行為の性質および深刻さ:すなわち、(i) 日本の政府関係者および (ii) 第三者である仲介業者に約1,908,949ドルを不正に支払うという複数年にわたる計画(仲介業者が日本における事業獲得を目指す会社の取り組みに関連して不正な利益を得るため、また、これらの政府関係者および 仲介業者への支払いに関する会社の帳簿および記録を偽造するために、仲介業者が資金の一部を、日本当局者に支払う、または日本当局者の利益のために払うことを知りながら 行われた犯罪行為の性質及び深刻さ。
  2. 会社は、事実陳述書に記載された行為を自主的かつ適時に不正行為対策課および検察局に開示しなかったため、 司法省刑事部の企業取締および自主的自己開示方針、または連邦量刑ガイドライン(S.S.G.)第8C2.5(g)(1)条に従って自主開示による信用を得ることができなかった。
  3. 会社は、詐欺対策課および検察局の調査に協力し、自社の犯罪行為に対する認識と責任を積極的に受け入れたため、連邦量刑ガイドライン第5条(g)(2)項に従い、会社は詐欺対策課および検察局の調査に協力したとして減刑された。また、会社は、 司法省刑事部の企業取締りおよび自主的自己開示に関する方針に従い、協力と迅速な是正措置を行ったとして減刑された。会社の協力には、とりわけ、(i) 外国のデータプライバシーおよび関連する刑法を一部回避しながら、限られた数の文書の翻訳を添付して、外国からのものも含め、関連文書、財務データ、その他の情報を詐欺対策課および検察局に自主的に提出したこと、(ii) 事実説明書に記載された行為に関連する社内調査で判明した事実を政府に提供したこと、(iii) 責任を速やかに認め、迅速に解決したこと、などが含まれる。しかし、会社の協力は事後的なものであり、その程度と影響は限定的であった。
  4. 会社は、詐欺対策課および検察局に対し、添付の事実陳述書に記載された行為に関与した個人に関する情報、および本契約締結前に詐欺対策課および検察局に開示された行為に関する情報を含む、会社が把握しているすべての関連事実を提供した。、
  5. また、会社は、以下を含む適時かつ適切な是正措置を講じたため、司法省刑事部門企業執行および自主的自己開示方針に基づき信用を得た。(i) 詐欺に関与したすべての第三者仲介業者との合意を終了および/または更新拒否すること、(ii) 取締役会によるコンプライアンスリスクおよび監査結果の管理と監督を強化すること、(iii) 全社的なコミュニケーションを通じてコンプライアンスと倫理を推進すること、(iv) 上級管理職の業績評価にコンプライアンス基準を組み入れること、(v) 年次リスク評価の実施、(vi) 調査、懲戒処分、および従業員によるメッセージングアプリケーションの使用に関する方針および手続きの改訂、(vii) 汚職防止方針の策定およびその推進のための全社的な研修およびコミュニケーションの実施、(viii) 汚職リスクがより低い業界へのビジネスモデルの移行および高リスク地域における事業規模の縮小。
  6. 会社は、コンプライアンスプログラムおよび内部統制を強化し、今後も継続して強化していくことを約束しており、その中には、本合意の添付資料 C(企業コンプライアンスプログラム)に定める最低限の要素をコンプライアンスプログラムが満たすことを確保することも含まれる。
  7. 会社の是正措置およびコンプライアンスプログラムの状態、および本合意の添付書類D(コンプライアンス報告要件)に定められているとおり、詐欺対策課および検察局に報告することに会社が合意したことを踏まえ、詐欺対策課および検察局は、独立コンプライアンス監視役は不要であると判断した。
  8. 会社には、刑事、民事、または規制に関する前歴がないこと。
  9. 事実陳述書に記載された行為に関連するSECによる別個の調査を同時に解決することに会社が合意したこと、および、会社が400万ドルの民事制裁金を支払うことに合意したこと。この制裁金は、本合意書に規定された総刑事罰に関連して、詐欺対策課および事務局が算定したものである。
  10. 会社は、下記第5項に記載されている進行中の調査において、引き続き詐欺対策課および検察局に協力することに合意していること。
  11. 会社は、法と事実に基づき、 提示された金額が妥当であることに合意し、また、検察官の問い合わせに回答するために、情報や書類、適切な社内担当者の紹介を全面的に提供することで十分に協力した上で、詐欺対策課および検察局が求めた刑事罰を支払う能力がないことを立証する義務を果たした。詐欺対策課および検察局は、 会計に関する科学捜査の専門家の支援を受け、司法省の「支払い能力の欠如に関する指針」(参照:2019年10月8日付ブライアン・ベンコウスキー副司法長官から刑事部門全職員宛の覚書「企業組織の刑事罰金または刑事上の金銭的制裁金の支払い能力の欠如の評価」)に概説されているさまざまな要因を考慮した独自の支払い能力分析を実施した。(i) 18 U.S.C. § 3572および連邦量刑ガイドライン 8C3.3(b)に概説されている要因、(ii) 会社の現在の財務状況、および (iii) 会社の代替的な資金源。その独立分析に基づき、詐欺対策課および検察局は、期間開始から30暦日以内に1000万ドルを超える刑事罰金を支払うことは、会社の継続的な存続可能性を著しく脅かすと判断した。


