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2022年01月13日(木)6:21 PM

インドにおける取締役会の運営FAQについてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

インドにおける取締役会の運営FAQ

 

インドにおける取締役会の運営FAQ

 

2022年1月13日

One Asia Lawyers 南西アジアプラクティスチーム

インドでは2021年6月以降、年次財務報告書承認等の取締役会を、ビデオ会議で開催することが恒久的に可能とっています(当該規制緩和については、2021年6月17日付けニューズレターで解説しています。https://oneasia.legal/7038)。

本ニューズレターでは、インドにおける取締役会運営について多く寄せられるお問合せを紹介し、法規制と実務を解説いたします。

なお、2021年9月15日発売の『南アジアの法律実務』(https://oneasia.legal/7381)(中央経済社)では、インドやその他南アジア各国の会社制度、労働法、不動産法制等の法務実務を解説していますので、ぜひご参照ください。

1.インドの取締役会の概要

インドにおける取締役会運営に関しては、「2013年会社法」(Companies Act, 2013)[1]および、その下位規則である「2014年会社(取締役会および権限)規則」(Companies (Meetings of Board and its Powers) Rules, 2014、以下「取締役会規則」)[2]に、具体的な規定が定められています。

日系企業のインド子会社等、インドの会社法に基づいて設立された会社は、当該規定に従い、取締役会を開催することとなります。

かかる規定の概要は下表のとおりです。

開催頻度

毎年少なくとも4回、開催間隔は120日未満

設立後最初の取締役会は設立日から30日以内(会社法173条1項)

なお、小規模企業スタートアップ企業[3]の一部の会社は、年2回の開催(開催間隔は90日以上)で足りるとする例外規定が適用されます(会社法173条5項)

定足数

最低2名(ただし、全取締役数の3分の1(端数切り上げ)を充足する必要あり)(同法174条1項)

開催方法

対面、ビデオ会議、一定の条件の下で書面決議が認められています。

【ビデオ会議】(会社法173条2項)

取締役の参加を記録・認識し、議事を日時とともに記録・保存できる場合、視聴覚手段を用いた取締役会の開催が認められます。

【書面決議(Resolution by Circulation)】(会社法175条1項)

決議の草案をすべての取締役に回覧(メール等電子的手段も可)し、決議された場合、取締役会の正式な決議とみなされます。議決要件は取締役の過半数の賛成。

ただし、借入・融資、財務諸表の承認等、一定の事項については書面決議が認められないため、対面またはビデオ会議の開催が必要です。また、取締役の1/3以上が求める場合にも、書面ではなく対面・テレビ形式での会議上で決議を行うこととなります。

開催地

会社の登記上の所在地や同じ州内でなければならないという規定はなく、日本等の国外で開催することも可能

決議要件

書面決議の決議要件は、議決権を有する全取締役の過半数以上(175条1項)。

取締役会での決議要件は、附属定款において、出席取締役の過半数と規定することが一般的。

 

2.ビデオ会議での取締役会はどのように行えばよいか?

ビデオ会議その他所定の視聴覚手段(video conferencing or other audio visual means)を利用した取締役会については、取締役の参加を記録認識recording and recognising the participation)し、当該会議の議事を日時とともに記録・保存(recording and storing)することが可能であることを前提に、認められています(会社法173条2項)。また、ビデオ会議等による出席であっても、出席者として定足数にカウントされます(同法174条1項)。

ただし、取締役会規則には、ビデオ会議等を用いた取締役会を招集して実施するための要件と手続きが定められており(同規則3条)、ビデオ会議用の機器・設備自体や接続障害回避手段不正アクセス対策電子記録の手段等を確保しておくことが前提条件となります。

同規則第3条におけるとりわけ重要な規定は以下のとおりです。

(1)     十分なセキュリティと本人確認手続きを確保し、会議の完全性を保護すること

(2)     議事を記録し、会議の議事録を作成(to record proceedings and prepare the minutes of the meeting)し、その草案は開催15日以内に全取締役に配布すること

(3)     遅くとも当該年度の監査が完了する前に、テープ記録またはその他電子記録機構を保管すること

(4)     開催通知は、(対面開催同様に)すべての取締役に送付すること

(5)     電子的方法での参加しようとする取締役は、暦年の初めにその旨を申告すること。当該申告の有効期間は1年間であるため、毎暦年の申告が必要となる。

(6)     取締役会の開始時に議長が点呼を行い、ビデオ会議参加のすべての取締役が、記録のために以下の事項を述べること:(a)氏名、(b)自分が参加している場所、(c)関連資料をすべて受領済みであること、(d)今いる場所で当該取締役以外の者が会議に出席していないこと、または会議の議事にアクセスできないこと

なお、以前は物理的な実地開催が必須であった項目(年次財務諸表の承認、取締役会の報告書の承認、目論見書の承認、財務諸表承認のための監査委員会、合併・統合・分割・買収)も、現在はテレビ方式での取締役会開催が認められています(2021年6月17日付けニューズレター参照)。

3.すべての取締役会は、ビデオ会議や書面決議で代替できるか?

ビデオ会議は、対面での取締役会と同等であり、すべての取締役会をビデオ会議で行うことも可能。

書面決議は、後述する規定の重要な決議事項を除く事項であれば、正式な取締役会決議とみなされますが、重要事項については、取締役会との代替はできません。また、書面決議は、次回の取締役会で追認しておくことが一般的です。

【ビデオ会議】

ビデオ会議による取締役会については、前項に示した環境整備や安全対策、会議の記録等の規定に則った開催であれば、法定4回のすべての取締役会をビデオ会議で行うことも可能です。

従前はビデオ会議で扱うことが認められていなかった、財務諸表の承認等の事項も現在はビデオ会議での決議が可能となっているため、コロナ禍により物理的な会合が困難となった多くの日系企業にとっては、コンプライアンス上の大きな懸念が一つ払拭されたと言えます。

なお、記録(record)の方法として、取締役の参加を認識できるものであれば、録画でなく音声録音で代替できると解釈する余地はあるものの、議事録だけでは足りないと解されています。

したがって、ビデオ会議での開催とすると、それを記録し保存する等の新たな負担が生じることとなりますが、録画と保存をしておくことが推奨されます。

【書面決議】

書面決議は、下表の事項以外の事項であれば、その決議案を全取締役に事前回付し、決議要件である取締役の過半数が賛成すれば、正式に取締役会の決議とみなすことができます(会社法175条1項)。回付は、メール等の電子的方法も可能です。当該決議は、次回の取締役会での議事録の一部として記録される必要があります(同条2項)。

以下の事項については、書面回付による決議は認められず、対面またはビデオ会議による取締役会の開催が義務付けられています(同法179条3項)。

また、1/3以上の取締役が求める場合も書面決議は行えず、会議の開催が必要となります。

取締役会の会合での決議が必要な事項

(1)    株式が未払となっている株主に対する払込請求

(2)    有価証券の買戻しの承認

(3)    社債を含む証券の発行

(4)   金銭の借入

(5)    会社資金の投資

(6)   融資、または融資に関する保証もしくは担保の提供

(7)   財務諸表および取締役会の報告書の承認

(8)    事業の多角化

(9)    合併、統合、再編の承認

(10) 他社の買収、または実質的な支配権の取得

(11) その他規定される事項

 

ただし、(4)から(6)の事項については、取締役会は、その権限をマネージングダイレクター(MD)、マネージャー、その他会社の主要な役員、または会社の支店の場合は支店の主な役員に委任することが認められています。そのため、借入のたびに取締役会の決議を経る必要はありません。例えば、あらかじめ100万ルピー相当の借入については、その承認をMDに委ねるという内容の包括決議を取締役会で行っておけば、MDは事後報告のみで足り、取締役会での個別の決議は不要となります。これは、MD等の権利の濫用にもつながるリスクも大きいため、無条件に権限を委任することは避けるべきであり、実務上もありません。

ただし、借入れの場合、金融機関によっては、当該取締役会議事録の提示を求めることもあるため、借入れをしようとする金融機関の条件を事前に確認しておく必要があります。

また、貸付先が取締役の親族などの場合は、関係者間取引(Related Party Transaction)として、金額が権限の範囲に収まっている場合でも、別途取締役会承認が必要となります(会社法188条)。

上記の事項であっても、迅速に行う必要がある等の時間的な制約がある場合は、書面決議で一旦承認した上で、次回開催の取締役会で追認するという方法も、実務の場面ではとられています。ただし、その場合でも、定期的な取締役会において追認しておくことが望まれます。

4.議事録の記録漏れ等の不備は、罰則の対象となるか?

ビデオ会議での記録の保管を含め、取締役会の議事録を記録していない場合、会社に対しては2万5千ルピー、不履行の各役員に対しては、5千ルピーの罰則が課されます(会社法118条11項)。

また、会社は、インド会社秘書協会が定めた取締役会に関する秘書基準(SS 1)を遵守することも求められているため、議事録作成・録画保管を怠ると、会社秘書役の資格に影響するリスクが生じます。

もっとも、議事録の改ざんや虚偽が発覚[4]したような場合でない限り、例えば機器上の不具合といった不測の事情によるものであった場合には、厳格に罰則が行われる可能性は小さいと言えます。

しかしながら、コンプライアンスの観点から、議事録の作成と保管は確実に行い、これらの義務を遵守することが求められます。

[1] https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/acts-rules/ebooks/acts.html?act=NTk2MQ==

[2] https://www.mca.gov.in/content/mca/global/en/acts-rules/ebooks/rules.html

[3] 具体的には、1人会社(One Person Company)、小規模会社(small company)、休眠会社、スタートアップの非公開会社(private company (if such private company is a start-up))が、当該例外規定の対象となります。

小規模会社とは、公開会社以外の会社で、i)払込済み株式資本が500万ルピー以下またはそれ以上の額で規定されている場合1億ルピー以下であり、ii)直近の会計年度の損益計算書上の売上高が2千万ルピー未満である会社を指しますが、持株会社または子会社は小規模会社として適用されません。

[4] 議事録の改ざんの場合は、会社法118条12項に基づき、2年以上の禁固刑および2万5千ルピー以上10万ルピー以下の罰金に処されます。

 

以上

2021年12月08日(水)8:44 PM

エチオピアの投資規制と法制度についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

エチオピアの投資規制と法制度について

 

 

エチオピアの投資規制と法制度

2021年12月6日

One Asia Lawyers 南西アジアプラクティスチーム

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

 

インド等経由でのアフリカ進出のご相談や、海外インフラプロジェクトに関する相談が増えてきているため、南西アジアプラクティスチームおよびインフラ輸出リーガルプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行っています。

今回は第3弾として、エチオピアの各種投資規制と法制度を紹介して参ります。

第一弾のナイジェリアhttps://oneasia.legal/7141)、第二弾の南アフリカhttps://oneasia.legal/7734)も公開しています。

【エチオピアの概要】

国名

エチオピア連邦民主共和国

首都

アディスアベバ

ISO国名コード

ET、ETH,

面積

109.7万平方キロメートル

人口

1億1,496万(2020年)[1]

言語

アムハラ語、オロモ語、英語等

民族

オロモ族、アムハラ族、ティグライ族、ソマリ族等約80の民族

宗教

キリスト教、イスラム教他

政治体制

政体:連邦共和制

元首:大統領(ゼウデ大統領、2018年10月就任、任期6年)

議会:二院制

政府:

首相 アビィ・アハメド・アリ

外相 デメケ・メコネン・ハッセン

通貨

ブル(BIRR)

会計年度

7月8日~7月7日

 

1.地理

エチオピアは、約109.7万平方キロメートル(日本の約3倍)の国土面積を有し、エリトリア、ソマリア、ケニア、南スーダン、スーダン、ジブチと国境を接するアフリカ大陸東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置する国である。中東の市場に近いという地理的優位性を有しているものの、1993年に紅海に面した旧州であるエリトリアが分離独立したことによりエチオピアは内陸国となり、過去20年間はジブチの主要港を利用してきている。国境をめぐり対立してきたエリトリアとの2000年の和平合意および2018年の外交関係再開により、エリトリアのアサブ港とマッサワ港の利用を再開することで合意しており、国際貿易の拡大が期待される。

首都のアディスアベバは標高が約2,400メートルある高地に位置するため、特に雨季は冷涼な気候となる。アフリカ連合(African Union: AU)やアフリカ経済委員会(Economic Commission for Africa: ECA)がアディスアベバに本部を設置しており、アフリカにおける政治的な中心地としての役割を持つ。

2.人口

人口1億1,496万人と、アフリカではナイジェリア(2億614万人)に次ぎ第2位、世界12位の人口規模を有する国である。全人口の56.5%が生産年齢人口(15~64歳)にあり、豊富な労働力を有する。

【人口動態(1,000人)】

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

47,888

57,048

66,225

76,346

87,640

100,835

114,964

 

3.国家・政治体制

エチオピアは、他の多くのアフリカ諸国と異なり、短期間のイタリアによる占領(1936年~1941年)期間はあったものの、ヨーロッパ諸国に統治されたことのない、アフリカで最も古い独立国である。

軍事革命による王政廃止と社会主義政権発足(1974年)、エリトリアの分離・独立(1993年)と同国との武力闘争勃発・和平合意成立・国境線確定(1998年~2002年)、連邦民主共和国樹立(1995年)などの情勢不安はあったものの、他のアフリカ周辺諸国との比較において、エチオピアは政治的に安定していると言われてきていた。

しかしながら、約80の民族を抱える同国では、少数民族であるティグライ人が30年にわたり政治経済を支配していたこともあり、最大民族であるオロモ人を始め、民族間対立や衝突はたびたび発生していた。2018年にオロモ出身者として初のアビィ首相が選出され、エリトリアとの外交関係再開や民族間融和に取り組んできたが、これに対し一部の国民の反感を招いてもいた。2020年11月に勃発した国防軍と旧支配層であるティグライ人民解放戦線(TPLF)の武力衝突、今年6月のTPLFによる州都メケレ制圧、その後の首都方向への南下、11月の非常事態宣言の発令と、情勢は深刻化しており、解決が望まれている。

以下の9つの州と2つの特別市がある。

州・特別市

州都

アファール

セメラ

アムハラ

バハルダール

ベニシャングル・グムズ

アソサ

ガンベラ

ガンベラ

ハラール

ハラール

オロミア

アダマ

ソマリ

ジジガ

ティグライ

メケレ

SNNPR (Southern Nations, Nationalities, and Peoples’ National Regional State)

アワッサ

アディスアベバ市

アディスアベバ

ディレ・ダワ市

ディレ・ダワ

 

4.法制度

エチオピアの法制度は、大陸法の法体系であり、最高法規となる憲法の下に、議会で可決する布告等(Proclamation)、閣僚会議が制定する規則(Regulation)、各省庁が制定する施行令(Implementing Directives)がある。エチオピア憲法は、憲法が最高法規である(憲法9条)としつつ、宗教法・慣習法(religious or customary laws)や、宗教裁判所・伝統裁判所(Religious and customary courts)を認めており(憲法34条5項、78条5項)、複数の法制度が存在していると言える。

投資やビジネスに関連する法令を始め、すべての法律、規則、施行令は、官報(Gazette、またはNegarit Gazeta:ネガリット・ガゼタ)にて公布される。

投資、ビジネスに関連する主要な法規制には以下が挙げられる。

投資法(Investment Proclamation No. 1180/2020)

投資規則(Investment Regulation No. 474/2020)

商法(Commercial Code Proclamation No.1243/2021)

所得税法(Income Tax Proclamation No. 979/2016)

関税法(Customs Proclamation No. 859/2014)

労働法(Labor Proclamation No. 1156/2019)

中でも、エチオピアにおける法人設立や運営、清算・撤退等に関して規定する商法は、2021年に、62年ぶりとなる改正がされており(2021年12月現在、未施行)、組織形態に一人会社(One-person Company)や有限責任事業組合(Limited Liability Partnership: LLP)が新設されるなど、変更点の確認が必須となる。

5.通貨・経済状況

通貨はブル、1USドル=47.25(2021年11月現在)。世界銀行の低所得国(Lower Income Countries)に分類される。

エチオピアのGDPは、コロナ禍の影響により減速したものの、過去10年間(2010-2020年)は年平均9.4%の高い成長率で推移しており、2019年の名目GDPは107.6億ドルと、アフリカではモロッコ(119.7億ドル)やケニア(95.5億ドル)と、アジアではスリランカ(84億ドル)と同程度の経済規模である。ただし、1人当たりの所得が936ドルと最貧国の一つでもあり、政府は2025年までに低中所得国になることを目指し、外国投資や工業団地を通じた民間セクターの役割拡大に積極的となっている。

主な経済指標と推移は以下のとおり。

 

指標

2016

2017

2018

2019

2020

名目GDP(10億USドル)[2]

74.3

81.8

84.3

95.9

107.6

1人当たり名目GDP(USドル)[3]

717

769

772

856

936

GDP成長率[4]

9.4%

9.6%

6.8%

8.4%

6.1%

 

6.産業

エチオピアの産業構造は、アフリカの多くの国同様に、GDP全体に占める農業セクター(第1次産業)の割合、および生産年齢人口全体に占める農業従事者の割合が高く、その割合が低下する一方、サービスセクター(第2次産業)の割合を伸ばしている。また、政府が成長を推進しつつも10%台で停滞していた工業(第2次産業)は、2011/12年(11.5%)から急成長し、2018/19年にはGDPの3割近くを占めている。主な輸出品目は、コーヒー、オイルシード(油糧種子)、金、豆類、園芸、畜産、繊維、皮革製品等。

 

産業ごとのGDP寄与率[5]は以下のとおり。

産業

2016/17

2017/18

2018/19

農業

36.4%

34.9%

33.3%

工業

25.9%

27.0%

28.1%

サービス

38.8%

39.2%

40.0%

 

7.外国投資

エチオピアには、2020年時点で11社の日系企業が拠点を設けている[6]。世界銀行の「Doing Business 2020」[7]では世界190カ国中159位、サブサハラアフリカ48カ国中29位[8]であり、政府によるビジネス環境改善の取り組みはなされているものの、いまだ課題は多いと言える。

アジアと比して人件費が高いと言われるアフリカ諸国の中で、エチオピアは人口規模が大きく労働賃金が極めて低廉であるため、製造業等の労働集約型産業にとっては、幾多の課題をクリアするだけのコストをかける価値があると判断されている。ただし、労働力が豊富であっても、均一な生産性を確保するための人材育成および労務管理に時間とコストを要することも併せて検討する必要がある。

なお、JETROの調査[9]によると、エチオピアは、在アフリカ日系企業の「今後の注目国」の第4位にランクされ、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアといったアフリカ経済大国に並び、ビジネス投資先として注視されている。

外国企業がエチオピアで事業を行う際の投資促進機関として、エチオピア投資委員会(Ethiopian Investment Commission)が設置されており、投資に必要となる投資許可証や事業許可証の申請受付・発行、投資家への支援等を担っている。

2021年1月には、会社登録や商号確認、投資許可証や事業許可証の取得と更新等をオンライン上で行える「eTradeプラットフォーム」(etrade.gov.et)が開設されるなど、ビジネス環境の改善が図られている。

 

(1)投資規制

エチオピアで投資に関わる主要規定として投資法およびその下位規則が存在し、2020年4月2日には新投資法(Investment Proclamation No.1180/2020)[10]が、2020年9月2日には、新投資規則(Investment Regulation No.474/2020)[11]が公布されている。

投資法は、外資、内資を問わず、鉱物および石油の探鉱・探査・開発への投資を除き、エチオピアで行われるすべての投資に適用される。

エチオピアにおける投資規制は従来、投資分野として明示的に記載されたセクターに限定するいわゆる「ポジティブリスト」方式であったが、現在は「ネガティブリスト」方式に変更されている。これにより、外国人投資家は、明示的に規制されている分野を除き、いかなる分野にも投資することができるようになったこととなる。

投資規則では、投資形態により、外国投資が禁止・制限される分野が以下のとおり規定されている。

 

政府との共同事業(Joint Investment with the Government)に限定される投資分野(規則3条)

武器・弾薬・爆発兵器の製造

電気エネルギー(electrical energy)の輸出入

国際航空事業

高速バス事業

郵便事業(クーリエサービス(国際宅配便)を除く)

 

国内投資家(Domestic Investor)のみに開放される投資分野(規則4条)

銀行業、保険業、小規模金融事業(資本財金融業(capital goods finance business)は除く)

国内統合送電網による電力送配電事業

初期・中等レベルのヘルスサービス

卸売業、石油・石油製品、国産自社製品の卸売(電子商取引による卸売業は除く)

小売業(電子商取引による小売および国産自社製品の小売は除く)

輸入貿易業(液化石油ガスおよびビチューメンを除く)

生豆コーヒー、チャット(覚せい作用のある植物)、油料種子、豆類、鉱物、皮革、天然林産物、家畜の輸出

第1等級(Grade 1)未満の建設・掘削事業

格付等級に達しない、あらゆる宿泊業

格付等級に達しない、あらゆる飲食業、ナイトクラブ、ケータリング業

旅行代理店業、旅券販売取引補助サービス(auxiliary services)

