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2023年11月15日(水)4:20 PM

インドネシア個人データ保護法 施行規則の発出に関するニュースレター第2弾を発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

インドネシアの個人データ保護法 施行規則の発出に向けて(2)=「越境移転」=

 

インドネシアの個人データ保護法
施行規則の発出に向けて(2)=「越境移転」=

2023年11月
One Asia Lawyers Indonesia Office

日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

前回のニュースレターでは、個人データの保護に関する法律2022年27号(「PDP法」[1]及びその施行規則案(「本規則案」)に関し、個人データ保護管理責任者(Personal Data Protection Official)について議論致しました[2]

今月は、本規則案のうち、個人データの処理(processing/pemrosesan)の一類型であるデータの移転(PDP法第16条e.及び本規則案第9条e.)の内、国境を越えた個人データの移転(「越境移転」)を取り上げます。

2.国境を越えたデータ転送

(1) PDP法の規定

インドネシアにおける個人データの移転(国内移転及び越境移転に関わらず)は、PDP法第55条および第56条で規定されています。この内、越境移転に関しては、以下の3つの段階のいずれかが満たされる場合、データ管理者は個人データを越境移転できると規定されております(第56条2項4号)。

  1. 受領国の個人データ保護レベルが、インドネシアの個人データの保護レベルと同等かそれ以上であること
  2. (a)が満たされない場合:受領国において十分かつ拘束力のある個人データ保護が存在すること
  3. (a)および(b)のいずれも満たされない場合:個人データ主体[3]が移転に同意している場合


なお、これらに関する詳しい規定は、施行規則で定められるとされております(PDP法56条5項)。 

(2) 本規則案

越境移転に関する本規則案の規定は、第181条から第196条に規定されています。但し、一部の内容に関しては、PDP委員会(Lembaga PDP)が発行する規則によって別途定められることになっております(第184条4項参照)。下記にて本規則案で定められた条項のうち、主なものを説明致します。

(a) 原則及び規定の枠組み

まず、第181条1項は原則として、越境移転が可能である旨を規定しており、具体的には、個人データ管理者は、法令の規定に従い、個人データをインドネシア共和国の管轄区域外の個人データ管理者および/または個人データ処理者に移転することができるとしております。その上で、同条2項は、その場合の法令遵守の原則を規定しており、具体的には、個人データを移転する場合、個人データを移転する個人データ管理者および個人データの移転を受ける個人データ管理者について、個人データ保護分野の法令の規定に従って個人データを保護する必要があるとしております。

更に、182条において、前述のPDP法が定める越境移転時の3段階の要件を再度規定した上で、183条から第196条においてそれぞれの段階について詳細を定めております。

(b) 1段階:同等以上の個人データ保護レベル

第183条1項は、越境移転を行う個人データ管理者は、移転先の国が同等以上のデータ保護レベルを有していることを確認する責任を負うと規定しています。

また同条2項は、同確認を行うための評価についてPDP委員会が義務を負う旨を規定し、第184条1項は同評価時の3つの基準を以下のとおり規定しています。

  1. 相手国が個人データ保護に関する法的規制を有していること
  2. 相手国に個人データ保護の監督機関または当局があること、及び
  3. 相手国が、法的拘束力のある条約や文書、個人データ保護に関する多国間または地域シス テムへの参加により、国際的な約束やその他の義務を負っていること


その上で、PDP委員会は、上記の基準を満たす国および/または国際機関のリストを決定するとされ(第184条2項)、当該リストに含まれる領域への個人データの越境移転は、更なる承認を得ることなく実施可能とされています(第184条3項)。

(c) 2段階:個人データの十分かつ拘束力のある保護

a. 原則

第185条1項は、個人データ管理者が、上記第1段階の要件を満たすことができない場合、同管理者が、十分かつ拘束力のある個人データ保護を確保する必要がある旨規定しております。

この点、第185条2項は、上記「十分かつ拘束力のある保護」の形態として、(a)国家間協定、(b)標準的な個人データ保護契約条項、(c)企業グループの拘束力のある会社規則、及び/または(d)PDP委員会が認めるその他の十分かつ拘束力のある個人データ保護手段を規定しております。

なお、いずれの場合であっても、個人データ管理者は、書面および/または記録された文書の形で証拠を準備することが要求され(第185条3項)、PDP委員会は当該要件充足に関するアセスメントの実施が可能と規定されています(第 185条4項)。

b. 標準的な個人データ保護契約条項

上記のうち、(b)標準的な個人データ保護契約条項については、PDP委員会が定めると規定された上で(第187条1項)、最低限これに含まれる内容として、個人データ処理の根拠、個人データ保護に関する条項、個人データ保護を怠った場合の通知義務、個人データ移転の相手方に対するデューデリジェンスの義務が規定されております(第187条2項)。

なお、個人データ管理者は、個人データの移転の必要性及び個人データ保護に関する法令の規定に基づき、上記標準的な個人データ保護契約条項に個人データの移転に関する規定を追加することができること(但し、その場合はPDP委員会と協議する必要がある)が規定されております(第187条3~4項)。

c. 企業グループの拘束力のある会社規則

上記(c)拘束力のある会社規則は、個人データの受領者と送信者が同じ会社グループに属している場合、つまり、どちらかの当事者がもう一方の当事者を支配している場合、または両当事者が同じ当事者の支配下にある場合にのみ使用することができるとされております(第188条2項)。

その上で、当該拘束力のある会社規則には、少なくとも以下の要件を含む必要があるとされております (第188条1項)。

  1. 受領者が、インドネシアの個人データ保護と同等以上の個人データ保護を提供する義務を負うこと
  2. 当事者(個人データの送信者及び受領者)が拘束力のある会社規則に拘束されること
  3. 拘束力のある会社規則に基づいて、個人データの移転先の国および地域が規定されること
  4. 関係する当事者の役割、権利、義務が規定されること

(d) 3段階:個人データ主体による承認

第189条は、個人データ管理者が、上記第2段階の要件を満たすことができない場合でも、越境移転はデータ主体の承認に基づいて行なうことができると規定しています。その上で、第190条2項は、承認に基づく越境移転は以下の場合にのみ実施できると規定しております。

  1. 繰り返し行われないものであること
  2. 対象となる個人データ対象者数が限定されていること
  3. 越境移転が条件を満たすために必要であり、当該条件が個人データ主体の利益または、権利および自由を損なわないこと
  4. 個人データ管理者は、リスクアセスメント[4]を実施し、適切な保護措置を講じていること
  5. PDP委員会および個人データ主体に対し、越境移転行為そのもの及び越境移転によって満たされるやむを得ない正当な利益について通知していること


しかしながら、上記承認がどの様に要求され、どの様に与えられるのかについて本規則案では明確にされず、PDP委員会の規則で規定するとされております(第 190条3項)。[5]

3.GDPRとの比較

上記のように、PDP法及び本規則案においては、越境移転に関する具体的な運用については必ずしも明らかになっておらず、今後施行される予定のPDP委員会規則を待つ必要があります。他方で、PDP法及び本規則案の内容は、GDPRと類似する点が多く見られます。そこで、PDP法及び本規則案の今後の運用を予測する趣旨で、下記ではGDPRと比較の上、PDP法及び本規則案について議論致します。

(1) 越境移転の枠組みの比較

上述の通り、PDP法及び本規則案において越境移転を行う場合は、上述の3段階の要件が規定されております。他方、GDPRにおいては、越境移転が認められる形態として、十分性認定に基づく移転(第1段階)、及び、適切な保護措置に従った移転(第2段階)のみが規定されております。これらは後述のように、上記PDP法及び本規則案における3段階の要件の1段階及び2段階と類似するものと言えます。

