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日本:ドローンにまつわる法規制について

2025年12月16日(火)

日本におけるドローンにまつわる法規制についてニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

ドローンにまつわる法規制について

 

ドローンにまつわる法規制について

2025年12月15日
One Asia Lawyers 東京オフィス
弁護士 山本 博人
弁護士 山村  響
弁護士 楠  悠冴
弁護士 柴﨑 秀之

 空撮、インフラの点検、農薬頒布、測量等、様々な用途でドローンが広く使用されるようになりました。昨今、上空からの撮影の利点を活かし、人的被害が報告されている人里に降りて来たクマの追跡等のドローンの公益的な活用方法も拡大されています。
 ビジネスでの活用、公益的な活用いずれも益々拡大しているドローンですが、この活用範囲の拡大に合わせて、ドローンを取り巻く法制度につき随時改正が行われています。たとえば、2025年12月以降、民間資格での飛行許可申請の簡略化の廃止(※1)、免許の統一化、また、警視庁において飛行禁止区域の距離伸長の検討等(※2)、今後も法改正が予定されています。
 ドローンの活用のためには、航空法等の法規制を確認することが必要になりますので、本ニュースレターでは、現行のドローンに関する法制度の概要を紹介します。

第1 法制度

1 航空法

 ドローンを飛行させようとする場合、そのドローンが航空法上の「無人航空機」(航空法2条22項、規則5条の2:構造上人が乗ることができないもので、機体重量100g以上)に該当すれば、航空法上の義務を履行する必要があります。なお、ドローンというとプロペラが複数搭載された、いわゆるマルチコプターをイメージしがちですが、プロペラ飛行機のような形状のラジコンなども含まれます。
 航空法上の義務としては、①機体の登録、②機体認証・技能証明及び飛行許可の制度、③飛行禁止空域、④飛行の方法に関して規制されており、これらに従わなければなりません。航空法には、懲役刑を含めた刑事罰が規定されているため、違反しないよう特に注意が必要になります。
 以下それぞれ解説します。

⑴ 機体の登録制度(※3)
 無人航空機を飛行させる場合、機体の登録を受け、かつ、無人航空機を識別する登録番号を表示し、リモートIDを備える必要があります(航空法131条の4以下)。
 これは、安全上問題のある機体の登録を拒否し、また、事故発生時に所有者をいち早く把握できるようにするなど、安全確保を主な目的とする制度です。

⑵ 機体認証・技術認証及び飛行許可
 航空法上、飛行の態様に応じ、カテゴリーⅠからⅢまでの3つのカテゴリーに分類されています。そして、各カテゴリーによって、必要な対応が異なります。

(※4)

 カテゴリーⅢ及びカテゴリーⅡは、特定飛行(航空法132条の87:夜間、目視外、人・物件との距離が30m未満、イベント上空、危険物輸送、物件投下の飛行等)であることが前提となります。特定飛行ではない場合、カテゴリーⅠに該当します。なお、特定飛行に含まれる目視外飛行とは、ドローンを直接目視できない状態での飛行をいいます。そのため、双眼鏡を通せば、ドローンを視認できるという場合も目視外飛行に含まれます。
 カテゴリーⅢ(第三者の上空の飛行を伴うものする)の場合、機体の強度、構造及び性能について、設計、製造過程及び現状が安全基準に適合するかの認証を受ける必要があります。また、機体に加え、パイロットも一等操縦者技能証明を取得していなければなりません。そして、国土交通大臣の飛行許可・認証が必要となります。許可・認証のための申請は、ウェブやメールでも行うことができます。
 カテゴリーⅡ(第三者の上空を飛行しない)の場合、機体認証・操縦者技能証明を取得して飛行毎の許可を不要とする場合、飛行毎に許可・認証を得る必要がある場合の2つのパターンがあります。前者について、機体認証・操縦者技能証明があり、飛行マニュアルの作成等無人航空機の飛行の安全を確保するために必要な措置を講じることにより、飛行毎の許可・承認を不要とすることができます。
 上記いずれでもなく、カテゴリーⅠに該当する場合、機体認証・操縦者技能証明及び飛行許可・認証をいずれも必要ありません。

(※5)

⑶ 飛行禁止空域
 「空港等の周辺」、「緊急用務空域」、「150m以上の上空」、「人口集中地区」のように、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれのある空域や、落下した場合に地上の人等に危害を及ぼすおそれが高い空域において、無人航空機を飛行させる場合には、あらかじめ、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。

(※6)

⑷ 飛行の方法
 飛行させる場所に関わらず、無人航空機を飛行させる場合には、以下を遵守する必要があります(航空法132条の2)。

  • アルコール又は薬物等の影響下で飛行させない
  • 飛行前確認を行うこと(動作点検やバッテリー点検等)
  • 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
  • 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと

 また、繰り返しになりますが、前述の特定飛行に該当する場合には、許可・承認が必要となることにご注意ください。

2 小型無人機等飛行禁止法(※7)

