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2021年10月19日(火)2:32 PM

カンボジアへの渡航条件の緩和について報告いたします。

渡航条件の緩和について

 

 

 

カンボジアへの渡航条件の緩和について

 

2021年10月18日

One Asia Lawyers カンボジア事務所

 

 カンボジア保健省は10月16日付けで、カンボジアへの渡航者の New Normal における旅行条件、カンボジアでの健康ルール及び隔離の実施に関する通達を発出しました。

 同通達では、以下3つのカテゴリーが定められています。

1.カンボジア王国政府の公式招待者及び海外ミッションから帰国するカンボジア王国政府高等官:特別な取扱い

2.カンボジア人または外国人投資家、技術者、外交官、公式協力プロジェクトの担当者及び海外ミッションから帰国するカンボジア王国政府公務員(家族等を含む):隔離期間3日間

3.一般カンボジア人または外国人旅行者:隔離期間7日間

 上記はいずれもワクチン接種済みであることが条件で、ワクチン接種が済んでいない渡航者については14日間の隔離の対象となります。

 本通達の内容は10月18日以降に施行され、カンボジアに同日より前に到着した渡航者についても、ワクチン接種済みであり、書類が揃っておりかつ本通達記載の条件を満たす場合には、同通達の内容が適用される旨定められています。

●外国人投資家、技術者及びそれら家族に関する渡航条件

※登録され、税金を適切に支払っているカンボジア法人からの保証または招待状を保持していること(保証または招待状はCamDXにて作成)

※保証証明書・招待証明書:有効期限は30日、渡航前の取得が必要

※会社の従業員である場合、ワークパーミットの申請が必要

※同通達内添付1記載のホテルのどれかの予約関係書類または600ドルの預託

 渡航者は到着時、同通達に記載されているすべての書類等を提出する必要があるため注意が必要です。

                                                以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
nobuaki.murakami@oneasia.legal (村上暢昭)

2021年04月26日(月)11:58 AM

カンボジアにおける新型コロナウイルス感染拡大対策の状況についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

新型コロナウイルス感染拡大対策について

 

カンボジアにおける新型コロナウイルス感染拡大対策の状況について

2021年4月26日
One Asia Lawyers カンボジア事務所

1.ロックダウン
4月26日午前9時現在、ロックダウンが実施されている地域
・プノンペン都及びカンダール州タクマウ市(4月28日まで)
・シェムリアップ州ドーンコム市、サラーコムラアク市、シェムリアップ市
・シハヌークビル州シハヌークビル市(5月6日まで)
・バンテイ・ミンチェイ州ポイペト市内ポイペト地区及びプサーカンダール地区の一部(5月9日まで)
・コンポンチャム州Batheay区、Kang Meas区、Srey Santhor区(解除の通知があるまで)

※政府による都・州を越える移動の禁止:4月28日まで(4月25日付政府決定に基づき、同日付けで解除、もっとも、その他のロックダウン規制に基づく移動規制は有効であるため、注意を要する)

★プノンペン・タクマウにおけるロックダウンの内容(政府決定第49号及び第50号)
● 外出の禁止
<例外>
・禁止または制限されていない企業活動のための通勤
・ロックダウン対象区域から空港への移動
・食料や日用品の買い物(ただし、各世帯から2人まで、週に3回を超えてはならず、居住している市・区内の最短距離の場所で)
・緊急の健康上の理由による医療機関・薬局への移動(管轄当局から許可された場合、区域外への移動も可能、ただし、1案件につき4人を超えてはならない)
・管轄当局に指定された場所における、PCR検査の受検のための移動
・管轄当局の規定に従った、2回目のワクチン接種のための移動(ロックダウン区域内における1回目のワクチン接種については、ロックダウン期間中、一時的に停止)
・公益に資する活動または公的機関によって要請または指定された活動のための移動
・居住する住宅内での個人のスポーツ活動(住居外でのスポーツは認められない)
・外交団、国連機関、国際金融機関の外国人職員の移動(カンボジア人ドライバーの同伴可)
・身分証明書、職業証明書及び情報省発行の移動許可証を所持している報道機関職員の移動
・管轄当局が認める必要かつ急を要する理由による移動
※20時から翌5時までの夜間は、緊急の健康上の理由、物品の運搬、公共の利益に資する業務、営業禁止が免除されている企業・施設等への通勤、管轄当局から許可を得ている場合を除き、上記例外は適用されない

● 企業活動の禁止
<例外>
・食肉処理場を含む、日常生活に不可欠な食品及び食料品を製造する工場、企業、手工芸、製造所
・食料品を扱う秩序立った卸売市場・小売店、テイクアウト販売を行う飲食店、ガソリンスタンド、ガス販売所、その他管轄当局が許可する生活必需品を供給する場所
・ロックダウン地区に貢献する食品や食料を運搬するサービス
・ホテルやゲストハウスの宿泊業(ただし、管轄当局が定める隔離対象ホテルを除き、スタッフ数及び勤務時間を必要最小限とし、スタッフの数は必要最小限かつ2%以内とし、職員の食事及び宿泊は、業務に従事する現場にて行わなければならない)
・消防、電気・水道供給、ゴミ収集サービス等の公務・公共サービスに関する業務
・公的機関及び治安部隊の活動
・出勤するスタッフの数は必要最小限かつ2%以内とし、職員の食事は、業務に従事する現場にて行うとする方針に従ったオンラインで行われる全ての業務
・救急サービス、保健・薬局サービス、郵便・通信、銀行、金融及び管轄当局に認められた日常生活に必要なサービスを供給する企業等(ただし、通常通り運営されている救急サービス、保健・薬局サービスを除き、出勤するスタッフの数は必要最小限かつ2%以内とし、職員の食事は、業務に従事する現場にて行わなければならない)
・管轄当局により許可・調整された、隔離明けの者、病院または治療場所から退院した病人の移送
・国の社会経済分野に必要な物資の運搬サービス
・物資・食料保管庫の管理・保護(ただし、出勤するスタッフの数は許可を受けた必要最小限とし、職員の食事及び宿泊は、業務に従事する現場にて行わなければならない)
・マスク、アルコール、酸素を含む、医薬品及び医療物資を製造する工場、企業、手工芸、製造所
・管轄当局から許可されたその他の必要な企業活動
※例外として認められた業務、企業活動においても、全ての者は、新型コロナ感染拡大防止を目的として、ウイルスの消毒のための衛生対策、検温、マスク着用、ソーシャルディスタンスの確保等の保健措置を実施する義務を有する
※20時から翌5時までの夜間は、医療サービス、ガソリンスタンド、ホテル、その他管轄当局から許可を得ている公共サービスを除き、上記例外は適用されない

● 集会の禁止
<例外>
・同居している家族の中での集まり
・管轄当局の規定に従った葬式の実施
・COVID-19の検査の受検やワクチンの接種等の保健上の措置を実施するための集会
・治安、公共秩序を維持するための、管轄当局等の任務を遂行するための集会
・公益のための、または、管轄当局によって定められたその他の目的のために必要な集会

○ レッドゾーン規制
4月26日午前9時現在、プノンペンでは下記地域がレッドゾーンとして設定されており(その他では、バンテイ・ミンチェイ州でもレッドゾーンが設定されている。)、下記規制が課されている。違反者には罰則が課される旨規定されている。また、同地域に居住している者に対する生活支援に関する規定が定められている。
● ミエンチェイ区
 ・ストゥンミエンチェイ第1町
 ・ストゥンミエンチェイ第2町
 ・ストゥンミエンチェイ第3町
● ポーセンチェイ区チャオムチャウ第1町
● トゥ―ルコーク区ボンサーラーン町第14村、第16村及び第17村
【措置内容】
● 外出規制
居住する住居外でのスポーツ活動を含め、現在の住居からの外出は原則禁止(医療目的等の例外あり)

● 企業活動の禁止
市場、食料品店を含め、レッドゾーン域内の全ての業務活動は原則一時的に停止(公共サービス等の例外あり)

● 通行規制
レッドゾーンへの出入域及び通過の原則禁止(公共目的等の例外あり)

2.労務(労働職業訓練省4月19日付通達)
同通達は、プノンペン及びタクマウにおけるロックダウン期間中の4月初旬の給与等の支払いに関するものであり、趣旨・重要なポイントは以下のとおり。
・ロックダウン期間中労働契約は停止する
(※労働法上、その間の賃金、手当て(※住居・通勤手当は除く。)の支払義務はないものと考えられる。)
・使用者は、ロックダウン期間中、労働者の職位や年功をそのまま保つこと
・4月1日から14日までの給与の支払いが済んでいない場合、使用者はロックダウン終了後に当該給与の支払いを行うこと
・使用者は、ロックダウン期間中、慈悲の心、団結の精神、社会的責任に基づき、労働者に対し、使用者の能力に応じた追加の手当を支払うこと
(※こちらは指導ベースで、法的拘束力はないものと考えられる。)

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

nobuaki.murakami@oneasia.legal (村上 暢昭)

 

2021年01月05日(火)7:17 PM

カンボジア建設法令に関するアップデートについてニュースレターを発行いたしました。

PDF版は以下からご確認ください。

カンボジア建設法令について

 

カンボジア建設法令に関するアップデート

2021年1月5日

One Asia Lawyersカンボジア事務所

2020年12月30日、建設法に関する下記3つの政令が発出されました(クメール語版のみ)。

いずれも重要な政令になりますので、注意が必要です。

・建築許可に関する政令224号

(Sub-Decree on Construction Permit)