他方で、PDP法及び本規則案における第3段階(個人データ主体による承認)に類似する形態については、後述の通り、GDPRとPDP法及び本規則案では若干異なる位置づけがなされております。

(2) 第1段階「同等以上の個人情報保護レベル(GDPRにおける「十分性認定(adequacy decision)に基づく移転」に相当)」の比較)

第1段階に関して、PDP法・本規則案の規定はGDPRの規定と非常に類似しています。

前述のように、PDP法・本規則案においては、PDP委員会が、当該基準を満たす国を決定し、これに該当する国に対しては追加の要件無しにデータを移転できるとされているのと同様に、GDPRにおいても、外国の法域が個人データ保護に関して適切なレベルにあるかどうかは公的機関(GDPRにおいては欧州委員会)が決定し、基準を満たす外国の法域への個人データの越境移転は、追加的承認を必要とせずに行える(GDPR第45条1項)と規定されています。

なお、送り先の法域に求められる保護のレベルは、PDP法及び本規則案では、「(インドネシア)と同等以上」と明確に規定されているのに対し、GDPRの文言上は「十分な保護水準」(GDPR第45条1項)と明確ではありません。但し、この点については、欧州司法裁判所(ECJ)の判決に基づいて「十分な保護水準」とは、第三国がEU域内で保証されている保護水準と「実質的に同等」の保護水準[6]と解釈されております。

(3) 2段階:「個人データの十分かつ拘束力のある保護(GDPRにおける「適切な保護措置(appropriate safeguards)を条件とする移転」)の比較

前述(2. (2) (c) a.)のように、PDP法・本規則案においては、「個人データの十分かつ拘束力のある保護」として(a)~(d)の形態を取ることにより、越境移転が認められるとされております。

GDPRにおいても上記第1段階の要件が満たされていない法域への越境移転の場合、第2段階の措置(即ち、 (a)公的機関等との間の拘束文書、(b)拘束力のある企業規則、(c)欧州委員会が採択した標準データ保護条項による適切な保護措置(appropriate safeguard)等(GDPR第46条))によって、越境移転が可能であると規定されています。

なお、標準データ保護条項(GDPR第46条2項(c))に関しては、その契約的性質から、第三国の公的機関までを拘束することはできず、仮に移転先の国等が強制的に当該個人情報にアクセスする場合(いわゆるガバメントアクセスの場合)、本条の保護措置が十分でなくなる可能性が生じます。このため、欧州司法裁判所は、当該国の状況に応じて、補完的措置(Supplementary measures)を求めることができるとし[7]、欧州データ保護委員会も、状況に応じた補完的措置の実施に関する勧告を発出しています[8]。この点はPDP法および本規則案では触れられておりませんが、今後のPDP委員会規則等によって規定される可能性があるものと考えられます。

(4) 3段階:「個人データ主体による承認(GDPR:「明示的な同意に基づく移転」)」の比較

本要件について、PDP法・本規則案においては、原則として越境移転が認められる条件の一つとして、個人データ主体による承認が規定されております。

これに対してGDPRは、原則として前述の2段階の条件を満たす場合のみ越境移転が認められるとした上で、その例外として「特定の状況における適用除外(Derogations for specific situations)」)を規定し、その一つの類型として「明示的な同意に基づく移転」を規定しております(GDPR第49条)。

このように、PDP法及び本規則案が、第3段階に基づく移転を、越境移転を認める条件の一つと位置づけているのに対して、GDPRにおいては、あくまでこれを例外的な措置として位置づけております(この点は、GDPRのガイドラインにても強調されています[9])。

上記相違点についての評価を行なうのは時期尚早であるものの、例えば今後施行される予定のPDP委員会規則等において、GDPRに倣う形で、第3段階の個人データ主体による承認に基づく越境移転をより厳格に運用する旨の規定がなされる可能性はあるかと存じます。

なお前述のとおり、PDP法及び本規則案では、承認がどの様に要求され、どの様に与えられるかについては明確に規定されておらず、PDP委員会規則で規定されるとされておりますが、GDPRでは、同意は移転に伴って生じうるリスクについて予め提供された上で、明示的になされた同意でなけれなければならないと規定されております(GDPR第49条1項(a))。

また、「明示的」に関して、欧州の作業部会(Working Party)の発出したガイドラインに基づくと、例えば、声明文の作成、電子メールの送信、電子フォームへの記入などの方法によって明示的に同意を表明しなければならないとされ、このため、何らの反応がない場合(沈黙)や電子フォームのボックスにチェックを入れる行為や黙示的な行為では十分とはみなされないものとされております[10]

PDP委員会の発出する今後の規則には、こういった点が盛り込まれる可能性もあると考えられます。

4.結論

上記のように、本規則案は、PDP法上の「越境移転」(第56条)についてより具体的に規定しているものの、依然としてまだ明確でない部分もございます。これらは、今後のPDP委員会規則によって明らかになることが期待されるところ、今後の立法の趨勢を注視する必要がございます。

 

*本規則案はあくまでも案であり、正式に成立・発行するまでに今後変更される可能性がある点があることにご留意ください。(本稿で取り上げるのは、あくまでも現状の案に関するものとなります。)

 

[1] PDP法の内容については、2022年10月のニュースレター(https://oneasia.legal/8947)をご参照ください。
[2] 2023年10月のニュースレター(https://oneasia.legal/11565)をご参照ください。
[3] 個人データ主体とは、当該個人データが関連付けられている自然人を指します。(PDP法第1条6項)
[4] リスクアセスメントの内容は移転の必要性および個人情報主体の権利への影響の評価となります(第194条)
[5] 本規則案では、まず個人データ処理に関する一般的な「同意」の規定(PDP法第20条1項および本規則案第44条2項(a))が置かれていることから、越境移転に関しては当該同意に加えて、付加的な承認(即ち、移転される個人データがインドネシア法の規定よりも低い保護基準に従う可能性がある事に関する特定の同意)が必要と考えられますが、いずれにせよ、詳細は本規則案では明確にされておりません。
[6] ECJ Judgment 16 July 2020, Schrems II, C-311/18, EU:C:2020:559, パラグラフ 94. https://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?text=&docid=228677&pageIndex=0&doclang=EN&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=1068615
[7] 同上 パラグラフ 128-135。
[8] 2021年6月発出の欧州データ保護委員会勧告(勧告01/2020/ https://edpb.europa.eu/system/files/2021-06/edpb_recommendations_202001vo.2.0_supplementarymeasurestransferstools_en.pdf)。
[9]規則2016/679に基づく第49条の適用除外に関するガイドライン2/2018(https://edpb.europa.eu/sites/default/files/files/file1/edpb_guidelines_2_2018_derogations_en.pdf)。
[10] GDPRにおける同意の詳細については、Art.29 Working Party Guidelines on consent under Regulation 2016/679 を参照のこと。https://ec.europa.eu/newsroom/article29/items/623051

2023年10月13日(金)3:30 PM

インドネシア個人データ保護法 施行規則の発出に関するニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

インドネシア個人データ保護法 施行規則の発出に向けて(1)

 

インドネシア個人データ保護法 施行規則の発出に向けて(1)

