• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正

2023年07月14日(金)

オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下のリンクからご確認ください。

オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正

オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正

2023年7月吉日
One Asia Lawyers
オーストラリア・ニュージーランドチーム

1.はじめに

 2023年6月22日に、昨年の改正(the Fair Work Legislation Amendment (Secure Jobs, Better Pay) Act)に続き第2弾となる、フェアワーク法(Fair Work Act 2009 (Cth))の改正法案(Fair Work Legislation Amendment (Protecting Worker Entitlements) Bill 2023)が可決され、同月30日に勅許を受け施行されました。本改正法により、無給育児休暇の取得柔軟化、スーパーアニュエーションの全国雇用基準化、外国人労働者の雇用法における権利の明確化等、従業員の権利保護を更に強化する規定がフェアワーク法に盛り込まれています。
 本稿では、本改正法の重要ポイントについてご紹介します。

2.無給の育児休暇

 弊所のニューズレター(https://oneasia.legal/9758)にてご紹介した、2023年有給育児休暇改正法(Paid Parental Leave Amendment (Improvements for Families and Gender Equality) Act 2023 (Cth))による有給育児休暇制度(政府による育児休暇の補助金支給制度)の改正に平仄を合わせるため、無給育児休暇についても以下のような改正が行われました。

• 無給育児休暇は子の出生から24か月の間にいつでも取得が可能
• 原則として連続で取得しなければならない12か月間の無給育児休暇のうち、100日間を日単位でより柔軟に取得することが可能
• パートナーが同時に取得できる日数の限定を排除
• パートナーの取得した日数にかかわらず、無給育児休暇を合計24か月となるまで延長可能

 本改正事項は、2023年7月1日より発効されています。

3.スーパーアニュエーション

 スーパーアニュエーションの支払義務が全国雇用基準(NES:National Employment Standards)の第12項としてに盛り込まれます。これにより、スーパーアニュエーションの支払義務を怠った雇用主に対し、フェアワーク法における罰則が適用されるようになります。

 本改正事項は、2024年1月1日に発効されます。

 なお、スーパーアニュエーションの支払義務については、フェアワーク法における従業員とみなされない場合であっても、より広範な従業員の定義を設けているスーパーアニュエーション法(Superannuation Guarantee (Administration) Act 1992 (Cth))に基づき従業員とみなされる者を雇用する場合は、支払義務が発生するため注意が必要です。

4.外国人労働者の権利

 オーストラリアで就労する外国人労働者のフェアワーク法における権利は、労働者の移民法におけるステータスにかかわらず保護されることが明確にされました。これにより、外国人労働者が移民法において就労する権利を保有していない場合または移民法に違反する場合であっても、フェアワーク法に基づく保護規制の対象となるため、企業は、雇用するすべての外国人労働者に対し、そのビザのステータス等にかかわらず、雇用法上の手当の支給、合法な解雇手続き等の雇用法上の対応を取ることが求められます。

5.おわりに

 本改正法では、上記の他に、従業員による給与控除の承認手続きの簡易化、労使協定(Enterprise Agreement)に関する当局Fair Work Ombudsmanの決定の効力の明確化、カジュアル雇用の炭鉱労働者へのLong Service Leaveの支給義務の明確化といった細則の改定が行われました。

 コンプライアンスの観点から、企業は、今回の法改正を踏まえた社内手続きや就労規則の見直しを早急に行うことが重要となります。また、今後もオーストラリアでは雇用法改正の動きが予想されるため、今後の動向に注視する必要があります。