したがって、上記(a)から(k)を考慮した結果、詐欺対策課および検察局は、本件における適切な解決策は起訴猶予合意であり、10,000,000ドルの総刑事罰金は、18 U.S.C. § 3553に記載された目的を達成するために必要充分であり、それ以上ではないと判断した。

継続的な協力および情報開示の要件

5.会社は、本合意および添付の事実陳述書に記載された行為、および詐欺対策課および検察局が調査中のその他の行為に関連するあらゆる事項について、本合意期間中、かかる行為に起因するすべての調査および起訴が終了する日または本合意期間の終了日のいずれか遅い日までの間、詐欺対策課および検察局に全面的に協力するものとする。また、詐欺対策課および検察局の要請に応じて、 会社は、本合意および添付の事実陳述書に記載された行為、ならびに詐欺対策課および検察局が調査中のその他の行為に関連するあらゆる事項について、国内外の他の法執行機関や規制当局、さらには多国間開発銀行(「MDB」)と全面的に協力しなければならない。この協力には、会社、その関連会社、および現職または元職の 執行役、取締役、従業員、代理人、コンサルタント、またはその他の関係者に対する調査も含まれる。本項に基づく会社の協力は、データプライバシーおよび国家安全保障に関する法律を含む適用法および規制、ならびに有効な弁護士依頼者間秘匿特権または弁護士業務成果物法理の主張に従うものとする。ただし、会社は、法律、規制、または特権の主張に基づき提供されないあらゆる情報または協力の記録(a log of any information or cooperation)を詐欺対策課および検察局に提供しなければならず、また、会社はかかる主張の正当性を立証する責任を負う。会社は本項に基づく協力には、以下を含むが、これに限定されないことに合意する。

  1. 会社は、本合意および添付の事実陳述書に記載された行為、および詐欺対策課および検察局が調査中のその他の行為について、会社、子会社、関連会社、および現職および元職の 取締役、執行役、従業員、代理人、コンサルタントの活動に関するすべての事実情報を正直に開示したことを表明する。さらに、会社は、会社の活動、会社の子会社および関連会社の活動、ならびに会社の現職および元職の取締役、執行役、従業員、代理人、およびコンサルタントに関する事実情報について、会社が何らかの知識を得た場合、または詐欺対策課および 検察局が調査を行う可能性がある場合、会社は、迅速かつ誠実に、かかる事実情報を開示することに合意する。この真実開示義務には、詐欺対策課および検察局が会社に問い合わせる可能性のある書類、記録、またはその他の有形証拠(本合意締結前の要請に対応する証拠を含む)を、要請に応じて詐欺対策課および検察局に提供する会社の義務が含まれるが、これに限定されない。
  2. 詐欺対策課および検察局の要請があった場合、会社は、会社を代表して、詐欺対策課および検察局に、上記第5項(a)に記載された情報および資料を提供する知識を有する従業員、代理人、または弁護士を指名するものとする。さらに、会社は常に完全かつ真実で正確な情報を提供しなければならないことを理解する。
  3. 会社は、詐欺対策課および 検察局の要請に応じて、会社の現職または元職の執行役、取締役、従業員、代理人、およびコンサルタントの事情聴取または証言を可能にするために最善の努力を払うものとする。この義務には、連邦大陪審または連邦裁判所での宣誓証言、および米国内外の法執行機関および規制当局との面談が含まれるが、これらに限定されない。本項に基づく協力には、会社が知る限りにおいて、調査対象事項に関する重要な情報を有している可能性のある証人の特定が含まれる。
  4. 本合意に従って詐欺対策課および検察局に提供された情報、証言、文書、記録、またはその他の有形証拠に関して、会社は、適用される法律および規則に従い、米国当局および外国政府当局、ならびに多国間開発銀行を含むその他の政府当局に対して、詐欺対策課および検察局が独自の裁量で適切とみなす資料の開示に合意する。