2023年10月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

インドネシアでは、2022年10月17日に個人データの保護に関する初の包括的な法律として、個人データの保護に関する法律2022年27号(以下、「PDP法」)が施行されました[1]。従来インドネシアでは、いわゆるEIT法(電子情報及び取引に関する法律2008年第11号(及びその改正法(2016年第19号)を含む))およびその施行規則によって、電子システムで扱われる個人情報のみが規制されていましたが、PDP法の施行により、全ての分野における個人データの保護を規定する初めての法律が制定されたこととなります。もっとも、PDP法は、2年間の移行期間を定め、さらに多くの条項に詳細は施行規則によって定める旨の規定を置いておりました。そのため、各企業が当該施行規則の発行を待つ状況が続いておりました。

このような状況で、PDP法の制定から約1年を目前とした2023年8月30日に、 PDP法の施行規則案(以下「本規則案」)が公表されました[2]

本規則案は245の条文と10の章から構成され、データ処理(第9条~第36条)、権利と義務(第37条~第180条)、国境を越えた移転(第181条~第196条)、PDP委員会(Lembaga PDP)の権限(第199条~第212条)、行政処分(第213条-第226条)、紛争解決と手続法(第227条~第244条)など、データ保護の様々な側面を広範囲にカバーしています。

本規則案については、今後広く議論が行われる予定であり、最終化されるまでに内容が大きく変更される可能性があります。しかしながら、インドネシアで事業を行う企業、特に国際的なデータの移転を行う可能性のある日系企業においては、上記移行期間内にPDP法およびその施行規則を遵守する体制を整えるために、本規則案の内容及び動向に注意を払うことが不可欠となります。

このため、One Asia Lawyersでは数回に分けて、PDP法及び本規則案の詳細について議論していきたいと思います。

今月は以下のトピックを取り上げております。

2.個人データ保護管理責任者(Personal Data Protection Official

(1)PDP法の規定

他の国の個人情報保護関連法と同様に、インドネシアのPDP法においても、個人データ管理者及び個人データ処理者は、個人データ保護管理責任を負う責任者を任命しなければなりません。

PDP法第53条では、以下の場合に上記の責任者を任命する義務が発生すると規定しています。

  1. 個人データが公共サービスのために利用される場合
  2. 個人データ管理者の中核業務が、大規模な個人データの定期的かつ体系的なモニタリングを必要とする場合であって、当該必要性が当該中核業務の性質、範囲および/または目的から生じる場合
  3. 個人データ管理者の中核業務が、特定個人データおよび/または犯罪に関連する個人データの大規模な処理である場合

PDP法第54条1項はさらに、この責任者の義務を情報提供、助言、監視、調整と規定しています。しかし、このような責任者の任命時に、任命者であるPersonal Data Controllerがどの様な義務を負うべきなのか等の詳細はPDP法には規定されていないため、施行規則が待ち望まれていました。

(2)本規則案

本規則案では、このような責任者を「個人データ保護管理責任者(Personal Data Protection Official)」と定義しています(第1条24項)。

本規則案第165条から第169条には、個人データ保護管理責任者に関する条文が規定されております。

まず、求められる能力については、PDP法第53条2項の規定内容とほぼ同一の内容が第165条2項にて規定されており、ここでは、専門性、法律、個人データ保護実務に関する知識、職務を遂行する能力に基づいて、個人データ保護管理責任者は任命されるものとすると規定されています。なお、ここで求められる能力の程度としてはPDP委員会が今後公表する旨を規定しています。(第165条3項)

・第165条3項:  個人データ保護の職務を遂行する個人データ保護管理責任者の専門性と能力に関する規定は、PDP委員会規則にて追って規定される。

また、第167条~第169条には、個人データ保護管理責任者とその任命者(個人データ管理者および個人データ処理者)の双方の義務が規定されております。この中で、個人データ管理者および個人データ処理者は、個人データ保護管理責任者がその職務を適切に遂行できる環境を整備しなければならないこと(第168条)、個人データ保護管理責任者は、個人データ保護の技術的および運用的措置を実施できるように、個人データ保護を担当する部門と協力する義務があること(第169条)が追加されています。

3.GDPR[3]との類似性

PDP法はGDPRの影響を強く受けており、多くの条項で共通点や類似点を見出すことができます。

前述のPDP法第53条で定める個人データ保護管理責任者の任命義務が生じる3種の要件は、GDPR第37条1項が定めるData Protection Officer (“DPO”) の選任義務の要件と近似しております。

また、データ保護影響評価(Personal Data Protection Impact Assessment)[4]の実施時には、PDP法では、個人データ保護管理者は助言の提供と遂行の監視を役割として与えられおり(本規則案第167条1項(c))、GDPRにも同種の内容[5]が規定されています(GDPR第39条1項(c))。

さらに、個人データ保護管理責任者は、個人データの処理に関連する問題について窓口(narahubung)としての役割を果たす義務が規定されております (本規則案第167条1項(d)) が、GDPRにおいても同種の内容が規定されています(GDPR第37条7項)[6]

前述の個人データ保護管理責任者に求められる能力について、GDPR第37条2項は、DPOは専門家としての資質、特にデータ保護法および実務の専門知識ならびにDPOとしての任務を遂行する能力に基づいて選任される必要がある旨規定されています。本レター3.(2)で述べたPDP法第53条3項及び本規則案165条2項は上記GDPRの規定を踏まえて規定されているものと考えられます。

上記のように、本規則案を踏まえても個人データ保護管理者について明確になっていない点も多くあるところ、これらについてPDP委員会規則の動向を確認するともに、GDPRにおける取扱いを踏まえて検討することも有益と考えられます。

4.最後に

今月のニュースレターでは上記2にてPDP法 およびその施行に関する本規則案の詳細について、また3.にてGDPRとの類似点を議論しておりますが、One Asia Lawyersでは、来月以降もこういった観点で継続して議論して参ります。

今月のニュースレターの最後に、PDP法に関する一般的な注意点を述べたいと思います。

(1)猶予期間

PDP法はPDP法に沿った体制を整備する為の猶予期間として2年間と規定しています(PDP法第74条)。本規則案に関しては、今後の議論によって内容が変更される可能性がありますが、これを注視しつつ、当該猶予期間が来年の10月に終了することを見据え、同法及び本規則案を元に施行される予定の施行規則に沿った体制を今後整備していく必要があります。

(2)PDP法とEIT

PDP法第75条は、「この法律の施行に伴い、個人データ保護を規定するすべての法令の規定は、この法律の規定と抵触しない限り、なお効力を有する」と規定しています。

当該規定は、PDP法が施行される以前から有効であった、EIT法及びその施行規則等を念頭においたものと考えられています。EIT法は、電子システムで扱われる個人情報の取扱いに関する規定を置いており、PDF法第75条に基づくと、PDP法の施行後も、同法に抵触しない限度でEIT法及びその施行規則は有効と解されるため、PDP法及び同法の施行規則に加え、こちらのEIT法及び施行規則等に関しても、今後も引き続き留意が必要と考えられます。

 