旅行催行業

機器・機械・車両のオペレーティングリース業(重機・特殊車両は除く)

輸送業(鉄道輸送、ケーブルカー輸送、低温輸送、25トンを超える輸送、政府や国内投資家との合弁が義務付けられている輸送サービスを除く)

伝統的医薬品調合業

国内市場向けパン、洋菓子(pastries)製造業

製粉業

理容・美容業、鍛冶業、服飾仕立て業(縫製工場をによるものを除く)

維持管理・修理業(航空機のものを含む。ただし、重工業機械と医療機器は除く)

航空産業の地上業務

製材業、半完成木材製品の組立業

メディアサービス

通関業

レンガ製造業

採石業

宝くじ・スポーツ賭博業

ランドリーサービス業(大規模なものは除く)

通訳・翻訳業、秘書業

警備サービス業

仲介業(brokerage services)

弁護士業・法務コンサルタント業

雇用仲介業(船員など高い専門性や国際経験を要する分野の仲介は除く)

 

国内投資家との共同事業(Joint Investment with Domestic and Foreign Investors)に限定する投資分野(規則5条)

貨物輸送、船会社代理業

国内航空輸送サービス業

座席数45席超のバスを使う外国との公共交通業

輸送力の大きな都市交通サービス業

広告・宣伝サービス業

映像・音声ソフトの製造・流通業

会計・監査業

 

これらがいわゆる「ネガティブリスト」であり、その他の分野は、原則としてすべて外国投資に開放されている(法6条3項)。なお、新法では、政府が独占的に保有するセクターが廃止されている点は特徴的と言える。

出資比率は、政府との共同事業に限定される分野については具体的な規定はない。国内投資家との共同事業に限定される分野については、外資比率の上限は49%までと定められる(規則5条2項)。

外国投資家による最低資本金は、分野や投資形態に応じ、5万米ドル~20万米ドル(法9条)を拠出することが義務付けられている。原則として、一つの投資プロジェクトに対し20万米ドルの最低資本金が求められる(同条1項)が、国内投資家との合弁の場合は15万米ドル(同2項)、設計・エンジニアリング、技術コンサルタント、性能試験・分析評価、出版業については、外国投資家の場合は10万米ドル、国内投資家との合弁の場合は5万米ドル(同3項)と規定される。

分野・投資形態による最低資本金の要件

外資100%での投資事業

国内投資家との合弁事業

投資法上許可された分野への投資

20万ドル

15万ドル

設計・エンジニアリング、技術コンサルタント等への投資

10万ドル

5万ドル

 

なお、投資家自身の既存企業(his existing enterprise)からの利益または配当を、外国投資が認められる分野に再投資する場合等、最低資本金の要件が免除される(同4項)。

エチオピアで投資を行うには、新規事業への投資(Greenfield投資)も、既存企業の買収、既存企業の株式取得(Brownfield投資)も、まずは投資許可証(Investment Permit)を投資委員会から取得する必要がある。

(2)進出形態

外国企業がエチオピアに進出する際は、有限責任会社(Private Limited Company)、個人事業主(Sole Proprietorship)、支店、駐在員事務所のいずれかの形態をとることとなる。

投資許可証および法人登記の主な手続内容は以下のとおり[12]

 

手続

対象形態

内容

投資委員会への必要書類提出

個人事業主

申請書・事業計画書

パスポート

ビジネスビザまたは投資ビザ 等

有限責任会社

申請書・事業計画書

事業経歴(会社概要)

基本定款および付属定款の草案

パスポートおよびビザ(株主が個人の場合)

親会社に関する文書(設立証明書を含む)

親会社がエチオピアへの投資を決議した際の議事録

財務状況を証明する文書 等

支店

申請書・事業計画書

本籍国における法的に有効な法人設立認可証

代表者のパスポートおよび新会社用のビザ

財務状況を証明する文書 等

駐在員事務所

申請書・事業計画書

親会社の法的人格が記載されている文書

申請者が駐在員事務所代表者に任命されたことを示す取締役会決議または公式証明書(人事部からの公式文書等) 等

投資委員会での確認手続

有限責任会社のみ

商号の重複

基本定款と付属定款の認証

投資委員会から銀行口座開設のためのサポートレターを受領

国内銀行口座の開設、最低資本金の送金

銀行送金通知を投資委員会に提出

投資委員会への追加書類提出

有限責任会社のみ

認証済みオフィスリース契約書

納税識別番号(TIN)証明書を投資委員会

投資委員会発行の投資許可証と登記証明書を受領

エチオピア国外で発行されたすべての文書は、海外の公証人、エチオピア大使館、エチオピア外務省および(または)国内の公証人による認証を受けたものである必要がある。

なお、2021年に成立された新商法では、第2巻「商業の組織形態(Business Organizations)」に以下の7つの形態が規定されており、旧法にはない「一人会社(One person private limited company)」と「有限責任事業組合(Limited Liability Partnership: LLP)」が新たに導入されている。本稿発行時点では新商法はまだ施行前(大統領署名後、官報が発行され正式に施行)のようであり、これら新たな形態は直ちに採用できるものではないが、将来的にエチオピアに進出する際の選択肢となり得る。

【新商法における組織形態】

General Partnership(ジェネラル・パートナーシップ)

Limited Partnership(リミテッド・パートナーシップ)

Limited Liability Partnership(有限責任事業組合)

Joint Venture(合弁事業)

Share Company(株式会社(シェアカンパニー))

Private Limited Company(非公開有限会社)

One Person Private Limited Company(個人会社)

(3)土地に関する規制

土地の所有について、憲法上外国企業は土地を取得・所有することは認められていないが、「市街地リース法(Urban Land Lease Holding Proclamation No. 721/2011)」[13]に基づき、最長99年の借地権を得て土地を使用するこができる。都市部(urban center)[14]におけるリース期間は土地の使用目的に応じて規定されており、例えば住宅または研究・調査目的であれば最長99年間、アディスアベバでの工業(industry)目的では最長70年、アディスアベバでの商業目的は最長60年などと定められている(同法18条)。

 

土地の利用目的

最長リース期間

都市部全般

住宅、研究、調査、政府機関の事務所、慈善団体、宗教施設

99年

都市型農業(urban agriculture)

15年

アディスアベバ

教育、保健、文化・スポーツ

90年

工業

70年

商業、その他

60年

アディスアベバ以外の都市部

教育、保健、文化・スポーツ

99年

工業

80年

商業、その他

70年

(4)優遇制度

基本的な税金は下表[15]のとおりであり、奨励業種には法人税や関税等免除といった税制優遇措置も設けられている。

 

税金の種類

法人所得税

30%

売上高税(TOT)

課税対象:年間総売上高100万ブル以下のVAT対象外の事業

国内市場での物品供給、建築・トラクター等の技術供与:2%

サービス供給10%

付加価値税(VAT)

課税対象:年間総売上高100万ブル超の事業

15%

(輸出品と基本的サービスは免税)

関税

0%~35%

物品税

10%~100%

雇用による所得税

0%~35%

源泉徴収税

2%

輸出税

0%

(ただし原皮[16]は150%)

ロイヤルティ税

5%

配当税

10%

 

奨励業種やその他優先分野には、以下のような投資優遇措置が設けられている[17]

なお、2020年に「新投資規則」が制定された後も、投資優遇措置に関しては、「投資インセンティブおよび投資エリア規則(以下、「投資優遇措置規則」)」(2012年発行、2014年改定)[18]に規定された内容が継続して適用されることとなっている(投資規則21条)。

【所得税の免除】

対象となるセクターにおいて、新規に企業を設立した場合、または既存企業の規模拡大[19]を達成した場合、下表のとおり、最大10年間の法人所得税の免税を受けることができる(投資優遇措置規則5条1項、6条、別紙)。

さらに、製品・サービスの60%以上を輸出、または輸出業者に供給する場合は、下表に示す所得税免除期間が2年間延長となる(同規則7条、別紙)。

また、指定の低開発地域[20]で新たに企業を設立する場合には、下表に示す所得税免除期間満了後、追加で3年間の所得税30%免除措置が適用となる(同規則5条2項、別紙)。

主な所得税免税対象分野および免除期間

対象分野

免税期間(アディスアベバおよび周辺オロミア特別区)その他の地域はプラス1-2年間

食品製造・加工、飲料品(酒類含む)製造・加工

1-5年間

繊維、繊維製品製造

2-5年間

皮革、皮革製品

(仕上げ段階以前の皮革のなめしは免税対象外)

5年間

木材製品の製造

(木材の製材、木材半製品の組立ては免税対象外)

5年間

紙、紙製品製造

(印刷業は免税対象外)

1-5年間

化学品、基礎薬品、薬剤製造

2-5年間

ゴム、プラスチック製品製造

1-4年間

その他の非金属・鉱物製品製造

(粘土製品・セメント製品の製造は免税対象外)

(アディスアベバおよびオロミア特別区でのセメント、石灰、石膏の製造は免税対象外)

1-4年間

卑金属工業(鉱物採掘を除く)

3-5年間

金属製品工業(機械および設備を除く)

1年間または3年間

コンピュータ・電子工学・光学製品製造

2-4年間

電気製品、機械製造

2-5年間

車両・トレーラー・セミトレーラー製造

2-5年間

事務用・家庭用家具製造(陶磁器製を除く)、その他の製品(宝石、楽器、スポーツ用品、玩具等)

1年間

農業統合生産(Integrated manufacturing with agriculture)

4年間

農業

(アディスアベバおよびオロミア特別区での穀物・繊維作物・香辛料・薬用作物・多年生果実・多年生飲料作物(茶・コーヒー等)等の栽培は免税対象外)

2-3年間

(その他地域での多年生作物栽培は5-6年間)

畜産

(アディスアベバおよびオロミア特別区での野生動物の飼育、牛乳・鶏卵製品等の生産は免税対象外)

2年間または3年間

混合農業(家畜飼育+作物栽培)

3年間

林業

8年間

ICT

4年間

発電、送電、電力供給

4年間

 

【関税の免除】

対象となるセクターにおいて、新規企業の設立、または既存企業の規模拡大をする場合、事前申請により、商品生産・サービス提供に必要な資本財や、投資事業に必要な建設資材の輸入時の関税が免除となる(投資優遇措置規則13条)。

資本財・建築資材の輸入関税免税の対象セクター

上記の表に記載の分野(製造業、農業、ICT、発電・送電・電力供給)、観光、建設・建築、教育、保健医療、技術試験・分析、資本財リース、LPGガス・瀝青輸入

 

また、輸出業者に対する輸出関税の全額免除措置も設けられており、エチオピア国内で生産した製品は、原皮を除き、輸出税が免除される。

 

[1] 国連世界人口推計 2019 年 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

[2] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ET

[3] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=ET

[4] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=ET

[5] National Bank of Ethiopia (エチオピア国立銀行、NBE) “Annual Report 2019-2020” https://nbebank.com/wp-content/uploads/pdf/annualbulletin/Annual%20Report%202019-2020.pdf

[6] 外務省 海外進出日系企業拠点数調(2020年調査結果) https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

[7] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[8] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/content/dam/doingBusiness/media/Profiles/Regional/DB2020/SSA.pdf

[9] JETRO「アフリカ進出日系企業実態調査(2020年度調査)」:アフリカ24か国の日系企業327社を対象とした調査 https://www.jetro.go.jp/world/reports/2020/01/a0ebbac802bb502b.html

[10] http://www.investethiopia.gov.et/images/Covid-19Response/Covid-19Resources/June-2/Investment-Proclamation-No.-1180_2020-Copy.pdf

[11] http://www.investethiopia.gov.et/images/pdf/Investment-Regulation-No.-4742020_09-08-2020_0001-2.pdf

[12] Ethiopian Investment Guide 2021 https://investethiopia.gov.et/index.php/news-resources/publications.html

[13] http://extwprlegs1.fao.org/docs/pdf/eth169468.pdf

[14] 同法における「都市部」は、市政を敷いている地域、または人口2,000人以上の地域で、労働力の50%以上が非農業活動に従事している地域を指す。

[15] https://investethiopia.gov.et/index.php/investment-process/tax-bracket.html

[16] これまでは皮革中間製品(”Semi-Processed Hides and Skins:ピックル皮、ウェットブルー、クラスト)にも5-20%の輸出税が課されていたが、2020年1月6日付通達において、皮革中間製品に対する輸出税は廃止されたため、現在は原皮(Raw Hides and Skins)にかかる150%の輸出税のみが残っている。

[17] https://investethiopia.gov.et/images/pdf/Investment_Regulations_No270-2012_of_Ethiopia.pdf

https://investethiopia.gov.et/images/pdf/Investment_(Amendment)_Regulation_No270-2012.pdf

https://investethiopia.gov.et/index.php/investment-process/incentive-package.html

[18] Investment Incentives and Investment Areas Reserved for Domestic Investors Council of Ministers Regulation No. 270/2012

[19] 既存企業の「拡張(Expansion)」または「アップグレード」は、投資法2条の定義に基づいており、生産能力・サービス提供能力を50%以上増加・向上させて既存企業の規模拡大、または新製品・サービスを既存企業の品目を100%以上増加させる場合を指す。

[20] a)ガンベラ、b)ベニシャルグル・グムズ、c)アファール(アワッシュ川の両岸から15キロ以内の範囲を除く)、d)ソマリ、e)オロミア州グジおよびボラナゾーン、f)南オモゾーン、セゲン地域(デラシェ、アマロ、コンソ、ブルジ)民族ゾーン、ベンチマジゾーン、シェカゾーン、ダワロゾーン、カッファゾーン、コンタおよびバスケト特別郡(南部諸民族州)

                                          以上

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2021年11月23日(火)11:56 AM

ブータンの投資環境についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ブータンの投資環境

 

ブータンの投資環境

 

2021年11月22日

One Asia Lawyers 南アジアプラクティスチーム

南アジアの内陸国であるブータンは、農業と豊富な水資源を利用した水力発電を経済基盤とし、堅調な経済成長を遂げています。

本ニュースレターでは、ブータンにおける投資環境および外国投資規制を解説いたします。

なお、2021年9月15日発売の南アジアの法律実務(中央経済社)では、ブータンにおける投資環境以外にも、会社制度、労働法、不動産法制等の法務実務を解説していますので、ぜひご参照ください。

1.ブータンの概要

ブータン王国は、経済大国インドと中国の間の内陸に位置する、南アジアの小さな内陸国です。ヒマラヤ山脈の東端の山岳地帯にあり、豊富な水資源を有し、政治も安定しています。

隣国のインドとは、主要な貿易相手国として、また重要なドナー国としても、戦略的に強固な関係を堅持しています。両国間の貿易額は5年間で倍増しており(2020年度:10.8億USD)、貿易出入国地点を7カ所増設することが発表(11月3日:インド各紙)されていることから、さらなる国境貿易の活性化が期待されます。

水資源を利用した水力発電の拡大が経済を牽引し、GDP成長率は1980年代から平均7.5%と、堅調に成長しています。世界銀行の分類では低中所得国にあたりますが、貧困削減や地域格差是正のための取組も継続して取り組まれており、過去10年間で貧困率を36%から12%にまで大幅に削減するなど成果が見られています。

コロナ禍による国境封鎖や、それに伴う周辺国からの外国人労働者不足が影響し、観光業や建設業、製造業は打撃を受けたものの、2021/22年度には経済が回復すると見込まれています[1]

なお、ブータンは経済成長に偏重せず、独自の概念として、国民の幸福に資する開発指標「国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)」を提唱していることでも知られています。

また、日本とブータンは、50年以上の国際協力、35年の外交関係を通した友好な関係を築いており、2011年の東日本大震災の際には、翌日のブータン国王による祈りの式典を始め、義捐金100万USDの寄付がいち早く行われたことも象徴的です。

【ブータン王国の概要】

首都

ティンプー

面積

約38,394平方km(日本の約10分の1)

人口

771,612人(2020年:世銀)

言語

ゾンカ語(Dzongkha,公用語)等

民族

チベット系,東ブータン先住民,ネパール系等

宗教

チベット系仏教,ヒンズー教等

政治体制

政体:立憲君主制

元首:国王(ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク陛下)

首相:ロティ・ツェリン

通貨

Ngultrum(ニュルタム)

名目GDP

2020年:24.1億USD|2019年:25.3億USD(世銀)

一人当たり名目GDP

2020年:3,122USD|2019年:3,316USD(世銀)

 

2.外国企業の投資規制

ブータンの外国投資を規制する法規制として、「外国直接投資政策(Foreign Direct Investment Policy)」(以下,「FDI政策」)[2]と、その下位規則として「FDI規則(Foreign Direct Investment Regulations)」[3]があります。FDI政策は2002年に採択、2005年に発効されており、現時点では政策、規則ともに、2019年の改定が最新のものとなっています。

ブータンのFDI政策では、いわゆるネガティブ・リスト方式がとられており、FDI政策で禁止分野として記載されている7分野を除き、製造業、サービス業の両セクターで外国投資が認められています。

また、優先分野についてもFDI政策に列挙されており、海外投資家による出資比率の上限やプロジェクト費用の最低額が規定されています。

(1)外資規制

FDI禁止分野

FDI方針で禁止される分野は以下のとおりです(FDI政策別紙4)。

【外国投資が禁止される分野(ネガティブ・リスト)】

1.       ニュースメディア

2.       卸売業、小売業、零細業を含む流通サービス業

3.       一次または未加工鉱物の販売を目的とする鉱業

4.       3つ星以下のホテル

5.       一般保健サービス(General Health Services)

6.       原産地証明書の要件を満たさない産業

7.       王国政府の禁止リストに含まれる活動

 

外資比率

ネガティブ・リストに記載の7分野以外については、新規事業体への投資か、既存の国内事業体への投資かを問わず、基本的に74%を上限としてすべてのセクターと活動が外国投資に開放されています。

ただし、優先分野に関しては個別に上限が設定されている他、特定の小規模生産・製造活動(small scale production and manufacturing activities)に関しては、新技術・技能の導入を促進し、市場アクセスを強化する意図から、外資比率は49%を上限としつつ、最低投資額は500万Nu(約770万円)と低く設定されています。

優先分野・最低投資額

下表のように、優先分野については100%の外資持分を認められている分野もある一方、金融サービス業は51%までとされています。また、各分野への最低事業費用(minimum project cost)も規定されており、製造業における優先分野では2,000万Nu~5,000万Nu(約3,000万円~7,700万円)、サービス業における優先分野では500万Nu~3億Nu(約770万円~4.6億円)規模以上の事業費用を求められます。

これらの要件を満たす場合、優先分野への投資は、承認とクリアランスが迅速になされる(fast tracked)こととなります(FDI政策3.1条)。

【優先分野の外資比率と最低事業費用】

分野

上限外資比率

最低事業費用

農業関連製造業(Agro based Production)

・  農業・水産・酪農・加工・バイオテクノロジー等

74%

2,000万Nu

林業関連製造業(Forest based Production)

74%

5,000万Nu

太陽光、風力、その他の再生可能エネルギー

再生可能エネルギー政策[4]に準ずる

小規模(small: 1,000-2.5万kw)水力発電は少数株主権に限定。零細(micro: 10-100kw)および小型(mini: 100-1,000kw)水力発電へのFDIは禁止

2,000万Nu

水資源関連製造業(Water based products)

74%

5,000万Nu

医薬品製造業

74%

5,000万Nu

その他の製造業

・  電気製品・コンピュータハードウェア・建築資材等

74%

5,000万Nu

教育(初等・中等・高等教育)

74%

3億Nu

技術・職業教育

74%

2,500万Nu

保健サービス(※一般的な保健サービスはFDI禁止)

・  総合専門病院サービス[5]

・  専門的な医療サービス

・  専門的な歯科医療、医療検査、画像診断サービス

・  専門的な従来の医療サービス

100%

2億Nu

5つ星以上のホテル、リゾート

100%

2億Nu

4つ星ホテル

74%

2,500万Nu

PPPモデルによるインフラ設備

100%

スポーツ、娯楽施設

74%

2,500万Nu

ウェルネスセンター

74%

2,500万Nu

ITパーク開発

100%

2億Nu

研究・開発(※5人以上の専門家を雇用している企業(established firm))

100%

1,000万Nu

本店・本社サービス(Head Office Service)

100%

500万Nu

IT、IT関連サービス

・  ITパーク内

・  ITパーク外

 

100%

100%

 

300万Nu

建設サービス

74%

1億Nu

廃棄物処理

・  家庭廃棄物のリサイクル

・  廃棄物管理サービス

74%

2,500万Nu

水の供給と管理、都市の水処理と供給

74%

2,500万Nu

コンサルタントサービス(※5人以上の専門家を雇用し、2カ国以上で事業を展開している企業、または国際市場での経験を有する企業(established firm))