6.第5項の義務に加え、期間中、米国の管轄区域内で発生した行為がFCPAの贈収賄禁止条項または会計規定に違反する可能性がある、または米国の外国強要防止法(S. Foreign Extortion Prevention Act)に違反する可能性があるという証拠または申し立てを会社が知った場合、または米国の詐欺防止法に違反する可能性があるという証拠または申し立てを会社が知った場合、会社は速やかにそのような証拠または申し立てを詐欺対策課および検察局に報告するものとする。

罰金の支払い

7.詐欺対策課および検察局と会社は、連邦量刑ガイドライン(「S.S.G.」) に従って適用される罰金の範囲を決定した場合、以下の分析結果が得られることに合意する。

  1. 2023年11月1日付のS.S.G.が本件に適用される。
  2. 犯罪レベル:合衆国標準法典第1条に基づき、犯罪レベルの合計は40であり、以下のように算出される。
         第2C1.1条(a)(2) 基本犯罪レベル 12
         2C1.1(b)(1) 1件を超える賄賂      +2
         § 2C1.1(b)(2), 2Bl.l(b)(1)(I)          +16
         取得した価値(150万ドル超)
         2C 1.1(b)(3) 高級公務員の関与   +4
         合計             34
  3. 基本罰金 連邦量刑ガイドライン(S.S.G.)第8C2.4(a)(1)条に基づき、基本罰金は50,000,000ドルである。
  4. 罪状スコア 連邦量刑ガイドライン(S.S.G.)第8C2.5条に基づき、罪状スコアは6であり、以下のとおり算出される。
         8C2.5(a) 基本的な有罪スコア   5
         8C2.5(b)(3)(B)(i) ユニットには200人以上の従業員
         および上級職員がいた            +3
         8C2.5(g)(2) 協力、受諾           -2
         合計              6
    罰金の計算範囲:
         基本罰金                                              50,000,000ドル
         倍数                                       1.2(最低)/2.4(最高)
         罰金の範囲                            $60,000,000/$120,000,000


8.詐欺対策課および検察局と会社は、量刑ガイドラインの適用に基づき、適切な刑事罰が54,000,000ドルであることに合意する。これは、量刑ガイドラインの罰金範囲の下限から10パーセントの割引を反映したものである。

9.会社は、詐欺対策課および検察局に対して、5400万ドルの刑事罰金を支払うことができない旨の表明を行い、その裏付けとなる証拠を提出した。これらの表明および詐欺対策課および検察局(会計に関する科学捜査の専門家の支援を得て)が実施したこれらの表明の正確性を検証する独自の分析に基づき、当事者は10,000,000ドルの刑事罰金(「合計刑事罰金」)が妥当であることに合意する。本起訴状で起訴された犯罪行為に由来する収益は存在しないため、没収は必要ない。

10.会社と詐欺対策課および検察局は、会社が本件の期間開始から30暦日以内に600万ドルの罰金を支払うことに合意する。詐欺対策課および検察局は、会社がSECに支払う金額を、最大400万ドル(「罰金充当額」)を上限として、刑事罰総額に充当することに合意する。会社が支払うことができないため、会社が合意通りにペナルティクレジット額全額をSECに支払う限り、会社が600万ドルを支払った時点で、会社による詐欺対策局および 検察局に対する支払義務は完了する。ペナルティクレジット額の一部でも合意通りにSECに支払われなかった場合、または何らかの理由で会社または関連企業に返還された場合、刑事罰総額の残額は米国財務省に支払われる。会社と詐欺対策課および検察局は、本合意書の第4項に記載された関連事項を含む本件の事実および状況を考慮すると、この罰金が妥当であることに合意する。刑事罰総額は最終的なものであり、再請求されることはない。さらに、本合意のいかなる内容も、合計刑事罰が将来の起訴において課される可能性のある最大刑であるという詐欺対策課および検察局による合意とみなされるものではなく、詐欺対策課および検察局は、将来の起訴において、裁判所がより高額の罰金を課すべきであると主張することを妨げられるものではない。