[1]   PDP法の内容については、弊所の2022年10月発行のニュースレター(https://oneasia.legal/8947)をご参照ください。
[2]  インドネシア通信情報省が8月31日に発出したプレスリリースによると、本規則案に関して一般市民による意見の提出が可能とされている。(https://www.kominfo.go.id/content/detail/51157/siaran-pers-no-256hmkominfo082023-tentang-susun-aturan-pelaksana-kominfo-buka-partisipasi-publik-lewat-laman-pdpid/0/siaran_pers)
[3] General Data Protection Regulation(EUにおける一般データ保護規則)の略語。
[4] 一定の個人情報の処理が高度のリスクをもたらしうる場合に、想定される影響に関して行う評価を指し、この実施に関してはPersonal Data Controllerが実施の義務を負っている。(PDP法第127条(GDPR第35条にも類似の規定がある))
[5] ただし、GDPRにおけるDPOの助言の提供と遂行の監視は「要請があった場合に(where requested)」に行うものと規定されており、かかる文言はPDP法にはみあたらない。
[6] ただし、GDPRにおいては、DPOは個人データの処理のために、連絡先の公表が求められているが、当該規定はPDP法及び本規則案には見当たらない。

2023年08月17日(木)4:30 PM

インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下のリンクからご確認ください。

インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等

インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等

2023年8月
One Asia Lawyers Indonesia Office

日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

コロナ禍以降、インドネシアにおいても電子システム上で契約を取り交わす機会が増加しており、こういった電子上で締結された契約(電子契約)は、インドネシア法上、有効であると規定されています(「電子情報と取引に関する法律 2016 年 19 号で改正された法律 2008 年 11 号」。詳細は2021年8月のニュースレター(日本語のみ)を参照ください。)。

しかしながら、インドネシアにおいては電子契約であっても印紙税の課税対象となっているため、留意が必要です。

2.印紙税法改正による電子契約の印紙税課税対象化

従来インドネシアにおいては、印紙税の課税対象はあくまでも紙(Kertas)の契約書を指していた(「印紙税に関する法律1985年第13号)(「旧印紙税法」)第1条2項(a)等)ため、電子契約は印紙税の課税対象文書ではありませんでした。

しかし、2021年1月1日に施行された「印紙税に関する法律2020年第10号」(「新印紙税法」)に基づくと、課税対象文書は以下のように規定されており、このため電子契約も印紙税の課税対象と考えられています。

  • 第1条1項: 印紙税は、文書にかかる税金である。
  • 第1条2項: 文書とは、証拠または情報として使用できる、手書き、印刷、または電子形式で書かれたもの、または文章のことである。

3.印紙税の課税対象文書

上記の通り、新印紙税法においては、手書き、印刷、または電子形式で書かれたものであっても、課税対象文書であれば印紙税の納付義務が生じます。それでは、印紙税の課税対象文書とは何を指すのでしょうか。新印紙税法第3条において、以下と規定されており、電子契約は以下の第3条2.a.の合意書に含まれるため、電子契約は印紙税の課税対象となります。

●第3条1項

 印紙税は以下のものに課税される。

  1. 民事的性質の事象を説明するための手段として作成された文書
  2. 裁判所において証拠として使用される文書

●第3条2項

 前項aでいう民事的性質の文書には、以下のものが含まれる。

  1. 合意書、証明書、陳述書又はこれらに類似する文書及びその写し
  2. 公正人証書(写しおよび抜粋を含む)
  3. 土地権利登録機関によって作成された権利書(写しおよび抜粋を含む)
  4. 有価証券(名称および形態を問わない)
  5. 先物契約取引を含む有価証券取引文書(名称及び形態を問わない)
  6. 競売文書(抜粋、議事録、原紙、またはコピー)
  7. 500万ルピアを超える価額が記載された文書で、(i)金銭の受領が記載されたもの、または(ii) (金額の全部か一部かは問わず)負債が弁済若しくは清算されたことを承認する記述のあるもの
  8. その他政府規則が定める書類

4.印紙税額及び、電子契約の印紙税の納付方法

電子契約に対する印紙税の納付は、税務総局等が運営する電子納税システム(https://e-meterai.co.id/about)にて行います。納税額は、階層別の納税額を定めていた旧印紙税法と異なり、契約書の種別等に関わらず10,000ルピアとなります(印紙税法第5条及び、印紙税の納付、印紙の一般的特徴および特別な特徴、電子印紙、その他の形態の印紙、印紙および有償後日付印紙の有効性の決定に関する財務大臣規則第134/PMK.03/2021号(「MoFR 134/2021」)第2条2)。

納付手続きとしては電子納税システム上でアカウントを作成の上、課税対象文書をアップロードし、税額を納付等すると、22桁のシリアルナンバーが付与された印紙が課税対象文書に電子上で押印され、納付が完了します。(MoFR 134/2021第6条及び第7条等)

5.納税懈怠時の罰則

印紙税の納税を懈怠した場合は行政罰を受けるとされており、その場合、結果として、納付すべき印紙税額の2~3倍の印紙税を納付する必要があります。(印紙税法第18条、19条及びMoFR134/2021第20条等)

6.結論

インドネシアにおいては、電子契約であっても印紙税を納税する必要があるため留意が必要です。納税の方法は上述の通り電子納税システムを通じて電子契約をアップロードの上、必要税額を支払うことで行なえます。今後もオンラインでの契約のニーズは益々高まることが予想されますので、懈怠とならないように十分注意が必要です。

2023年07月18日(火)9:38 AM

インドネシアにおける税務裁判所に対する管理権限移管に関する憲法裁判所判決についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下のリンクからご確認ください。

税務裁判所に対する管理権限移管に関する憲法裁判所判決(インドネシア)

 

税務裁判所に対する管理権限移管に関する憲法裁判所判決(インドネシア)

2023年7月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1. はじめに
 インドネシアの憲法裁判所は、憲法裁判所判決番号26/PUU-XXI/2023を下しました。この判決によれば、遅くとも2026年12月31日までに、税務裁判所の組織、行政、財務面を管理する権限を最高裁判所に移管する必要があります。
 本訴訟は、弁護士1名と学者2名の計3名が、税務裁判所に対する財務省の関与は税務裁判所の独立性を損なうものであるとして提起したものであり、本判決は裁判所の独立性の保護を重視したものと言えます。

2. 訴訟の概要
 税務裁判所に関する2002年法律第14号(以下「税務裁判所法」)の第5条2項では、「税務裁判所の組織、行政、財政に関する管理は財政省が行う」と定められており、このため税務裁判所の組織、行政、財政に関しては財政省が管理権限を持っています。原告は、これらの管理権限を最高裁判所に移管するよう本訴訟を提起し、具体的には、前述の条文を以下のように修正することを求めました。
 「税務裁判所の組織的、行政的、財政的発展は最高裁判所が行う。」

 原告は、仮に財務省による税務裁判所の管理が、組織的、行政的、財政的な問題に限定されているとしても、税務裁判所に対して二つの組織(最高裁判所及び財務省)が管理する権限を有すること(特に財務省が関与すること)は司法の独立性を損なう可能性がある(つまり財務省が税務裁判所の機能と責任に対して支配力を行使する可能性がある)として懸念を示しています。

 このため原告は、当該条項は1945年憲法第24条第1項に規定された「司法権は、法と正義を維持するために司法を行う独立の権能である」という法の支配と司法権の独立の原則と両立せず、矛盾し、抵触するものと見なされると主張しました。

3. 憲法裁判所が考慮した内容
 憲法裁判所は、本判決に当たり以下を検討いたしました。
1)憲法裁判所は、税務裁判所が司法権の一つであり、これは1945年憲法第24条に明記されているとし、このため税務裁判所法第5条第2項は、憲法に反するものとされるとしています。

2) また憲法裁判所は、司法権の独立性と法の支配の確保のため、司法権に責任を持つ機関は一つであるべきであり、税務裁判所における監督権の二元性は司法制度の発展を複雑にしており、行政権や他の権力から厳然と分離されるべきでとしています。