74%

500万Nu

金融サービス

51%

金融サービス法に準ずる

 

小規模生産・製造活動

FDI政策別紙3に列挙される小規模活動は以下のとおりです。

分野

上限外資比率

最低事業費用

国内生産の付加価値農業製品

(果実・野菜加工、食品加工、ハーブ・薬用製品、蜂蜜製品、スパイス、菓子)

49%

500万Nu

林産製品

(高付加価値手作り紙製品、廃木材製品、竹製品、化粧品、エッセンシャルオイル製品)

その他

(土産品、陶磁器製品)

 

外資比率と最低投資額について、まとめると以下のとおりです。

分野

上限外資比率

最低事業費用

優先分野

51%から最大100%

500万Nu~3億Nu

その他の分野(※新規事業体、既存の国内事業体ともに同一条件)

上限74%

製造業:5,000万Nu

サービス業:2,500万Nu

特定の小規模生産・製造活動

上限49%

500万Nu

 

(2)会社設立・外資規制の基本ルール

会社設立・許認可

すべてのFDI事業は外国直接投資登録証(Foreign Direct Investment Registration Certificate、以下「FDI登録証」)の発行を受け、ブータン会社法(The Companies Act of Bhutan, 2016))に基づき法人化する必要があります。また、事業の設立および操業を開始する前に、当該事業の認可および事業免許の承認を取得する必要もあります。

ロックイン期間

FDI事業の商業運営(commercial operations)開始日から少なくとも3年間はロックイン期間とされ、この3年間は当該企業に投資した外国資本の100%を保持しなければならないと規定されています(FDI政策3.8条)。

配当金・資本の本国送還

外国投資家は、一定の条件の下、配当金、投資した資本金、およびキャピタルゲインを、収益通貨または投資した通貨で本国に送還することができます。

配当金については、会社の累積純収益が取引金額をカバーするのに十分であることを前提に、収益通貨での配当金の送還ができます。ただし、優先分野リストのサービス業のうち、プロジェクトへの投資が兌換通貨で行われ、その収益が兌換通貨以外の通貨である場合には、配当金送還のために年間500万米ドルを上限として、王立貨幣局(Royal Monetary Authority)から兌換通貨を購入することができます。また、プロジェクトへの投資が兌換通貨で行われ、収益がインド・ルピーであるFDI事業の場合には、貨幣局の事前承認を得た上で、兌換通貨での配当金の送還が許可されます(FDI政策4.3条)。

資本の送還については、投資した資本金および担保されたキャピタルゲインを、投資した通貨で本国に送還することができます(FDI政策4.4条)。

駐在員および現地人材の雇用

FDI許可証が発行されると、5人分の駐在員就労許可が付与されます。事業運営の初期段階では、必要な資格と経験を有するブータン人がいない場合、必要な人数分の就労許可を申請することもできます(FDI政策5.5.1条)。

ただし、事業開始から5年目までに、外国人とブータン人の比率が1:5(ブータン人5人につき1人の外国人)となるよう、ブータン人の雇用割合を段階的に増やすことが求められます(FDI政策5.5.2条)

その他詳細や、会社制度や関連法務実務に関しては、『南アジアの法律実務』(中央経済社)において解説していますのでご参照ください。

 

[1] https://www.worldbank.org/en/country/bhutan/overview#1

[2] https://www.moea.gov.bt/wp-content/uploads/2017/07/FDI-Policy-2019.pdf

[3] https://www.moea.gov.bt/wp-content/uploads/2017/07/FDI-Regulations-2019-Amended-on-1st-July-2020.pdf

[4] Alternative Renewable Energy Policy, 2013

https://www.moea.gov.bt/wp-content/uploads/2017/07/Final-Alternative-RE-Policy-April-2013.pdf

[5] All-inclusive specialized hospital services:現在国外に紹介されている少なくとも1つの処置を提供し、独自の完全な診断サービスと検査施設を持つ病院

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2021年11月12日(金)11:54 AM

南アフリカ共和国の投資規制と法制度についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

南アフリカ共和国の投資規制と法制度について

 

 

南アフリカ共和国の投資規制と法制度

2021年11月12日

One Asia Lawyers 南西アジアプラクティスチーム

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

 

アジア地域(主にインド)からアフリカ地域へのご相談や、海外インフラプロジェクトに関する相談が増えてきているため、南西アジアプラクティスチームおよびインフラ輸出リーガルプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行っています。第一弾のナイジェリアhttps://oneasia.legal/7141)に続き、今回は、南アフリカの各種投資規制と法制度を紹介して参ります。

 

【南アフリカの概要】

国名 南アフリカ共和国
首都 プレトリア
ISO国名コード ZA、ZAF
面積 122万平方キロメートル(日本の約3.2倍)
人口 5,931万人(2019年)[1]
言語 英語の他、アフリカーンス語、バンツー諸語等、11言語が公用語
民族 黒人79%、白人9.6%、カラード(混血)8.9%、アジア系2.5%
宗教 キリスト教(人口の約80%),ヒンズー教,イスラム教等
政治体制 政体:共和制国家元首:シリル・ラマポーザ大統領(2019年5月就任,任期は2024年実施予定の総選挙まで)政府:(1)大統領 シリル・ラマポーザ大統領(2)副大統領 デービッド・マブーザ副大統領(3)外相 ナレディ・パンドール国際関係・協力相議会:二院制(全国州評議会、国民議会)
通貨 ランド(Rand)

 

1.     地理

南アフリカ共和国は、約122万平方キロメートル(日本の約3.2倍)の国土面積を有する、アフリカ大陸の南端に位置する国である。ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、エスワティニ(旧スワジランド)と国境を接する他、レソトを四方から囲んでいる。

首都は、プレトリア(ツワネ)であるが、正確には行政府であり、立法府はケープ・タウン、司法府はブルーム・フォンテーンとなっている。

2020年3月から停止されていた国内線および国際線も、2021年9月に一部の路線を再開しており、徐々にビジネス出張や進出が再開されるものとみられる。

 

2.     人口

人口5,931万人を擁し、アフリカでは第6位である。全人口の65.7%が生産年齢人口にあり、豊富な労働力を有する。

 

【人口動態(1,000人)】

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
36,801 41,436 44,968 47,881 51,217 55,386 59,309

 

3.     国家・政治体制

17世紀半ばにオランダ系が建設したケープ植民地は、19世紀初頭にイギリスに割譲され、以後イギリスの植民地化が全土に拡大していった。

1961年にイギリス連邦から脱退し、南アフリカ共和国が成立。1940年代から続いたアパルトヘイト政策は1991年に全廃され、1994年に黒人を含む全人種による普通選挙が行われた結果、ネルソン・マンデラが初の黒人大統領に就任する。以降、6回目となる2019年の選挙まで、アフリカ民族会議(ANC)が勝利をおさめている。

大統領を国家元首とする共和制をとり、議会は二院制(全国州評議会90議席、国民議会400議席)である。

 

以下の9つの各州に州議会がある。

州 Province 州都 人口(2011年国勢調査)[2] GDP寄与率(2017年)[3]
西ケープ州 ケープ・タウン市都市圏 5,822,634 13.6%
北ケープ州 キンバリー 1,145,861 2.1%
東ケープ州 バッファローシティ(ビショ) 6,562,053 7.7%
クワズール・ナタール州 ピーターマリッツバーグ 10,267,300 16.0%
フリーステイト マンガウング(ブルーム・フォンテーン) 2,745,590 5.0%
北西州 マフィケング 3,509,953 6.5%
ハウテン州 ヨハネスブルグ 12,272,263 34.3%
ムプマランガ州 ムボンベラ(ネルスプロイト) 4,039,939 7.5%
リンポポ州 ポロクワネ 5,404,868 7.3%

 

4.     法制度

南アフリカの法体系は、その歴史的背景から、ローマ・オランダのシビルロー(大陸法)体系、英国のコモンロー体系、そして慣習法(customary law)の制度が混在している。

すなわち、17世紀半ばにオランダ入植者がもたらしたとされる大陸法系法は、多くの実体法の基礎になっているものの、その後英国統治下において、英国の判例法に基づく運用がいきわたり、英国で訓練を受けた裁判官や弁護人が裁判に携わるなど、手続法の分野では、英国法の影響がより強くなっている。

慣習法については、南アフリカ憲法[4]にも、部族長などの伝統的指導者(traditional leadership)の制度・地位・役割が認められており(憲法211条)、現代の法制度においても重要な役割を果たしている。

また、宗教法、個人法、家族法(system of religious, personal or family law)に関しても、同様に認められるものとされている(憲法15条3項(a))。

すべての法律は、憲法に抵触してはならないとされ、憲法の優位性(Supremacy of Constitution、憲法2条)の原則を前提としているものの、実社会では複数の法制度が存在しており、複雑な法体系をなしている。

ビジネスに関連する主要な法令には以下が挙げられる。

  • 2008年会社法(Companies Act No 71 of 2008)
  • 雇用均等法(Employment Equity Act, 1998)
  • 黒人経済力強化政策(Broad-Based Black Economic Empowerment、通称「BEE政策」)

とりわけBEE政策とその関連法は、歴史的背景をもつ南アフリカの特徴的な法律であるだけでなく、後述のとおりビジネス上も非常に重要な規定が多くある。

5.     通貨・経済状況

通貨はランド(Rand)、1USドル=14.55(2021年4月現在)[5]。世界銀行の高中所得国(Upper Middle Income Countries)に分類される。

下表のとおり、南アフリカのGDPは3,500億ドル前後で推移しており、サブサハラアフリカ全体のGDP(1.8兆ドル)[6]の20%を占め、ナイジェリアに次ぐ経済規模を有する。他方で、国内の所得格差を示すジニ係数(63.0、2014年)[7]、失業率(28.7%、2020年)[8]ともに世界最高レベルにあり、更なる経済的取り組みによる課題解決が望まれる。

主な経済指標と推移は以下のとおり。

 

指標

2016

2017

2018

2019

2020

名目GDP(100万USドル)[9]

296,357

349,554

368,289

351,432

301,924

1人当たり名目GDP(USドル)[10]

 5,273

 6,132

 6,374

 6,001

5,091

GDP成長率[11]

0.4%

1.4%

0.8%

0.2%

△7.0%

 

6.     産業

金や石炭等、かつての主要産業であった鉱業は、現在ではGDP比率の8%強と縮小した一方、製造業等の第二次産業が2割強、小売や金融業の第三次産業が7割弱を占めるなど、産業構造が先進国のそれへと移行してきている。ただし、主要な輸出品目は依然として鉱物資源に偏りが見られる。

産業ごとのGDP寄与率[12]は以下のとおり。

産業 2015 2016 2017
第一次産業 10.1 10.7 10.9
 農林水産業 2.3 2.5 2.6
 鉱業・採石業 7.8 8.2 8.2
第二次産業 21.3 21.2 21.1
 製造業 13.4 13.5 13.4
 電力・ガス・水道 3.8 3.8 3.8
 建設業 4.1 4.0 3.9
第三次産業 68.6 68.1 68.0
 貿易・卸・小売・宿泊業 15.0 14.9 15.0
 輸送・流通・通信業 10.2 9.9 9.8
 金融・不動産業 20.2 20.0 19.8
 行政 17.3 17.6 17.6
 個人サービス業 5.9 5.7 5.8

 

7.     外国投資

南アフリカには、2019年時点で272社の日系企業が拠点を設けており、アフリカに進出する日系企業の約30%が集中している[13]。世界銀行の「Doing Business 2020」[14]では世界190カ国中84位、サブサハラアフリカ48カ国中では、モーリシャス・ルワンダ・ケニアに続く4位と、アフリカの中ではインフラ、金融、通信等のビジネス環境が整備されている国の一つであり、特にアフリカ域内での最初の拠点として投資家に理想的と言える。実際に、南アフリカに拠点を設置し、周辺国やアフリカ地域を管轄している日系企業が多い。

南アフリカ政府は2019年に大統領優先事業として、国内外の投資促進を目的とした「The Ease of Doing Business Programme (EoDB)」を開始しており、オンライン上での会社登録手続きといったサービスにより、特に外国企業による拠点設立実務が軽減されている。

実際の設立手続きは、BizPortal[15]というプラットフォームを通し、企業・知的所有権登録局(Companies and Intellectual Property Commission、CIPC 、「CIPC」)に必要書類を提出することで、不備がなければ1日で登録が完了することとなる。これまでは複数の省庁に対し実際に書類を提出する必要があり、平均40日であった手続き所要期間の短縮化が図られている。

 

  • (1) 投資規制

政府の事前承認や出資比率に関する規制がある一部業種を除き、ほぼすべてのセクターが外国投資に開放されている。

 

【業種ごとの主な規制】

金融業 o 政府登録機関の事前承認が必要o 公開会社のみo (銀行の場合は)銀行法に基づく銀行登録が必要o 黒人資本の参加比率25%以上(金融業セクターコード(Broad Based Black Economic Empowerment Act: Codes of Good Practice: Financial Sector Code))
ICT業 o 政府当局(通信庁)の事前承認が必要o 黒人資本の参加比率30%以上(ICTセクターコード(Regulations in respect of the Limitations of Control and Equity Ownership by Historically Disadvantaged Groups (HDG) and the application of the ICT Sector Code))
メディア業 o 外資比率上限20%まで
鉱業 o 黒人資本の参加比率26%以上(ただし2018年以降の新規投資(new mining right))は30%以上(2018年鉱業憲章(Broad -Based Socio- Economic Empowerment Charter for the Mining and Minerals Industry, 2018 (Mining Charter, 2018)))

 

  • (2) 雇用関連規制

黒人経済力強化政策(Broad-Based Black Economic Empowerment, 「BEE政策」)は、南アフリカで事業を行うにあたり念頭に置くべき、同国独特の政策であり、歴史的に不利益を受けてきた人々に対する差別を是正するための多くの関連法令からなるものである。

同政策の基礎となる法律が「B-BBEE法」であり、その他の主な法令には、「雇用均等法」や「Codes of Good Practice」、「優先調達法」等がある。

このうち、「雇用均等法」は民間企業にも適用されるため、同国に進出する日系企業の多くは遵守が必要となる。「B-BBEE法」は公的機関に適用されるものであるが、後述のとおり、企業の優位性を確保するために民間企業においても同法の遵守は有益であり、特に大企業には非常に重要視されている。

なお、B-BBEE法」が対象とする「黒人(Black people)」とは、南アフリカ出身の黒人だけでなく、カラード(Coloureds、混血の人々)やインド系南ア市民(Indians)、中国系南ア市民も含まれる。アパルトヘイト体制終了後に南アフリカへ移民した黒人は対象とならない。

ただし、「雇用均等法」においては、「黒人」だけでなく、人種を問わず女性や障がい者も差別是正措置の対象(「指定グループ」と総称)となる点に注意が必要である。

 

B-BBEE法】

BEE政策の基礎となるのがB-BBEE法(Broad-Based Black Economic Empowerment Act, 2003)」[16]である。同法は、アパルトヘイト時代に多く黒人が経済参画の機会が奪われ弱い立場に置かれてきたとして、憲法上の平等権の達成を促進し、黒人の経済的エンパワーメントを推進するための法的枠組みを確立することを目的とするもので、黒人の優遇措置を規定する関連法や、同法施行のための実務指針である規準(Codes of Good Practice、以下「コード」)、業界別の特殊ルールとなる憲章(Transformation Charter)を発行する権限の大臣への付与や諮問委員会(Black Economic Empowerment Advisory Council)の設立等を規定している。

B-BBEE法上の「黒人(Black people)」の定義】

o 以下のいずれかを満たす黒人(Africans)、カラード(混血)、インド人を指すŸ南アフリカで生まれた又は南アフリカ人家系出身(by descent)の南ア市民Ÿ1994年4月26日以前に、帰化により南ア市民となった者Ÿ1994年4月27日以後に帰化により南ア市民となった者で、それ以前に市民権を得る権利のあった者o 中国系南アフリカ人[17]

なお、日系南アフリカ人に関しては大きな議論になっていないが、アパルトヘイト時代に日本人は名誉白人として優遇されていた経緯があるため、中国系南アフリカ人と同等の扱いを受けない可能性もある。

 

コードは、企業における黒人の所有権や経営支配、雇用均等といった各指標に対し、当該企業のBEEへの貢献度をスコアするもので、BEEスコアカードによりその企業のBEE貢献度が評価される。

また、業界別の指針として、憲章やセクターコードが策定されている。

 

B-BBEE法は、公的機関(state and public entity)に適用される(同法10条)ものであるため、民間企業は法的には同法および同法により規定される規範や憲章を遵守する義務はない。しかしながら、同法の根底にある理念に沿う企業が優遇される場面が多くある点を踏まえて、南アフリカの拠点における人事計画を策定することが推奨される。特に、公共事業等に入札する企業や、政府の許認可を要する事業を行う企業は、審査プロセスにおいてBEE政策の推進の程度が大きく影響するため、BEE政策に準じた企業経営が有利に働くこととなる。また、政府による各種優遇措置を受ける要件として、BEEの遵守が含まれる場合もある。

 

【雇用均等法】

さらに、民間企業にも適用される「雇用均等法(Employment Equity Act)」[18]においては、①従業員50人以上、または、②(従業員数が50人以下であっても)一定の売上高(turnover)がある企業に対し、黒人等の地位向上のためのアファーマティブアクションの実施を規定している。

具体的には、以下に該当する「指定事業者(designated employer)」は、職場や雇用における「指定グループ(designated group)」の不利益を是正し、公平性を実現するための弱者保護措置であるアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)を実施する義務を負う(同法12~27条)。

 

「指定事業者」(同法1条、別添4):

同法の定義する「指定事業者」は以下のとおりであり、一定規模以上の企業は同法の規定を遵守することが求められる。

  • ①従業員50人以上の使用者
  • ②従業員50人未満であって、年間売上高が以下の基準以上の使用者
分野 年間売上高(ランド)
農業 600万
鉱業・採石業 2,250万
製造業 3,000万
電気・ガス・水道業 3,000万
建設業 1,500万
小売業、自動車産業および修理サービス業 4,500万
卸売業、商業代理店(Commercial Agents)および関連サービス業 7,500万
飲食業、宿泊業 1,500万
運輸・倉庫・通信業 3,000万
金融・ビジネスサービス業 3,000万
コミュニティ、社会、個人向けサービス 1,500万

 

  • ③公的機関

 

「指定グループ」(同法1条):

同法の定義する「指定グループ」は以下のとおり。

o 以下のいずれかを満たす黒人(black people)、女性障がい者を指すŸ南アフリカで生まれた又は南アフリカ人家系出身(by descent)の南ア市民Ÿ1994年4月26日以前に、帰化により南ア市民となった者Ÿ1994年4月27日以後に帰化により南ア市民となった者で、それ以前に市民権を得る権利のあったののアパルトヘイト政策の影響で取得できなかった者中国系南アフリカ人

 

雇用均等法の特徴は、その優遇対象である「指定グループ」の範囲が、B-BBEE法での「黒人」より広く、白人を含むすべての人種の女性や障がい者も含まれている点であり、アパルトヘイト時代の不平等是正に加え、より広い意味での差別の撤廃を求めていると言える。

 

具体的な義務:

指定事業者に該当する場合は、雇用均等法に基づく「アファーマティブアクション」を実施する必要があり、主な義務には以下が含まれる。

 

  • ①労働組合や従業員との協議、および指定グループの状況分析(16条、19条)

指定事業者は、職場におけるあらゆるカテゴリー・階層の従業員(またはその代表者等)と協議(consult)の場を設けなければならない。協議においては、指定されたグループの人々に不利な影響を与えている雇用障壁(employment barriers)を特定できるよう聞き取りを行い、雇用・昇級の方針や慣行、職場環境等の分析を行う。

 

  • ②雇用均等計画(Employment Equity Plan)の策定(15条、20条)

指定事業者は、従業員との協議および分析も踏まえ、指定グループに属する従業員の能力や資格に基づき公平な配置ができるよう雇用均等計画を作成し、実施することが義務付けられている。

前述の協議と分析を行った結果、現状において従業員の昇級や職階に不平等が生じている場合には、その事実も計画に記載しておく必要がある。その上で、従業員の公平な雇用が促進されるよう各年度の達成目標やスケジュールを、最大5か年の計画として記載する。

ただし、雇用均等法上は、指定事業者が実施すべきアファーマティブアクションや雇用均等計画において、具体的な数値目標(numerical goals)や雇用枠(quota)を定めなくてよいものと明確に記載されている[19]。このことから、指定事業者は、企業の実情に不相応な雇用割合を設定することなく、従業員の能力に応じた適正な評価に基づく人事を行う余地があると言える。

 

  • ③雇用均等計画およびその進捗の報告(21条)

従業員150人以下の指定事業者は2年ごと、150人以上の指定事業者は毎年、雇用均等計画に基づく報告を、労働省に提出しなければならない(初年度はそれぞれ1年以内、または半年以内に提出)。

 