・建築検査及び認証手続に関する政令225号

(Sub-Decree on the Conditions and Procedures for Construction Inspection and Certification)

・利用許可証の停止及び取消しの条件並びに手続に関する政令226号

(Sub-Decree on the Conditions and Procedures for Providing Suspension and Revocation of Construction Use Certificates)

詳細につきましては、下記、土地管理都市計画建設省のホームページをご確認ください。

https://l.facebook.com/l.php?u=http%3A%2F%2Fwww.mlmupc.gov.kh%2F%3Fpage%3Ddocument%26menu1%3D262%26ctype%3Darticle%26id%3D262%26lg%3Dkh%26fbclid%3DIwAR2F0v4rPSOnmB3irgY3FaWg90B_27f_3El9XqoY02MucsQm5BWZtLXD0P8&h=AT2gzh64I20YRi-jNtprVMoycAFkmhAmDwBsvCv9ULyOexChwuSQPUKRUufkJdUqPjyiEoD2nSVOWb8c3YelciD8jKx8wCKHTMWG4_8iEHGL5P–axInap6WLLVdPemBiWP8WYuazQ&__tn__=-UK-R&c[0]=AT2TDaHjNGOVyyFjpd0KnS0JvQSTqhOxpGM06s0ccXCjFQ8KBm3FWKDQE_HUPbgClD1bJNhVvkGh5SGKLzW5NpcZDNWJBuSmYkLn6aX_oS6RHD1icrRjDPmhgSNlvOIgaBJNtuNxQECikHLNpO_JfkEy6KlhMbiRmDKhDzisOVlblBajbkDTIaLLAm4uu6_ywgRnv-FC38Q7nfI7VCrDezrPsQ

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

shigeki.yoshida@oneasia.legal

2020年06月19日(金)10:28 AM
6月2日付け労働省通達18号により、2020年度の年功補償の支払いが、2021年まで延期されることとなりました。
その概要について、ご紹介いたします。
 

カンボジアにおける2020年度の年功補償の支払い延期について

 

2020 年度年功補償の支払い延期について

2020年6月10日
One Asia Lawyers カンボジア事務所

 6月2日付け労働省通達 18 号により、2020 年度の年功補償の支払いが、2021 年まで延
期されることとなりました。

 本通達以前に、本年 4 月 7 日付の政府プレスリリースにより、新型コロナウイルスによる
経済状況悪化の救済策として、事業者に対し、2020 年の年功補償支払いの延期を認める旨
の発表されていました。本通達は、基本的にそのプレスリリースを踏襲したものです。
具体的には、下記の 2020 年の年功補償金の支払いについて、2021 年まで延期するもの
とされました。
1.無期労働契約に基づいて縫製・製靴業に従事する労働者に対する 2018 年以前の年功補
償の遡及支払分
2.無期労働契約に基づいて従事する労働者(全産業)に対する 2020 年の年功補償
 ただし、この延期期間中に、労働者の重大な契約違反による解雇または労働者の自主退職
以外の事由によって雇用契約が終了した場合、使用者は当該労働者に対して、上記の年功補償金を支払わなければならないとされています。

 本通達は、支払い時期を延期するのみで、2020 年度の年功補償の発生自体には影響をし
ません。したがって、会計上引当金を計上することは必要となります。また、上記で触れら
れていますが、解雇の場合についてはその時点での支払いの必要があります。
 また、本通達は、2020 年度の年功補償のみに言及しているため、本通達を含む現時点の
法令を前提とすると、2021 年度に 2020 年度と 2021 年度の 2 年分の合計を支払うことにな
ります。

※ 年功補償
 年功補償とは、2018 年の労働法改正により 2019 年から導入された労働者に対する手当
ての一種です。無期労働契約の労働者に対して、雇用継続1年につき、15 日分の賃金など
の相当額を支払う必要があります。支払い時期は、上半期(1 月から 6 月)と下半期(7 月
から 12 月)の年2回です。

 ①2018 年以前の雇用期間を対象とした年功補償と、②2019 年以降の雇用期間を対象とし
た年功補償の二つがあります。このうち①について、縫製・制靴業以外の産業はそもそも支
払い時期が未到来のため(2021 年 12 月期以降)、縫製・制靴業のみを対象に延期するとし
ているものです。

以 上

本記事に関するご照会は以下までお願い致します。
nobuaki.murakami@oneasia.legal
shigeki.yoshida@oneasia.legal

 

 

2020年05月06日(水)10:34 PM
4月17日、カンボジア労働省から、Covid-19により事業への重大な影響を受けている縫製産業・観光産業を対象とし、
労働契約およびNSSFの保険料支払いの停止について、指導45号が発行されました。
その概要について、ご紹介いたします。
 

カンボジアにおける縫製産業と観光産業の労働契約の停止について

 

縫製産業と観光産業の労働契約の停止についての労働省指導45号

2020年4月20日
One Asia Lawyers カンボジア事務所
(JBL Mekong Co., Ltd / Mar & Associates)
日本法弁護士 村上 暢昭、同 吉田 重規

2020年4月17日付け労働省指導45号「Covid-19による重大な影響を受けた縫製産業と観光産業に対する労働契約とNSSFの保険金支払いの停止について」(以下、本指導)が発行されました。同日、発効しています。
これにより、縫製産業と、プノンペン市・シェムリアップ州・シハヌークビル州・ケップ 州、コンポット州所在の観光産業を対象に、労働契約の停止の条件が定められました。縫製産業に対しては、2月28日付け指導14号の条件を事業者に有利に変更するものであり(使用者の手当の支給義務が72USドル/月から30USドル/ 月に減額)、観光産業に対しては、労働契約の停止の新条件を設定するものとなります。
本指導は、対象産業について、労働法71条1項11号に定められている労働契約停止について、具体的な条件などを定めるものとなります。対象産業以外の事業者で、Covid-19の影響により事業の継続に困難があるものについては、同条項に基づき、個別に労働省に認められる条件により、労働契約を停止することとなると思われます。
以下、本指導の概要について、ご紹介いたします。

1. 対象産業
(1) 本指導は、下記の業種のみを対象としたものです。
① 縫製産業(繊維・縫製・履物、旅行用品および鞄の製造工場)
② プノンペン市、シェムリアップ州、シハヌークビル州 、ケップ州、コンポット州所在の観光産業(ホテル、ゲストハウス、レストラン、旅行代理店)

2.労働契約の停止の条件
(1) 停止の事由
原材料不足や、注文量や輸出先の減少など、生産活動や事業の停止につながる特別に困難な状況に直面していることを理由として、労働契約を停止することが条件となります。
労働契約停止一般について、過去の事例では、事業の全部を停止することは条件となっておらず、本件も同様と思われます。
(2) 労働省の承認
労働契約の停止のためには、下記4の手続きに従い、労働省の承認を受けることが必要となります。
労働監督官は、下記手続きに従った申請の受領後、2営業日以内の 午後2時に、事業所で審査および確認を行うとされています。
(3)停止期間
労働契約停止の期間は、最長2カ月とされています。もっとも、実態に応じて、必要があれば、さらに延長されうるとされています。

2.労働契約の停止の効果
(1)使用者による賃金の支払い義務免除、手当の支給
カンボジア労働法では、雇用が継続する限り、使用者は労働者に対して、原則として賃金の全額を支払う必要があります。労働契約の停止が認められた場合、使用者は、その間の賃金の支給義務を免れることができます。
本指導では、使用者は、労働契約の停止期間中、賃金に代わって、下記金額の手当を支払うものとされます。
①縫製産業 30USドル/ 月(7~10日の労働契約停止は10ドル、11~20日の労働契約停止は20ドル、21日~1ヶ月の労働契約停止は30ドル)。
②観光産業 支払い能力に応じた金額
また、NSSFに対する下記の手続をすることで、NSSFに対する保険料の支払い義務も停止されます。
(2)政府による補助金の支給
政府は、労働契約の停止期間中、労働者に対して、ウイング専門銀行を通じて40USドル/ 月の補助金を支給します(7~10日は15ドル、11~20日は30ドル、21日~1ヶ月は40 ドル)。
労働者は、労働契約停止後10日以内に、ウイング専門銀行から補助金の金額についてのメッセージを受けるとされています。そして、最寄りのウイング専門銀行の代理店に、クメール ID カードと電話番号をメッセージとともに提出することで、補助金を受領することができます。
メッセージ受領後 10 日以内に労働者が補助金を受領しなかった場合、放棄したものとみなされています。
なお、補助金の条件として指導 14 号に定められていた研修への登録義務は、撤廃されています。


3. 労働契約の停止の手続き
労働省は、本年3月23日付け通知9号により、全事業者に対して、同月26日までに、労働者の電話番号を含む全労働者の名簿を提出することを要請しておりました。これに対応した事業者と、対応していない事業者で、下記のとおり手続きが分かれています。
(1) 名簿未提出の事業者
以下の手続きが定められています。
① 別紙1および2の様式に従い、労働省の所管部署に対して申請
  プノンペンの事業者:Labour Inspection Department(労働監督部)
  地方の事業者:Provincial Labour Department (地方の労働部))
② 労働契約が停止される労働者に対して、クメールIDカード番号、個人の電話番号(または電話を所持していない場合、親族の連絡先 )を提供するよう周知
③ 労働契約を停止する労働者のリストを、別紙3の様式に従い作成。
④ クメールIDと電話番号が正しいことを確認するため、労働者から名簿に拇印を取得
③ 添付書類(3部ずつ)
 • 全ページに会社の押印がある直近の給与明細
 • 法人登録証明書
 • 観光業については、必要となるライセンス • 税務パテント証明書
 • NSSFでの事業者登録証明書(もしあれば)
 • 企業の銀行口座番号
なお、労働者の拇印の取得など、求められる手続きをしなかった(ことにより労働者が補助金を受領できなかった)場合、会社が40USDの政府補助金について支払う責任がある とされています。
(2) 名簿提出済みの事業者
名簿未提出の事業者と同様の手続きに従うとされています。ただし、別紙4に従い、オンライン(https://suspension.mlvt.gov.kh) で行うものとされています。