3)さらに、憲法裁判所は、法の支配には、司法権の独立は不可欠な要素であり、これは、司法が公平かつ中立的であり外部からの干渉を受けないことを保証するとしています。また更に、司法権の独立が確保されない場合には、司法が歪められ、権力の乱用、国家権力による人権の軽視などの危険性が生じる可能性があるため、司法権の独立は、インドネシアにおいて法の支配を維持する上で極めて重要な要素であると述べています。

4. 判決
 憲法裁判所は本判決にて、税務裁判所の管理を2026年12月31日までに財務省から最高裁判所に移行させることを決定しました。
 具体的には、憲法裁判所は、2002年法律第14号第5条第2項における「財務省」という表現は1945年憲法と矛盾していると判断し、このため、当該文言について「最高裁判所(但し、2026年12月31日までに徐々に引き継がれるものとする)」という解釈をしない限り、この条文には拘束力がないと解釈されると判断いたしました。したがって、2002年法律第14号第5条第2項は以下のように解釈されると判断しております。
 「税務裁判所の組織的、行政的、財政的管理は、最高裁判所が段階的に実施し、2026年12月31日までに完全に実施されるものとされる」。
 本判決は司法機関の一つである税務裁判所の組織、管理体制に影響を及ぼすものであると考えられるところ、今後の動向に注目する必要がございます。

2023年06月12日(月)5:06 PM

インドネシアにおける企業結合に関する新規則についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

企業結合に関する新規則(インドネシア)

 

企業結合に関する新規則(インドネシア)

2023年6月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

 インドネシアにおいては、事業競争監督委員会/Komisi Pengawas Persaingan Usaha(以下、KPPU)に関連して、ここ数ヶ月で以下の複数の規則が公布施行されており、この結果、企業結合に関する規則に重要な変更が行われています。

(1)独占的慣行および/または不公正なビジネス競争をもたらす可能性のある合併、統合、または株式および/または資産の取得の評価に関するKPPU規則2023年第3号(以下、「KPPU規則3/2023」。2023年3月30日公布・施行)

(2)事業体の合併・統合および株式取得の届出遅延に対する制裁金賦課のガイドラインに関する競争監督委員会規則(2012年第4号)の取消しに関するKPPU規則2023年第5号(2023年3月31日公布・施行)

(3)KPPUに適用される税外国家収入の種類と関税に関する2023年政府規則第20号(以下、「GR 20/2023」。2023年4月5日公布・2023年5月5日施行)

 なお、これらの公布・施行に伴って、以下の規則が廃止されています。

(1)独占的慣行および不公正なビジネス競争をもたらす可能性のある事業体の合併、統合、または会社の株式の取得の評価に関するKPPU規則2019年第3号

(2)事業体の合併または統合の届出遅延に対する罰金賦課のガイドラインに関するKPPU規則2012年第4号

2.本件のハイライト

 上記の結果、企業結合に関する届出に対して適用される規則は、以下の通りとなります。

(1) 届出義務の要件(KPPU 規則3/2023第3条)

 企業結合が以下に該当する場合、当事者はKPPUへ届出を行う必要があります。

 - 結合に関わる全当事者の売上高または資産価値の合計が基準値を満たすこと
 - 当該売上高又は資産価値がインドネシアにおけるものであること
 - 結合の結果、支配権の変更をもたらすものであること
 - 結合が関係会社間のものでないこと

(2) 売上高および資産価値の閾値及びその対象(KPPU 規則3/2023の第6条)

 上述の届出義務要件のうち、売上高、資産価値に関する閾値は以下となります。(いずれかを超えた場合、届出義務が発生)

 - 売上高の合計が5兆ルピーを超える場合 
 - 資産価値の合計が2.5兆ルピーを超える場合

 なおKPPU 規則3/2023によって、上記閾値の数値に変更はないものの、その計算対象となる「資産」が変更となっています。すなわち、従来は全世界の資産が計算対象とされていたものが、今回の規則によりインドネシア国内にある資産に限定されるようになっています。なお、「売上高」の計算対象に変更は有りません(従来通り、インドネシア国内の売上高が対象となります。)

(3) 新しいオンラインシステム

 企業結合の届出は主にEメールにて行われていましたが、KPPU 規則3/2023によって、KPPU の公式ウェブサイト(https://notifikasi.kppu.go.id)を通じたオンライン通知システムにて行われることとなりました。なお、同規則 第 13 条 (3) 及び(4) (c) に規定されているように、提出は営業日のインドネシア西部時間午前9時から午後2時までに限定されています。

(4) 通知書の提出期限

 届出期限に変更はなく、取引の発効日から 30 営業日以内とされています(KPPU 規則3/2023 第2条)。なお、期限を超えた場合、KPPUによる調査の対象となる可能性があります(同規則3/2023 第46条 2 (2))。

(5) 届出手数料

 以前は、企業結合の届出時に手数料は必要とされておりませんでしたが、GR 20/2023に伴って、届出提出時に手数料が必要となりました。届出手数料は、以下の計算式で算出されます。

 0.004×(一定額を基準とした資産価値または販売価値)

(6) 提出書類の確認期間短縮

 KPPU規則3/2023では、企業結合に関する提出書類について不備等がないかをKPPUが確認する期間が短縮されており、従来60営業日とされていたものが3営業日へと変更されています(第16条(3))。なお、当該期間後のKPPUによる審査期間に関する規定(90営業日以内)は維持されています(第18条(2))。

(7)  経過措置

 KPPU規則 3/2023は2023年3月31日から適用され、それ以前に行われた協議、通知、評価には旧規則が適用されます。

3.結論

 今回の企業結合に関する新たな規則の導入により、届出対象が狭まり(資産価値の計算対象がインドネシア国内に限定)、提出書類に関するKPPU側の確認期間が短縮化されるなど、企業活動の利益となる改訂がなされています。その一方で届出に当たって、オンラインシステムの利用が導入され、申請手数料が新たに要求されるなどの届出手続になされた変更について留意が必要となります。

 

 

2023年04月17日(月)4:31 PM

インドネシアにおける新首都「ヌサンタラ」への投資に関するインセンティブプランについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

新法令:新首都「ヌサンタラ」への投資に関するインセンティブプラン

 

新法令:新首都「ヌサンタラ」への投資に関するインセンティブプラン

2023年4月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

 インドネシア政府は2023年3月6日、新首都(ヌサンタラ)における、事業者向けのビジネスライセンス許認可、ビジネス促進策支援、投資ファシリティの付与に関する政府規則2023年第12号(以下「GR12/2023」)を公布致しました。 

 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、インドネシアの首都をジャカルタからカリマンタン島のヌサンタラに移転することを2019年8月に発表しました。計画に基づくと、2024年初頭には一部の公務員が新しい首都で勤務を開始するとされています。

 ヌサンタラ市及びその周辺は手つかずの自然が残された場所であり、そのため、首都の建設はほぼゼロから都市及びそのインフラを建設することとなります。それ故、必要とされる資金は350億米ドル(約2.8兆円)近くと言われており、インドネシア政府はその費用の大きさから、資金の8割を外国人投資家から得ることを期待しています。

 GR12/2023は、上記計画の実行のため、ビジネスプロセスを緩和し、企業のヌサンタラへの投資を促進することを目的として、ヌサンタラ市(又は、IKN(Ibu Kota Negara:インドネシアの首都の意)と特定の近隣地域(以下「パートナー地域」。ヌサンタラ市とパートナー地域を併せて、「ヌサンタラ都市圏」という。)で事業活動を行う事業者に対して、1)ビジネスライセンスの取得に関する規制の緩和、2)ビジネスの促進策の実施、3)投資に対するインセンティブプランを与えることを規定しています[1]