そのような状況下では、詐欺対策課および検察局は、本合意に基づき支払われた金額を、裁判所が将来の判決の一環として科す罰金または上限額と相殺することを裁判所に推奨することに合意するが、 会社は、刑事罰総額の一部の支払いに関連して、税金の控除を求めることはできないことを認める。会社は、本合意または事実陳述書に記載された事実に関して執行当局または規制当局と締結されたその他の合意に従って会社が支払う刑事罰総額について、直接的または間接的に、いかなる者からも払い戻しまたは補償を求めず、また受け入れないものとする。

責任の条件付き免除

11.第16項から第20項に従うことを条件として、詐欺対策課および検察局は、本合意に規定されている場合を除き、本件事実陳述書に記載されている行為または本合意に従って提出された略式起訴状に関連する刑事事件または民事事件を会社に対して起こさないことに合意する。ただし、詐欺対策課および検察局は、会社に対して、本件事実陳述書に記載されている行為に関連する情報を以下に利用できる。(a) 偽証または司法妨害の罪に対する起訴において、(b) 虚偽陳述の罪に対する起訴において、(c) 暴力的犯罪に関する起訴またはその他の手続きにおいて、または (d) 米国法典第26編の規定に対する違反に関する起訴またはその他の手続きにおいて。

  1. 本合意は、会社による将来の行為に対する起訴に対する保護を一切提供しない。
  2. さらに、本合意は、会社またはその関連会社もしくは子会社との関係に関わらず、いかなる個人に対しても起訴に対する保護を提供しない。


企業コンプライアンスプログラム

12.会社は、FCPAおよびその他の適用される汚職防止法の違反を防止および発見することを目的としたコンプライアンスおよび倫理プログラムを、会 社の業務全体(関連会社、代理人、合弁事業、および外国公務員とのやりとりや、最低限の要素として添付書類Cに規定されているものを含むが、これに限定されない汚職のリスクが高いその他の活動を含む業務)において実施しており、今後も継続して実施することを表明する。

13.内部会計統制、方針、および手続きにおける不備に対処するため、会社は、本合意に基づく義務のすべてに一致する方法で、FCPAおよびその他の適用される汚職防止法の順守に関する既存の内部会計統制、方針、および手続きの見直しを実施済みであり、今後も継続することを表明する。必要かつ適切な場合、会社は、内部統制、コンプライアンス方針、および手続きを含む新たなコンプライアンスプログラムを採用するか、または既存のものを修正し、以下の事項を確実に維持することに合意する。(a) 公正かつ正確な帳簿、記録、および会計の作成と維持を確保することを目的とした効果的な内部会計統制システム、および (b) 関連する内部会計統制、ならびに FCPA およびその他の適用される汚職防止法の違反を効果的に発見し阻止することを目的とした方針および手続きを盛り込んだ厳格な汚職防止コンプライアンスプログラム。内部会計統制システムを含むコンプライアンスプログラムには、添付書類 C に定める最低限の要素が含まれるが、それに限定されない。

企業コンプライアンス報告

14.会社は、本合意期間中、毎年、添付資料Cに記載されたコンプライアンス対策の改善および実施について、詐欺対策課および検察局に報告することに合意する。これらの報告書は、添付資料Dに従って作成される。

15.合意期間満了の30日前までに、最高経営責任者および最高コンプライアンス責任者により、会社は、本合意の添付書類Fとして添付された書類に署名する形で、詐欺対策課および検察局に対し、本合意に従ってコンプライアンス義務を履行したことを証明する。各証明は、合衆国法典第 18 編第 1001 条および第 1519 条の目的において、会社による米国行政府に対する重要な陳述および表明とみなされ、本合意が提出された司法管轄区においてなされたものとみなされる。

起訴猶予

16.会社が本合意で合意した約束を考慮し、詐欺取締部および検察局は、事実陳述書に記載された行為に対する会社の起訴は、合意期間中は猶予されることに合意する。会社が事実陳述書に記載されていない行為を明らかにした場合、その行為は、それ以降の起訴を免除されることはなく、本合意の対象外であり、関連性もない。

