タイ:ノミニースキームに対するDBDの追加措置
「ノミニースキームに対するDBDの追加措置」についてニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからもご覧いただけます。
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ノミニースキームに対するDBDの追加措置
2026年9月7日
One Asia Lawyersタイ事務所
藤原 正樹(弁護士・日本法)
マーシュ 美穂
2026年4月のニュースレター[1]でお知らせしたとおり、DBDは、外国投資家が事業規制を不当に回避する目的でノミニースキームの利用を防止するため、取締りを強化しています。
DBDによれば、従来の制度では、会社設立時の審査を通過した後、タイ人株主の出資が実質的なものであるかを十分に確認できないまま、外国人の署名権限を有する取締役(以下、「サイナー」)を追加する変更登記が行われる事例がありました。
このような運用上の課題に対応するため、DBDは中央パートナーシップ・会社登記局命令第2/2569号(以下「命令第2/2569号」といいます。)を発出しました。同命令は、ノミニースキームの利用を防止するため、設立時および一定の変更登記時における資本金払込みの確認を強化するものです。
1. 新会社の設立時
命令第2/2569号に従い、2026年8月1日以降、以下のいずれかに該当する会社を設立する場合、登記申請を行う取締役は追加書類を提出する必要があります。
- 外国人株主の持株比率が 50% 未満である、タイ人・外国人の混合株主構成の会社
- 株主は全員タイ人であるものの、外国人のサイナーを置く会社
提出が必要となる書類は、以下のとおりです。
- ・タイ人株主の銀行取引明細書:出資予定額に相当する金額について、出資金の払込日から過去 3 か月間における振込みまたは引出しを確認できるもの
- ・株式払込金を受領した取締役の銀行取引明細書:国籍を問わず、全ての株主から払込金を受領した日が分かるもの
- ・「設立時投資明細書(Statement of Investment upon Incorporation)」:各株主の出資内容を記載する、命令第2/2569号所定の様式
なお、払込金を受領した取締役自身も株主である場合、当該取締役自身の払込を証明するため、上記2番の銀行取引明細書は払込日から起算して 3 か月間を対象とするものでなければなりません。
2. 外国人サイナーの追加時
前回のニュースレターで解説のとおり、命令第1/2569号では、会社のサイナーが全員タイ人である状態から、外国人のサイナーを含む構成へ変更する場合、「実質的出資に関する宣誓書(Declaration of Genuine Investment)」を提出し、ノミニースキームを利用していないことの申告が義務付けられました。
命令第2/2569号では、2026年8月1日以降に設立され、かつ設立から 1 年以内に当該変更登記を行う会社について、次の追加書類も必要となります。
- ・DBDに申告した払込資本金と一致する資本金の払込みを会社が受領したことを示す銀行取引明細書
- ・変更登記時の投資明細書(Statement of Investment upon a Corporate Amendment)
会社名義の銀行口座をまだ開設できていない場合には、払込金を受領した取締役名義の銀行取引明細書を提出することができます。
3. 虚偽申告等をした場合の罰則
命令第2/2569号によって新しい罰則が設けられたわけではありません。しかし、登記申請を行う取締役が、タイ人株主の出資が実質的なものではないこと、または会社の事業運営においてノミニースキームが利用されていることを知りながら、DBDに虚偽の申告書を提出した場合、当該取締役は、以下の刑法上の責任を問われる可能性があります。
- ・公務員への虚偽の供述(刑法第137条違反):6 か月以下の懲役、10,000 THB以下の罰金、またはその併科
- ・公務員に公文書への虚偽の記載をさせる行為(刑法第267条違反):3 年以下の懲役、60,000 THB以下の罰金、または併科
また、外国人事業法上の規制を回避するためにノミニースキームが利用された場合、その実施において外国人を支援したタイ人も、同法第36条に基づき、3 年以下の懲役、100,000 THB以上1,000,000 THB以下の罰金、またはその併科を科される可能性があります。さらに、同法第37条に基づき、当該会社に対して事業停止を命じられる可能性もあります。
4. 実務上の留意点
今回の命令により、タイ人株主が実際に出資できる資力を有していること、および出資金が実際に払込み・受領されていることの確認が、従来よりも厳格になります。会社の設立や取締役構成の変更を予定している場合は、特に以下の点をご確認ください。
- ・タイ人と共同で会社を設立する場合、設立登記の申請前に、タイ人株主が自らの出資分を実際に負担できることを確認すること
- ・タイ人株主および払込金を受領する取締役が、それぞれ資金の支払いおよび受領を示す銀行取引明細書を用意できること
- ・2026年8月1日以降に設立した会社が、設立後 1 年以内に外国人サイナーを追加する場合、DBDへの届出内容と一致する資本金払込みの記録を確保しておくこと
- ・既に外国人サイナーがいる会社であっても、当該外国人サイナーが退任し、サイナー全員がタイ人となった後に、改めて外国人サイナーを再度追加する場合には、実質的出資に関する宣誓書の提出が必要となること
- ・設立時または取締役変更時に登記申請書に署名・提出する取締役は、各株主の出資が実質的なものであり、ノミニースキームが利用されていないことを事前に確認すること
本件に関してご質問がございましたら、One Asia Lawyers タイ事務所までお気軽にお問い合わせください。
以上
〈注記〉
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・ 本資料は2026年9月7日時点の情報に基づき作成しています。
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[1]https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/3a09b65d8a3d2c9e436197ae79e7367a.pdf