4.NSSFの保険料の支払い停止
NSSFに登録している事業主は、別紙9に従い、労働省のウェブサイト(www.mlvt.gov.k h.)のフォーマットを使用し、NSSFにレターを送付する必要があります。
なお、雇用契約が停止されている間も、労働者は、NSSF から健康保険の給付を受けることができます。

以 上

本記事に関するご照会は以下までお願い致します。

nobuaki.murakami@oneasia.legal
shigeki.yoshida@oneasia.legal

2020年04月09日(木)6:04 PM

お世話になっている皆様

4月8日付けの政令および労働省通知により、来週13日から16日までのクメール正月の祝日は延期となりました。
企業および従業員に対して、通常通りの業務日とすることを要請しております。
目的は、新型コロナウイルスの伝染拡大の防止とされています。

また、本日9日付けの通知により、下記が定められています。
・労働者が休日を取得した場合の14日間の隔離措置
・使用者が承認した休日の場合は、隔離期間中を含め有給の休日とすること
・使用者は、休日を取得した従業員の名簿を労働省に提出すること

以上を受け、一般的に推奨される対応は、以下となると考えます。
①営業が可能な場合、通知に従い、クメール正月期間中を稼働日とすること。  年次有給休暇の行使も認めないこと。 ②もし期間中事業所を開けることが困難な場合、在宅勤務とすること、または有給での自宅待機とすること。

詳細は、添付ニュースレターをご確認ください。 本日付け通知13号についても、弊所の仮和訳分を添付いたします。

村上/吉田

クメール正月祝日の延期対応について

4月9日付労働省通知13号

 

 

2020年03月25日(水)11:01 AM

カンボジアにおける労働省2020年3月23日付「労働者の電話番号に関する更新の要請」に関する通達について報告いたします。

カンボジアにおける通達について

カンボジア労働法令アップデート

2020年3月16日
3月27日追記修正
OneAsiaLawyers カンボジア事務所
(JBL Mekong Co., Ltd / Mar & Associates)
日本法弁護士 村上 暢昭
同 吉田 重規

・新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020年2月28日付け指導14号)
・共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020年2月21日付け通知第4号)

・特別休暇の補填労働に関する指導(2020年2月21日付け労働省指導10号)

1.新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020年2月28日付け労働省指導14号)

 現在、カンボジアにおいて、中国等の諸外国での新型コロナウイルス感染症が発生している影響により、原材料を輸入できず、操業に困難を来たしている製造業者が多く見られます。こうした状況を受けて、カンボジア労働省は、当該状況下での労働契約停止についての指導を発行しました。

 下記の通り、本指導の対象は縫製業などの一部業種に限られています。もっとも、労働法上、不可抗力に該当する場合は最長で3か月(71条1項10号)、企業が深刻な資材不足な自体など特別に稀な困難な事態により操業を停止せざるを得ない場合は労働監督官の管理に基づき最長で2か月(71条1項11号)、労働契約の停止が可能とされています。本指導は、後者の71条1項11号を前提としたものと思われますが、下記の対象業種以外についても、労働省の判断により、本指導の対象業者に類似する労働契約の停止が認められる可能性は残されていると思われます。(3月27日追記:期間の関係の記載について一部修正しております。)

(1)対象業種

 繊維・縫製・履物(縫製産業)、旅行用品および鞄の製造工場を対象業種としています。

 カンボジアにおいて、主幹産業である縫製産業は様々な特別法の対象となっています。また、対象業種は、EUの特恵関税停止措置の影響が懸念される業種であることも関連していると思われます。

(2)労働契約停止中の労働者に対する手当

 労働法上、労働契約の停止が認められた場合は、使用者は賃金を支払う必要がないとされています(72条1項)。もっとも、本指導は、最低賃金190USDの40%の手当を労働者に支払うものとしています。

 また、労働者は、下記の国家雇用庁(National Employment Agency)が提供する技能研修に参加することにより、カンボジア政府からの手当として、最低賃金190USDの20%を受給することができるとされています。

(3)労働契約停止のための手続き

 使用者は、まず、①労働省の所管当局に申請をするものとされています。申請用紙は労働省のホームページから取得可能です。そして、②労働者に対し、労働契約の停止とその間の手当(最低賃金190USDの40%)について説明するものとされています。また、③当該手当の支払い手続について、労働者代表と書面で契約をすることが求められています。最後に、④労働契約を停止する労働者の名簿を作成するものとされています。

 そして、これを受けた労働省所管当局は、申請後24営業時間以内に工場を訪問し、関係者に手続を説明し促進すること。労使の契約締結を含むすべての手続きが完了した後、24時間以内に労働契約停止の許可書を発行するものとしています。

(4)研修について

 労働契約停止中、国家雇用庁が労働者に技能研修を提供するものとしています。

 使用者は、従業員の技能研修への登録に協力すること、工場において研修の場所を提供することなどを求められています。

3月27日追記(縫製産業以外の業種について、労働省聞き取り結果について)

 3月26日に労働省担当官にヒアリングをしたところ、下記の回答が得られました。

(1)本指導の対象業種以外についても、71条1項11号を根拠として、労働契約の停止が認められうる。

(2)停止に際しては、労働省の承認が必須。その際には、操業を停止せざるを得ない事態に陥っているか、その理由などが判断基準となる。労働者のヒアリングなども行う。

 71条1項11号には、労働契約の停止を労働監督官が管理する、という記載があるのみですが、従来からの実務運用としても、労働省の承認が必要とされてきたようです。労働省の承認がない労働契約の停止について労働仲裁で争われた事案でも、そのような契約の停止は有効なものとして認められず、使用者は賃金・手当の全額を支払うべきとされています。

2.共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020年2月21日付け労働省通知第4号)

 従来、50人以上の労働者が勤務する事業所について、医務室を設けることが求められていました。

 医務室は、20平方メートル以上であることを要し、労働者数に応じ、一定のベッド数や看護師・医師等を配置することが義務付けられていました(労働法242条、2000年労働省・保健省共同省庁令330号)。もっとも、企業にとって負担が大きく、実態として遵守されていない場合も見受けられました。

 この点に関して、2020年2月21日付け労働省通知4号により、複数企業により共同の医務室を設置することが明示的に認められました。また、一定の条件下では、既存の医療機関を利用することが可能となりました。その具体的条件は、下記の通りです。

(1)共通条件

 各事業所について、下記①②の双方が必要となります。

 ①救急室の設置と看護師1名の配置
 ②労働者の事故または疾病発生時に備え、共同医務室または医療機関への適切な搬送手段を確保しておくこと

(2)共同医務室

 下記①②のいずれかを満たす場合、共同利用可可能となります。

 ①企業の集合地に所在し、相互に1キロ以上離れていない企業間
 ②SEZ内の企業間

 いずれも、一つの共同医務室について、労働者数の上限は10,000人とされています。

(3)既存の医療機関の利用

 事業所の2キロ以内に、保健省に認定されている医療機関がある場合、労働省の担当部門にその旨と住所を通知することにより、医務室の設置に代えることができます。

3.特別休暇の補填労働に関する指導(2020年2月21日付け労働省指導10号)

 特別休暇とは、労働者本人の結婚式、妻の出産、子供の結婚、配偶者・子・両親の病気または死亡に際して、1年に7日を限度として認められる休暇です。使用者は、未使用有給がある場合、これを使用させることができるとされています。また、未使用有給がない場合、労働者に対して、休暇取得時間相当分の補填労働を求めることができるとされています。

 本指導は、補填労働について、以下としています。

 ・補填労働は特別休暇使用後90日以内に限って認められること
 ・補填労働については、所定勤務日になされるものとし、1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は54時間を超えることができない。1週54時間を超過した場合、時間外手当の割増し賃金の支払いが必要となる。

 上記は、基本的に従来の法解釈・実務運用から外れるものでなく、本件指導は、主として確認的な趣旨で発行されたものと思われます。もっとも、1週54時間の上限労働時間は、従前は許される上限時間であるとも考えられていました。割増し賃金の支給を記載することにより、週54時間以上(通常60時間まで)の勤務が時間外労働として許されることについても含める趣旨とも考えることができます。

以上

2020年03月18日(水)11:07 AM

カンボジアにおける下記の労働法令のアップデートについて報告いたします。

• 新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020 年2 月28 日付け指導14 号)
• 共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020 年2⽉21⽇付け通知第4 号)
• 特別休暇の補填労働に関する指導(2020 年2⽉21⽇付け労働省指導10 号)

→カンボジア労働法令アップデート

 

カンボジア労働法令アップデート

2020 年 3 月 16 日
One Asia Lawyers カンボジア事務所
(JBL Mekong Co., Ltd / Mar & Associates)
日本法弁護士 村上 暢昭
同 吉田 重規

 • 新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020 年2 月28 日付け指導14 号)
 • 共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020 年2⽉21⽇付け通知第4 号)
 • 特別休暇の補填労働に関する指導(2020 年2⽉21⽇付け労働省指導10 号)

1.新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020 年2 月28 日付け指導14 号)