これらの義務規定に違反した場合、初犯であれば最大150万ランド(約1,130万円)または売上高の2%相当額のいずれか高い方の罰金が科され得る(同法別添1)。

実際に同法の遵守違反に対し、南アフリカや外国企業に罰金(20万~30万ランド)が科された適用例[20]もあるが、指定期日までに同法16条、19条、20条、21条の完全な遵守を条件に、全額または一部の支払猶予が認められている。

  • (3)進出形態

外国企業が南アフリカに進出するには、現地法人非営利会社(Profit Company)、または営利会社(Non-Profit Company))を設立するか、支店や駐在員事務所(会社法上「外部会社(External Company)」として分類)の形態をとることができる。営利・非営利、支店・駐在員事務所の形態を問わず、会社法(2008年会社法(Companies Act No 71 of 2008))に基づき、CIPCに登録を行うこととなる。

 

  • ①非営利会社
  • ②営利会社
    1. 非公開会社(Private Company)
    2. 公開会社(Public Company)
    3. 個人責任会社(Personal Liability Company)
    4. 公的会社(State Owned Company)
  • ③外部会社
    1. 外部営利会社(支店、External Profit Company)
    2. 外部非営利会社(駐在員事務所、External non-Profit Company)

 

南アフリカの会社法上は、現地法人を設立しない場合の進出形態として、外部会社が規定されている。外部会社は、「南アフリカ国内において、事業(business)または非営利活動を行う外国会社(foreign company)」であると定義され(同法1条)、営利活動を行う場合は支店としての登録を行う(同法23条1項(b))。駐在員事務所は営利活動を一切行えない形態であるが、支店同様に登録は行う必要がある(同法23条1項(a))。

 

日系企業に一般的な進出形態の主な特徴は以下のとおりである。現地法人を設立する場合は、コンプライアンス要件の少ない非公開会社の形態が選択されること一般的である。

 

【進出形態の比較】

  営利会社(現地法人) 外部会社
非公開会社 公開会社 支店 駐在員事務所
国籍・責任範囲 親会社から独立した南アフリカ国内法人。責任は現法の役員に及ぶ 母体・本店と法的一体の外国法人。責任は本店の役員に及ぶ。
事業範囲 外資規制の範囲内で事業実施が可能 営利活動が可能。 営利活動は不可。調査や情報収集等に限定。
         

 

【非公開会社と公開会社の主な特徴】

  非公開会社 公開会社
株主数の上限 1人~50人 1人以上
資本金 規定なし 規定なし
株式の公開 不可
取締役(66条2項) 1人以上国籍・居住要件なし 3人以上国籍・居住要件なし
監査役(Auditor)(90条1項) 任意 必須
秘書役(Company Secretary)(86条1項、2項) 任意 必須|居住要件あり(南アフリカ永住者のみ)
株主総会の開催場所(61条) 開催は任意 開催は必須|会社設立日から18ヶ月以内、その後は毎年1回、前回開催日から15ヶ月以内に開催|国外開催可・電子的な開催(electronic communication)可
取締役会(73条) 2名以上の取締役(全取締役数12名以上の場合は、取締役の25%以上)が要求した場合、その他任意の場合に開催を招集。電子開催可

 

  • (4)土地に関する規制

南アフリカでは、外国人・外国法人であっても、土地の所有が可能である。

ただし、外国企業が土地を購入する場合には、南アフリカ国内での法人登録をした上で、南アフリカ居住の代表者resident public officer)を任命する必要がある[21]

なお、長期滞在を目的として不動産を購入する場合は、居住許可証が必要となる。

  • (5)優遇制度

貿易産業競争省(Department of Trade, Industry and Competition)の投資庁(Invest SA)が、南アフリカの投資促進機関として機能する他、各州に担当局が設置されている(ハウテン州成長開発局など)。

優遇措置には交付金や税金控除の形があり、セクター別では製造業やインフラ関連のインセンティブが多く用意されている。

例えば自動車産業では、自動車投資スキーム(Automotive Investment Scheme)の下、一定の条件を満たす場合に、投資額の20%から25%の補助金が支給される。

また、セクター横断的なものには、南アフリカの特徴的な優遇措置として、黒人ビジネスサプライヤー開発制度(Black Business Supplier Development Programme: BBSDP)が設けられている。BBSDPは、黒人経営者の競争力向上を支援するために導入された制度であり、黒人が株式の過半数を所有し、かつ経営陣の過半数が黒人であるなどの一定の条件を満たす企業を対象に、設備投資や技術開発費に対し、コストシェアの形で、最大100万ランドの資金補助が支給される。

[1] 国連世界人口推計2019年https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

[2] 南ア統計局(Stats SA)http://www.statssa.gov.za/?page_id=964

[3] 南ア統計局 http://www.statssa.gov.za/?p=12056

[4] https://www.gov.za/documents/constitution-republic-south-africa-1996

[5] 南ア準備銀行 https://www.resbank.co.za/en/home/what-we-do/statistics/key-statistics/current-market-rates

[6] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZG&most_recent_value_desc=true

[7] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/SI.POV.GINI?most_recent_value_desc=true

[8] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/SL.UEM.TOTL.ZS?most_recent_value_desc=true

[9] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZA

[10] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=ZA

[11] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=ZA

[12] 南ア統計局 http://www.statssa.gov.za/

[13] 外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

[14] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[15] https://www.bizportal.gov.za/

[16] https://www.gov.za/documents/broad-based-black-economic-empowerment-act

https://www.gov.za/documents/broad-based-black-economic-empowerment-amendment-act

[17] 中国人社会の代表者が南アフリカ政府を相手取り、黒人の権利拡大の恩恵を受けられるよう再区分を求めた裁判に勝訴したことから、中国系南アフリカ人もB-BBEE法および雇用均等法における「黒人」の定義に加えられた。http://www.saflii.org/za/cases/ZAGPHC/2008/174.pdf、https://www.za.emb-japan.go.jp/jp/Japan_SA/BEEpolicy2014.pdf

[18] https://www.gov.za/documents/employment-equity-act

https://www.gov.za/documents/employment-equity-amendment-act

[19] 同法15条[Affirmative Action Measures] 3項 ” The measures include preferential treatment and numerical goals, but exclude quotas.”、同法20条[Employment Equity Plan] 2項 “An employment equity plan prepared must state – (d) the timetable for each year of the plan the achievement of goals and objectives other than numerical goals

[20] 労働省 v Jinghua Garments (Pty) Ltd(南ア企業)(5 December 2006)、労働省 v Win-Cool Industrial Enterprise (Pty) Ltd (台湾企業)(16 April 2007) 等

[21] http://www.investsa.gov.za/wp-content/uploads/2021/03/Investor-Roadmap-2020-Online-version.pdf

 

                                          以上

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2021年11月11日(木)5:57 PM

インド・ハリヤナ州における州民の雇用枠75%義務化についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

インド・ハリヤナ州における州民の雇用枠75%義務化について

 

 

        インド・ハリヤナ州における州民の雇用枠75%義務化について

2021年11月11日
One Asia Lawyers 南西アジアプラクティスチーム


インドでは近年、一定の割合で州の州民を採用することを民間企業等に義務付ける州法が、各地で成立しています。これまで、各産業界から反対する声が挙げられていた他、憲法14条(法の下の平等)や16条2項および3項(雇用機会の平等)に違反するため無効を主張する訴訟がいくつかの州の高等裁判所で係属しており、その動向が注目されていました。

そのような中、グルガオンなどの産業拠点を有するハリヤナ州においても、月給3万ルピー(約4.6万円)以下のポストについては、ハリヤナ州の州民から75%を雇用することを義務付ける「ハリヤナ州州民雇用法(Haryana State Employment of Local Candidates Act, 2020)」[1]が、来年1月15日から施行開始されるとの通知が発表されました。

ハリヤナ州グルガオンは、デリー準州の近郊に位置し、デリー首都圏(Delhi NCR)に含まれます。そのため、デリーに居住しながらグルガオンに通勤する従業員も多く、本法律の与える影響は大きいとみられています。

本ニュースレターでは、2020年3月に可決されたものの、施行が見送られていた同法について、規制の内容と、日系企業へのインパクトについて解説いたします。

なお、2021年9月15日発売の南アジアの法律実務https://oneasia.legal/7381)(中央経済社)では、インドやその他南アジア各国の会社制度、労働法、不動産法制等の法務実務を解説していますので、ぜひご参照ください。

  • 1.「2020年ハリヤナ州州民雇用法」の概要

2020年ハリヤナ州州民雇用法は2020年11月に州議会において可決成立しました。その後、施行時期が不透明であったものの、今月6日、その施行日を2022年1月15日とするとハリヤナ州政府により公式に発表されました。

この法律は、2024年までに失業者ゼロを目指すハリヤナ州政府の取組みの一環として、州内の特に若年層への雇用の確保のために策定されたものと説明されています[2]

民間企業等に対し、一定のポストにおいて、採用枠の75%を州民の候補者(Local Candidate)から雇用することを義務付けています。すなわち、採用枠が100名ある場合、そのうちの75枠をハリヤナ州民に割り当て、州外住民には25枠しか与えられなくなるということを意味します。この法律は、成立前から、業界団体による強い反発を引き起こしました。特に、対象となるポストが当初の法律では「月給5万ルピー以下」であったこともあり、高度技術を持つ人材を多く必要とする産業界は、優秀な人材確保が困難になり生産性や競争力の低下を招くとして、厳しく批判しています。

こうした動きもあり、州政府による11月6日付けの別の通知において、月額の上限が「5万ルピー」から「3万ルピー」に引き下げられています。すなわち、月額給与が3万ルピー(約4万8千円)超のスタッフの採用については、新法施行前と同様、ハリヤナ州民優先枠が設定されず、候補者の居住地域にかかわらず自由に採用することが認められます。

しかしながら、月額賃金が3万ルピー以下の従業員を恒常的に採用・雇用する在ハリヤナの企業にとっては重要な規制であることに変わりなく、該当する場合にはハリヤナ州民枠と州外民枠を別にする等の人事プロセスの見直しや、場合によっては募集条件の見直し(月額賃金3万ルピー以上となるよう設定する)、会社やパートナーシップでない場合には総従業員の数を9名以下にする、といった対応が求められることとなります。

ただし、同法の規定を実施する上で何らかの困難が生じた場合、施行から2年以内は、必要に応じた追加の規定が設けられる可能性があります(同法21条)。本法は、遵守までに期間を要する性質の規定であることからも、適用猶予期間が認められる可能性が極めて高いと言えます。猶予期間以外にも、何等かの是正や改定がなされることもあり得るため、次項で紹介する具体的な規定も、今後変更となる可能性がある点には留意が必要です。

 

  • 2.具体的な規定

同法は、ハリヤナ州において、2022年1月15日から10年間有効となり、会社法に基づいて登録されたすべての会社に適用されます。

具体的には、以下の事業体に適用されます(政府系組織は適用対象外)。

【適用対象】

Ÿ  (Companies Act, 2013に基づき登録された)会社

Ÿ  (Haryana Registration and Regulation of Societies Act, 2012に基づき登録された)ソサエティ

Ÿ  (Indian Trust Act, 1882で定義される)信託

Ÿ  (Limited Liability Partnership Act, 2008で定義される)有限責任パートナーシップ

Ÿ  (Indian Partnership Act, 1932で定義される)パートナーシップ企業(Partnership Firm)

Ÿ  ハリヤナ州で製造・サービス提供の目的で10人以上を雇用する者・事業体(any person employing ten or more persons on salary, wages or other remuneration for the purpose of manufacturing or providing any service or such entity)

 

【登録義務】

対象となる使用者は、本法施行日から3ヶ月以内に、つまり2021年4月14日までに、月給3万ルピー以下を受け取っている従業員を、ハリヤナ州所定のポータルに登録することが義務付けられ、さらに、これら従業員のポータルへの登録が完了しない限り、従業員を雇用または従事させることが禁止されます(同法3条)。

ポータルでの登録プロセスについては、規則により通知されるとされています。

 

【「州民候補者(Local Candidate)」の雇用義務】

本法施行後は、対象となるすべての使用者は、3万ルピー以下のポストについて、ハリヤナ州の州民から75%雇用すること(every employer shall employ seventy-five percent of the local candidates)が義務付けられます(同法4条)。

この、「Local Candidate」とは、「ハリヤナ州に居住している候補者(who is domiciled in the State of Haryana)」を意味する(同法2条(g))と定義されているのみであり、ハリヤナ州の出身者でなくとも、州外や周辺国からの出稼ぎ労働者などが一時的に賃貸借契約上ハリヤナ州内に住所を置いていれば「州民候補者」として該当するのか、より厳密に公的ID証であるAADHARカード上の居住地登録が必要なのか、さらに地元民を優先する意図から一定(数年間)の居住期間が必要なのか、といった詳細は現時点で明らかになっていません。

なお、他州においては、マハラシュトラ州では同州に15年以上居住していることが州民の要件となっています。

多様な「ハリヤナ州に居住する」パターンが想定できるため、今後通知などによって具体的な定義や説明が追加されることも考えられる点には留意が必要となります。

「州民候補者(Local Candidate)」の定義

ハリヤナ州に居住している候補者

“Local Candidate” means a candidate who is domiciled in the State of Haryana.

 

<現時点で雇用している従業員の扱いについて>

同法は、施行日からの適用となり、遡及適用の規定はないため、現時点で既に雇用している従業員については、遡及して適用されることはないと解釈できます。

これは、ハリヤナ州首相の公式発表[3]において、3万ルピー以下のポストへの新規採用(in all new recruitments)には、75%の州民候補者をあてるものと言及している点からも、既存の従業員は75%の雇用割当の影響を受けないとみなすことができると言えます。すなわち、すでに雇用されている月給3万ルピー以下の従業員のうちのハリヤナ州民割合は、75%以上である必要はありません。したがって、75%枠を満たすために、既存の従業員のうち、ハリヤナ州民以外の住民を解雇する等の対応は不要です。

【免除措置】

75%州民雇用義務規定は、遵守が困難な場合に免除を申請することができると規定されています(同法5条)。

具体的には、必要な技術や資格、技能(desired skill, qualification or proficiency)を持つ人材が確保できない場合に、当局の指定責任者(Designated Officer)に申請することが可能です。申請をしておくことにより、州民採用75%のルールが遵守できていなくとも、直ちに罰則を適用されなくなる可能性があり、遵守が難しい企業は免除申請をしておくことが勧められます。ただし、指定責任者は免除申請を却下することや、州民候補者を訓練して必要な技術等を習得できるよう使用者に指示することができるため、免除申請が受理されない可能性もある点は念頭に置く必要があります。

【適用の猶予措置】

同法の規定を遵守するにあたり困難が生じる場合には、施行から2年以内は、「困難を取り除くため」の追加の規定が設けられる可能性があります(同法21条)。

同法遵守の障壁については成立前から声高に指摘されており、直ちに75%雇用枠を完全に遵守することが難しい企業も少なくないと予想できることから、一定の猶予期間が認められる等の措置規定が追加される可能性は極めて高いと言えます。

州民の雇用枠を規定する法律が既に成立している他州においても、例えばアンドラプラデシュ州では、3年間の適用猶予期間が認められており、ハリヤナ州においても一定の措置がおかれることが想定できます。

【四半期ごとの報告義務】

本法の対象となるすべての使用者は、州民候補者が、採用枠の75%以上となっていることを確認すべく、州民候補者の採用の状況について、四半期報告書を指定のポータルサイトに提出することも義務付けられます(同法6条)。

当該報告書は当局による監視対象となり、報告内容の確認のため、企業内の記録や文書の提示を求められる場合があります。

【罰則】

同法の規定に違反した場合には、違反した規定に応じた額の罰金が定められており、登録義務(3条)違反の場合は10万ルピー以下75%雇用義務(4条)違反には20万ルピー以下の罰金、また違反が継続する場合は1日につき500~1,000ルピーの追徴金が科される場合があります(同法10条~12条)。

また、企業による違反の場合、取締役ら(every director, manager, secretary, agent or other officer or person concerned with the management)も、同意や認知していないことを証明しない限り、有罪とみなされる場合があります(同法16条)。

 

  • 3.他州の動向

ハリヤナ州以外においても、同様の法律が各地で成立しています。

例えば、他の州に先駆けて2019年に成立したアンドラプラデシュ州州民雇用法(Andhra Pradesh Employment of Local Candidates in Industries/Factories Act)でも、州内の使用者は、州民に75%の雇用枠を割り当てることが義務付けられています。アンドラプラデシュ州の同法における雇用枠には、一定の賃金上限や、職種・階級等が規定されておらず、ハリヤナ州よりも厳しい規定となっています。ただし、先述のとおり、3年間の適用猶予期間が認められているため、現時点では厳密に執行されていないのが現状です。

なお、アンドラプラデシュ州法においても75%雇用枠規定に違反した場合は罰則の対象となるものの、罰金額等の具体的な規定を定める規則は未発表となっており、現時点では適用猶予期間でもあるため、罰則の適用例はありません。

【各州の州民雇用枠に関する法律またはガイドライン】

州民の雇用枠

アンドラプラデシュ

75%

マハラシュトラ(ムンバイ含む)

80%

カルナータカ(バンガロール含む)

75%

マディヤプラデシュ

70%

ハリヤナ(グルガオン含む)

75%

 

  • 4.まとめ・企業に求められる対応

同法の主な規定をまとめると以下のとおりです。

適用対象

・会社法上のすべての「会社」

・従業員10人以上を雇用する者・事業体 等

適用期間

2022年1月15日から10年間

但し、施行後2年間程度の適用猶予が認められる可能性あり(法21条)

登録義務

施行から3カ月以内(2022年4月14日まで)に、

月給3万ルピー以下の全従業員を指定ポータルへ登録

75%州民雇用義務

月給3万ルピー以下のポストへの新規採用は、「州民候補者」を75%雇用

報告義務

4半期ごとに州民候補者の雇用・採用状況を当局へ報告

 

これにより、工場で月給3万ルピー以下の従業員を多く雇用する企業等にとっては、今後新たに採用する従業員のうち、75%を「州民候補者」から起用することとなります。

そのため、募集や選考のプロセスにおいて、求職者の居住地を証明する書類を確認する等の運用が必要となることが考えられます。なお、「居住地の証明」については、賃貸借契約上ハリヤナ州居住と確認できればよいのか、それともAADHARカード(インド版マイナンバーカード)上の居住地がハリヤナ州内となっている必要があるのか、また3か月程度かかるAADHAR更新手続き中の扱い等の詳細については、現時点で明らかになっておらず、今後注目していく必要あります。また、居住地の要件を満たす必要があるのが、応募日現在なのか、採用日までに充足できていればよいのか、についても、現時点で明らかではありません。

また、4人に3人という高い割合をハリヤナ州州民のみで占めることが現実的に難しい場合には、先述のように、義務免除の申請手続きを踏むこととなります。

申請が受理されない等の場合、「月給3万ルピー以下のポスト」自体を削減する、すなわち、新規の募集において賃金の基準を3万ルピー以上に設定する、といった選択肢を考慮する企業も出てくることが予想され、その影響は小さくないと言えます。

しかしながら、同法に対しては依然として反発が大きい点や、施行から2年以内は追加の規則や通知においてさらなる変更(実施上の障壁を取り除くための)がなされる可能性もある(同法21条)点から、同法の施行までの通知のみならず、施行後の改定等についても引き続き注視が必要です。

[1] https://storage.hrylabour.gov.in/uploads/labour_laws/Y2021/March/W2/D09/1615277534.pdf

[2] https://haryanacmoffice.gov.in/06-november-2021-0

[3] ハリヤナ州ウェブサイト2021年11月6日付”Press Release“ https://haryanacmoffice.gov.in/06-november-2021-0

 

                                          以上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年10月15日(金)7:39 PM

モルディブの投資環境についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

モルディブの投資環境

 

モルディブの投資環境

 

2021年10月15日

One Asia Lawyers 南アジアプラクティスチーム

インド洋に浮かぶ島嶼国であるモルディブは、観光業と水産業を経済基盤とし、近年は平均6.3%の経済成長を遂げていることもあり、また、地政学的にも重要な位置にあることから、投資の対象として海外投資家から注目されています。

本ニュースレターでは、モルディブにおける投資環境および外国投資規制を解説いたします。

なお、2021年9月15日発売の南アジアの法律実務(中央経済社)では、モルディブにおける投資環境以外にも、会社制度、労働法、不動産法制等の法務実務を解説していますので、ぜひご参照ください。

 

  • 1.モルディブの概要

モルディブは、1,192の島から成り、インドとスリランカから500キロメートル離れたインド洋に位置する島嶼国です。以前はポルトガル語を公用語とするスルタン国家であり、17世紀にオランダの支配下に、1887年にはイギリスの保護領に、そして1965年に主権国家として独立した経緯があります。