2.GR 12/2023 –政府規則2023年第12

1)ビジネスライセンスの取得に関する規制の緩和

 インドネシアの他の地域への投資とは異なり、ヌサンタラ都市圏で事業活動を開始及び実施する投資家に対するビジネスライセンスは、納税者であることの確認が求められない旨が規定されています。また、同ライセンスの付与は、2022年法律第3号に基づいて省庁レベルの組織として設立されたヌサンタラ首都庁から、インドネシア政府が運営するオンラインシステムであるOSSシステムを通じて行われます。(GR12/2023第4条)

2 ビジネス促進策の実施

●外資規制の緩和

 GR 12/2023の第5条は、ヌサンタラ首都圏では、特定の事業分野に於いて適用されている外資規制が適用されないことを規定しています。しかしながら、第6条においては、外資規制の内のインドネシアの中小企業や零細企業との協業が求める規定は、依然として適用される旨を規定しているため留意が必要です。

●外国人労働者の雇用に関する規制の緩和

 ヌサンタラ首都圏では、外国人労働者の雇用に関する制限が以下のように緩和されています;

 - 一般的に有効期限が最長2年または5年までであることが多い労働許可証(RPTKA: Rencana Penggunaan Tenaga Kerga Asing)*及び滞在許可証に関し、法令で定める一定の職種の外国人労働者に関しては10年間有効なものを取得することができます。 (GR12/2023の第22条(2)、第23条)

 * RPTKAは正確には外国人雇用計画書を指しますが、雇用者が作成し、当局の提出し承認を得る形で、実質的には労働許可証としての役割を果たしています。

 - インドネシアの他の地域で外国人労働者を雇用する際に必要となる強制補償基金(DKP-TKA、Dana Kompensasi Penggunaan Tenaga Kerja Asing)については、ヌサンタラ市内の政府系戦略プロジェクトに従事させる為に雇用する場合は免除されます。(GR12/2023の第22条(3))

●土地の権利の付与

 インドネシアでは、外国人や外国法人は土地を所有することはできませんが、その代わりに、一定の期間、事業を実施する権利や、建物を建設及び保有する権利を取得することができます。一般的に、当該権利の有効期間は最大25年または30年に制限されていますが、ヌサンタラ首都庁との契約次第ではあるものの、以下のような長期間有効な権利が与えられる可能性があります:

 - 事業権(HGU: Hak Guna-Usaha): 最長95年(更に最長95年の延長可能)(第18条)

 - 建設権(HGB:Hak Guna Bangunan): 最長80年(更に最長80年の延長可能)(第19条)

 - 使用権(Hak Pakai): 最長80年(更に最長80年の延長可能)(第20条)

3 投資ファシリティ

 第26条では、投資ファシリティとして以下に分類される財政的および非財政的なインセンティブが提供される旨規定している:

 - 中央政府提供のインセンティブ

 a) 所得税/Pajak Penghasilan(PPh)、 b)付加価値税(VAT) および/または高級品販売税/Pajak Penjualan Barang Mewah(PPnBM)、 および/またはc)関税に関連するもの

 - ヌサンタラ首都庁提供のインセンティブ:

 a) 税制優遇措置と特別収入、b) ヌサンタラ市での投資活動実施のための土地とインフラの提供に関連するもの

3.結論

 インドネシアの首都をジャカルタから移転する計画は、ジャカルタの抱える課題(人口過密、交通渋滞、環境悪化など)を主な契機として策定されております。

 まだ発表されたばかりではあるものの、GR12/2023は、新首都となるヌサンタラの開発に対する政府のコミットメントを示していると言われています。

 首都機能の移転は、あらゆる産業の事業活動に影響を与え得るため、今後も注視する必要があります。特に、ヌサンタラ市への投資を検討されている場合は、今後の開発の動向に加え、インセンティブも含めた新法令の最新情報に留意が必要であり、法的な観点からの専門的なアドバイスを得ることを推奨致します。

 

[1] GR12/2023は、インドネシアの首都に関する2022年法律第3号(以下「2022年第3号」)の第12条3項の規定に基づきます。同規定は、ヌサンタラ首都庁(又は、Otorita Ibu Kota Nusantara(OIKN)。2022年第3号第3条に基づいて設立)が授権された権利(事業者向けのビジネスライセンス許認可、ビジネス促進策支援、投資ファシリティの付与に関するものであり、同法第12条1項・2項に規定)の詳細については、政令で定める旨規定しています。

2023年03月14日(火)8:57 AM

インドネシアにおける雇用創出法に関する法律代行政令2022年第2号(「Perppu 2/2022」)の法律化についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

雇用創出法に関する法律代行政令2022年第2号(「Perppu 2/2022」)の法律化

 

雇用創出法に関する法律代行政令2022年第2号(「Perppu 2/2022」)の法律化

2023年3月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

 

1.はじめに

 インドネシア政府は、「『雇用創出法に関する法律代行政令2022年第2号』の決定に関する2023年法律案」(以下「Draft Law 2023」)を起草し、インドネシアの国会/Dewan Perwakilan Rakyat(以下「DPR」)に提出致しました。

 本Draft Law 2023は、「雇用創出法に関する法律代行政令2022年第2号(以下「Perppu 2/2022」)」を法律にするために起草されたものとなります。

2.背景

 インドネシア政府は、2020年11月2日にオムニバス法とも呼ばれる「雇用創出に関する法律2020年11号」(以下「オムニバス法」)を施行したものの、その後、2021年11月25日に憲法裁判所は、同法令の立法手続きに瑕疵があったとして、条件付違憲判決(Decree No.91/PUU-XIII/2020)を下しています。

 インドネシア政府は、当該違憲状態の治癒のため、2022年12月30日に、オムニバス法と大きく内容をほぼ同じくするPerppu 2/2022を公布しています。このPerppu 2/2022は、公布と同時に施行されているものの、立法機関の承認を受けていないため、法律/Undang-undangとして恒久的に効力を持つためにはインドネシアの国会(DPR)の承認が必要となります。このため、政府は、Perppu 2/2022を法律/Undang-undangとするためにDraft Law 2023を起草し、DPRに提出いたしました。

3.最新の状況

 2023年2月15日、DPRは地方代表議会/Dewan Perwakilan Daerahとの合同会議を開催し、Draft Law 2023をDPRの本会議に上程することを承認しました。

4.Draft Law 2023の内容

 本Draft Law 2023はPerppu 2002/2の法制化を規定しており、Perppu 2/2022はオムニバス法と内容をほぼ同じくしています。

5.結論

 現状、DPRから更なるアナウンスはまだなされておりませんが、Draft Law 2023は、今後DPRの本会議で批准・公布され、大統領による署名がなされると、法律/Undang-undangとなります。

 

2023年02月17日(金)1:48 PM

インドネシアにおける新刑法(Kitab Undang-undang Hukum Pidana、以下「新KUHP」)の可決についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

新刑法(Kitab Undang-undang Hukum Pidana、以下「新KUHP」)の可決

 

新刑法(Kitab Undang-undang Hukum Pidana、以下「新KUHP」)の可決

2022年2月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

 2022年12月6日、インドネシアの国会/Dewan Perwakilan Rakyat (“DPR”)は、刑法に関する2023年法律第1号(以下、「新KUHP」という)を可決しました。同法は2023年1月2日に公布され、公布日から3年後の2026年1月2日に施行される予定です。今後3年間で、現在施行されている刑法は本法の内容に置き換わるとされております。

