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日本:入管法改正による「不法就労助長罪」の厳罰化と外国人材受入れ企業が取るべき対応策

2026年09月09日(水)

「入管法改正による「不法就労助長罪」の厳罰化と外国人材受入れ企業が取るべき対応策」についてニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからご覧いただけます。
「入管法改正による「不法就労助長罪」の厳罰化と外国人材受入れ企業が取るべき対応策」

入管法改正による「不法就労助長罪」の厳罰化と外国人材受入れ企業が取るべき対応策

2026年9月
One Asia Lawyers Group
アジア・グローバル人材プラクティスグループ

. はじめに

2024年6月に成立した「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)(以下「入管法」といい、同法施行規則を「入管法規則」といいます。)により、2027年4月1日から「不法就労助長罪」の罰則が大幅に強化されます。同時期に施行・開始される新たな外国人受入れ制度「育成就労制度」につきましては本年7月15日付ニュースレター[1]にて解説しましたが、企業や関係機関におかれましては、同制度に係る対応と併せてこれまで以上に厳格な雇用管理とコンプライアンスの徹底が求められます。
そこで本ニュースレターでは、法改正の内容から実務上の注意点、取り組むべき体制整備のポイントなどを解説します。

2.改正の概要

  改正内容
「不法就労助長罪」(入管法73条の2)は、
①事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせること
②不法就労活動をさせるために外国人を自己の支配下に置くこと
③外国人に不法就労活動をさせる行為又は前記②の行為に関し、業として(反復継続する意思をもって)外国人をあっせんすることが該当し、2027年4月、その法定刑が次のとおり引き上げられます。
・改正前(現行) 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方
・改正後(2027年4月〜) 5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方
※ 改正前と同様、拘禁刑と罰金刑の併科も可能であるほか、個人(社長や担当者)だけでなく、その会社自体に対しても罰金刑が科される両罰規定が適用されます。
 改正の背景と目的
近年、国内の深刻な人手不足に伴い、外国人材の需要は高まる一方です。他方で、在留資格制度の範囲を超えた違法な就労や、悪質な仲介業者(ブローカー)による不当な労働搾取等の問題は依然として絶えず、外国人雇用の増加に合わせた対応策も求められるところです。
今回の厳罰化は、違法な就労環境を供給・助長する「雇い主側」や「ブローカー」への抑止力を高め、外国人が安心して働ける健全で透明性の高い雇用市場を確立することを目的としています。
 育成就労制度施行との連動性
2027年4月1日には、従来の技能実習制度を発展的に解消した新しい在留資格である「育成就労制度」が同時に施行されます。この二つの法改正は、車の両輪として深く連動しています。

ア 「転籍(転職)の制限緩和」に伴うリスクヘッジ
従来の技能実習制度では原則不可とされていた「本人意向による転籍」が、育成就労制度では一定の要件(同一機関での就労期間1~2年、日本語・技能試験の合格など)を満たせば認められます。すなわち、外国人材の移動の活発化に伴い、雇い主側における違法な受入れを抑止する必要性が高まります。

イ 悪質なブローカーの排除
転籍が柔軟になる反面、外国人を不当に引き抜いたり、違法な労働環境へあっせんしたりする仲介業者(転籍ブローカー)の暗躍が強く懸念されています[2]。そのため、不法就労助長罪を厳罰化することで、裏での不正な人材移動を抑止し、適正な転籍環境を保護する狙いがあります。

3.罰則対象となる「不法就労助長」の行為類型

 不法就労助長罪は、「知らなかった」「確認していなかった」としても過失が認められる場合には処罰の対象となります。たとえ人材仲介会社からの紹介などであっても、自社での確認を怠り不法就労者を雇用すれば「不法就労助長」に該当し得るため、細心の注意が必要です。
受入れ企業等(実際の現場)で注意すべき行為類型は以下の3つです。

 不法滞在者の雇用
不法入国者や不法残留者など、適法な在留資格を有していない外国人を雇用、就労させる場合です。在留期間更新手続を忘れ、期限を超えて滞在している外国人、又は本人から「更新申請中」と口頭で聞いていたものの実際には期限が切れていた外国人を、そのまま働かせ続けるケースなども該当します。