主要産業である観光業と漁業が経済を牽引し、2015年から2019年までの年間実質GDP成長率は平均6.3%[1]と、堅調に成長しています。世界銀行の分類では高中所得国にあたり、一人当たり名目GDPは、2020年は7,456USDに落ち込んだものの、2019年は1万USDを超えていました[2]

コロナ禍におけるGDPの落ち込みは回復傾向にあり、世界銀行やIMF等の予測では、モルディブの実質GDPは、2023年までに2019年の水準まで回復すると見られています[3]

また、日本の対モルディブ援助実績は高く(モルディブにおいて日本は最大規模の援助国)、伝統的な親日国であることもあり、日本とは友好関係を築いています。

【モルディブ共和国の概要】

首都

マレ

面積

298平方㎞(20の環礁に1,192の島が広がる)

人口

53.4万人(2019年モルディブ政府資料)

言語

ディベヒ語

民族

モルディブ人

宗教

イスラム教

政治体制

政体:共和制

元首:大統領(イブラヒム・モハメド・ソーリフ大統領)

首相:なし

通貨

ルフィア(Rf)

名目GDP

2020年:約40億USD|2019年:約56.4億USD(世銀)

一人当たり名目GDP

2020年:7,456USD|2019年:10,626USD(世銀)

 

  • 2.外国企業の投資規制

モルディブの外国投資を規制する法規制として、「モルディブ外国投資法」[4]と、同法に基づく「FDI政策」[5]があります。

分野や業種ごとに、外国投資の参入要件(禁止・制限の有無、出資比率の上限、最低投資額、FDI協定の期間の上限、参入ルート)は、FDI政策の別添1にリストされています。

  • (1)外資規制

外国投資の対象として開放されていない分野は以下のとおりです。

 

【外国投資が禁止される分野】

n  林業

n  砂の採掘

n  原油・天然ガス・金属鉱石以外の採鉱・採石

※原油・天然ガスの抽出、金属鉱石の採掘へのFDIは“Negotiable:要交渉”に分類される

n  タバコ製品の製造

n  家具以外の木材、および木材・コルク製品の製造

n  ゴム・プラスチック製品の製造

手芸品・土産品の製造

小売業(Retail trade)

n  建設資材以外の業種の卸売業

※建設資材の卸売業(Wholesale trade of construction materials)は外資率75%を上限に政府ルートでFDIが可能

n  陸上輸送サービスおよびパイプラインによる輸送(Land transport services and transport via pipelines)

n  郵便・宅配事業

n  物流業

n  ピクニックアイランドの運営

飲食サービス業(カフェ、レストラン、ベカーリー、その他飲食店含む)

n  許可される宿泊施設(観光リゾート、観光ホテル、観光船、ヨットマリーナ、ゲストハウス、複合観光)以外の宿泊施設

n  プログラミング・放送事業

n  法務事業

n  写真・ビデオ撮影事業

n  レンタル・リース業(重機等のリースを含む)

人材紹介・仲介事業(Employment activities; Employment agencies, recruitment services)

旅行代理店(Travel agency, tour operator, reservation service and related activities)

n  建築・造園事業へのサービス

n  行政、防衛、社会保障

n  一般の塾事業(General tuition classes)

n  塾・補習校サービス業(Tuition services)

n  コーランの授業

n  病院

n  理学療法クリニック以外のクリニック

n  会員制団体の活動

n  パソコン、個人・家財道具の修理

また、以下の分野は、投資にあたり、外資比率の上限や最低投資額、協定有効期間を、個別の交渉によって決めることとなります。

【外資比率・最低投資額・協定有効期間の要件が“Negotiable”に分類される分野】

n  原油・天然ガスの抽出

n  金属鉱石の採掘

n  鉱業支援サービス

n  燃料補給サービス

n  コークス(燃料)・石油精製品の製造

n  化学薬品・化学製品の製造

n  電気、ガス、蒸気、空調の供給

n  政府承認の再生可能エネルギープロジェクト

n  集水・脱塩・処理・供給

n  下水道

n  廃棄物の収集・処理・処分、材料回収

n  浄化活動・その他の廃棄物処理

n  政府承認の建築物の建築プロジェクト

n  専門的な建設(道路、橋、その他政府承認のインフラプロジェクトの建設含む)

n  ヘッドオフィスの活動、経営コンサルタント

n  検査・診断サービス

n  許可されるヘルスサービス(病院、在宅ケア、デイケア、理学療法クリニック)以外のヘルスサービス(専門施設含む)

 

外国投資が許可される分野への投資は、以下のいずれかのルートからFDIの申請を行うことと規定されます。

 

【申請ルート】

自動ルート

(Automatic Route)

最初の5年間に規定のFDI参入要件(セクター別の条件、持株比率、最低投資額、投資期間)を満たす場合、申請は2営業日程度で自動的に承認される。

政府ルート

(Government Route)

分野・産業・提案する投資事業にセンシティブな要素がある場合、自動承認は保証されず、政府の承認が必要となる。承認に要する期間は5~14営業日程度。

なお、その他の分野・業種は、それぞれ出資比率49%から100%の範囲において、個別の要件に基づき外国投資が認められます。

例えば、ツーリストリゾート(ホテル経営、ゲスト・ショップ運営、スパ、ダイビング・センター、ウォーター・スポーツ、送迎サービス等)への投資は、自動ルートで外資率100%まで認められ、最低出資額は交渉可能です。

また、水産養殖(Aquaculture / Mari Culture)については、政府ルートで外資率100%まで認められ、最低投資額は5年以内に100万USD以上、協定の有効期間は最大50年間、と規定されています。

  • (2) 会社設立・外資規制の基本ルール

FDIの承認取得後は、会社またはパートナーシップとして事業者登録を行うこととなります。

その後、担当省庁との協定(agreement)を締結する必要があり、当該協定は、投資対象分野が観光業であれば観光省との締結、それ以外の分野への投資であれば貿易・工業省との締結と定められています。

 

【担当省庁との協定(締結必須】

観光分野へのFDI

観光省との協定締結

その他分野へのFDI

貿易・工業省との協定締結

協定を締結すれば、当該協定の有効期間中は、自由に業務および活動を行うことが認められます。

 

FDI事業における生産・製造に際しては、原則としてモルディブ国内での調達が可能なものは国内調達とされ、適した材料等が国内で調達できない場合のみ、モルディブ国外から輸入することが可能となります。

モルディブにおける利益は、観光省または貿易・工業省との協定の条件に基づき、国外に送金することが認められています。

会社の設立および運営にあたっては、モルディブ会社法[6]に準拠することとなります。

 

  • (3) 労働法

モルディブにおける雇用関係法令は、雇用法および関連規則により規定されます2021年3月16日に6次改正雇用法が施行されたこにより、解雇補償金等の規定が修正された他、サービス料の徴収義務が新たに導入されている点に留意が必要です。当該新規定では、観光業における事業者(外部委託している観光施設含む)は、10%以上のサービス料徴収義務を負い、徴収したサービス料は、従業員の勤務日数に基づき公平に分配しなければならないと定められています。使用者は管理費として1%までの控除が認められますが、控除分も含め、サービス料の徴収・分配の詳細は、年に2回、当局に報告することも義務付けられます。

なお、同法は、モルディブ国内で雇用されるすべての者に適用されるため、小規模な外国会社もこれを遵守する必要があります。

その他詳細や、会社制度や関連法務実務に関しては、『南アジアの法律実務』(中央経済社)において解説していますのでご参照ください。

 

[1] 世界銀行:https://www.worldbank.org/en/country/maldives/overview#3

[2] 世界銀行:https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=MV

[3] 世界銀行:https://www.worldbank.org/en/country/maldives/overview#3

IMF(国際通貨基金):https://www.imf.org/en/Countries/MDV#countrydata

 

[4] Law on Foreign Investments in the Republic of Maldives (Law No. 25/79)

[5] Foreign Direct Investment Policy

[6] The Companies Act of the Republic of Maldives (Act No: 10/96)

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年09月14日(火)4:31 PM

パキスタンの外国投資規制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

パキスタンの外国投資規制

 

パキスタンの外国投資規制

 

2021年9月14日

One Asia Lawyers 南アジアプラクティスチーム

 パキスタン・イスラム共和国(以下、パキスタン)は、2億人を超える人口を擁する市場規模と、豊富な労働力から、外国投資の対象として注目を集めています。

本ニュースレターでは、パキスタンにおける外国投資に関する規制を解説いたします。

なお、2021年9月15日発売の南アジアの法律実務(中央経済社)では、パキスタンにおける会社の設立や運営に加え、労働法、清算法等の法務実務を解説しています。本著の解説セミナーも10月12・13日に開催予定ですので、ぜひご参照ください。

  • 1.パキスタンの概要

インダス川流域の中心にあり、インダス文明の発祥地となったパキスタンは、19世紀に現在のパキスタン、インド、バングラデシュ等を包含した英国インド領として植民地となりましたが、1947年にイスラム教の国としてインドとは別に独立し、その後、東パキスタン部分は内戦を経て1971年にバングラデシュとしてパキスタンから独立しています。

中国の影響も強く、カラコルム・ハイウェイの再整備やグワダル港の開発を含む中国パキスタン経済回廊(CPEC)や、中国の一路一帯構想による経済圏の発展に、大きな期待が寄せられています。

パキスタンの概要

首都

イスラマバード

面積

79.6平方㎞(日本の約2倍)

人口

2億3,818万人(2021年7月推計)(米国中央情報局)

言語

パンジャブ語(48%)、シンド語(12%)、サライキ語(10%)、ウルドゥー語(国語、8%)等

民族

パンジャブ人、シンド人、パシュトゥーン人、バローチ人

パンジャブ人が人口の過半数を占める

宗教

イスラム教(国教、96.4%)、ヒンドゥー教、キリスト教、ゾロアスター教など

政体

連邦共和制

通貨

パキスタンルピー(PKR)

GDP

約2,842億ドル(2019年)(IMF)

イスラム教の国であり、ヒジュラ暦(略称A.H.)を使用するため、西暦とは年が異なり、西暦2021年8月10日にヒジュラ暦1443年が始まっています。会計年度は7月から6月です。

  • 2.外国企業の投資規制

パキスタンの外国投資を規制する法律として、「外国民間投資(促進・保護)法」[1]と「経済改革保護法」[2]があり、投資促進機関としては、パキスタン投資庁(Board of Investment(BOI))が投資に関する申請や許認可を管轄します。

外国投資についての規制は少ないとは言え、一部の分野を除き、ほぼすべての分野が外国投資に開放さており、最低資本金も2013年に規制が廃止されています。

  • (1) 外資規制

規制業種に関し、パキスタンでは、インフラ関連産業、サービス業を含むほとんどの業種が外資に開放されていますが、以下の産業に関しては、政府の許可が必要とされます。

①       兵器、弾薬

②       高性能爆薬

③       放射性物質

④       有価証券、通貨、貨幣の製造・印刷

⑤       酒類,アルコール類(工業用を除く)の製造所の新設

出資比率については、ほとんどの業種において100%の外資参入が認められますが、航空(49%まで)、金融・保険(49%まで)、農業(60%まで、ただし農業経営法人は外資100%が認められている)などの分野では、外資の出資割合に上限が定められます。

最低資本金も現在は規制されていません。

国外送金に関しては、外為規制に従い、利益・配当を投資元に送金することが可能です。ただし、各種手続きが円滑でなく、遅延が生じることも少なくありません。

土地の取得・所有については、パキスタン政府の許可が必要となるものの、外資100%であっても認められます。なお、土地のリースをする場合は、通常50年間の契約が可能であり、その後の延長も可能です。

  • (2) 投資奨励措置

奨励産業として、食品加工業、交通インフラ・物流業、縫製業、自動車産業、IT産業、建設・住宅事業、観光業が挙げられています。

パキスタンの投資奨励措置には、外資と内資で特段の区別は設けてられておらず、主に所得税法に基づく税の優遇措置が適用されます。

ただし、所得税法や税率は頻繁に改正されており、歳入庁がその都度通達(Statutory Regulatory Orders)を発出しているため、同庁のウェブサイト等で最新の規制を確認することが求められます。

【主な投資奨励措置】

小規模会社[3]に対する法人所得税減税措置:

2021年度は22%、2022年度21%、2023年度以降20%(通常の会社の法人所得税率は29%)

資本財の輸入に対する税金の減免:

パキスタン国内で製造されていない工場設備、機械、機器の輸入関税、これらの輸入に関する売上税が引下げられる。

タックスクレジットの付与:

雇用を創出した製造業者、新卒者を雇用した納税者、(2022年6月30日までに)上場した会社、新設工場・設備機械に投資した納税者等に対しタックスクレジットが付与される。

加速減価償却:

最初の税務年度において工場設備および機械(中古製品、輸送用車両、家具等は対象外)の減価償却率を25%(指定の農村地域・未開発区域における事業設立の場合は90%)とすることが認められる。

 

【特定事業分野に対する優遇措置】

発電プロジェクトに対する免税措置:

パキスタンで設置された発電プロジェクトから得た利益・売上に対する税金の免除

コンピューターソフトウェアの輸出、IT産業に対する免税措置:

2025年6月30日までにコンピューターソフトウェアの輸出、ITサービス、IT Enabledサービス(ITES)から得られた利益・売上に対する税金の免除

精油事業に対する免税措置:

2018年7月1日から2023年6月30日までに精油事業から得た利益・売上について、一定要件を満たすことを条件に税金免除

低価格住宅プロジェクトに対する免税措置:

低価格住宅プロジェクトから得た利益・売上について、一定要件を満たすことを条件に50%の免税

液化天然ガス事業に対する免税措置:

液化天然ガス基地の運営者および所有者は、生産から5年間、利益・売上に対する税金の免除

  • (3) 輸出加工区・経済特区・輸出志向型企業に対する優遇措置

輸出企業向けのための工業用地として、1989年に最初の輸出加工区(Export Processing Zone)がカラチに設置され、現在は、カラチ、リサルプール、サイアルコット、サインダックの輸出加工区が稼働しています。輸出加工区の入居企業は、設備・機械・原材料に関する税金および関税の免除、無期限の損失繰越等の優遇措置を享受できます。

パキスタンには現在約20の経済特区(Special Economic Zone)が承認を受けています。経済特区に入居する企業は、10年間の所得に対する税金の免税(2020年6月30日以降に生産を開始した企業については5年間)、経済特区での工場の建設資材、工場に設置する機械類の輸入関税の免除(一度限り)といった優遇措置を受けられます。

生産品の輸出を行う「輸出志向型企業」に対しては、輸出加工区や経済特区に関連する優遇措置とは別に、輸出商品の製造に必要な資本財や投入財(機械・原材料等)の輸入および現地調達について、関税の免除(原材料に関する使用期間は24カ月、車両・スペアパーツの保持期間は10年間)等の優遇措置が設けられています。

  • (4) 進出形態

パキスタンへの進出形態としては、株式会社(公開、非公開、単独株主)、支店、駐在員事務所、有限責任パートナーシップ(LLP)があり、その中でも、非公開株式会社による進出が一般的です。

株式会社の設立等を監督する官庁は、証券取引委員会(Security and Exchange Commission of Pakistan (SECP))であり、オンライン上で様式取得や申請が可能です。

他方、外国企業の支店または駐在員事務所の設立は、BOIによる認可を取得した後に、SECPに登録することとなります。

 

 

現地法人

支店

駐在員事務所

LLP

事業範囲

パキスタン法人として外資規制の範囲内で事業実施が可能。

特定の契約(プロジェクト)履行のための形態。契約範囲外の活動は不可。実務上は建設、インフラ、銀行、航空、海運等に限定。

調査、販促活動等に限定。営業活動・商業活動は不可。

組織体(bodies corporate)として合法的に行うことができる活動等

手続

SECPに登記

BOIに許可申請後、SECPへ登録

SECPに登記

特記事項

非公開株式会社の形態が一般的

認可期間は3~5年。更新が可能

パートナー2名以上。代表パートナーはパキスタン居住の個人

 

会社法上の公開会社、非公開会社、一人株主会社の株主数、取締役数は以下のとおりです。

 

公開会社(非上場)

非公開会社

一人株主会社

株主数

3人以上

2人以上50人以下

1人

取締役数

7人以上

2人以上

1人以上

株式譲渡制限

制限なし

制限あり

 

一人株主会社は、外国人であっても設立できるとされています。

 

その他、会社の設立や運営、関連法務実務に関しては、『南アジアの法律実務』(中央経済社)において解説していますのでご参照ください。

以上

[1] Foreign Private Investment(Promotion and Protection)Act, 1976

[2] Protection of Economic Reforms Act, 1992

[3] 小規模会社の要件は次のとおり:1)2007年7月以降に会社法に基づいて設立され、2)資本金および資本準備金が6,000万PKRを超えず、3)従業員数が年間で250人を一度も上回らず、4)年間売上高が2.5億PKRを上回らない、5)既存の会社の分割または事業再編によって成立したわけではない会社

 

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年08月13日(金)8:59 PM

インド「個人情報保護法案」とEU「一般データ保護規則(GDPR)」の比較についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

「個人情報保護法案」と「一般データ保護規則(GDPR)」の比較について

 

 

インド「個人情報保護法案」とEU「一般データ保護規則(GDPR)」の比較

 

2021年8月13日

One Asia Lawyers 南アジアプラクティスチーム

 

インドでは、個人情報の保護に関し、現行法制よりも格段に厳しい規定が盛り込まれた2019年個人情報保護法案(Personal Data Protection Bill, 2019)」の動向が注視されています。同法案は、EU域内における個人情報保護や取扱いを定めた「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、以下「GDPR」)」をモデルにしつつ、インド独自の規制や企業への義務を含みます。そのため、既に他国でGDPRや類似規制を遵守した事業を行っている企業であっても、インドで個人情報を扱う場合には、インドの新法案に基づく社内体制の整備や情報取扱の運用等、一定の対応が必要となります。本ニュースレターでは、2019年個人情報保護法案と、GDPRの相違点にフォーカスし、企業に求められる対応について解説します。

なお、2021年4月9日付ニュースレターでは、同法案の概要や審議状況、可決された際のインパクトを解説しました。その後、同法案に関する報告書が2021年7月の雨季国会(Monsoon Session)で提出され、その内容を踏まえた法案の審議が国会で予定されていましたが、報告書の提出が再び延期され、次回2021年11月~12月の冬季国会(Winter Session)での提出とされることが決まっています。企業にとっては対策を講じる準備期間が増えたことになりますが、現行法制よりも厳格化することは必須であると考えられるため、今後も注視が必要となります。

 

  • 1.2019年個人情報保護法案の概要

2019年個人情報保護法案は、個人情報を包括的に保護し,そのためのデータ保護局を設置することを目的としており、成立すれば、個人情報の取扱いを規定するインドでは初めての統一的な法律となります。

同法案の適用対象は、以下のとおりであり、インドで個人情報を扱う外国企業も含まれます(同法案2)。

【2019年個人情報保護法案の適用対象】

(a)    インド国内で取得、開示、共有、またはその他の方法で処理された個人情報の処理[1]

(b)    政府(the State)、インド企業、インド国民、インドで設立・創設(incorporated or created)された個人または団体による個人情報の処理

(c)    インド国外のデータ管理者(data fiduciary)またはデータ処理者(data processor)[2]による、(i)インド国内の個人(data principal、データ主体)に対する商品・サービス提供を行う組織的活動(systematic activity)または、(ii)インド国内の個人に関するプロファイリングに関連して行う、個人情報の処理

※なお、匿名化されたデータ(anonymised data)は、適用の対象外となります。

したがって、インドに拠点をもつ日系企業はもちろん、オフショアであっても、インド国内で商品・サービス提供を行う企業は、同法案の規定を遵守することが義務付けられます。

データ管理者が遵守すべき主な義務や規定は以下のとおりです。

【主な義務・規定】

ü  個人情報の取得・処理目的の制限:本人が同意した目的、必要な範囲内で、プライバシー確保の上で処理するものとする(5条、6条)

ü  個人情報の取得に関する通知:取得の際には、本人に対し、規定の情報を含む通知を行う(7条)

ü  個人情報の保持制限・処理終了時の削除義務:処理目的に必要な期間を超えて保持せず、処理の終了時には削除する(8条)

ü  本人の同意取得:個人情報の処理の開始時に本人の同意を得る(11条)

ü  未成年者の年齢確認および保護者の同意取得:未成年者(18歳未満)の個人情報は、処理開始前に年齢を確認し、親・保護者の同意を得る(16条)

ü  データ主体の権利行使要求への対応:データ主体の権利に基づき、処理状況照会、削除・訂正・開示制限等を求められた場合、所定期間内に応じる(17~21条)

ü  プライバシーポリシーの策定と公開:個人情報の管理や処理技術等、規定の内容を含むプライバシーポリシーを策定し、当局の認証を得た上で、自社および当局のウェブサイトに公開する(22条)

ü  透明性維持:個人情報処理の透明性を維持するために必要な措置を講じ、規定の情報を公開する(23条)