 現在、カンボジアにおいて、中国等の諸外国での新型コロナウイルス感染症が発生している影響により、原材料を輸入できず、操業に困難を来たしている製造業者が多く見られます。こうした状況を受けて、カンボジア労働省は、労働契約停止についての指導を発行しました。

 下記の通り、本指導の対象は縫製業などの一部業種に限られています。もっとも、労働法上、不可抗力に該当する場合(71条10号)、企業が深刻な資材不足な自体などにより2か月以内に操業を停止される場合は労働監督官の管理に基づき(71条2項)、労働契約の停止が可能とされています。本指導は、後者の71条2項を前提としたものと思われますが、下記の対象業種以外についても、2ヶ月以内に操業が停止されるような見通しの場合、労働省の判断により、本指導の対象業者に類似する労働契約の停止が認められる可能性は残されていると思われます。

(1)対象業種

 繊維・縫製・履物(縫製産業)、旅行用品および鞄の製造工場を対象業種としています。

 カンボジアにおいて、主幹産業である縫製産業は様々な特別法の対象となっています。また、対象業種は、EUの特恵関税停止措置の影響が懸念される業種であることも関連していると思われます。

(2)労働契約停止中の労働者に対する手当

 労働法上、労働契約の停止が認められた場合は、使用者は賃金を支払う必要がないとされています(72条1項)。もっとも、本指導は、最低賃金190USDの40%の手当を労働者に支払うものとしています。

 また、労働者は、下記の国家雇用庁(National Employment Agency)が提供する技能研修に参加することにより、カンボジア政府からの手当として、最低賃金190USDの20%を受給することができるとされています。

(3)労働契約停止のための手続き

 使用者は、まず、①労働省の所管当局に申請をするものとされています。申請用紙は労働省のホームページから取得可能です。そして、②労働者に対し、労働契約の停止とその間の手当(最低賃金190USDの40%)について説明するものとされています。また、③当該手当の支払い手続きについて、労働者代表と書面で契約をすることが求められています。最後に、④労働契約を停止する労働者の名簿を作成するものとされています。

 そして、これを受けた労働省所管当局は、申請後24営業時間以内に工場を訪問し、関係者に手続を説明し促進すること。労使の契約締結を含むすべての手続きが完了した後、24時間以内に労働契約停止の許可書を発行するものとしています。

(4)研修について

 労働契約停止中、国家雇用庁が労働者に技能研修を提供するものとしています。

 使用者は、従業員の技能研修への登録に協力すること、工場において研修の場所を提供することなどを求められています。

2.共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020 年2⽉21⽇付け通知第4 号)

 従来、50人以上の労働者が勤務する事業所について、医務室を設けることが求められていました。

 医務室は、20平方メートル以上であることを要し、労働者数に応じ、一定のベッド数や看護師・医師等を配置することが義務付けられていました(労働法242条、2000年労働省・保健省共同省令330号)。もっとも、企業にとって負担が大きく、実態として遵守されていない場合も見受けられました。

 この点に関して、2020年2月21日付け労働省通知4号により、複数企業により協働の医務室を設置することが明示的に認められました。また、一定の条件下では、既存の医療機関を利用することが可能となりました。その具体的条件は、下記の通りです。

(1) 共通条件

 各事業所について、下記①②の双方が必要となります。

 ①救急室の設置と看護師1名の配置
 ②労働者の自己または疾病発生時に備え、協働医務室または医療機関への適切な搬送手段を確保しておくこと

(2) 共同医務室

 下記①②のいずれかを満たす場合、共同利用が可能となります。

 ①企業の集合地に所在し、相互に1キロ以上離れていない企業間
 ②SEZ内の企業間

 いずれも、一つの共同医務室について、労働者数の上限は10,000人とされています。

(3) 既存の医療機関の利用

 事業所の2キロ以内に、保健省に認定されている医療機関がある場合、労働省の担当部門にその旨と住所を通知することにより、医務室の設置に代えることができます。

3.特別休暇の補填労働に関する指導(2020 年2⽉21⽇付け労働省指導10 号)

 特別休暇とは、労働者本人の結婚式、妻の出産、子供の結婚、配偶者・子・両親の病気または死亡に際して、1年に7日を限度として認められる休暇です。使用者は、未使用有給がある場合、これを使用させることができるとされています。また、未使用有給が無い場合、労働者に対して、休暇取得時間相当分の補填労働を求めることができるとされています。

 本指導は、補填労働について、以下としています。

 ・補填労働は特別休暇使用後90日以内に限って認められること
 ・補填労働については、所定勤務日になされるものとし、1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は54時間を超えることができない。1週54時間を超過した場合、時間外手当の割増し賃金の支払いが必要となる。

 上記は、基本的に従来の法解釈・実務運用から外れるものでなく、本件指導は、主として確認的な趣旨で発行されたものと思われます。もっとも、1週間54時間の上限労働時間は、従前は許される上限時間であるとも考えられていました。割増し賃金の支給を記載することにより、週54時間以上(通常60時間まで)の勤務が時間外労働として許されることについても含める趣旨とも考えることができます。

以 上

2020年01月21日(火)4:03 PM

ASEAN各国の新法の状況を報告致します。

 

シンガポール→シンガポールにおける決済サービス法に関するアップデート

タイ→タイの最新法令アップデート

マレーシア→最低賃金、受益的所有者の報告に関する改正

ベトナム→ベトナムにおける改正労働法の改正

インドネシア→ハラール製品保証及び政令の制定とその後の運用について

ミャンマー→ミャンマーにおける知財に関するアップデート

カンボジア→カンボジアにおける2019年度 新法・法改正アップデート

ラオス→2019年の会社設立に関する重要法令まとめ

日本→パートタイム・有期雇用労働法の施行について

 

2019年01月23日(水)1:02 PM

ASEAN各国の新法状況をご報告いたします。

 

【シンガポール】決算サービス法案
【タイ】労働者保護法・刑事手続法関連の改正及びIBC制度の創設
【マレーシア】外国人社会保険義務・飲食店での喫煙禁止・贈収賄に関する改正法
【ベトナム】サイバーセキュリティー法の施行
【インドネシア】OSSシステムのBKPMへの移管
【フィリピン】外資規制緩和の最新動向
【ミャンマー】競争委員会の設立及び外国銀行の内資企業への融資撤廃
【カンボジア】労働法のアップデート
【ラオス】付加価値税法の改正
【日本】労働基準法の一部改正

2019新年版ニューズレター

 

One Asia Lawyers ニューズレター

2019年:新年特別号

シンガポール

■シンガポール決済サービス法案(Payment Services Bill)の概要

1 決済サ-ビスの規制枠組みの刷新

 現在のシンガポールにおける決済サービスに対する規制は、決済システム法(Payment System Act)と両替・送金業法(Money-changing and Remittance Business Act)によって行われていますが、仮想通貨ビジネスをはじめとするフィンテックの急激な進展により、実情に十分に対応できなくなってきたことから、既存の2つの法律に置き換わる形で、新法を制定する方向で審議が進められています。

 シンガポールにおいて仮想通貨関連サービスを提供する企業のみならず、決済に関するサービスを提供する企業全般に関わる規制枠組みの刷新となるため、その影響は大きくなるものと思われます。

2 新ライセンスの種類

 この新法案では、

(1) 両替サービス(money-changing service)、
(2) 決済口座発行サービス(account issuance service)、
(3) 国内送金(domestic money transfer service)、
(4) 海外送金サービス(cross border money transfer service)、
(5) アクワイアリング(加盟店獲得)サービス(merchant acquisition service)、
(6) 電子マネー発行サービス(e-money issuance)、
(7) デジタル決済トークンサービス(digital payment token service)

の7つの事業に対してライセンスの取得を義務付けています(同法案6条4項)。

 このうち、(1)両替サービスの実施には、両替サービスライセンス(money-changing licence)の取得が要求されます(同2項)。

 そして、上記(2)~(7)のサービスの実施については、標準決済機関ライセンス(standard payment institution licence)又は、大規模決済機関ライセンス(major payment institution licence)の取得が義務付けられます(同4項)。

 このうち、(2)の決済口座発行サービスを電子的に提供する場合及び、(6)の電子マネー発行サービスの提供については、シンガポール居住者に対して発行した電子マネーの金額、又は、その保管額が1日当たり平均500万SGD(約4億円)を超える場合には、大規模決済機関ライセンスが、それ以下の場合には、標準決済機関ライセンスが必要になります(同5項)。

 そして、(2)~(7)のうち上記を除くサービス提供については、月間の平均取引高が300万SGD(約2億4000万円)を超える場合には、大規模決済機関ライセンスが、それ以下の場合には、標準決済機関ライセンスが必要になります(同5項)。

 これらの規制に反して無許可で事業を行った場合には、3年以下の懲役又は12万5000SGD以下の罰金が科される可能性があります。

3 決済機関ライセンスの条件

 上記2種類の決済機関ライセンスの取得に共通して必要な主な条件は、

(1) 法人であること(シンガポール国内法人であることは必須条件ではない)

(2) シンガポール国内に永続的な事業所又は登録オフィスがあること

(3) シンガポール国籍保有者か同永住者の常任の取締役が1人以上いること

(4) その他当局が規定する財務的経営的な条件

です(同9項)。

 さらに、大規模決済機関ライセンスを取得した事業者は、毎年会計監査を受けなければならず(同37条)、株式の持分割合等の支配権の変動の制限(同28条)、役員等の当局による解任(同35条)等の規制を受けます。

4 仮想通貨ビジネス(取引所運営やICO)へのライセンス制の導入

 本法案が施行されるまでの現行法の下、シンガポールでは、仮想通貨の取引所の運営やICOの実施について、証券法の適用範囲に該当しない限りは、特段の規制は存在しません。