17.詐欺対策課および検察局はさらに、本契約に基づく義務のすべてを当社が完全に遵守した場合、第1項に記載された当社に対する刑事起訴を詐欺対策課および検察局は継続せず、本合意は期間満了をもって終了することに合意する。本合意の失効後6か月以内に、詐欺対策部および検察局は、第1項に記載されている会社に対する起訴を取り下げ、本合意および事実陳述書に記載されている行為を理由に今後会社に対して起訴を行わないことに合意する。ただし、この6か月間に詐欺対策課および検察局が、第18項に記載されているように、期間中に会社が本契約に違反したと判断した場合、第3項に記載されているように期間を延長する、または第18項から第22項までに記載されているものを含むその他の救済措置を求める詐欺対策課および検察局の能力は、完全に有効なままである。

本合意の違反

18.期間中、会社が (a) 米国連邦法に違反する重罪を犯した場合、(b) 本合意に関連して、故意に虚偽、不完全、または誤解を招く情報を提供した場合(個人の責任に関する情報の開示に関連する場合を含む)、(c) 本合意第5項および第6項に定める協力を行わなかった場合、(d) コンプライアンスプログラムを実施せず、本合意第12項から第15項および添付書類CおよびDに定める通り、詐欺対策課および検察局に報告を行わなかった場合、(e) 本合意第12条から第15条および添付書類CおよびDに規定されているとおり、コンプライアンスプログラムを実施せず、詐欺対策課および検察局に報告しない場合。 (e) 管轄内でFCPA違反となる行為を行った場合。 (f) その他、詐欺対策課および検察局が合意期間終了後に違反行為に気づいたかどうかに関わらず、本合意に基づく会社の義務を完全に履行または遂行しなかった場合、かかる違反が期間終了後に詐欺対策課および検察局が認識したか否かに関わらず、その後、会社は、詐欺対策課および検察局が認識している連邦刑事法違反の起訴の対象となるものとし、これには第1項に記載された略式起訴状に基づく起訴が含まれるが、これに限定されず、詐欺対策課および検察局は、ニュージャージー地区連邦地方裁判所またはその他の適切な裁判所で起訴を行うことができる。会社が本合意に違反したかどうか、および会社を起訴するかどうかは、詐欺対策課および検察局の独自の裁量により決定される。かかる起訴は、会社またはその従業員が提供した情報を根拠として行われる可能性がある。事実陳述書に記載された行為に関するかかる起訴は、または、本合意が締結された日付以前に詐欺対策課および 検察局が認識していた行為で、本合意締結日において適用される時効期間が切れていないものについては、時効期間満了にかかわらず、本合意締結から期間満了プラス1年の間に、会社に対して訴訟を起こすことができる。したがって、本合意に署名することにより、本合意の署名日に時効が成立していないそのような起訴に関する時効は、本合意の有効期間プラス1年間猶予されることに、会社は合意するものとする。さらに、会社は、期間中に発生した連邦法違反に関する時効は、違反が発生した日から、詐欺対策課および検察察局が違反の事実を認識した日または期間満了日のいずれか早い日までの期間、中断されること、およびこの期間は時効の適用を目的とした期間の計算から除外されることに合意するものとする。

19.詐欺対策課および検察局が、会社が本合意に違反したと判断した場合、詐欺対策課および検察局は、かかる違反に起因する起訴に先立ち、かかる違反について書面により会社に通知することに合意する。かかる通知を受領してから30日以内に、会社は、詐欺対策課および検察局に対して、かかる違反の性質および状況、ならびに会社が状況に対処し改善するために講じた措置について書面で回答する機会が与えられるものとし、詐欺対策課および検察局は、かかる説明を考慮した上で、会社に対する起訴の可否を決定する。

20.詐欺対策課および検察局が、会社が本合意に違反したと判断した場合、 (a) 事実陳述書を含め、詐欺対策課および検察局、または裁判所に対して会社または会社を代表して行われたすべての陳述、および本合意の前後を問わず、会社が陪審、裁判所、その他の法廷、または立法機関の公聴会において行った供述、およびそのような供述または証言から得られた情報は、詐欺対策課および検察局が会社に対して起こすあらゆる刑事訴訟において証拠として認められるものとする。また、(b) 会社は、 米国連邦憲法、連邦刑事訴訟規則第11条(f)項、連邦証拠規則第410条、またはその他の連邦規則に基づき、本合意の前後において会社または会社の代理人が行った供述または証言、またはそこから得られた手がかりを排除すべきである、またはそれ以外に認められないと主張しないこと。本合意の規定に違反したかどうかを判断する目的で、現職の取締役、執行役、従業員、または会社を代表して、または会社の指示により行動する人物の行為または陳述を会社に帰属させるかどうかを決定する権限は、詐欺対策課および 検察局の独自の裁量によるものとする。

