ラオスにおける土地登記書・土地権原書に関する規定について
ラオスにおける土地登記書・土地権原書に関する規定についてのニューズレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
→土地登記書・権原書について
ラオスにおける土地登記書・土地権原書に関する規定について
2026 年8月3日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
天然資源環境省は、土地登記書及び土地権原書の記載内容・様式を全国で統一するため、2021年2月19日付で「土地登記書及び土地権原書の印字内容及び書式に関する大臣合意(No.0672)」(以下「旧合意」)を公布しました。(詳細は弊所ニューズレターをご覧ください)。
今回、農業環境省(旧天然資源環境省)は、旧合意に置き換わる「土地登記書及び土地権原書の様式に基づく記載に関する大臣合意(No2774)」(以下「本合意」)を2026年6月29日付で発行しました。本合意は2026年8月18日に施行されます。
以下、旧合意との主な変更点を中心に概略を解説致します。
2.根拠法令の更新
本合意の前文では、旧合意が引用していた2019年改正土地法に加えて、以下の農業環境省の組織改編に関する規則・決定が新たに引用されています。これらの追加は、2025年に天然資源環境省と農林省が統合され、新たに農業環境省が設置されたことに伴う組織再編を反映したものです。土地登記書及び土地権原書の発行を担当する部局の位置づけを明確にする趣旨と考えられます。
・2025年8月14日付「農業環境省の組織及び活動に関する決定(No 534)」
・2026年6月27日付「土地管理・開発局からの要請書(No3034)」
3.登記書・権原証書の記載事項の主な変更点
本合意第3条(政府所有地)の記載事項は、旧合意と同様の構成・項目数(19項目)が維持されています。
他方、第4条(個人・法人所有地)の記載事項は、旧合意の22項目から23項目に増加しています。
(1)行政区分の追加
新合意では、土地の所在地の情報として「ຕາແສງ(ターセーン:複数の村からなる、郡より小さい地方行政区画)」が追加されました。ターセーンは、1920年代のフランス植民地時代に使用されていた行政区分です。1990年に廃止されましたが、2025年に復活しました。基準としては、1村から24村以下の村を一括りにした区分に設置する又は人口が2万人以下の郡をターセーンに変更することが検討されています(2025年1月1日内務省通知(No08 ))。
(2)土地登記書及び権原証書の管轄部署の変更
省庁再編により、土地登記書及び権原証書の管轄が、天然資源環境省土地局から農業環境省土地管理・開発局へ変更されました。これに伴い、土地登記書及び土地権原書には、ヴィエンチャン都・県の農業環境課長又は郡・都市農業環境事務所長が署名します。
(3)土地使用権所有者の記載方法の追加
旧合意では、土地使用権所有者は、①婚姻前から所有する土地の場合、②婚姻後に所有した土地の場合、③共同で所有する土地の場合で所有者の記載の方法が区別されていました。本合意では、これらに加え、土地使用権保有者が法人又は国際機関である場合の記載方法が新たに追加されました。法人の場合は、会社名、国際機関の場合は基金名、協会名、同盟名が記載されます。
(4)土地の分類の詳細化
旧合意では、「建設用地」か「農業用地」のみでしたが、新合意では、「建設用地」は、住宅用地、工業用地、商業・サービス用地又は空き地のいずれかに区分して記載されます。「農業用地」は、水田、農園、栽培地、家畜飼育地、養殖地、灌漑地、農業試験地、及び空き地、未開発地のいずれかに区分して記載されます。
4.在ラオス日系企業の実務への影響
本合意は土地登記書及び土地権原書の記載内容・様式に関する規定であり、土地使用権の実体的な内容を変更するものではありません。もっとも、以下のとおり、在ラオス日系企業の実務に関連し得る事項が含まれるため、補足説明させていただきます。
(1)既発行の土地登記書・土地権原書の取扱い
本合意は、施行日以降に発行される土地登記書及び土地権原書について適用されるものであり、既に発行済みの登記書・権原書が直ちに失効するものではないと解されます。
(2)土地使用権の保有主体に関する留意点
前提として、ラオスにおいては全ての土地が国家(国家共同体)に帰属し、個人・法人はこれを所有することができません。農業環境省が発行する土地権原書(バイターディン)は、第三者に対して土地使用権を証明する対抗要件となる書類ですが、ラオス人個人及びラオス法人に対してのみ発行され、外国人・外国法人[1]に対しては発行されません。
したがって、日系企業(外国法人)が土地権原書の名義人となることはできず、日系企業がラオスの土地を利用する場合はリース又はコンセッションによることとなります。この点は本合意によって変わるものではありません。現状、日系企業(外国法人)が第三者に対して「当該土地を賃借している」旨を主張し得る書類は、リース契約書に限られる点に留意が必要です。
なお、本合意により、土地権原書上の権利者が法人である場合の会社名の記載方法が明文化されましたが、これは上記のとおりラオス法人を念頭に置いたものであり、外国法人名義での権原書発行を認めるものではありません。
(3)土地分類の詳細化に伴う用途適合性の確認
建設用地が住宅用地・工業用地・商業サービス用地等に細分化されることにより、権原書上の土地分類と実際の使用用途との適合性が、従前よりも外形的に判別しやすくなります。賃借している土地の権原書上の分類が、想定する用途と整合しているかの確認が望まれます。
(4)当面の対応
在ラオス日系企業においては、施行日に向けて、賃借している土地に係る権原書の記載内容(所在地表示、土地分類、名義人)を確認し、リース契約書との整合性を確認しておくことが望まれます。
[1] ラオスの法令上、「外国法人」という用語について明確な定義規定は存在しません。実務上は、外国籍の者が株式を保有する法人は、その保有比率にかかわらず(たとえ1%であっても)「外国法人」として取り扱われます。したがって、ラオス人・ラオス法人との合弁会社であっても、外国籍の株主が存在する場合には、実務上「外国法人」とみなされ、土地権原書(バイターディン)の発行を受けられません。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)
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