 新KUHPは、2編で構成されています。第1編には、第2編の内容を適用するためのガイドラインとなる一般的な規則として、州規則、県・市地域規則等などが規定されています。新KUHPは、インドネシアの刑法をアップデートし、現在のインドネシアの刑法体制を変革しようとするものです。

 2.本件のハイライト

A. 新KUHPによる特定の法律の改廃

・2001年法律第20号で改正された汚職の撲滅に関する1999年法律第31号(以下「1999年法律第31号」)

汚職の撲滅に関する法律

刑期及び罰金

KUHP

1999年法律第31

自分、他人、企業を富ませることを目的として国家財政や国家経済に損失を与える不法な行為

刑期:終身または2年以上20年以下

罰金:カテゴリーII(最高1,000万ルピア)の罰金とカテゴリーVI(最高20億ルピア)の罰金の間の金額(第603条及び第604条)

 

刑期:終身または2年以上20年以下

罰金:2億ルピアから10億ルピアを上限とする

(第2条第1項

権限、機会等を濫用して、自分、他人、企業を富ませることを目的として国家財政や国家経済に損失を影響を与えるような行為

刑期:終身または1年以上20年以下

罰金:5,000万ルピア以上10億ルピア以下

(第3条)

以下の活動のいずれか

1.公務が自身の義務に反して、特定の活動を行い、または行わないことを目的として、当該公務員に何かを供与すること、又はその約束をすること

 

2.公務員が、自身の義務に反して行ったこと、または行わなかったことを理由、又はそれに関連して、何かを供与すること

行為者

(第605条第1項)

刑期:1年以上5年以下

罰金:カテゴリーIII(最高額5千万ルピア)の罰金とカテゴリーV(最高額5億ルピア)の間の罰金

刑期:1年以上5年以下

罰金:最大50百万ルピアから250百万ルピアまで

(第5条)

物・約束を受けた公務員(第605条第2項)

刑期:1年以上6年以下

罰金:カテゴリーIII(最高額5千万ルピア)の罰金とカテゴリーV(最高額5億ルピア)の間の罰金

公務員に対して、当該地位や立場に付随する権力や権威を理由に、贈答や約束をすること

行為者

(第606条第1項)

刑期:3年以下

罰金:カテゴリーIV(最大2億ルピア)

 

行為者

刑期:3年以下

罰金:最大1億5,000万Rp.

(第13条)

物・約束を受けた公務員

(第606条第2項)

刑期:4年以下

罰金:カテゴリーIV(最大2億ルピア)

 

物・約束を受けた公務員

刑期:1年以上5年以下

罰金:最大50百万ルピアから250百万ルピアまで

(第11条)

* KUHPの発効後、1999年法律第31号のうち、上述の条文は、新KUHPの汚職犯罪に関連する条文に置き換えられます。

・マネーロンダリング犯罪の防止および撲滅に関する法律2010年第8号(以下、「2010年法律第8号」)

マネーロンダリング犯罪

資産の源泉

刑期及び罰金

KUHP

2010年法律第8

犯罪に起因すると疑われる、または合理的に疑われる資産に関して、当該資産の出所を隠蔽または秘匿するために その資産を

1)設置、2)譲渡、3)移転、4)支出、5)支払、6)贈与、7)委託、8)国外持出、9)形態変更、10)通貨または証券による引出した者

(第607条第1項(a))

第607条第2項にて犯罪行為に起因する資産の源泉と規定される26の特定の犯罪行為

(例)汚職、贈収賄、労働者密入国、移民密入国、資本市場における犯罪行為、ギャンブル

刑期:15年以下

罰金:カテゴリーVII(上限50億ルピア)

刑期:最長20年

罰金:最大100億ルピア

(第3条)

犯罪行為に由来すると疑われる、または合理的に疑われる資産の起源、出所、場所、配分、権利の移転、または実際の所有権を隠蔽または偽した者(第607条第1項(b))

刑期:15年以下

罰金:カテゴリーVI(上限20億ルピア)

刑期:最長20年

罰金:最大50億ルピア

(第4条)

上記、資産を受領した、または、管理した者(第607条第1項(c))

刑期:5年以下

罰金:カテゴリーVI(上限20億ルピア)

刑期:5年以下

罰金:最大10億ルピア

(第5条第一項

* 新刑法発効後、2010年法律第8号の既存条文に対する言及は、新KUHPの汚職犯罪に関連する条文に置き換えられます。

 新KUHP79条1項により、刑事罰の上限は、カテゴリーに応じて決定されます。

I

II

III

IV

Rp.1,000,000.00 (100万ルピア)

Rp.10,000,000.00 (1000万ルピア)

Rp.50,000,000.00 (5,000万ルピア)

Rp.200,000,000.00 (2億ルピア)

V

VI

VII

VIII

Rp.500,000,000.00 (5億ルピア)

Rp.2,000,000,000.00 (20億ルピア)

Rp.5,000,000,000.00 (50億ルピア)

Rp.50,000,000,000.00 (500億ルピア)

・2016年法律第19号で改正された電子情報および電子取引に関する2008年法律第11号(以下、「2008年法律第11号」という。)

 2008年法律第11号に関して、新KUHPでは「情報技術による犯罪コンテンツの流布」または「放送」を行った者に対する刑事罰を導入しており、これには犯罪コンテンツを、デジタルプラットフォームを利用して、デジタル情報や文書として送信、配布、アクセス可能にすることが含まれます。なお、この規定は、情報または文書が流布されたプラットフォームの所有者又は運営者が責任を問われうるのかどうかについては、明確ではないため留意が必要です。

B. 企業の刑事責任

刑事責任を問われる企業とは何を指しますか?

 企業は、刑事罰を受ける対象となり得ます。刑事罰を受ける対象となり得る企業には、1)株式会社、協同組合、国・地域所有企業などの法人、2)(法人格を持つかに関わらず)有限責任事業組合などのパートナーシップが含まれます。さらに、組織構造の外にありながらも、企業を支配又は実質的に所有する者も対象となり得ます。

企業が責任を負うべき犯罪行為とは?

 犯罪行為が以下のいずれかの場合に責任を負います。

 1) 会社の定款またはその他の規定に定められている会社の事業または活動の範囲に含まれる場合

 2) 会社に利益をもたらす場合

 3) 会社の方針として受け入れられている場合

 4) 犯罪行為の発生を回避するために予防措置を取らず、影響の拡大に対する防止策も講じず、コンプライアンス遵守のために必要な措置を取らない場合

 5) 会社が意図的に犯罪行為の発生を許可する場合

上記のような行為にはどのような刑事罰が科されるのでしょうか?