21.会社は、詐欺対策課および検察局が、会社が本合意に違反し、本件が判決に至った場合に裁判所がどのような判決を下すかについて、一切の表明、保証、または約束を行わないことを認める。会社はさらに、そのような判決は裁判所の裁量のみに委ねられるものであり、本合意のいかなる条項も、裁判所がそのような裁量を行使する際に拘束または制限するものではないことを認める。

22.本合意書に明記された起訴猶予期間が満了した日、会社は、最高経営責任者および最高財務責任者により、本合意書の添付書類Eとして添付された書類に署名し、本合意書の第6項に従って開示義務を履行したことを詐欺対策課および検察局に証明する。各証明は、米国の行政機関に対する会社による重要な陳述および表明とみなされ、合衆国法典第18編第1001条および第1519条の目的において、本宣誓供述書は、本合意が提出された司法管轄区において作成されたものとみなされる。

会社の売却、合併、またはその他の企業形態の変更

23.特定の取引に関連して当事者間で別途合意する場合を除き、会社は、本合意の有効期間中に、会社の連結事業、または本合意締結日時点で事実陳述書に記載されている業務に関与する子会社または関連会社の業務にとって重要な事業運営の売却、合併、または譲渡を含む企業形態の変更を行う場合、本合意の締結日時点で存在する事実陳述書に記載された業務に関与する子会社または関連会社の業務に重大な影響を与える場合、当該売却が売却、資産売却、合併、移転、またはその他の企業形態の変更として構成されるかどうかに関わらず、売却、合併、移転、またはその他の企業形態の変更に関するあらゆる合意に、購入者またはその権利承継者を本合意に記載された義務に拘束する規定を含めるものとする。購入者または利害関係の承継者は、書面により、本合意に基づく違反を決定する詐欺対策課および検察局の能力が、その法人に完全に適用されることに合意しなければならない。会社は、これらの規定が取引に含まれていない場合、そのような取引は無効となることに合意する。会社は、いかなる売却、合併、移転、またはその他の企業形態の変更を行う場合、少なくとも30日前までに詐欺対策課および検察局に通知するものとする。詐欺対策課および検察局は、取引または一連の取引が本合意の執行目的を回避または妨害する効果を持つと判断した場合、かかる取引(または一連の取引)の前に会社に通知するものとする。本合意の履行目的を回避または妨害する効果を持つ取引(または一連の取引)に、期間中にいつでも会社が従事した場合、詐欺対策課および検察局は、本合意第18項から第22項に従い、これを本合意違反とみなすことができる。本合意の履行目的を回避または妨害する効果を持たない限り、本合意のいかなる規定も、取引日以前に発生した可能性のある行為に起因する罰金またはその他の費用について、購入者または利害の承継者を補償(または免責)することを会社に制限するものではない。

公式声明

24.会社は、現在または将来の弁護士、執行役、取締役、従業員、代理人、または会社を代表して発言する権限を有するその他の人物を通じて、訴訟またはその他の方法で、上記に定める会社による責任の受け入れまたは事実陳述書に記載された事実を否定するいかなる公式声明も行わないことを明示的に合意する。そのような矛盾する声明は、以下に記載する会社の救済権に従うことを条件として、本合意の違反を構成し、その後、会社は本合意第18条から第22条に定める起訴の対象となる。事実陳述書に記載された事実と矛盾するかかる人物によるいかなる公式声明も、本合意違反の有無を判断する目的で会社に帰属するものと見なすかどうかについては、詐欺対策課および検察局の独自の裁量によるものとする。詐欺対策課および検察局が、かかる人物による公開声明が添付の「事実陳述書」に記載された声明の全部または一部と矛盾すると判断した場合、詐欺対策課および検察局は会社にその旨を通知し、会社は通知後5営業日以内に当該声明を公式に否認することにより、本合意の違反を回避できるものとする。会社は、添付の「事実陳述書」に記載された事項に関連する他の訴訟手続きにおいて、防御を申し立て、積極的な請求を主張することが許可される。ただし、かかる防御および請求が、添付の「事実陳述書」に記載された陳述の全部または一部と矛盾しないことを条件とする。本項は、以下のいずれかの陳述には適用されない当該個人が会社を代表して発言している場合を除き、当該個人に対して開始された刑事、規制、または民事訴訟の過程で、会社の現職または元職の役員、取締役、従業員、または代理人が行った陳述は、本項の適用対象外とする。