ü  セキュリティ保護措置:非識別化・暗号化の使用、誤用・不正アクセス等の防止措置、等の措置を実施する(24条)

ü  個人情報侵害の報告:侵害の状況に応じ、当局に報告する(25条)

ü  第三者への委託契約締結:データ処理を委託する際は契約を締結する(31条)

ü  苦情処理メカニズムの具備および「苦情処理責任者」の設置:苦情受理から30日以内に解決する(32条)

ü  国外転送規制およびデータローカライゼーション:「重要個人情報」は国外転送禁止。「機密性の高い個人情報」は一定条件下でのみ国外転送可能、ただしデータはインド国内サーバに保管する(33条、34条)

 

ただし、以下については一部またはすべての規定の適用が免除となります(同法案35~39)。

【規定が免除となる対象】

(a)     政府機関(any agency of the Government)[3]

(b)     犯罪予防・捜査・起訴目的、個人的・家庭内使用目的、報道目的

(c)      インド国外の個人(data principals not within the territory of India)の個人情報

(d)      研究・統計目的

(e)    個人情報の処理が自動化(automated)されていない小規模事業体(small entity)

 

一部の規定の適用が免除となる「小規模事業体」の定義は、事業体の年間売上高や個人情報の処理量等を踏まえ、今後規則により定められることとされていますが、企業が負うべき義務[4]の多くが免除となります。現行の法規制では小規模事業体を免除する規定は設けられていないため、新法案の施行は、小規模事業体にとっては、一部規制の緩和となると言えます。

 

  • 2.GDPRとの主な相違点

GDPRは、2016年5月に発行し、2018年5月に施行された、EU域内で取得した個人情報を保護するための統一的な規制であり、インドの新法案はGDPRをベースとしているとされています。しかしながら、インド独自の義務が規定されている点や、規制当局であるデータ保護局(Data Protection Authority of India,以下「DPA」)の裁量が大きく多くの下位規則や定義を定める権限を有する点等、GDPRと異なる点も少なからずあります。

実務上、特に重要となる規定について、インドの個人情報保護法案と、GDPRの主な相違点は以下のとおりです。

 

  • (1)追加義務

2019年個人情報保護法案では、データ管理者は、個人情報を取得する際(at the time of collection)、または取得源が本人からではない場合には可能な限り速やかに、本人に通知(notice)することが義務付けられます(同法案7)。

【通知に含むべき情報】

①      個人情報を処理する目的

②      取得する個人情報の性質・分類

③      データ管理者の身元・連絡先詳細(「データ保護責任者」がいる場合はその連絡先を含む)

④      本人同意を撤回する権利と手続

⑤      (該当する場合は)同意を取得せずに個人情報を処理する根拠等

⑥      情報取得源(本人からの取得でない場合)

⑦     共有される(shared)可能性のある個人または事業体(他のデータ管理者・データ処理者を含む)

⑧      個人情報の国外移転にかかる情報

⑨      情報保持期間、または未定の場合は保持期間決定の基準

⑩      データ主体の持つ権利と行使手続

⑪      苦情処理の手続き

⑫      DPAへの苦情申立の権利と手続

⑬      データ・トラスト・スコアの評価、等

 

通知の内容は、GDPRとほぼ同じ(GDPR13条、14条)ですが、取得した個人情報の共有先(⑦)を示す必要がある点は、GDPRでは規定されておらず、インドにおいては追加で求められることとなります。すなわち、個人情報の処理業務を外部にアウトソースする場合には、当該データ処理者の情報も事前に通知に含むといった対応が必要となります。

 

  • (2)個人情報処理時の本人同意取得義務

個人情報の処理を開始する際(at the commencement of processing)には、必ず本人の同意(consent)を得る必要があり、同意を取得しない限り、処理を開始することはできません(同法案11条)。本人の同意は、以下の要件を満たしていないと無効とされるため、また、GDPRと同様に本人の同意を得たことを証明する責任はデータ管理者側にある(同法案11条(5))ため、同意取得にかかる記録は適切に保管する運用を整える必要があります。

【個人情報の処理における本人同意取得時の要件】

①      (インド契約法14条に基づき強制や詐欺等の影響にない)自由な(free)意思のもとの同意であること

②      (同法案7に基づく)通知を受けていること

③      処理目的に関し本人が同意の範囲(scope of consent)を決められるという観点で具体的(specific)であること

④      積極的な肯定(affirmative action)により明確に示されていること

⑤      同意をする時と同じように、同意を容易に撤回ができること

 

これらに加え、「機密性の高い個人情報(Sensitive personal data)」[5]の処理に際しては、さらに「明示的に(explicitly)」本人同意を得る必要があります(同11条(3))。

【機密性の高い個人情報の処理における本人同意取得時の要件】

①      著しい損害を与える可能性のある処理の目的または操作であると本人に通知した後に、

②      文脈や行動からの推測ではなく、明確な言葉により(in clear terms)、

③      目的、操作、使用について、別途同意する選択肢(choice of separately consenting to)を本人に与えた後

 

ただし、国家機能を遂行する目的(緊急医療対応、災害援助等)や、企業の人事労務目的(雇用、解雇、福利厚生、勤務管理、業績評価等)のために必要な場合には、本人の同意を取得せずに個人情報(機密性の高い個人情報を除く)の処理が認められています(同法案12条、13条)。

また、「合理的な目的(reasonable purposes)」がある場合にも、本人の同意なしに個人情報の処理ができることがある(同法案14条)と規定されており、不正行為防止、内部告発、M&A、債務の回収、公開されている個人情報、検索エンジンの運営等が例示されています。さらに、この本人同意なしで個人情報を扱える「合理的な目的」は、DPAが定義するものと規定されています。

GDPRにおいても、正当な目的があり適切な保護措置がされる場合には本人の同意なしで処理が認められるものの、その可否判断は管理者の責任とされています(GDPR6条4)。

インドの新法案の特徴的な点として、後述するDPAの権限の大きさが挙げられますが、この「合理的な目的」をDPAが規定する項目である点も、DPAの裁量を示していると言えます。

 

  • (3)データ管理者の分類と追加義務

インドの新法案の主要な特徴として、「重要データ管理者(significant data fiduciary)」「ソーシャルメディア仲介業者(social media intermediary)[6]、「保護者データ管理者(guardian data fiduciary)」という分類を導入しており、これに該当するデータ管理者は、追加義務を負う点が挙げられます。

いずれも、GDPRには存在せず、インド独自の規制です。

 

分類

分類の基準・方法

追加義務

重要データ管理者

(a)処理される個人情報の量、(b)処理される個人情報の機密性、(c)データ管理者の売上高、(d)データ管理者の処理による損害のリスク、(e)新技術の使用、(f)  その他、処理により弊害を引き起こす要因がある場合、等の要素を考慮した上で、DPAが判断し、重要データ管理者として分類するもの(同法案26条(1))。

1)      DPAへの登録義務

2)      データ保護の影響評価(data protection impact assessment)の実施とDPAへの提出義務(27条)

3)      取得・移転・消去等の重要処理やデータ保護影響評価等の最新かつ正確な記録(records)の維持管理義務(28条)

4)      独立データ監査人による監査を受ける義務

5)      「データ保護責任者(data protection officer)」の設置義務

ソーシャルメディア仲介業者

ソーシャルメディア仲介業者のうち、(a)利用者数が規定の閾値以上であり、かつ(b)その活動が民主主義、国家の安全保障、公序良俗等に重大な影響を与えている・与える可能性がある場合、連邦政府がDPAと協議の上で、「重要データ管理者」であるとの通知がなされるもの(同法案26条(4))。

1)      重要データ管理者としてのすべての義務

2)      ユーザーが自らアカウントを認証できる機能の付与義務

3)      実証可能で目に見える「認証済みバッジ(demonstrable and visible mark of verification)」の提供義務

保護者データ管理者

(a)未成年者を対象とした商業用ウェブサイトまたはオンラインサービスを運営するデータ管理者、または(b)大量の(large volumes)未成年者の個人情報を処理するデータ管理者は、DPAが別途定める規則で「保護者データ管理者」と分類されるもの(同法案16条(4))。

1)      児童のプロファイリング、追跡(tracking)、行動監視、児童を対象としたターゲット広告、および児童に重大な損害を与える可能性のあるその他の個人情報の処理の禁止

 

このように、分類の具体的な指標や閾値が不明であり、DPAにより判断・分類されるものであるため、現時点ではデータ管理者が自身で該否を判断することが難しいものの、追加的に追う可能性のある義務については事前に把握しておくことが推奨されます。

 

  • (4)監査の実施義務

監査は、GDPRにはないインド独自の義務であり、特徴の一つと言えます。

「重要データ管理者」に分類されると、プライバシーポリシーおよび個人情報処理の運用に関し、毎年、独立データ監査人(independent data auditor)による監査を受ける必要があります。

監査人は、データ管理者の法令遵守状況に関し、通知の明確性・有効性、プライバシーポリシーの有効性、セキュリティ保護措置等の項目により評価します。データ監査の評価に基づき付与される「データ・トラスト・スコア」は公開されるスコアとなります。

なお、データ監査人の選任方法は示されていないものの、人材自体は、関連分野における専門知識を有し、独立性や適格性を備えた者を、DPAが登録することとされています。

 

  • (5)担当者設置義務

新法案では、現行法にも規定される「苦情処理責任者」に加え、GDPRの規定する概念と類似する「データ保護責任者」の設置が義務付けられています。

「苦情処理責任者(an officer designated for this purpose)」

データ管理者は、データ主体による苦情(grievance)の申立てを受ける「苦情処理責任者」を任命する必要があります(同法案32)。現行法[7]においても苦情処理責任者(Grievance Officer)の設置は義務付けられており、名前と連絡先をウェブサイトで公開することとされています。新法案では、選任における具体的な要件は定められていないものの、「重要データ管理者」については、後述の「データ保護責任者」が兼務するものとされ、その場合はインドに拠点を有するものを任命する必要があります。

「データ保護責任者(Data Protection Officer)」

データ管理者のうち、「重要データ管理者」はさらに、「データ保護責任者」1名を任命する必要があります(同法案30)。これは、新法案で新たに導入されたものであり、GDPR(37~39条)上の「データ保護オフィサー(Data Protection Officer)」の概念を踏襲していると見られ、職務も類似しています。

インドの新法案においては、データ保護責任者は、本法案に関しデータ管理者を代表する者(represent the data fiduciary under this Act)であり、法令に基づく義務の遂行に関し、データ管理者への助言や監視を行うとされ、「苦情処理責任者」も兼務することとなります。

インド独自かつ厳格化された規制として、データ保護責任者は、インドに拠点を置く(based in India)者でなければならないと規定されています。そのため、複数国で展開している企業であっても、インド事業に関してはインド居住者をアサインしなければならず、人事配置に影響を及ぼし得る規制強化と言えます。

その他、資格・経験等の要件は規則により定められることとされています。

 

  • (6)データローカライゼーション

新法案において、個人情報の国外転送に関する扱いは、個人情報の性質・分類に応じて規定されます。

「重要個人情報(critical personal data)」[8]

重要個人情報(定義は未規定)は、インド国内でのみ処理することが認められ、インド国外に転送することは、緊急医療対応等の例外を除き、禁止されます(同法案33(2))。

重要個人情報の定義は,連邦政府が通達により別途規定するものとされています。

「機密性の高い個人情報」

機密性の高い個人情報は、以下の条件を満たす場合にのみインド国外への転送が認められるものの、当該個人情報は引き続きインド国内のサーバに保管(continue to be stored in India)しなければなりません(同33(1),34(1))。

  • 別途同意する選択肢を本人に与える等(同11(3))、本人からの明示的な同意(explicit consent)を得ていること、かつ、
  • DPAが承認した契約またはグループ内スキーム(intra-group scheme)に基づく転送、または、
  • 連邦政府がDPAと協議の上で承認した他国やその国の事業体、または国際組織への転送、または、
  • その他DPAが承認した転送

なお、現行法である2011年機密個人情報規則においては、「機密性の高い個人情報」を他社(インド国内・国外問わず)等に移転することに関し、移転先がインド法と同等の措置(プライバシーポリシーの公開、本人同意取得、ISO27001等の適切な安全対策)を講じていることを条件に、可能とされています(同規則7)。新法案では、重要個人情報については国外転送が原則禁止され、機密性の高い個人情報についても、国外転送の要件をクリアしたとしてもインド国内サーバでのデータ保管が規定(いわゆるデータローカライゼーション義務)され、規制が強化されています。

これは、国外転送の要件を満たしていない場合にのみデータローカライゼーションが求められるGDPRの規定よりも厳しいと言えます。

 

  • (7)規制当局の権限

新法案が草案とおり施行されると、個人情報の管理や同法案の執行を担うDPA(データ保護局)が設立されます(同法案41条)。DPAは、個人の利益の保護、個人情報の悪用防止、法令遵守の確保等の措置を講じる機能を有する他、規定違反行為の停止・修正要求、立入検査、不正データ等の押収を行う権限を持つとされます(同法案54条、55条等)。その他、多くの条項においてDPAが追加の要件や定義を規定することや、下位規則を公布することを認めており、GDPRにおける各国のDPAが有する権限に比して、インド新法案上のDPAの権限および影響は非常に大きいと言えます。

DPAの委員長および委員は官房長官を含む上級公務員のみで構成され、政府が任命・解任権を有する(42条)ことから、DPAの独立性についても疑問視されています。

 

  • 3.まとめ・企業に求められる対応

インドにおいては、包括的な個人情報保護法は存在せず、現行法における保護規定についても十分に遵守されていないと言われています。そのような状況から、EU各国に一律に効力をもつGDPRと同水準の法律が導入されるとなると、企業には負担の増加ともなり得ます。

法案可決時期が不透明ではあるものの、実務上の影響がとりわけ大きい以下に関しては、早期に対策検討を始めることで混乱を回避することが肝要となります。

プライバシーポリシーbyデザインの策定(22条):

新法案における「プライバシーポリシー(Privacy by design policy)」は、GDPRにおける「データ保護バイデザイン・バイデフォルト(Data protection by design and by default)」に類似する概念と見られます。すなわち、事後的な措置や救済策によるプライバシー保護に優先し、初期設定としての予防策という位置付けとなるプライバシー保護策を策定することが求められます。現行法上も、プライバシーポリシー(privacy policy)の策定と公開が義務付けられていますが、規定される項目は、個人情報の取得・利用目的、合理的なセキュリティ対策等であり、必要最低限の内容と言えます。

一方、新法案では、以下を含むことと規定され、GDPRでのポリシー同様、予めデータ主体の権利が保護されるための仕組みを構築するという理念が根底にあると見られます。

事業において既に実装している適切な技術的対策や組織的措置は、プライバシーポリシーに落とし込む他、個人情報を扱う業務全体のフローをレビューし、各工程でのリスク分析と対策方針を検討しておくとが肝要です。

【プライバシーポリシーに含むべき内容】

①      データ主体への危害を予測、特定、回避するために設計された、経営的・組織的・ビジネス慣行および技術的システム

②      データ管理者の義務

③      個人情報の処理に使用される技術が商業的に認められている、または認定された基準に準拠していること

④      あらゆる革新を含む企業の正当な利益が、プライバシーを損なうことなく達成されること

⑤      個人情報の取得から削除までの、処理全体におけるプライバシーの保護

⑥      透明性のある方法で個人情報を処理すること

⑦      個人情報処理の各段階においてデータ主体の利益を考慮すること

 

個人情報の分類

新法案で導入されるいわゆるデータローカライゼーションの規定では、「重要個人情報」はインド国内でのみ処理することができ、「機密性の高い個人情報」は一定の要件を満たす場合にのみインド国外に転送できるが、データはインド国内に保管する必要があります。また、その他の個人情報については、特段の規制は設けられていないため、国外への転送は可能と解されます。

また、個人情報を処理する際の本人の同意取得に関しても、「機密性の高い個人情報」を処理する場合は、追加的要件が規定されます。

このように、個人情報の分類により取るべき措置が異なり、よって運用の見直しや処理システムの改変が必要となる可能性があります。しかしながら、「重要個人情報」の定義は現時点で不明確であり、また、「機密性の高い個人情報」もDPAにより対象範囲が追加されることもあり得ます。そのため、まずは自社が扱う個人情報をマッピングし、整理と把握をしておくことで、今後規定される基準値や要件に応じて個人情報の再分類を容易にする対策も考えられます。

その上で、データローカライゼーション義務に備え、複数国の情報を単一の拠点やクラウド上で処理・保管している場合には、「機密性の高い個人情報」や「重要個人情報」(に相当し得る機微な情報)が含まれないことを確認する、またはインドの個人情報に関してはインド国内のサーバ上で管理し、インド国外からのアクセスを制御するなどの対策を検討する必要があります。

[1] 同法案上、「処理」は、個人情報に対し行われる操作を意味し、取得、記録、組織化、構造化、保管、変更、使用、索引付け(indexing)、送信等による開示、制限、消去等の操作を含みます。

[2] 同法案上、「データ管理者」は個人情報の処理の目的および手段を決定する者、「データ処理者」はデータ管理者に代わり個人情報を処理する者を指します。

[3] 政府が関係機関の適用を免除できる規定であるため、こうした権限の付与は悪用につながる危険性があるとの指摘もあります。

[4] 法案では、個人情報取得時の本人への通知義務(7条)、保持制限および処理終了時の削除義務(9条)、プライバシーポリシー策定義務(22条)等、基本的な義務を含む18の条項が免除となるとされています。

[5] 財務情報、健康に関する情報、公的な識別子、性生活、性的指向、生体情報、遺伝子情報、トランスジェンダーの状態、インターセックスの状態、カーストまたは部族(tribe)、宗教的・政治的な信念や所属(affiliation)、その他当局が追加規定する分類、と定義され(同法案3条(36))、GDPR9条に定める「特別な種類の個人データ(Special categories of personal data)」や日本法の「要配慮個人情報」と近い概念。

[6] 「2人以上のユーザー間のオンライン交流を可能にし、情報の作成、アップロード、共有、普及、修正、またはアクセスを可能にする仲介者であるが、主に以下は含まれない。(a)商業的取引、(b)インターネットへのアクセスを提供、(c)サーチエンジン、オンライン百科事典、電子メールサービス、オンラインストレージサービスなどの性質を持つもの」(同法案26説明)。

[7] 「2011年情報技術(安全措置及び手続き並びに機密個人データ・情報)規則(Information Technology (Reasonable Security Practices and Procedures and Sensitive Personal Data or Information) Rules), 2011」5条(9)

[8] 新法案で導入された、一段高い規律の対象となる個人情報の分類。ただし、重要個人情報の定義は、通達により別途規定されるため、現時点では具体的な要素は定められていません。

以 上

 

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年07月13日(火)9:24 PM

インドの消費者保護(EC)規則案についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

インドの消費者保護(EC)規則案について

 

 

インドの消費者保護(EC)規則案について

 

 

2021年7月15日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

インドでは、2020年7月に新消費者保護法(The Consumer Protection Act, 2019)[1]が施行されています。

また、同法の下位規則として、Eコマース(EC)に関する「消費者保護(EC)規則」(The Consumer Protection (E-Commerce) Rules, 2020、以下「EC規則」)[2]も同年同月に発行しており、翌2021年5月には、通知により改正規則[3]も発行されています。

いずれも、事業者に対し新たな義務が追加されており、日系企業にも一定の影響があるものでした。

今般、インド政府は、EC規則を、さらに厳格化する内容で改正案[4]を発表しました。

本ニュースレターでは、一連の規制による影響を解説いたします。

 

1.2019年消費者保護法の概要

インドにおいて、消費者の保護や製造者の責任等を規定する消費者保護法は、1986年に制定され、数回の改正を重ねていましたが、近年の商取引形態の変化にも対応する形で、2020年7月に新法が施行され、それに伴い旧法が廃止となっています。

消費者保護法は、旧法からの変更点として、主に以下が挙げられます。

 

  • 消費者の定義における「オンライン購入」の追加:

同法の保護対象となる消費者の定義において、製品購入・サービス利用の手段として「電子的手法によるオンライン(online transactions through electronic means)」が追加され、EC取引が適用対象となることが明確化(同法2条7項)

 

  • 製造物責任(Product liability)の追加:

製造者の「無過失」責任が明示的に規定(同法2条34項、82-87条)

製品・サービスの欠陥(defective product/ deficiency in services)により消費者に生じた損害は、その製造者・販売者・サービス提供者が補償する責任を負うとされ、特に製品の製造者(product manufacturer)に関しては、製品保証説明に過失や不正(negligent or fraudulent)がなかったとしても、製造物責任を負うと規定(同法84条2項)

 

  • 事業者への罰則強化
  • 虚偽または誤解を招く広告により消費者の利益を害した場合、2年以下の禁固または100万ルピー以下の罰金(初犯以降は5年以下、500万ルピー以下まで罰則加重)(同法89条)
  • 異物(adulterant)混入製品や、偽造品(spurious goods)の製造・販売・輸入等を行った場合、消費者に生じた影響の程度に応じた罰則が規定。消費者死亡の場合は無期禁固および100万ルピー以上の罰金、および初犯の場合はライセンス停止(最大2年間)、2回目以降はライセンス没収(同法90条、91条)