 許可を有していない者の雇用
「永住者」や「定住者」などの身分・地位に基づく在留資格以外の外国人には、日本において行うことができる活動内容が在留資格ごとに定められています(入管法別表第一。例えば、「技術・人文知識・国際業務」、「特定技能」、「留学」、「短期滞在」などがこれに当たります。)。したがって、適法な在留資格をもって日本に滞在していたとしても、就労が認められていない場合は、当該外国人を就労させる行為は不法就労助長となります。
具体的には、「短期滞在」(観光等を目的とする在留資格)の外国人や、資格外活動(アルバイト)の許可(入管法19条2項)を受けていない留学生を就労させる行為等が該当します。

 許可の範囲外での就労
前述のとおり、入管法別表第一の外国人について、定められた範囲以外の活動は原則として認められておらず、たとえ就労関係の在留資格を有していても、その範囲外の業務をさせる行為は不法就労助長となります。
例えば、「育成就労(飲食料品製造業分野)」の在留資格を持つ外国人に、人手不足だからといって店舗での接客や配達、建設現場の手伝いをさせるなど、業務区分を逸脱した労働をさせる行為がこれに該当します。
また、資格外活動許可を受けた留学生等のアルバイトにおいて、法定上限である週28時間(入管法規則第19条5項)を超えて労働させる行為も不法就労助長に当たります。このアルバイトについては、他社との掛け持ち(ダブルワーク)を見落とし、自社と合算すると28時間を超えてしまうケースに特に注意が必要です。

 4.コンプライアンス体制の再点検ポイントと対応策

2027年4月の入管法改正施行に向け、改めて確認、検討すべき社内体制の点検ポイントとその対応策はこちらです。

点検項目

具体的な対応策

在留カードの確認のシステム化

①採用時点及び在留期間更新・変更時点における在留カードの確認の徹底 
・カード原本の目視によるチェック
・有効性につき情報を確認[3]
「在留カード等番号失効情報照会」サイト:カード番号から失効情報を検索
 「在留カード等読取アプリ」:ICチップ内の情報を読み取り偽変造の有無を確認
②継続的な管理体制の整備
 管理台帳の作成、カード有効期限3ヶ月前からの自動アラート設定等

現場での従事業務の定期監査

・採用時:従事予定の業務を予め明確にした上で採用
・採用後:定期的に現場ヒアリングや作業実態の内部監査を実施
(現場の判断で「在留資格対象外の業務」を一時的であっても手伝わせていないかなどを確認)

アルバイトの労働時間管理の厳格化(留学生等)

・他社での就労有無に関する書面(自己申告書)を定期的に徴収
・シフト管理システムと連動させて週28時間を絶対に超えない仕組みを構築

取引先・仲介業者の調査・確認

・監理支援機関(育成就労)・登録支援機関(特定技能)・人材紹介会社等
→適正な許認可等を受けているか、過去に行政処分や勧告を受けていないかを厳密に調査・確認

5.総括

不法就労助長罪で処罰された場合、企業の管理体制の不備が厳しく問われます。高額な罰金だけでなく、労働者派遣事業や有料職業紹介事業の許可、監理支援機関の許可や登録支援機関の登録に係る欠格事由にそれぞれ該当するため、同機関に対する許可等の取消しや事業停止命令により、今後の外国人受入れを停止せざるを得なくなるなど多大な損害発生のおそれがあるほか、企業名公表等による重大なレピュテーションリスクにも直面します。
2027年4月の改正施行に向けて、今一度自社の管理体制に穴がないか、全社的な総点検が求められるところ、雇用契約書や社内管理規程のリーガルチェックなど、実務においてその適否の判断に悩むケースも想定されますので、適宜ご相談いただければと存じます。

参照:出入国在留管理庁「外国人を雇用する事業主の皆様へ 不法就労防止にご協力ください。」(2021年5月)https://www.moj.go.jp/isa/content/001349112.pdf
[1] One Asia Lawyers「日本:育成就労制度の施行に伴う外国人受入れ実務の影響と対応策
https://oneasia.legal/17560
[2]技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議「最終報告書」(令和5年11月30日)https://www.moj.go.jp/isa/content/001407013.pdf
[3] 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/rcc-support.html