25.会社は、会社、またはその直接または間接的な子会社もしくは関連会社が本合意に関連してプレスリリースを発行するか、または記者会見を行う場合、会社はまず詐欺対策課および検察局と協議し、(a) リリース文または記者会見での声明案が、詐欺対策課および 検察局と会社間の問題に関して真実かつ正確であるか、および (b) 詐欺対策課および検察局がリリースまたは声明に異議を唱えるか否か、を判断する。

26.詐欺対策課および検察局は、要請された場合、本合意の基礎となる行為の性質に関連する事実および状況(会社の協力および是正措置の性質および質を含む)を法執行および規制当局に通知することに合意する。かかる当局にこの情報を提供することに合意することで、詐欺対策課および検察局は、会社の代理として弁護することに合意するのではなく、むしろかかる当局が独自に評価する事実を提供することに合意する。

合意の拘束力に関する制限

27.本合意は、会社および詐欺対策課および検察局を拘束するが、司法省の他の部門、他の連邦機関、州、地方、または外国の法執行機関または規制機関、またはその他の当局を拘束するものではない。ただし、会社が要請した場合、詐欺対策課および検察局は、会社および本合意に基づくその他の義務の遵守について、かかる機関および当局に通知する。裁判所が迅速裁判法(Speedy Trial Act)18 U.S.C. § 3161(h)(2)に基づく時効の適用除外を認めない場合、本合意のすべての条項は無効とみなされ、期間は開始していないものとみなされる。ただし、事実陳述書に記載された行為に関連する起訴の時効は、本合意が締結された日から裁判所が期間の除外を認めないことを拒否する日まで延長されるものとし、本合意第2項に定める規定は例外とする。

28.本合意に基づく詐欺対策課および検察所への通知は次の方法でなされるものとする。電子メールおよび/または手渡し、または公認の配送サービスによる翌日配達、または書留郵便または配達証明付き郵便により、米国司法省刑事局詐欺対策課FCPAユニット主任宛て、1 400 New York Avenue NW, Washington, DC 20005、およびニュージャージー地区連邦検察局経済犯罪ユニット主任、970 Broad Street, Suite 700, Newark, New Jersey 07102。本合意に基づく会社への通知は、電子メールおよび/または手渡し、または、著名な配送サービスによる翌日配達、または書留郵便または配達証明付き郵便により、Tarek Helou(宛先:Wilson Sonsini Goodrich & Rosati LLP、1700 K Street NW、ワシントンDC 20006)宛てに送付するものとする。通知は、詐欺対策課および検察局または会社が実際に受領した時点で有効となりる。

完全合意

29.本合意(添付書類を含む)は、会社と詐欺対策課および検察局との間の合意の全条件を規定する。本合意に対する修正、変更、または追加は、書面によるものであり、詐欺対策課および検察局、会社の弁護士、および会社の権限を正式に付与された代表者の署名がない限り、有効とはならない。

合意:[署名者の役職は次の通り]
CEO, Bit Mining, Ltd.
Counsel to Bit Mining, Ltd
司法省
Chief; Fraud Section , Criminal Division
Trial Attorneys
United States Attorney, District of New Jersey
Assistant United States Attorney, District of New Jersey

 

〈注記〉本資料に関し、以下の点をご了承ください。
・ 本ニューズレターは2025年1月時点の情報に基づいて作成されています。
・ 今後の政府による発表や解釈の明確化、実務上の運用の変更等に伴い、その内容は変更される可能性がございます。
・ 本ニューズレターの内容によって生じたいかなる損害についても弊所は責任を負いません。

—–

[1] https://www.justice.gov/opa/media/1377341/dl
[2] CEO に対する正式な大陪審起訴状(Indictment)は次のサイトから閲覧できます。( https://www.justice.gov/opa/media/1377336/dl )