 

  • 中央消費者保護局(Central Consumer Protection Authority)の設置:

消費者権利の侵害、不公正な取引、虚偽広告等に対し、調査、申立て、リコール・停止措置命令、罰金を科す権限を有する行政機関の新設(同法10、16、18、20、21条等)

 

  • 調停手続き(Mediation)の導入:

消費者紛争の迅速な解決手段として、調停委員(Mediator)による当事者間の紛争和解を図る制度の導入(同法74-81条)

とりわけ、新消費者保護法において、EC取引が同法の適用対象となることが明示的に規定されたことで、EC取引に関わる事業者の責任範囲が相当程度変わることとなりました。

2.2020年EC規則・2021年改正規則

2019年消費者保護法の施行と同時に、インド政府は、同法に基づく「消費者保護(EC)規則」を2020年7月23日通知し、同日施行しました。

また、2021年5月15日付け通知にて、EC事業者に対する追加義務を規定する改正もなされています。

同規則は、EC取引に関わるすべての商品・サービス、事業体に適用されるものであり、インド国内向けに商品・サービスを提供している外国企業も含まれます。

同規則は、EC取引に関わる事業者を、以下のように分類、定義しています。

 

  • EC事業者(e-commerce entity)

EC取引のためのデジタル機能やプラットフォームを所有・運営・管理する事業者

  • マーケットプレイス型EC事業者(marketplace e-commerce entity)

買主・売主間の取引を促進するためのデジタル/電子ネットワーク上のITプラットフォームを提供するEC事業者

  • 在庫型EC事業者(inventory e-commerce entity)

商品・サービスの在庫を保有し、それらを消費者に直接販売するEC事業者

※なお、インドFDI政策(Foreign Direct Investment Policy)上、外国企業による在庫型EC取引モデルへの投資は認められていません。

  • 出品者(seller)

消費者保護法における「製品販売者」を指すが、同規則では主にECサイト上に商品・サービスを販売・提供する事業者を指す

 

その上で、各事業者に対する義務を規定しています。主な内容は以下のとおりです。

 

EC事業者(同規則4条)

①      消費者保護法および規則の遵守を確保するための、インド居住の統括責任者(Nodal Officer or an alternate senior designated functionary)の設置

※2021年5月の改定にて追加された義務

②      EC事業者の名称・住所・顧客ケアおよび苦情処理責任者(Grievance Officer)の連絡先の表示

③      苦情処理手続きの規定、苦情処理責任者の設置

④      消費者の一方的な商品キャンセルでも、キャンセル料金を課すことの禁止

⑤      商品購入に対する消費者の明示的な同意の記録

⑥      その他、不正取引の禁止、輸入商品の輸入元情報の表示、関連法に基づく合理的期間内の返金、不当な価格操作の禁止、消費者間差別の禁止等

マーケットプレイス型EC事業者(同規則5条)

①      商品等の説明・写真等が、実物の外観・性質・品質等の特徴に合致することを、出品者(seller)に確保させること

②      出品者、返品、返金、交換、配送、苦情処理手続、支払方法、解約等に関する情報のECサイト上への明示

③      商品・出品者のランキングを決定するアルゴリズムの説明

④      出品者間との関係を規定する規約の制定

⑤      知的財産権の侵害により削除された商品を繰り返し出品する出品者の記録

マーケットプレイス出品者(同規則6条)

①      消費者を装った商品レビュー投稿の禁止

②      商品の瑕疵、公告記載内容との不一致、配送遅延等を理由とする返品・返金の拒否の禁止

③      苦情処理責任者の設置

④      商品の広告内容と実物の特性・使用条件等が一致させること

⑤      価格の内訳、使用期限、原産地、交換・返品・返金ポリシー、配送方法、保証等の商品詳細情報の明示

⑥      その他、不正取引の禁止、EC事業者との書面締結、出品者の名称・住所・納税番号等のEC事業者への提供等

在庫型EC事業者(同規則7条)

①      交換・返品・返金ポリシー、保証内容、配送方法、支払方法、価格の内訳、苦情処理手続等の明示

②      消費者を装った商品レビュー投稿の禁止

③      商品の広告内容と実物の特性・使用条件等が一致させること

④      商品の瑕疵、公告記載内容との不一致、配送遅延等を理由とする返品・返金の拒否の禁止

⑤      自社が販売する商品の真正性を保証する場合には、当該商品の真正性に関し適切な責任を負うこと

 

このように、ECサイトでの取引において、消費者が不利益を被る状況を改善することを主な目的としているため、EC事業者側には大幅な義務の増加となりました。

3.改正規則案と規制強化の背景

2021年6月21日、インド政府は、各事業者の義務や禁止事項を大幅に増やす形で、EC規則を改定する方針であることを発表しました。

背景の一つには、消費者からのEC取引に関連する苦情が依然として多いことが挙げられます[5]。消費者ヘルプライン(National Consumer Helpline)に寄せられる毎月平均7万件の苦情のうち、EC関連の苦情が22%を占めており、これは苦情件数上位5分野の中で最も高い割合となっています(銀行業8.7%、電気通信7.7%、電子製品4.7%、耐久消費財3.7%)。

EC関連苦情の総数自体も年々増加しており、2020年7月にEC規則が施行されたにもかかわらず、2020年4月から2021年2月までの11カ月間のEC関連苦情件数は18.8万件と、EC規則施行前の前年度15.4万件からさらに22%増えていることになります[6]

また、AmazonやFlipkartのような外国資本の大手マーケットプレイス型EC事業者の台頭により、インド国内の中小企業やKirana(家族経営等の零細商店)が廃業に追い込まれているとして、小売業界団体である全インド商人連盟(Confederation of All India Traders )等複数の業界団体が政府に対し働きかけを行っていることも背景にあると言えます[7]

これらの企業は、自社ECサイト上での大幅な値引き(Deep discounting)や、検索結果の上位に優先的出品者(preferred sellers)が表示されるよう検索バイアスのある結果表示(Preferential Listing)、特定のブランド等との独占的な契約(Exclusive Tie-ups)などの不正行為により、非優先的出品者に不利益を与えている疑いがあるとして、インド競争委員会(CCI)が調査を命じています[8]

今般の改正規則案には、以下が含まれます。

  • 法令遵守・苦情処理責任者の設置(規則案5条5項(a)~(c))

苦情処理に関する現行の「苦情処理責任者(Grievance Officer)」を強化した体制が義務付けられます。すなわち、以下の要件でポストを任命することとなります。

  • 法令遵守責任者(Chief Compliance Officer)

法令遵守の責任者。EC事業者の管理職または上級従業員(managerial personnel or such other senior employee)から任命する必要があり、インド居住者かつインド国籍の者であることが要件。

  • 統括連絡担当者(Nodal Contact Person)

法執行機関と役員との24時間365日の調整役(24×7 coordination with law enforcement agencies and officers)。法令遵守責任者との兼務は不可。EC事業者の従業員(employee)であり、インド居住者かつインド国籍の者であることが要件。

  • 常駐苦情処理担当者(Resident Grievance Officer)

EC事業者の従業員(employee)であり、インド居住者かつインド国籍の者であることが要件。

 

  • 輸入品販売における規制追加(規則案5条7項)

輸入品・サービスをECサイト上で販売する場合は、フィルター機能による原産国検索システム提供、購入時の原産国通知、国産品の代替品提案、国内商品・出品者に差別的でない公正な商品ランキングの提供等が、EC事業者に義務付けられています。

 

  • EC事業者による不正な大規模値下げセール(Flash Sale)の禁止(規則案5条16項)

フラッシュセールとは、特定の商品・サービスについて、大幅な値下げや魅力的なオファー等で一定期間行うセールであり、EC事業者の管理下にある特定の出品者のみ(only a specified seller or group of sellers managed by such entity)が当該セールで販売できるよう組織されたものを指します。

規則案では、EC事業者が技術的手段により出品者をコントロールし、一般の出品者の業務を不正に妨害するようなセールの開催を禁止しています。出品者自身によるフラッシュセールは規制対象外であると解されます。

 

  • マーケットプレイス型EC事業者のフォールバック責任(Fall back liability)の追加(規則案6条9項)

規則案では、出品者の過失・不作為等により、消費者が注文した商品・サービスを提供できずに、消費者に損失を与えた場合、(出品者ではなく)マーケットプレイス型EC事業者がその責任、そのわち「フォールバック責任」を負うとし、当該事業者の責任範囲を実質的に増加する規定を追加しています。

 

  • 関連企業の優遇の規制(規則案6条6項)

マーケットプレイス型EC事業者が、自社の関連当事者や資本関係等のある関連企業(related parties and associated enterprises)に対する優先的な行為を禁止しています。具体的には、自社のECプラットフォームで得た情報を、関連企業等の不当な利益のために使用しないこと、関連企業等をECサイト上の出品者として登録しないこと、EC事業者が自ら行えないことを関連企業等に代行させないこと、とされています。

 

  1. 企業への影響

改正規則案は、15日間の意見公募を予定し7月6日を締切としていましたが、改正後の影響が大きいことなどから、業界関係者による期限延長を求め、7月21日まで意見受付が延長されました[9]

 

また、改正規則案の意見公募と同時期に、EC業界に対する監督強化の一環として、インド政府は、「電子商取引のためのオープンネットワーク(Open Network for Digital Commerce、「ONDC)」を立ち上げ、諮問委員会(advisory council)を設置しました[10]。ONDCは、独占行為の起こりにくい公平なネットワークを整備することを目指し、諮問委員会はその設計と導入促進に必要な施策について助言する役割をもちます。諮問委員会のメンバーは9名で、以下の組織から幹部が1名ずつ参加しており、EC業界大手の関係者は含まれません。

  • 国家保健機関(National Health Authority)
  • IT大手Infosys
  • インド品質評議会(Quality Council of India)
  • ベンチャーキャピタル大手Avaana Capital
  • デジタル・インディア・ファウンデーション
  • インド決済公社(National Payments Corporation of India)
  • 中央証券保管機関(National Securities Depository Limited)
  • 全インド商業連盟(The Confederation of All India Traders)
  • インド小売業協会(Retailers Association of India)

このように、EC業界に対する規制は、特に外資大手企業に対し厳格化する方針であると言えます。

しかしながら、規則案が草案の内容でそのまま施行された場合は、日系企業を含むEC事業者すべてに適用されることとなり、規制を遵守した社内体制の整備やECシステムの再設計といった対策を講じる必要が生じると予想されます。

本ニュースレター執筆時点では改正規則案は意見公募中であり、どのような改正がなされるのか、今後も注視し、最新情報を提供いたします。

[1] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/CP%20Act%202019.pdf

[2] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/E%20commerce%20rules.pdf

[3] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/Consumer%20Protection%20%28E-Commerce%29%20%28Amendment%29%20Rules%2C%202021.pdf

[4] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/file-uploads/latestnews/Comments_eCommerce_Rules2020.pdf

[5] https://www.pib.gov.in/PressReleseDetailm.aspx?PRID=1704938

[6] https://static.pib.gov.in/WriteReadData/specificdocs/documents/2021/mar/doc202131541.pdf

[7] https://www.financialexpress.com/industry/sme/karnataka-hc-to-hear-petitions-from-amazon-flipkart-cci-in-jan-against-alleged-marketplace-malpractices/2146766/lite/
https://www.hindustantimes.com/business/traders-body-says-agitational-approach-needed-if-mncs-are-not-reined-in-101623762226295.html
 等

[8] カルナータカ高等裁判所は2021年6月11日の判決で、AmazonおよびFlpkartによる、CCI調査に対する異議申立てを却下し、CCIによる調査実施を支持しています。http://karnatakajudiciary.kar.nic.in/judgements/WP_3363_2020_connected_matters.pdf

[9] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/file-uploads/latestnews/CommentseCommerce_Rules2020_upto_21July2021.pdf

[10] https://dipp.gov.in/sites/default/files/pressRelease_ONDC_06July2021.pdf

以 上

 

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年07月13日(火)4:06 PM

ナイジェリアの投資規制と法制度について報告いたします。

ナイジェリアの投資規制と法制度について

 

 

 

ナイジェリアの投資規制と法制度について


                                    2021年7月15日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

0 はじめに

コロナ渦においても、多くの日系企業様より海外におけるインフラプロジェクトのご相談を継続的に受けており、アジア地域を越えてアフリカ地域へのご相談が増えております。また、アジア地域(主にインド)からアフリカ地域へのご相談も徐々に増加しており、インフラ輸出リーガルプラクティスチームと南アジアプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行うことに致しました。今後、アジア地域からアフリカ地域に関心のある日系企業や投資家様向けに継続的にアフリカ地域のニュースレターを発行して参ります。今回は、ナイジュリアに焦点をあてて、各種投資規制と法制度を紹介して参ります。

 

<ナイジュリアの概要>

国名

ナイジェリア連邦共和国

首都

アブジャ(Abuja)

ISO国名コード

NGA

面積

92.4万平方キロメートル

人口

2億96万人(2019年)[1]

言語

英語(公用語)、各民族語(ハウサ語、ヨルバ語、イボ語等)

民族

ハウサ、ヨルバ、イボ等

宗教

イスラム教(北部)、キリスト教(南東部)、伝統宗教(全土)

政治体制

政体:連邦共和制(大統領制)

国家元首:ムハンマド・ブハリ(H. E. Mr. Muhammadu Buhari)大統領(2019年5月就任、任期4年)

政府

(1)首相 なし

(2)外相 ジオフリー・オンエアマ外務大臣

議会:二院制(国民議会、上院)

通貨

ナイラ(Naira, NGN)

 

1. 地理

ナイジェリアは約92.4万平方キロメートル(日本の2.5倍)の国土面積を有し、ベナン、ニジェール、チャド、カメルーンと国境を接し、南は大西洋のギニア湾に面する西アフリカの国である。南部の熱帯雨林、中央部の広大なサバンナ、北部の乾燥したステップ、東部の高原地帯と幅広い気候帯に位置し、高い農業ポテンシャルを有すると言われる。また、後述のとおりアフリカ一の産油国でもある。

歴史的には、英国保護領であったナイジェリア北部と南部が1914年に合併してできた国土を継承しており、現在は36の州および連邦首都地区(FCT)から構成されている。

首都は、1991年にラゴスから遷都されており、現在のアブジャは1970年代から計画都市として整備が行われた。アブジャは地理的にナイジェリア中央に位置し、政治の中心であり政府組織や多くの大使館がある一方、ラゴスはナイジェリア南西端のベニン湾岸に位置し、工業・商業・文化の中心地であり、経済特区もラゴスに集中している[2]。もっとも、ラゴス・アブジャ間の国内線は通常時であれば1日20便前後の運行がある。

 

2.     人口

ナイジェリアの人口は2億人を超え、アフリカでは最大、世界でも第7位の人口規模を誇る。生産年齢人口は全人口の60.6%と、豊富な労働力を有する。
南部にはキリスト教徒が、北部にはイスラム教徒が多い。ハウサ人、ヨルバ人、イボ人が三大民族とされる、ナイジェリアには300以上の民族がいると言われ、地域、民族、宗教間の複雑な対立や軋轢による課題を抱えている。人口動態(1,000人)

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2019

95,212

107,948

122,284

138,865

158,503

181,137

200,964

 

3.           国家・政治体制

1960年に英国から独立し、1963年に共和制に移行したナイジェリアの内政は、頻発する軍事クーデター(1993年までに7回)やビアフラ内戦(Biafran War、1967~1970年。イボ人を主体とした分離独立宣言を発端とし、石油利権等もからみ国際社会が干渉することとなった内戦)により、不安定な政情が続いた。
1999年の大統領選挙でオバサンジョ元国家元首(国民民主党PDP候補)が就任し、文民政府を発足、民政への移行を果たした。2003年の大統領選挙でも再立候補しており、再選されている。
なお、2期目立候補の際、それまで制憲議会で検討されていた大統領の「地域輪番制」に関しても議論がなされたが、現職大統領の再選を禁止する法規制がなかったため、連続2期目の大統領職に就任した。
この間、国民融和や国軍の脱政治化など政治・経済改革を推進したものの、反政府組織による武装闘争の頻発等、依然として治安は不安定な状態が続いていた。スンニ派過激組織ボコ・ハラムの活動が本格化したのもこの時期である。

2015年の大統領選では、最大野党であった全進歩会議(APC)へと政権交代が起こり、ブハリ大統領が就任、2019年に再選している。ボコ・ハラムやIS系のテロ組織対策を含む治安対策、汚職対策、石油依存からの経済多角化等の経済対策を優先課題として位置付けている。しかしながら、トランスペアレンシー・インターナショナルによる2020年の腐敗認識指数[3]では、ナイジェリアは180か国中149位である。2016年の136位から後退しており、改善に向け課題は多いと言わざるをえず、ビジネス進出においてはリスクを認識した上で必要な対策を充分に講じることが肝要となる。

 

各州の人口と、国家歳入に占める割合は以下のとおり。

 

State

州都

人口(2017年)[4]

国家歳入寄与率(2020年)[5]

Abia

Umuahia

3,714,024

1.1%

Adamawa

Yola

4,230,946

0.6%

Akwa Ibom

Uyo

5,451,278

2.4%

Anambra

Awka

5,506,577

2.1%

Bauchi

Bauchi

6,500,468

1.0%

Bayelsa

Yenagoa

2,268,582

0.9%

Benue

Makurdi

5,716,538

0.8%

Borno

Maiduguri

5,827,153

0.9%

Cross River

Calabar

3,850,352

1.2%

Delta

Asaba

5,635,041

4.6%

Ebonyi

Abakaliki

2,869,320

1.0%

Edo

Benin

4,220,455

2.1%

Ekiti

Ado-Ekiti

3,255,436

0.7%

Enugu

Enugu

4,391,700

1.8%

Gombe

Gombe

3,240,675

0.7%

Imo

Owerri

5,381,708

1.3%

Jigawa

Dutse

5,804,169

0.7%

Kaduna

Kaduna

8,216,037

3.9%

Kano

Kano

13,007,402

2.4%

Katsina

Katsina

7,796,844

0.9%

Kebbi

Birnin Kebbi

4,419,195

1.1%

Kogi

Lokoja

4,453,797

1.3%

Kwara

Ilorin

3,178,837

1.5%

Lagos

Ikeja

12,487,836

32.1%

Nasarawa

Lafia

2,512,286

1.0%

Niger

Minna

5,524,931

0.8%

Ogun

Abeokuta

5,189,990

3.9%

Ondo

Akure

4, 651, 129

1.9%

Osun

Osogbo

4,682,057

1.5%

Oyo

Ibadan

7,796,670

2.9%

Plateau

Jos

4,185,428

1.5%

Rivers

Port Harcourt

7,262,756

9.0%

Sokoto

Sokoto

4,976,087

0.9%

Taraba

Jalingo

3,054,208

0.6%

Yobe

Damaturu

3,274,478

0.6%

Zamfara

Gusau

4,492,846

1.4%

Federal Capital Territory

Abuja

3,421,848

7.0%

 

4.           法制度

ナイジェリアの法制度は、植民地時代の影響による英国法、ナイジェリアの立法府が制定した法律、慣習法(Customary Law)、イスラム法(Sharia、シャリーア法)で構成される。1999年ナイジェリア憲法が最高法規である。

司法機関の最上位はナイジェリア最高裁判所であり、下位裁判所として、控訴裁判所(Court of Appeal)、高等裁判所、治安判事を含む第一審裁判所がある。

なお、国際仲裁に関しては、後述するNIPC法により、紛争解決手続きのために国際仲裁機関を利用することができると定められている(同法26条)。

また、ナイジェリアは投資紛争解決国際センター(ICSID)条約の批准国であるため、紛争解決の際に同センターでの仲裁手続きを行った場合は、同センターの仲裁判断が、ナイジェリア最高裁判所の判決と同等の効力を持ち、裁判所への不服申立はできないと定められている。

また、憲法により、シャリーア法控訴裁判所(a Sharia Court of Appeal)または慣習法控訴裁判所(Customary Court of Appeal)を各州が必要に応じ設置できると規定されている(275条、280条)。

 

ビジネスに関連する主要な法規制には以下が挙げられる。

  • 2020年会社及び関連事項に関する法律(Companies and Allied Matters Act, CAMA、以下「会社法」)[6]
  • ナイジェリア投資促進委員会法(Nigerian Investment Promotion Commission Act, NIPC)法[7]
  • 外国人土地取得法(Acquisition of Lands by Aliens Law)[8]
  • 法人所得税法 (Companies Income Tax Act)

 

中でも、ナイジェリアでのビジネス実施において必須となる法人設立について規定する会社法は、2020年に30年ぶりに改正されており、外国投資の項で後述するとおり、ナイジェリアへのビジネス進出や法人の運営を容易にする方針で改定がなされている。