 しかし、今回の法案では、仮想通貨の交換業に関しては、決済機関ライセンスの取得を明確に義務付けました(ただし、商品やサービスの売却の決済手段として仮想通貨を受け取る行為や、購入の決済手段として仮想通貨を利用する行為は規制対象に含まれません)。

 具体的にライセンスの取得が求められる仮想通貨関連サービスは、

(1) Digital Payment Tokenの取扱い

(2) Digital Payment Tokenの交換の促進

(3) その他当局が指定するDigital Payment Tokenに関連するサービス

に関するサービスをシンガポール国内で提供するものと定義されています。

 上記「Digital Payment Token」の意義については、仮想通貨全般を指すものではなく、仮想通貨の性質が、商品、サービス又は債務の支払いの媒体として少なくとも公衆の一部に受け入れられているものに限るという限定が加えられました(正式な法案作成の前段階で公表される草稿ではこの限定はありませんでした。)。

 この「Digital Payment Tokenの取扱い」にICOが含まれるのか、つまり、ICOの実施にライセンスの取得が必要なのかについては、主に、ICOにおいて発行されるトークンが、この「Digital Payment Token」に該当するかによって判断されることになります。そして、前述の「商品、サービス又は債務の支払いの媒体として少なくとも公衆の一部に受け入れられている」かという基準は、どの程度の流通範囲をもって「公衆の一部」とするのか等、曖昧な点が残るものとなっています。この点について、シンガポール金融庁(MAS)のガイドライン(A GUIDE TO DIGITAL  TOKEN OFFERINGS)の中に参考事例と解釈基準が記載されていますが(同ガイドラインP10以降、末尾のリンク参照)、ここにおいても、仮想通貨発行体(ICO実施主体)が提供するサービスの対価としてのみ使用可能なトークンを発行するICOについてライセンスの取得が不要であることが示されているにすぎません。

 したがって、多くのICO案件で採用されているトークンが流通するプラットフォームにおいて一種のトークンエコノミーを構築するようなプロジェクト(つまりICO実施主体以外の企業もトークンを受領してサービスを提供するビジネスモデル)においては、ライセンスの取得の要否が必ずしも明確ではありません。

 仮に、発行するトークンが「Digital Payment Token」に該当する場合であっても、ICO実施主体が自ら交換サービスを提供する限りにおいて、ライセンスの取得が必要というのがMASの見解のようですので、外部の取引所を介してICOを実施するいわゆるIEOであれば、ICO発行主体自体にはライセンスは不要という解釈ができる可能性は残っています。

 他方で、データのやり取りや情報技術、通信手段、決済機器の提供やメンテナンスといった技術サービスの提供については、送金のために法定通貨を保持することがない限り、ライセンスの取得は不要とされています。

 また、仮想通貨を顧客への無償のリワードやロイヤリティー、又は、ゲーム内通貨として利用・発行する場合には、ライセンスの取得は不要とされています。ただし、それが、トークン発行体に対して返還可能である場合は法定通貨との交換のために第三者に売却や譲渡が可能である場合んは、ライセンスの取得が求められます。

5.ライセンスの取得までの猶予期間

 仮想通貨関連サービスについては、法案が成立してから6か月間、その他の決済サービスについてへは法案成立から1年間は、ライセンスの取得が猶予されます。

以上

タイ

タイにおける最新の法改正等について

 タイでは、労働者保護法の改正が予定されており、また、最低賃金の引き上げがありました。

 また、刑事手続法関連の改正予定もされており、さらに、International Business Center(IBC)制度の創設もありました。以下の通り、概要を紹介します。

2 労働者保護法の改正、特定の職業における最低賃金の引き上げ

 2018年12月13日、タイのNational Legislative Assemblyは以下の改正点を含む労働者保護法改正案を承認しました。改正法は、本年中に施行されるものと思われます。

 まず、新たな法定休暇として、1年に3日間の私用休暇が認められることとなります。私用休暇は有給とされ、従前の各種休暇のように目的や理由が限定されていないので、従業イオンにとって利用しやすいものとなります。

 また、女性の妊娠・出産休暇の期間が98日に延長されます(期間中の休日を含む)。このうち45日が有給となる点は従前と同様です。

 さらに、解雇補償金の上限が上がり、勤続20年以上の従業員に対しては、最終賃金の400日分以上の解雇補償金を支払うことが義務付けられます。

 最低賃金については、2018年4月に都県ごとの最低賃金が定められ、すべての都県において引上げあられましたが、2019年1月より、さらに機械、工芸、流通、家具製作等19種の職業について最低賃金の引き上げがなされています。

3 刑事手続法関連の改正

 刑事関連手続法の改正草案によれば、一般市民によって刑事訴訟が申立てされた場合、裁判所は特に内容をより精査することとし、申立者が、正当な理由なく裁判所の命令等に従わない場合など不誠実と判断された場合は、申立人は同一の申立をできなくなります。

 また、これまで保釈は5年を超える懲役刑については認められていませんでしたが、改正により最長で10年の懲役刑の場合について、保釈が認められ得ることになりました。

4 International Business Center(IBC)制度の創設

 The Board Of Investment of Thailand(BOI)及びRevenue Department(歳入局)は、従前運用していたITCやIHQの投資奨励及び税務インセンティブ制度を廃止し、新たにInternational Business Center(IBC)制度を創設しました。既にITCやIHQの認可を受けている企業に関しては従前の恩典はその受益期間中は引き続き与えられます。

 IBCの主な申請条件と恩典内容は次の通りです。

【申請条件】

・奨励事業(組織管理、事業計画、原材料の調達、研究開発、技術サポート等)を対象とすること

・登録資本金が1,000万バーツ以上であること

・奨励事業に関する知識・スキルを持った従業員を10人以上雇用すること

・歳入局への申請に関し、年間経費が6,000万バーツ以上であること

 当該年間経費には、IBC事業に関連するすべての経費を含みます。具体的には、従業員の給料光熱費及び賃料等を参入することが可能となっています。

【BOIの恩典内容】

・研究開発設備に関する一定の輸入関税の免除

・外貨での外国送金の許可

・土地保有が可能

・外国人の就労許可の緩和

【歳入局の恩典内容】

・法人税の軽減税率

 IBC関連事業によるタイ国内での経費の支出額により、3%から8%までの軽減税率が適用されます。従前は国外関連会社か国内関連会社か等によるインセンティブの違いがありましたが、IBCでは統一されることとなります。

・子会社からの配当収入にかかる法人税の免除

・子会社の財務管理業務に係る特定事業税の免除やIBCから在外株主・債権者への配当・利息支払いにかかる源泉税の免除

 上記のように、歳入局の恩典を受けるために必要であった最低経費が従前の制度では、1,500万バーツであったものがIBCでは6000万バーツ以上へと引き上げられている点などから、従前の制度よりも恩典が少なくなったといえます。

 このIBC制度は開始されたばかりですので、引き続き今後の当局の運用動向に注視が必要です。

以上

マレーシア

■外国人社会保険加入義務・飲食店での喫煙禁止・贈収賄に関する法改正

1 はじめに

 2019年のはじめから外国人社会保険加入義務及び飲食店での喫煙禁止に関する法改正がございましたので、本ニュースレターで記載させていただきます。また、前号のニュースレターで送付させていただいた贈収賄に関する法改正についても重要と考えられ、かつ施行が未定の部分がございますので、併せて記載させていただきます。

2 外国人社会保険加入義務に関する法改正

 (a) 社会保障制度の概要

    マレーシアの社会保障制度としては、社会保障機構(Social Security Organization: SOCSO)がEmployee’s Social Security Act 1969に基づき、Employment Injury Scheme(労災保険制度)及びInvalidity Scheme(障害年金制度)を提供しています。

 (b) 外国人の社会保障制度に関する加入義務

    これまでこの社会保障制度の加入義務はマレーシア人に限定されていましたが、2019年1月1日より、外国人にも加入義務が課せられるようになりました。これによって、外国人を雇用する者は、従業員をSOCSOに登録し、Employment Injury Schemeについて掛金を拠出することが義務付けられました。

 (c) 給付金の内容

    Employment Injury Schmeの給付には、医療給付金、一時的障害給付金、永久的障害給付金、工恒常的看護給付金、扶養家族給付金、葬儀給付金、教育給付金、リハビリが含まれます。なお、Invalidity Schemeについては外国人は対象外となっています。

3 飲食店での喫煙禁止に関する法改正

 (a) 規則の施行

    2019年1月1日にControl of Tobacco Product (Amendment) Regulations 2018が施行されました、この規制によって、飲食施設(eating place)における喫煙が全面的に禁止されることになります。

 (b) 禁煙対象の飲食施設

    禁煙対象の飲食施設は、屋外または屋内を問わず、食品が調理、提供および販売される場所であり、以下が含まれます(Regulation2, eating placeの定義)。

   ・食品が調理、提供または販売される部屋(船舶または電車内の部屋を含む)

   ・食品が調理、提供または販売される乗物およびその半径3メートル以内のエリア

   ・食品が調理、提供または販売する目的で設置されたテーブルまたは椅子の半径3メートル以内のエリア

 上記の禁煙対象にはフードコートや屋台なども含まれ、違反者は最高1万リンギットまたは2年以下の禁固刑が科せられます(Regulation11(3))。

 (c) 罰則

    この規制では、飲食施設側に対しても喫煙防止に努める義務が規定されており、(1)規定に従った禁煙サインを掲示した上で、(2)施設範囲内での喫煙が行われないよう徹底しなければなりません。(1)に違反した場合は最高3000リンギットまたは6か月以内の禁固刑、(2)に違反した場合は最高5000リンギットまたは1年以内の禁固刑がそれぞれ科せられます(Regulation12)。