 2015年にドローンが首相官邸に落下した事件を受け立法され、この法律によると、国の中枢機能や公共の安全を目的に、国の重要施設、外国公館、防衛関係施設、空港、原子力発電所等の周辺に限定して飛行禁止区域とされています。外国公館については、外務大臣が都度指定するものとされており、過去に各国首脳が集まる公園等が指定されたこともあります。
 また、当該法律が対象とする小型無人機等には、ドローン以外にも人が乗るパラグライダー等も含まれるため、適用対象が広く規定されています。
 飛行禁止区域内であっても、施設管理者の同意を得れば飛行することが可能という例外はありますが、原則として飛行禁止区域内で飛行する場合、刑事罰の定めがあります。

3 その他の法令

① 航空法及び小型無人機等飛行禁止法で制限されていない道路、河川、公園等の上空について飛行することは原則として制限されていません。もっとも特定の公園やダムなどの特定の場所においては、条例等によって飛行が制限されている場合があります。また、他人の土地の上空については、その土地の「利益の存する限度」で所有権が保護されるため、これを害さないよう飛行することが求められており、一定の配慮・注意をする必要があります(※8)。
② 飛行区域に関する制限とは別に、事業用のドローンでは電波法についても注意が必要になります。ドローンの活用において電波を利用する場合には、無線局の免許又は登録を受ける必要があり、その無線局の無線設備は、無線従事者又はその監督下にある者が操作しなければならないと規定されています(電波法39条1項)。

第2 ドローンビジネスの注意点

⑴ ドローンが活用されるビジネスシーンは増加しており、また、今後活用が期待される領域も広がっています。特に、楽天やANAが配達にドローンを活用するテストを行っており(※9)、ドローンによる物品の配送について、地方都市の日用品や医薬品の配達、物流の人員不足を解消する手立てなどとしてますます注目されています。
ドローンビジネスにかかる規制につき、物品の配送に関し紹介します。
⑵ 配送拠点から各人の自宅やオフィスまで配送する場合、配送拠点や配達先を含め、有人地帯を通過し、操縦者がドローンを目視で追い続けるわけにはいかないので、目視外飛行をすることになります。この場合、第三者の上空を飛行することになり、かつ、目視外の飛行となるため、前述のカテゴリーⅢに分類される飛行となります(※10)。そのため、機体認証・操縦者技能証明及び飛行許可・認証を受ける必要があります。これらの許可・認証が商品の配送のたびに必要になるため、現時点では、サービス実装段階に進んでいるものではありませんが、包括的な許可・認証を与える制度設計が議論されています。包括的な許可・認証制度が成立すると、配送拠点に操縦者がいながら、ドローンが一斉に配達するというサービスが提供されるかもしれません。
⑶ 仮に有人地帯を通過しないなどカテゴリーⅡに該当する場合、機体の認証を受けていれば、飛行毎の許可・承認が不要となるのは前述のとおりです。
なお、ドローンからの物品の投下は原則として禁止され、国土交通大臣の承認が必要となりますが(航空法132条の2第1項10号)、配送した物品をドローンが着陸した後に置くのであれば、投下に該当せず、承認が不要となります(投下の具体例としては、農薬の散布等が該当します)。

第3 結語

 様々な法規制によってドローンの安全な飛行が目指されていますが、実際に運用しようとすると、飛行許可の申請のために飛行マニュアルの作成をするなど、手続きとして不便に感じるものもあるかもしれません。もっとも、国土交通省が開示している標準マニュアル(※11)に従う場合には、別途マニュアルを作成することも、申請書に添付することも不要になるなど、手続きの簡素化が一部認められています。
 今後もドローン市場の拡大が予想されるなか、安全性と利便性のバランスのとれた法制度が整備されるよう、適宜改正を重ねていくことが予想されます。
 概略として、ドローンに関わる規制は前述のとおりですが、想定するビジネスによっては、本ニュースレターで紹介した規制以外の規制も確認する必要があり、飛行場所や飛行態様によって適用される規制が異なります。例えば、農薬散布の場合、ドローンでの農薬の運搬についても別途規制があります。
 検討しているビジネスに応じて適用される制度を慎重に確認するとともに、適切なドローンの活用をしていくためにも、制度改正の動向を注視しておくことが望ましいでしょう。

以上

【参考資料】
※1 国土交通省 【登録講習機関】よくある質問
民間資格による操縦者に一定の技能があることを証明するための手続きを簡略化する制度が廃止され、国家資格に統一されます。
https://www.uapc.dips.mlit.go.jp/contents/org-lic/question_RTI.html
※2 日本経済新聞 2025年11月12日「ドローン飛行禁止区域を拡大「重要施設の周囲1000m」案 テロ脅威に対応」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA122B30S5A111C2000000/
※3 国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/koku/certification.html#anc01
※4 国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html#anc01
※5 国土交通省 無人航空機を屋外で飛行させるための手続きについて
https://www.mlit.go.jp/common/001579420.pdf
※6 国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html
※7 警視庁 小型無人機等飛行禁止法関係
https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/index.html
※8 内閣官房小型無人機等対策推進室 無人航空機の飛行と土地所有権の関係について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai16/betten4.pdf
※9 平成30年度CO2排出量削減に資する過疎地域等における無人航空機を使用した配送実用化推進調査 検証実験地域
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_20180628kobo.html
※10 国土交通省 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト
有人地帯における目視外飛行はレベル4飛行と呼ばれています。
https://www.mlit.go.jp/koku/level4/
※11 国土交通省 航空局標準マニュアル(令和7年3月31日版)
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html#anc03