 

5.           通貨・経済状況

通貨はナイラ(Naira)、1USドル=409.67(2021年6月現在)[9]。
ナイジェリアの2019年のGDPは約4,481億ドルとアフリカ最大であり、サブサハラアフリカ全体のGDP(1.8兆ドル)[10]の25%を占める経済規模を有する。ただし、人口も最大であるため、1人当たりGDPは2019年に2,230ドルであり、いまだ世界銀行の低中所得国(Lower middle income)に分類されている。(なお、アフリカ第2の経済大国(2019年の名目GDP約3,500憶ドル)南アフリカの1人当たりGDPは6,000ドル前後で、高中所得国に分類されている。)

また、ナイジェリアは、2019年にアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定に署名している。AfCFTAは、アフリカ域内での貿易活性化等を目的とし、AfCFTA下では、センシティブ品目など一部例外を除き、加盟国間での物品、サービス、投資に対する関税が段階的に撤廃され、貿易ルールも共通化される。コロナ禍により運用開始が延期されていたが、2021年1月から開始された。ナイジェリアで製造や販売を行う場合は、アフリカ域内で原材料等を安価に調達することや、域内で市場を拡大できる可能性が大きくなる。

 

主な経済指標と推移は以下のとおり。

 

指標

2015

2016

2017

2018

2019

名目GDP(100万USドル)[11]

 486,803

 404,650

 375,746

 397,190

 448,120

1人当たりGDP(USドル)[12]

 2,687

 2,176

 1,969

 2,028

 2,230

GDP成長率[13]

2.7%

-1.6%

0.8%

1.9%

2.2%

 

6.           産業

アフリカ最大の石油生産国であり、主要産業は農業、情報通信サービス(Telecommunications & Information Services)原油・天然ガス。そのうち、農業がGDPの4分の1を占め、原油は7%前後である。GDPの11%を占める情報通信サービス産業は近年著しく成長しており、2020年には14.7%の伸びを記録している[14]。他方、総輸出額の約7割が原油であり[15]、外貨獲得手段の多角化は課題である。

 

主な産業

(詳細分類から主な産業を抽出)

名目GDP

2020年、ナイラ)

実質GDP成長率(2020年)

GDP寄与率

農林水産業

37,241,609

2.2%

24.4%

卸・小売り

21,106,384

△8.5%

13.9%

製造業

19,539,550

△2.8%

12.8%

情報通信サービス

16,808,637

12.9%

11.0%

建設

11,639,482

△7.5%

7.6%

鉱業(原油含む)

10,851,766

△8.5%

7.1%

不動産

8,678,134

△9.2&

5.7%

金融・保険

4,737,826

9.4%

3.1%

全体

152,324,071

△1.9%

100%

 

7.           外国投資

ナイジェリアには、2019年時点で47社の日系企業が拠点を設けている[16]。世界銀行の「Doing Business 2020」[17]では世界190カ国中131位、サブサハラアフリカ48カ国中では17位であり、ビジネス環境が整っているとは言い難い。しかしながら、2019年146位から順位を上げており、特に会社設立手続きに要する時間の短縮、オンラインプラットフォームの改善、建設許可の取得手続きの簡素化といった取り組みがなされている[18]。また、2020年の会社法改正により、外国投資家にとってビジネス進出の環境は徐々に改善されることが望まれる。

 

  • 進出形態

ナイジェリアの会社法上、ナイジェリア国内での事業を企図する外国企業(every foreign company having the intention of carrying on business in Nigeria)は、特定の国家プロジェクト実施等の場合を除き、必ずナイジェリア内国法人を設立する必要がある(法78条1項)。当該法人が設立されない限り、事業を行うこと、事業所(a place of business)を置くこと、(法人設立関連の文書受領目的を除く)手続きや郵送等のための住所を持つことは認められない。

そのため、本社のある外国籍のまま、ナイジェリアに「支店」や「駐在員事務所」を置くといった選択肢はなく、すべての企業はまず法人を設立することとなる。

同時に、会社法の定めを遵守し、ナイジェリア現地企業同様の法人運営が求められる。

法人の登録は商事委員会(Corporate Affairs Commission, CAC)に対し行う。

 

会社の形態は以下の6種類が規定されている。

 

  • 有限責任会社(Company Limited by Shares:Ltd)
  • 有限責任保証会社(Company Limited by Guarantee:Ltd/Gte)
  • 無限責任会社(Unlimited Liability Company)
  • パートナーシップ(Partnership)
  • 個人事業/商号(Business Names)
  • インコーポレーテッド・トラスティ(Incorporated Trustee)

 

なお、①、②、③は、非公開(Private)公開(Public)のいずれの形態もとることができる。

非公開会社と公開会社の主な要件は以下のとおり。

 

 

非公開会社

公開会社

発起人(株主)の人数

1名以上(法18条2項)

※2020年の改正により最低人数が2名から1名に緩和

2名以上(法18条1項)

株主人数の上限

50名未満(22条3項)

上限なし

株式の譲渡・売却

制限あり(22条2項)

以下は認められない。

  (i)   全株主の同意なく、会社資産の過半数を売却すること

 (ii)   他の株主に対する株式の買取の提案をせずに、第三者へ株式を売却すること

(iii)   第三者への株式の過半数を売却すること(株式を買い取る者が既存株主の持ち分を全て同じ条件で買い取ると申し出た場合を除く)

制限なし

最低株式資本額( amount of the

minimum issued share capital)(法27条2項(a))

10万ナイラ以上

※なお、2020年の改正により従来の「授権資本( authorized share capital)」[19]最低額の規制は廃止された。

※ただし、外国人割当て(Expatriate Quota)取得の際に株式資本1,000万ナイラが必要となる

200万ナイラ以上

※授権資本最低額の規制も左記同様に廃止

※左記同様

取締役(271条1項)

2名以上

(小規模会社は1名以上)

2名以上

ただし、3名以上の独立取締役の任命が必要(法275条)

監査役(Auditor)(法401条1項)

必須(1名以上)

※小規模会社は、年次会計監査が免除の特例あり(法402条)

必須(1名以上)

秘書役(Secretary)(法330条1項)

必須(1名)

※小規模会社は免除の特例あり

必須(1名)

株主総会の開催場所(法240条)

テレビ会議等の電子的会議開催も可能(同条2項)

※2020年の改正により容認

ナイジェリア国内での物理的開催

株主総会の書面決議(法259条)

可能

不可

 

また、非公開会社のうち、以下の条件を満たす会社は、「小規模会社(Small Company)」と定義され、コンプライアンス要件が緩和される(法394条)。ただし、株主が全員ナイジェリア人である必要があるため、活用する日系企業は限定的となる。

 

小規模会社の適格要件

ü  非公開会社であること

ü  売上高が1億2,000万ナイラ以下であること

ü  純資産が6,000万ナイラ以下であること

ü  株主に外国人(alien)がいないこと

ü  株主に政府系機関の任命者がいないこと

ü  取締役が株式の過半数を保有していること

 

小規模会社に対するコンプライアンス要件の緩和

ü  取締役の人数の下限を1名に緩和(法271条1項)

ü  年次株主総会開催の免除(法237条1項)

ü  秘書役任命義務の免除(法330条1項)

ü  少ない開示項目での財務諸表(modified financial statements)の提出(法393条1項)

ü  会計監査の免除(法402条1項)

 

会社の各形態の概要は以下の通り。

 

  • 有限責任会社(法21条1項(a)、27条1項(f)等)

株主が負担する債務はその保有株式のうち払込み前の資本に限られる形態。非公開の有限責任株式会社が、外国投資家に最も利用される。

 

  • 有限責任保証会社(法21条1項(b)、26条等)

主に非営利組織で利用される形態。会社の収入および財産が会社の株主に支払われたり、譲渡されたりせず、事業推進のためにのみ使用される場合は、有限責任会社ではなく、有限責任保証会社として登録する。

 

  • 無限責任会社(法21条1項(c)、27条1項(f)等)

株主が負担する債務が無制限である形態。無限責任会社の場合は、財務諸表を当局に提出する義務がなく(法388条4項)、また、公告する必要がない(398条)。

 

  • パートナーシップ(法746条~810条)

2020年の改正で導入された形態であり、Limited Liability Partnership(LLP)およびLimited Partnership(LP)の2種類がある。パートナーシップの形態は、これまでラゴス州でのみ登録が認められていたものの、連邦法やその他の州法の下では独立した組織体として見なされていなかったため、この改正により外国投資家による参入に際し、より柔軟な選択肢が増えたと言える。

LLPは、2名以上のパートナーにより組織体として登録ができる(法748条1項)。パートナーの国籍要件は明言されておらず、最低1名がナイジェリア居住者であればよいと規定されている(法749条1項)。

LPは、パートナー数が20名以下に限定され(法795条2項)、会社の全債務に対し責任を負う「ジェネラル・パートナー」を最低1名、その他の「リミテッド・パートナー」を最低1名置く必要がある(同条3項)。

 

  • 個人事業/商号(法814条)

個人(individual)であっても、個人事業の商号として登録することができる。商号は一人または複数の個人による保有が可能であり、最低資本金の定めはない。

 

  • インコーポレーテッド・トラスティ(法823条)

文化・宗教・教育・慈善活動等の目的で設立する団体や協会等の組織に活用される形態。2名以上の管財人(Trustee)を任命する。

 

なお、上記以外にも2020年の改正では以下のとおり変更がなされており、これから新規投資を検討する投資家にとっても、既に法人を設立している投資家にとっても、参入や経営上のメリットの大きい改正となったと言える。

 

  • 社印(Common Seal)の作成義務の撤廃(法98条)
  • 認証(authentication)が必要な文書への電子署名(electronic signature)の認容(法101条)
  • オンラインでの譲渡証書による株式譲渡(electronic instrument of transfer)の認容(法175条1項)
  • 登記当局に登録する書類(Any document required to be filed with the Commission for registration)のオンライン提出の認容(法860条)

 

  • 投資規制

会社法に基づき設立された法人は、ナイジェリア投資促進委員会法(Nigerian Investment Promotion Commission Act、以下「NIPC法」)[20]の規定により、100%外国資本であっても、ほとんどの分野においてナイジェリアの会社と同様にビジネスを行うことができる(NIPC法17条)。ただし、NIPC法において、以下の業種は、外国資本の有無に関わらず「ネガティブリスト」として投資が禁止される(法31条)。

なお、CACに加え、NIPCへも登録が必要である[21]

 

投資が一律禁止される業種

 (a)   武器・弾薬等の製造業

 (b)   麻薬および向精神薬の製造・販売業

 (c)   軍事・準軍事的な衣類および携行品の製造(警察、税関、出入国管理、刑務所業務に関する衣類および携行品を含む)

 (d)   その他連邦評議会(The Executive Council of The Federation)が随時決定する業種

 

出資比率については、NIPC法は制限を設けていないものの、分野ごとの規制により、外資の出資規制が定められている。

 

外国人による投資が認められない業種

 (a)   民間警備会社(Private Guard Companies)

 (b)   国内海上輸送業(Domestic Coastal Carriage Transport)

 (c)   法律サービス業(Legal Services)

 

外国人による出資比率が規制される主な業種[22]

石油・ガス

入札において、ナイジェリア人が51%以上の株式を保有する会社が優先される

技術コンサルティング

外資比率は45%まで

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外資比率は25%まで

国内海上輸送サービス(Domestic Coastal Carriage Services)

外資比率は40%まで(100%の現地資本が免除されたナイジェリア輸送会社のみ)

放送(Broadcasting)

外資比率は49%まで

 

  • 外国人労働許可

ナイジェリアにおいて設立した法人で外国人を雇用(日本本社からの駐在員派遣等)する場合は、外国人雇用枠を確保する必要がある。これは「Expatriate Quota(外国人割当)」と呼ばれ、内務省(Ministry of Interior)に対し発給を申請する。

ナイジェリアは政策としてナイジェリア人の雇用を奨励しており、そのため、内務省は、外国人割当の申請を受けても、当該ポジションに就くことができるナイジェリア人が存在すると判断した場合、外国人雇用を承認しないという絶対的な裁量権を有する。承認されない場合、当該ポジションに現地のスタッフを雇用することになるため、申請にあたっては、当該ポジションが外国人である絶対的な必要性を示す必要がある。

また、外国人割当を取得するために、1,000万ナイラ(約270万円)の最低資本金が必要となることが一般的である。これは、会社法27条の定める最低株式資本額(非公開会社であれば10万ナイラ)とは別であり、外国人雇用枠1人分につき1,000万ナイラ、4人分の場合は約2,000万ナイラなどと求められる。ただし、資本額に対する雇用枠の数についても、内務省の裁量により判断されることとなる。また、産業分野によってはさらに要件が厳しくなる場合もあり、例えば石油・ガス産業は、下級・中級幹部職(junior and intermediate cadres)にはナイジェリア人のみの雇用が義務付けられ、管理職のうち5%のみに外国人の雇用が認められる。

 

  • 優遇制度

ナイジェリアには、外資系企業のみに対する租税減免等の優遇措置はないものの、国の戦略的分野や指定地域への投資を促進するため、内国企業と同じ条件のもと、各種優遇措置の枠組みが設けられている。

主な制度は以下のとおり。

 

  • パイオニア・ステータス優遇制度

産業開発(所得税軽減)法(Industrial Development (Income Tax Relief) Act)に基づき、パイオニア産業・商品として認定された会社は、3年間の法人所得税免税(最長2年間延長可能)を受けられる[23]。この「パイオニア・ステータス・インセンティブ」制度は、99もの業種[24]が対象産業として指定されており、幅広い企業による活用が期待できる。

パイオニア産業は、A)農業、B)鉱業、C)製造、D)電力・ガス、E)廃棄物管理、F)建設、G)e-コマース、H)情報・通信、I)写真撮影、J)金融、K)管理サービスに分類され、各産業に対象となる業種(合計で99)と商品がリストされている。

 

  • 利益の非課税措置

法人所得税法 (Companies Income Tax Act、以下「CITA」)は、利益(profits)が非課税となる要件を定めている(23 条1項)。非課税となる主な利益は以下のとおり。

  • 製造業の小規模会社が操業開始後5年間に受け取る配当金
  • 輸出による収入がナイジェリアに送還され、原材料、工場、設備、予備部品の購入にのみ使用される場合の、輸出品に関する会社の利益
  • 輸出用製品の製造に必要なインプットのみを供給している会社の利益
  • 輸出加工区または自由貿易区の中で設立された会社の利益

 

  • 研究開発費の控除

CITAに基づき、商業化を目的とした研究開発事業費に対し、20%の投資税控除が認められる(26条)。

 

  • 農村地域への投資に対する優遇措置

CITAに基づき、会社が取引や事業を目的として、地方において電気、水道、舗装道路、電話等の設備投資行った場合、当該支出額の一定割合が「農村投資手当(Rural investment allowance)」として認められる(同法34条)。

当該措置の適用対象となる設備投資は、公共施設・設備から20km以上離れた場所であることが条件となる。

半径20㎞以内に以下の設備がない地域で、上記設備投資を行った場合の控除率は以下のとおり。

なお、控除は、適用となる設備投資が完了した年の利益に対して行わる。

 

  • 電気なし: 50%
  • 水道なし: 30%
  • 舗装道路なし: 15%
  • 電話なし: 5%
  • いずれの設備もなし: 100%

 

  • 産業分野別の優遇措置

農業・農業関連、鉱物資源、製造業、観光・ホスピタリティ、石油・ガスの分野に関しては、セクター個別の各種優遇制度が存在している。

例えば観光・ホスピタリティ産業では、5年以内に観光関連施設の建設・拡張に投資されることを条件に、交換可能通貨による所得の25%が課税免除となる(CITA37条)。

また、石油・ガス産業では、石油会社が支払うロイヤルティに対し、原油等の産出地域と価格に応じ二段階でのロイヤルティの率を規定している[25]。すなわち、ベースライン・ロイヤルティとして、水深200メートル以上での産出は10%のロイヤルティが適用され、フロンティアおよび内陸部での産出は軽減税率として7.5%が適用となる。ベースラインに加え、1バレルあたりの価格に基づき、以下のとおりロイヤルティが適用される。

 

20ドル未満:0%

20~60ドル:2.5%

61~100ドル:4%

101~150ドル:8%

151ドル以上:10%

 

  • 輸出加工区(EPZ)優遇措置

ナイジェリア輸出加工区庁法(Nigerian Export Processing Zones Authority Act、以下「NEPZA法」)に基づき、EPZへの進出企業は、法人所得税・関税等のすべての税金が免除される(8条)。また、輸出のための原材料・設備輸入にかかる関税も免除となる(12条)。さらに、前述の外国人雇用割当についても、EPZ進出企業においては規制適用外となり、必要な雇用許可を申請することで、外国人を雇用することができる(18条1項h、20条)。現在運営されているEPZは10州で25区ほどあり、うち13区がラゴスに設置されている[26]

 

  • 州独自の投資優遇措置

外国投資に関する規制や、為替管理、法人設立等の規制はすべて連邦政府が管轄するが、いくつかの州では、州独自の投資促進機関やユニットを設置し、投資家が州内に投資を行うためワンストップ窓口の提供や、関係機関との連携を行う。

ラゴスでは、The Office of the Sustainable Development Goals & Investment(通称Lagos Global)を設置し、住宅、小売り、ICT、電力、運送、ヘルス、観光、環境の8分野を投資奨励分野と位置付けており、例えば住宅分野では、PPP参加者への法定費用の補助や、土地の権利書のファスト・トラックでの発行といったインセンティブを提供している[27]

[1] 国連世界人口推計2019年 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

[2] ナイジェリア輸出加工区庁 (Nigerian Export Processing Zones Authority) https://www.nepza.gov.ng/index.php/free-zone/active-free-zones

[3] https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/nga

[4] Nigerian Investment Promotion Commission “Book of States 2020” : https://nipc.gov.ng/wp-content/uploads/2021/04/Book-of-States-final.pdf?

[5] ナイジェリア統計局 “Internally Generated Revenue At State Level (Q4 & Full Year 2020)” https://nigerianstat.gov.ng/elibrary

ナイジェリアの2020年度国家歳入約1.3兆ナイラ(約3.5億円)に対する、各州内歳入が占める割合

[6] https://www.cac.gov.ng/wp-content/uploads/2020/12/CAMA-NOTE-BOOK-FULL-VERSION.pdf

[7] https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/234/nigeria-nigerian-investment-promotion-commission-act

[8] http://extwprlegs1.fao.org/docs/pdf/nig150979.pdf

[9] ナイジェリア中央銀行 https://www.cbn.gov.ng/rates/ExchRateByCurrency.asp

[10] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZG&most_recent_value_desc=true

[11] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=NG

[12] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=NG

[13] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=NG

[14] ナイジェリア国家統計局 Nigerian Gross Domestic Product Report (Q1 2021)

[15] ナイジェリア国家統計局 Foreign Trade in Goods Statistics (Q1 2021)

[16] 外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

[17] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[18] 世界銀行 “Doing Business 2020: Nigeria” https://www.doingbusiness.org/en/data/exploreeconomies/nigeria

[19] 「authorised share capital(授権資本)」は、定款に記載された、会社が発行することのできる株式の総数であり、廃止された1990年会社法では、その最低額が、非公開会社は1万ナイラ、公開会社は50万ナイラと規定されていた(旧法27条2項a)。授権資本のうち、会社の設立時には25%以上を発行する必要があった(同項b)。言い換えると、会社は将来の割り当てのため、未発行の株式を保持することができていた。なお、会社設立以降は、取締役会の決議により(株主総会の決議を経ずに)授権資本の範囲で株式を発行することができた(旧法117条)。

[20] https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/234/nigeria-nigerian-investment-promotion-commission-act

[21] NIPCワンストップ投資センターにおいて、会社設立に関連する手続きを行える。https://www.nipc.gov.ng/

[22] 世界銀行 “2019 Investment Policy and Regulatory Review: Nigeria” https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/33596/Nigeria-2019-Investment-Policy-and-Regulatory-Review.pdf?sequence=1&isAllowed=y

[23] https://www.nipc.gov.ng/pioneer-status-incentive/

[24] 2017年8月付で通知されたパイオニア産業リストhttps://www.nipc.gov.ng/ViewerJS/#../wp-content/uploads/2019/01/Gazetted-List-of-Pioneer-Industries-and-Products.pdf

[25] ロイヤルティの率は、以前は産出する海域の水深に応じて設定されていた(オンショア:20%、水深1,000メートル超:0%等)が、2019年の法改正(深海・内陸沿岸部生産分与契約法(Deep Offshore and Inland Basin Production Sharing Contract (Amendment) Act)により、価格と生産量に基づく二段階方式のロイヤルティ制度に変わっている。

[26] https://www.nepza.gov.ng/index.php/free-zone/active-free-zones

[27] https://lagosglobal.org/incentives

以上 

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