 (d) 猶予期間

    2019年1月1日の施行後の最初の6か月間は猶予期間とし、違反者に対する措置は警告にとどまるとされていますが、警告に応じない場合は猶予期間中でも罰則が課せられる場合があると発表されています。

4 MACC法改正

 マレーシアでは、汚職対策として汚職防止委員会(Malaysia Anti-Corruption Commission:以下「MACC」)を設置し、汚職防止やそれに関わる規則を定めたマレーシア汚職防止委員会法(Malaysian Anti-Corruption Commission Act 2009:以下「MACC法」)が施行されています。

 これまでのMACC法では、個人を違反・罰則の対象としていましたが、責任の範囲を会社に拡大するための同法改正法(Malaysian Anti-Corruption Commission (Amendment) Act 2018:以下「MACC 改正法」)が、2018年5月4日に公布されました。今回の改正では、会社が組織内における汚職防止の対策を講じることを奨励するため、会社の責任に関する規定(MACC改正法4条により追加されたMACC法17A条:以下「新17A条」)が追加されています。これは実際に汚職を行った従業員などの会社関係者だけではなく、適切な汚職防止措置をとったことについての反証がない限り、会社にも責任が負わされる両罰規定となっており、マレーシアにおける贈賄に関する重要な改正と考えられますので、新17A条の主な内容を以下で説明させていただきます。

 なお、MACC改正法は新17A条追加以外の条項につき、2018年10月1日に施行されています。新17A条は2020年までに施行されるとの新聞報道がありますが、施行時期について、今後の動向に注意が必要となります。

詳しくは前号のニュースレターをご覧ください。

以上

ベトナム

ベトナムにおけるサイバーセキュリティ法の施行について

1 はじめに

 2019年1月1日から、ベトナムでサイバー空間の安全保障について規定した「サイバーセキュリティ法」が発効しています。

 2018年5月国会での法案審議時には、同じタイミングで審議された「経済特区報」に対する反対とともに、言論の自由が奪われるといった声を中心に、ベトナム国内でデモ等の大規模な抗議活動が行われました。

 この法律では、ウェブサイト等に掲載してはならない情報を具体的に定めるとともに、公安当局によるユーザー情報の収集に関する規定を設け、インターネットサービス事業者に個人情報等のデータのベトナム国内での保管義務を定めています。EUの一般データ保護規則(GDPR)や中国のサイバーセキュリティ法など、世界各国で個人情報保護やサイバー空間のセキュリティに関する法規制が強まるなか、ベトナム向けにネット関連サービスを提供する企業にとって非常に重要度の高い法律と言えます。

2 サイバーセキュリティ法のスコープ

 本法は、「サイバー空間における国家の安全保護と、社会的秩序、安全の保障について規定」(第1条)したものであり、「サイバーセキュリティ」を「サイバー空間における活動を、国家の安全、社会的秩序、安全、機関、組織、個人の合法的な権利、利益を既存しないよう保障すること」(第2条1項)、「サイバーセキュリティの保護」を「サイバーセキュリティを侵害する行為を防止、発見、阻止、処理すること」(第2条2項)と定義しています。

 また、「サイバー空間」については、「ITインフラ施設の接続されたネットワークであり、通信網、インターネット網、コンピュータ網、情報システム、情報処理・統制システム、データベースを含み、空間や時間に制限されずに人間が社会的行為を実行する場」と定義しています。

3 禁止事項

 本法では、サイバー攻撃やサイバーテロの実行、通信網やインターネット網の活動を妨害するソフトウェア・ツール等の制作・使用、サイバーセキュリティ保護当局の活動妨害(第8条2、3、4項)のほか、サイバー空間を用いて次のような行為を実施することを禁止しています。

a) 本法第18条1項で定める行為

b) ベトナム社会主義共和国に反対する人間を組織、活動、結託、扇動、買収、騙す、引き込む、育成、訓練する行為

c) 歴史を歪曲する、革命の成果を否定する、全民族の大団結を破壊する、宗教を侵害する、性差別する、人種差別する行為

d) 事実と異なる情報により国民を動揺させる、経済・社会活動に損害を引き起こす、国家機関あるいは公務執行者の活動に困難を引き起こす、機関、組織、個人の合法的な権利・利益を侵害する行為

e) 売春、社会悪、人身売買、わいせつ、退廃、犯罪情報の掲載、民族、社会的モラル、共同体の健康の醇風美俗を破壊する行為

f) 他人を犯罪に扇動する、引き込む、けしかける行為

(第8条1項)

4 ベトナム国内でのデータ保管・支店/駐在員事務所の設置義務

 本法では、「ベトナムにおける通信網、インターネット網上でサービス、サイバー空間上で付加サービスを提供する国内・外国企業に対する、ユーザーがデジタルアカウント登録する際の情報の認証や、ユーザー情報・アカウントの保護、サイバーセキュリティに関する違法行為の調査のために、公安省に属するサイバーセキュリティ保護当局から書面で要請があった際のユーザー情報の提供」(第26条2項a)、「本法第16条1~5項で定める内容を含む情報の当局から要請があった時点から24時間以内のシェア遮断、情報削除、および政府が定める期間のログの保管(第26条2項b)、「個人情報、サービスユーザーの関係に関するデータ、ベトナムでサービスユーザーによって作成されたデータを収集、利用、分析、処理する活動を行う、ベトナムにおける通信網、インターネット網上でサービス、サイバー空間上で付加サービスを提供する国内外の企業は、政府が定める期間ベトナムにこれらのデータを保管し、外国企業についてはベトナムに支店あるいは駐在員事務所を設置しなければならない(第26条3項)といった責任を課しています。

5 細則と今後の実務運用の見通し

 本法は2019年1月1日に発効し、すでにフェイスブックの違反が指摘されたことなどが報じられていますが、本原稿の執筆時点(2019年1月9日)では、本法の細則を定めた政令やガイドライン通達等が公告されたことは確認できておりません。ベトナムでは下位規則の整備に時間がかかることが多いため、今後公告される細則政令やガイドライン通達を待ちつつ、動向を注視していく必要があります。

以上

インドネシア

■インドネシアにおけるOSSシステムのBKPMへの移管について

1 OSSシステムのBKPMへの移管

 インドネシア政府は、2018年12月21日、同年6月21日から導入されているインドネシアにおける各種ライセンスに関するオンラインシングルサブミッション(OSS)システム(その概要については、後記2のとおり)の管轄を、同システム導入後所管していたインドネシア経済担当調整大臣府(Coordinating Ministry for Economic Affairs(CMEA))から、インドネシア投資調整庁(Investment Coordinating Board(BKPM))に移管する旨のCMEAアナウンスメントを発表しました。

2 OSSシステムの意義及び目的

 上記アナウンスメントに先立つ2018年6月、インドネシア政府は、電子的統合事業ライセンスサービスに関する2018年政府規制24号(GR24/2018)を交付し、同規制は同年6月21日から施行されています。同規制の最大のポイントは、それまで投資調整庁BKPM及びその他の官庁がばらばらに管轄していた各種のライセンシングに関する業務をCMEAが管理するオンラインシングルサブミッション(OSS)システムに一元化した点です。

 OSSシステムの目的は、インドネシアにおける事業の開始等にあたって必要となる各種ライセンス取得のプロセスを簡素化し、ペーパレス化するという点にあたります。具体的には、同規制施行以前は要求されていた投資登録が不要となり、さらに事業開始のための事業ライセンスの取得についてもOSSシステムでの申請が可能となりました。

 OSSシステムを通じた事業ライセンス取得の大まかな流れですが、申請者は、まずOSSシステム上でOSSアカウントを作成し(OSSシステムへのログインについて特段書類等は要求されていません)、必要な情報を入力し、事業登録番号(Nomor Induk Berusaha)(NIB)を取得します。NIB取得後、事業ライセンスの申請を行います(投資登録を行う必要はありません)。事業ライセンスは、所在地許可(又は水的所在地許可)、環境許可、建物建設許可等を含む各種の要件を充たすことにより効力を生じるものとされています。同要件を充たすことにより、OSSシステムにより事業ライセンスが発行され、必要となる商業・操業ライセンスの取得が必要となる一定の事業を除き、事業の開始が可能となります。

3 BKPMへの再移管

 もともと事業ライセンスに関する業務は、基本的にBKPMが所管していたのですが、GR24/2018施行後は、上記のとおり、同施行前にBKPMが管轄していた事業ライセンスに関する業務は、いっらんCMEAが運用することになりました。

 ただ、このCMEAによる運用は暫定的なものであり、同施行後約半年経過した2018年12月21日、CMEAは、OSSシステムサービスについてBKPMへ順次移管する旨のアナウンスメントを発表するに至りました(No. S-386/M/EKON/12/2018)。

 同発表によると、GR24/2018施行後、CMEAが管理していた事業ライセンス査定に関するサービス及びOSSシステムの運用が、2019年1月2日からBKPMに移管されることになります。

 また、BKPM事務所に、支援サービス、優先ライセンシングサービス、投資相談等のサービスを提供するOSSラウンジが設置されます。また、OSSコールセンター(1500765)、OSS Emailヘルプデスクが準備されます。