-まず第一に以下の刑事罰が科されます(新KUHP119条)

 1) 他に規定する法がない場合、最大2億ルピア

 2) 刑期が最大7年以下の犯罪行為の場合、最大20億ルピア

 3) 刑期が最大7~15年の犯罪行為の場合、最大50億ルピア

 4) 死刑または、刑期が無期又は最大で20年の犯罪行為の場合、最大500億ルピア

-また、場合によって追加で以下が科される可能性があります。

 賠償金の支払い、原状回復、懈怠していた義務の履行、慣習的に求められる義務の履行、職業訓練に対する資金拠出、犯罪行為によって取得した物品または利益の没収、判決の公表、特定のライセンスの取り消し、特定の行為の永久的な禁止命令、企業の事業所および活動の全部または一部の閉鎖、企業の事業活動の全部または一部の停止、企業の解散等(新KUHP第120条)

C. 論争の的となっている条項

 今回の新KUHPでは、以下の行為が刑事罰の対象として刑事訴追される可能性が生じているため、言論の自由、民主主義、人権を侵害し得るものとして、論争の的となっています。

 ※対象:大統領への侮辱、国家機関への侮辱、婚前同棲、法廷侮辱、宗教犯罪、共産主義、レーニン主義、マルクス主義、避妊教育、性教育、魔術。

3.結論

 上記のとおり新KUHPについて議論いたしましたが、実際に新KUHPで定められている条項の多くは、現行のKUHPと大きく変更されているものではありません。しかし、新KUHPは発効まで3年間の期間があり、その間条項に修正が加えられる可能性があるため、外国企業は今後の新KUHPの条文に対する変更に、今後も注意が必要です。

 

 

2022年12月08日(木)5:51 PM

インドネシアにおけるセカンドホームビザについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

インドネシアにおけるセカンドホームビザについて

 

インドネシアにおけるセカンドホームビザについて

2022年12月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士  馬居 光二
インドネシア法弁護士  Prisilia Sitompul

1.はじめに

財務省および入国管理局は、法務人権省における入国管理サービスの種類と費用に関する非課税国家収入に関する財務大臣規則第9/PMK.02/2022号およびビザおよび限定セカンドハウス滞在許可の付与に関する2022年移民局長通達第IMI-0740.Gr.01.01号を発行しました。この規定によれば、インドネシアに居住を希望する外国人は、従来のビザに加え、新たに「セカンドホームビザ」を利用することができるようになります。

2.セカンドホームビザとは?

セカンドホームビザとは、一定の条件を満たした上で、インドネシアに5年または10年永住する外国人またはその家族に与えられる非就労ビザを言います。

 3.誰がこのビザを申請できるのですか?

このビザを申請できるのは、インドネシアに来る以下の外国人です。

– 投資家
– 旅行者
– 高齢者・リタイア後の観光客

セカンドホームビザを取得した場合、子供、配偶者、両親のビザを申請することも可能です。

4.応募方法・条件

必要な書類:

・パスポートのコピー(有効期限が36ヶ月以上あるもの)
・申請者またはスポンサーの銀行口座(インドネシア政府系銀行に限る)に2,000,000,000ルピア(20億ルピア)以上の資金があること、またはその相当額を証明するもの(残高証明書)
・最近のカラー写真(4cm×6cm)で、背景が白のもの
・職務経歴書

申請者またはスポンサーは、以下を添付して申請することにより、帯同者のためのセカンドホームビザを申請します。

・パスポートのコピー(36ヶ月以上有効なもの)
・最近のカラー写真(4cm×6cm、背景は白)
・夫、妻、子供、両親の有効なセカンドホームビザまたはセカンドホーム一時滞在許可証

・セカンドホームビザまたはセカンドホーム滞在許可証の保有者と家族関係にあることを証明するもの

 1.セカンドホームビザまたは滞在許可証を持っている夫/妻の婚姻証明書、または
 2.外国人がセカンドホームビザまたは滞在許可証の保持者の親または子供であることを記載した出生証明書または家族カード(既に英語で記載されている場合を除き、宣誓した翻訳者によってインドネシア語に翻訳されたもの)。

スポンサーまたは外国人は、オンラインビザ承認申請を通じてセカンドホームビザを申請することができます(https://visa-online.imigrasi.go.id/)。

 

2022年11月14日(月)9:02 AM

インドネシアにおける就労期間が6ヶ月未満の外国人労働者に対する保険制度登録の義務化についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

就労期間が6ヶ月未満の外国人労働者に対する保険制度登録の義務化について

 

就労期間が6ヶ月未満の外国人労働者に対する保険制度登録の義務化について

2022年11月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士  馬居 光二
インドネシア法弁護士  Prisilia Sitompul

1.はじめに

 2022年5月23日、人材配置開発・雇用機会拡大局長決定No.3/144/PK.04/V/2022(以下、「本件決定」)が発布されました。本件決定は、インドネシアで働く6ヶ月未満の外国人労働者/Tenaga Kerja Asingの雇用主に対して、外国人労働者の保険制度への加入を義務付けるものです。

 従来、外国人労働者の活用に関する政府規則2021年34号(以下、「GR 34/2021」)第8条では、就労期間が6カ月未満の外国人労働者のうち、保険会社で働く外国人労働者に対する強制保険制度が規定されておりました。

 本件決定の発行により、上記保険制度が全ての就労期間6ヶ月未満の外国人労働者の雇用主である会社にも適用されることとなりました。

2. 本件決定のポイント

本件決定により、インドネシア政府は、短期労働目的で外国人労働者を雇用する雇用主に対して、保険制度への登録義務を規定しております。

本件決定に基づく重要なポイントは以下の通りです。

・外国人労働者の保険制度の種類

 外国人労働者の保険制度は、労働災害保険/Jaminan Kecelakaan Kerja(JKK)、健康保険/ Jaminan Kesehatan(JKS)、死亡保険/ Jaminan Kematian(JKM)で構成されています。

 外国人労働者の雇用主は、就労期間6カ月未満の外国人労働者を、金融庁から、すでに保険商品ライセンスを得ている保険会社の外国人労働者向け保険プログラムに登録するとされております。

・保険プログラムの補償給付

 就労期間6ヶ月未満の外国人労働者の保険金額は、本件決定別紙で以下のように規定されています。

a. JKM: 死亡保険金額:i) 死亡保険金200,000,000 ii) 遺体の本国送還 最大Rp.25,000,000

b. JKK: i) 死亡保険金額200,000,000 ii) 後遺障害保険金額 Rp.200,000,000

c. JKS: 最大25.000.000の入院と治療のリスクを伴う被保険者総額

d. JKK: 緊急医療搬送および本国送還のリスクに対する保険金額、最大USD1,000,000

・保険料

 本件決定別紙に定める就労期間6ヶ月未満の外国人労働者の保険料は、次のとおりです。

(i)  Rp 762,000(約USD 51.06)/1ヶ月(30日間)

(ii) Rp 1,715,000 (約 166.05 米ドル)/ 3 ヵ月(90 日間)

(iii) Rp 2,477,000(約166.05米ドル)/6ヶ月(180日間)

3.本件決定の実施日

 本件決定は、2022年7月1日以降の就労期間6ヶ月未満の外国人労働者に対する外国人労働者雇用計画/Rencana Penggunaan Tenaga Kerja Asing(「RPTKA」)の申請に対して実施されることになります。

 なお、本件決定には、雇用主が本決定に従わない場合の制裁については記載されておりません。

 また、2022年9月1日以降のRPTKAの申請において、雇用者は、外国人労働者の社会保障に関するオンラインポータルサイトであるASTAKAポータルを通じた登録が必要とされております[1]

4.結論

 本件決定は、就労期間6ヶ月未満の外国人労働者に確実な保険保障を提供する点を趣旨としていると考えられます。本決定により、インドネシアで働くすべての外国人労働者は、JKM、JKK、JKSの保険に加入する必要があることになります。

 本件決定は、まだ運用が開始して間がないところ、今後も継続して実務の対応を注視していく必要があると考えられます。

[1] Astaka [website], https://astaka.id/faq (accessed on November 10th, 2022)

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