 次回の移管作業は、OSSシステムのネットワーク、ハードウェア、ソフトウェアライセンス等に関するインフラの移管であり、2019年3月1日に予定されています。

4 インドネシアにおける各種ライセンス申請の今後

 OSSシステムは、今後インドネシア国外からの会社設立を含む投資にあたって最も基本的で重要なファーストステップとなるものである一方、もともと事業ライセンスの申請業務を基本的に担っていたBKPMではなく、そのシステムの当初の運用をCMEAが行うこととされていたため、制度の新設に伴う混乱が実務上も見られるところでした。

 今般、事業ライセンスに関する業務、OSSシステムの運用が、BKPMの所管になり、さらに、各種のサービス、ヘルプデスクの窓口が明確化されたことにより、OSSシステムを通じたライセンスの申請に関する手続きのより一層のスムーズ化が期待されるところです。

以上

フィリピン

フィリピンにおける外資規制緩和の最新動向

1 ネガティブリストの最新第11次修正

 フィリピンでは、外資規制といえば、外国投資法(Foreign Investment Act of 1991)とは別に「ネガティブリスト」と呼ばれる大統領令において規定されています。ネガティブリストは外資規制対象分野と外資比率を列挙しております。その内容は2年毎に修正され、前回の修正である第10次修正が行われたのは2015年5月であり、既に2年以上が経過していました。そして、今般、2018年11月16日に、第11次外国投資ネガティブリストが発効されました。

2 第11次修正ネガティブリストの内容

下表が第11次修正の最新ネガティブリストです。第10次修正から変更されている分野を赤字記載しております。

<第11次修正ネガティブリスト(変更箇所赤字記載)>

リストA

外資上限 事業分野
全面的に禁止

1.レコーディング及びインターネット事業(メッセージ/情報の創造ではなく、単にメッセージを伝送するインターネットアクセス提供者をいう)を除くマスメディア

2.専門職

 薬剤師、放射線・レントゲン技師、犯罪捜査、林業、弁護士及び船舶甲板官並びに船舶エンジン官を含む。ただし、別紙(※末尾に掲載)(相互関係がある場合にフィリピンにおいて外国人に認められている専門職及び企業の参入が認められている専門職が定められている。)に従うものとする。また、外国人は、専門科目でない場合には、高等教育レベルにおいて教師となることができる(例えば、政府組織または司法試験を含む。)

3.払込資本250万米ドル未満の小売

4.協同組合

5.民間警備等

6.小規模鉱業

7.群島内・領海内・排他的経済海域内の海洋資源の利用、河川・湖・湾・潟での天然資源の小規模利用

8.闘鶏場の所有、運営、経営

9.核兵器の製造、修理、貯蔵、流通

10.生物・科学・放射線兵器の製造、修理、貯蔵、流通

11.爆竹その他の花火製品の製造

20% 民間ラジオ通信ネットワーク(20%→40%)
25%

1.雇用斡旋(国内・国外のいずれかで雇用されるかを問わない)

2.国内で資金供与される公共事業の建築・修理(25%→40%)

2.防衛関連施設の建設契約

30% 広告業
40%

1.国内で資金供与される公共事業の建築・修理。(25%→40%)

ただし、以下の除く。

・BOT法に基づくインフラ開発プロジェクト

・外国の資金供与・援助を受け、国際競争入札を条件とするプロジェクト

2.天然資源の調査・開発・利用

3.私有地の所有

4.公営事業の管理・運営。ただし、競合可能市場に対する発電及び電力の供給並びに公益事業に含まれないその他の類似事業を除く。

5.教育機関の保有・設立・運営

6.米・とうもろこし産業

7.国有・公営・市営企業への材料、商品供給

8.深海漁船の運営

9.コンドミニアムユニットの所有

10. 民間ラジオ通信ネットワーク(20%→40%)

リストB

外資上限 事業分野
40% 1. フィリピン国際警察(PNP)の許可を要する製品・原料の製造・修理・保管・流通(例:銃器、火薬、ダイナマイト)
2. 国家防衛省(DND)の許可を要する製品の製造・修理・保管・流通(例:軍用兵器、宇宙ロケット・部品、軍艦、軍用通信機器)
3. 危険薬物の製造・流通
4. サウナ、スチーム風呂、マッサージクリニック等、公共の保健及び道徳に対するリスクの観点から法に規制されているもの。ただし、ウェルネス施設を除く。
5. フィリピン娯楽賭博公社と投資契約が結ばれているもの以外のすべての賭博事業
6. 払込資本 20 万米ドル未満の国内市場向け事業
7. 先端技術を有する、又は 50 名以上を直接雇用し、資本金額 10 万米ドル未満の国内市場向け事業

3 旧ネガティブリストからの変更点

 変更点を再度整理しますと、下表の通りです。

外資保有比率の上限が引き上げられた分野 ・民間ラジオ通信ネットワーク(20%→40%)
・国内で資金供与される広狭事業に係る建設、修理(25%→40%)
100%外資保有可とされた分野 ・インターネット事業(アクセスプロバイダ)
・高等教育機関における教師(専門職科目以外)
・専門職のうち、薬剤師、林業
・競合可能市場に対する発電及び電力供給等

 結局、旧ネガティブリストから大きく変わっていないという印象です。今回、マスメディア業から例外として除かれたインターネット事業については、あくまでも通信インフラを提供する事業についてであって、E コマースや動画配信などのオンラインサービス業が解放されたわけではありません。また、大きな期待がかけられていた小売業の規制緩和についても、緩和に関しては憲法改正の手続きが関わってくるといった問題もあり、現状が維持される形となりました。

4 今後の展望

 今回のネガティブリストの修正は、経済政策に注力するドゥテルテ現大統領が政権を握って初めての修正であったため、大きな規制緩和が期待されましたが、先述の通り、当初の期待からは大きく外れた形に終わりました。次回の修正に持ち越されたとの見方もできるかもしれませんが、次回の修正は2年後であるため、特定の分野の企業にとってはまだまだ進出が難しい状況が続きそうです。

別紙(専門職)

A. その母国においてフィリピン人に対して就業が認められていない場合を除き、外国人に就業が認められる分野

1. 会計士、2. 航空工学、3. 農業生物工学、4. 農業、5. 建築、6. 化学工業、7. 化学、8. 土木工学、9. 通関業者、10. 歯科、11. 電気工学、12. 電子工学、13. 電気技師、14. 環境計画、15. 漁業、16. 林業、17. 測地工学、18. 地質学、19. 指導及びカウンセリング、20. インテリア・デザイン、21. 景観設計、22. 図書館司書、23. 配管熟練工、24. 機械工学、25. 医療技術、26. 医薬、27.金属工学、28. 助産師、29. 鉱山学、30. 造船工学、31. 看護、32. 栄養士、33. 検眼、34. 薬局、35.理学・作業療法士、36. 心理学、37. 不動産業(不動産コンサルタント、不動産鑑定士、不動産査定人、不動産仲介人及び不動産販売員)、38. 呼吸療法、39. 衛生工学、40. 社会事業、41. 小中学校における教職、42. 獣医学、43. 法律又はフィリピンが当事者である条約において規定される他の専門職

B. 関連する専門職法規の条件に従うことを条件として、法人形態での参入が認められる分野

1. 航空工学、2. 農業生物工学、3. 建築、4. 化学、5. 電子工学、6. 環境計画、7. 林業、8. 指導及びカウンセリング、9. インテリア・デザイン、10. 景観設計、11. 造船工学、12. 心理学、13. 不動産業(不動産コンサルタント、不動産鑑定士、不動産査定人、不動産仲介人及び不動産販売員)、14. 衛生工学、15. 社会事業

 

ミャンマー

競争委員会の設立及び外国銀行の内資企業への融資規制撤廃
(1)従来の競争法
 ミャンマーでは 2015 年に競争法が制定され、2017 年 2 月 24 日に施行しました。また、競争法の細則(主に競争委員会の組織・運営について)を定める競争法規則が2017年10月に制定・公表されています。しかしながら、執行機関である競争委員会の設置(競争法第5条)が遅れ、本格的な運用には至っていない状況が続いていました。
(2)改正内容 競争委員会の設立
 今回、ミャンマー連邦政府は 2018 年 10 月 Notification No.106/2018 において、競争委員会の設立を正式に公表しました。競争委員会は、商業大臣を委員長とし、政府機関及び非政府機関から専門家や代表者を集めて構成されることになりました。
 競争委員会の設立により本格的な運用が予想される競争法ですが、未だ競争法の適用対象は明確になっていません。すなわち、競争法上の「独占」に該当し規制の対象となる市場シェアや売上高等の具体的な基準は競争法や競争法規則によって明確にされておらず、これらは今後競争委員会が検討し具体的な基準を設けていくこととなります(競争法第 8 条(g))。
 また、競争委員会は同法違反の捜査を行う機関として調査委員会を設置することを競争法上定めています(同法第 11 条(a))。競争委員会設置時点では、調査委員会は未設置の状態にありますが、例えば、競争法に違反した場合は最大で3年以下の懲役又は 1,500 万 MMK 以下の罰金が課せられますので(下記「競争抑制行為」の場合)(同法第 39 条)、調整委員会の設置に伴う競争法の本格的な執行を見据え、今後の動向に注意が必要です。
2 外国銀行による内資企業への融資規制撤廃
(1)従来の提供可能業務
 従来、外国銀行の支店は外資企業及び合弁企業に対しては全ての銀行業務を提供することが認められていました。他方で内資企業に対しては輸出金融及びその関連業務の提供のみが認められていました。
(2)改正内容 内資企業への融資業務
 ミャンマー中央銀行(Central Bank of Myanmar)は、2018 年 11 月 8 日付け DirectiveNo.6/2018 により,外国銀行の支店が内資企業(100%国内資本)向けに融資を行うことを認めました。
 今回の Directive により、外国銀行の支店が制限される業務はミャンマー国民に向けた小売銀行業務(リテール業務)のみとなり、内資企業は外国銀行による融資を受けることが可能となります。外資規制緩和による、金融市場の今後の市場動向に注目です。

以上

 

カンボジア

カンボジア労働法アップデート
1 概要
 昨年 2018 年、労働法分野の法令変更として、①年功補償の導入、②賃金等の各月 2 回支給の義務付け、③最低賃金法の制定があった。これらは、昨年 7 月 29 日にあった 5 年に一度の下院選挙を強く意識したものと考えられ、いずれも基本的に労働者の利益を図るものである。
2 年功補償の導入
年功補償は,昨年 6 月 28 日付けの労働法改正により,解雇補償に代わって導入された(8 月 15 日付けニューズレター参照)。更に、9 月 21 日付けの労度職業訓練省(MLVT)省令(Prakas)443 号により、その詳細が定められた。年功補償の概要は以下である。
 ① 使用者に対し、労働者の雇用継続 1 年につき、15 日分の賃金等相当額の支給を義務付ける。算定基準額には、賃金以外の諸手当を含む。
 ② 年功補償の支給対象は,無期雇用契約のみ(有期雇用契約は、本改正前と同じく、期間満了時に退職金の支給義務がある)。
 ③ 2019 年以降,各年 2 回,6 月と 12 月に支給(各 7.5 日分)する。
 ④ 2018 年以前の雇用に対して支給義務あり(「遡及支給」。156 日相当額を上限)。遡及支給の算定基準額は、対象となる過去の雇用期間の基礎賃金額(諸手当を含まない)。
支給は③と同じく各年 6 月と 12 月(縫製産業は各 15 日分、縫製産業以外は 7.5 日分)。
 ⑤ 自主退職の場合、以降の遡及支給の必要はない。解雇の場合は明文規定がないが、解雇時の残額を支給する義務があると考えられる。
 使用者にとって大きなコストアップとなるものであり、特に③遡及支給は法治国家の常識に反する法令であるため各国関係団体が強く抗議をしている。これを受け、MLVT は関係団体と協議を行っており、昨年 12 月 28 日付で、遡及支給のスケジュールについて協議を行っている旨の公式発表をした。既に制定・発行している法令であるが、導入の延期の可能性も残されており、経過を観察する必要がある。
3 賃金等の各月 2 回支給の義務付け
 従前、賃金等の支給については、作業員(主として肉体労働に従事する者)とその他の従業員で規制に相違があり、作業員の賃金は、少なくとも月に二度(最大で 16 日の間隔)、その他の従業員は少なくとも月に一度 (労働法 116 条 1 項、2 項)の支給を要するというものであった。
 上記の省令 443 号と同日の昨年 6 月 28 日に公布された MLVT Prakas442 号は、労働法116 条を前提に、規制を上乗せするものと考えられるが、概要は、下記の通りである。
 ① 2019 年以降、全従業員に対して、各月 2 回の賃金等の支給を義務付ける。
 ② 支給日は、各月 2 週目と 4 週目とする。
 ③ 第 1 回の支払いは,月額賃金の基礎賃金額の半額。
   第 2 回の支払いは,月額賃金の基礎賃金額の残額と,諸手当等の合計額。
 当月の賃金等を当月に支払うことまで要求するものであるのか(文言上は記載がない)、同意により例外が認められる場合があるのかなどが必ずしも明らかでなく、当局による今 後の運用等を注視する必要がある。
4 最低賃金法の制定
 最低賃金の規定は、本法制定前も、労働法に規定が存在した(104 条~112 条)。昨年7 月 9 日に、従来の労働法規定に代わるものとして、最低賃金法が公布され、即日発効した。本法は、最低賃金に関する調査・審議機関の設置、最低賃金の決定方法・決定基準などについて、旧法規定よりも詳細を定めるものである(全 30 条)。
 なお、旧法規定および最低賃金法のいずれも、具体的な金額は、MLVT の Prakas により定めるものとされている。従来、この Prakas は縫製産業のみを対象とする形で発令されてきた。本法は各年 1 回の Prakas 発布を定めており、同法制定後、2019 年を対象とした Prakas が発布されたが、やはり縫製産業のみを対象としたものである(最低賃金額は182US ドル)。本法令の制定を契機として、縫製産業以外の産業を対象とした Prakas が発令されることも想定されるが、その実施は 2020 年以降になると考えられる。

以上

 

ラオス

ラオスにおける付加価値税法の改正について
1 はじめに
 ラオスにおける税金に関する主な法令は「税法」と「付加価値税法(以下、「VAT 法」)」があります。付加価値税は、2009 年 1 月より導入され、その後、数度改正されましたが、今回の改正は、2015 年 7 月に施行された VAT 法(以下、旧法)にとって代わるもので、2018 年 12 月 4 日
に官報に掲示され、15 日後の 12 月 18 日より施行されています。
 今回の主な改正点について、以下に概要を記載します。
2 VAT への登録義務
 旧法では、年間 4 億キープ以上の売り上げ、ラオス会計システムの遵守、タックスインボイスの使用等が登録条件となっていました(旧法第 31 条)。今回の改正では、企業登録、投資許可、納税者番号を取得した個人、法人、設立団体は、VAT への登録することが義務化されました(但し、零細企業は除きます)。
 年間 4 億キープ等の条件はなくなり、VAT 登録対象者の枠が拡大されたことから、ラオス政府の税収アップを目的としております。
3 VAT 課税対象活動
 VAT の課税取引は、以下のとおり、旧法第 11 条に定めれていました。
 ①ラオス国内に輸入される商品
 ②VAT 登録事業者(個人、法人、団体)によって、ラオス国内で提供される商品やサービス
 ③ラオス非居住者及びラオスで登記していない法人や団体により提供されるサービス
 今回の改正では、上記に加えて、以下が、新しく規定されました。
 ④経済特区(以下、SEZ)内で登記した法人が SEZ 外で提供するサービス
 ⑤電子的取引を通して提供される商品やサービス
 ラオスにおいても、電子商取引が拡大しており、オンラインで商品を購入する人が増えてきています。そのような背景を踏まえて、改正がなされております。
4 商品及びサービスの提供地

 今回新しく規定された条項となっており。改正後び旧法第 11 条に規定されているとおり、商品及びサービスの提供地がラオス国内であるとみなされたときに、課税取引の対象となります。例えば、以下のような要件の場合も提供地はラオス国内とみなされますので、注意が必要です。
・海外で購入した商品をラオスへ輸入した場合
例えば、ラオスで登記した法人やラオス居住者が、商品をタイで購入し、ラオスへ輸入する場合(輸入する物は、業者、自身問わない)、付加価値税対象商品に関しては、空港や国境の税関において、VAT を支払うことになります(改正 VAT 法第 13 条 1.4)。
・ラオスに関する情報提供を行った場合
例えば、日本で登記した企業が、ラオスのコンサル会社に対してラオスの会計に関して相談をメールで行った場合、サービスの受領者が、ラオス居住者であろうと、なかろうと、ラオスで登記の有無は問わず、役務の提供地はラオスとみなされ、課税取引となります(改正VAT 法第 13 条 2.3)。

以上

 

東京

労働基準法の一部改正について
1 時間外労働の上限規制の導入
 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)の成立により,2019年4月1日から改正労働基準法が施行されることになりました。
 今回の法改正においては,長時間労働の是正が大きな柱として掲げられており,その中の目玉として時間外労働に関する上限規制が設けられました。
 これまでの労働基準法においては,法律上時間外労働の上限が定められていなかったことから,特別条項付き36協定を締結することにより,年6回(6か月)であれば法律上の上限なく時間外労働を行うことができるものとされていました。
 しかし,今回の法改正により時間外労働の上限が法律上定められたことにより,使用者はこれを超える時間外労働をさせることができなくなり,この上限を超えて労働させた場合には新たに罰則の対象となることが規定されました。
2 上限規制の具体的な内容
 今回の法改正による時間外労働の上限規制の具体的な内容は以下の通りです。
 ・36協定を締結した場合における労働時間の上限は,月45時間,年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間,年320時間)を原則とする。
 ・臨時的な特別の事情がある場合であっても下記①~④を限度とする。
                    記
 ① 年720時間
 ② 単月100時間未満(休日労働含む)
 ③ 複数月(2か月~6か月)平均80時間(休日労働含む)

 ④ 月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合月42時間)を超える時間外労働の回数は,年6回まで

3 実務への影響
 本改正により,上限規制に即した内容となるよう就業規則の見直しや新たな36協定を締結する必要があることは言うまでもありません。もっとも,本改正は,現行の「時間外労働の限度に関する基準」(平成 10 年労働省告示第 154 号)を法律に格上げし,罰則による強制力を持たせることにより時間外労働規制の実効性を確保するための措置であるといえることから 3,従来の「時間外労働の限度に関する基準」を履践している企業に対する影響はそれほど大きいものではないように思われます。
 もっとも,本改正においては,長時間労働の是正対策として,上限規制に加え,労働者の労働時間の把握義務に関する規定が労働安全衛生法に規定されました。
 したがって,企業においては,本改正による就業規則の見直しや新たな36協定の締結等上限規制に対する形式的な措置にとどまることなく,労働者の労働時間管理に対する現在の措置を見直すとともに,労働時間管理の重要性について再度強く意識する必要があるものと思われます。

以上

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